ハンドレッド―とある転生者の奮闘記―   作:konvoi

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またも一か月遅れで投稿致します。

オリ主の胸中をこれほど書き連ねるのは自分の悪い癖と自覚し始めた今日この頃。

本当は先月の内に投稿したかったのですが、キャラの喋り方や考えはこんなので良いのかとか、保存ボタンを押し忘れて最後に自動保存された箇所で止まっていたりして苦戦しました。

そんなこんなでやっと第四話ができました。それではどうぞ。


逃げる、避けるばかりは恥ではない。

 『絶対に無理をする』と確信していた俺がエリカさん達の元に戻り、案の定無理を押してサベージと対峙していたエリカさんが負傷している所を助け出し、放たれたサベージの砲撃を前に無我夢中で彼女を庇った俺の周りで信じられないことが起きた。

 砲撃に身を包まれ、塵すら残らない筈だった俺達が無傷でいたのだ。よく見てみれば、周りを囲うように不可視の壁があるように感じられる。その壁は電流を迸らせ、俺達を砲撃から守っていたことはすぐに分かった。

 何がどうなっているのかもわからず、困惑する俺にエリカさんが問い質す。

 

「あなたは・・・武芸者(スレイヤー)・・・なのですか?」

 

 一瞬「は?」と思った。

 なぜ一民間人である俺にそんなことを訊ねるのか。そもそもこの不可視の壁は何なのか、俺の方が聞きたいことがあるのですが。

 

「答えてください! あなたが何故Eバリアを張れるのですか!?」

 

 解答に詰まる俺に業を煮やしたのか、エリカさんは俺の襟首を掴んで詰め寄る。すみません顔が近いです息がかかってますいい匂いがしますシャンプーはヴィダル〇スーンかな?

 

「いや、でも俺は一庶民なんで・・・武芸者(スレイヤー)とか軍人とかではなくてですね・・・その、何故バリア?を張れるのかも検討が付かなくて」

「あなたに武芸者(スレイヤー)としての資質があるのならばヴァリアブルストーンを持つだけでバリアくらいは張れます!」

 

そんな事を言われても、俺はヴァリアブルストーンなんて持ってるわ・・・け・・・

 

「・・・まさか」

「? なんですか?」

 

 エリカさんを余所に、俺は懐に仕舞っていた包――父さんと母さんに渡されたばかりの方位除守の御守りを取り出した。

 その包みからは僅かにだが光が漏れていた。ボウッと淡い輝きを放つその包みから中身を取り出した。そこにあったのは・・・。

 

「・・・嘘だろ」

「それは・・・ヴァリアブルストーン!? やはり持っていたのですね」

 

 予想だにしなかった"中身"に驚きを隠せない俺とエリカさんの呟き。

 包みから取り出したのは、掌に乗れるサイズもある八面体の鉱石だった。濃紺の淡い輝きを持ったそれが、武芸者(スレイヤー)武芸者(スレイヤー)たらしめるモノ――『ヴァリアブルストーン』である事は素人の俺から見ても直ぐに解った。

 しかし、まさか父さんと母さんからの贈り物がこれだったとは・・・そういえば『御守り』とか言ってたな、これがそうなんだろうか。というかこんなことでこの場に留まってる場合じゃなかった!

 

「動かないでよね!」

「え・・・キャァ!」

 

 ヴァリアブルストーンを握りながらエリカさんを再び抱えて俺は走り出す。

 

「ちょ・・・私はもう平気なので下してください!」

「並んで逃げるよりも抱えて走った方が早い!」

 

 ぶっちゃけ下ろす余裕があればそうしてるよ!

 んで、サベージのほうは・・・と、俺達を追跡するように走り始めた!?

 

「なんだよアイツ! 何で俺達を追ってくるんだよ!?」

「・・・これは私の憶測なのですが」

 

 ふと聞こえたエリカさんの呟きに気付きつつ、走りながらも腕に抱えた彼女の方へ顔を向け直す。

 

「恐らくは・・・あなたのヴァリアブルストーンを狙っているのではないかと・・・」

 

 なん・・・だと・・・!?

 

「・・・え? 何? じゃあ俺がこれを持ってる限りは追われ続けるってこと?」

「・・・あのサベージの反応から察するに・・・その可能性はあるかと」

 

 おうふざけんなちくしょうめぇい。誰がサベージと追いかけっこなんて興じるかよ。そうなると早いとここの手のヴァリアブルストーンを投げ捨てるべきなんだろうけど・・・如何せん父さんと母さんからの贈り物だから捨てづらい。ていうかできない。

 

「つうか何でサベージがヴァリアブルストーン(コレ)を狙ってるなんてわかったの!?」

「今のサベージの反応からそう推察するのが自然な事かと」

 

 それもそうだ。・・・待てよ。ヴァリアブルストーン(コレ)を持ってバリアが張れた、て事は・・・俺も武装を展開できるんじゃ?

 

「もしかして・・・・・・ちょっと止まるよ!」

「な、なにを!?」

 

 俺はそこで立ち止まってエリカさんを抱き抱えたまま、背後に振り返る。

 話しながらも相当走ったせいか、サベージとはかなり距離が離れていた。少し小休止しても良い位には程よい距離だろう。それでも相手は走ってくるのだからすぐに追いつかれるのだろうが。

 息を吸ってー・・・吐いてー・・・手の中のヴァリアブルストーンを握りしめながら、俺は正面のサベージを見据える。そして、手の中のそれを前に掲げながら"ある言葉"を口にする。

 

 

 

 

 

「・・・・・・百武装展開(ハンドレッド・オン)!!」

 

 

 

 

 

 武芸者(スレイヤー)がハンドレッドを展開する際に用いる起動コード。それを合図に、手の中にある濃紺のヴァリアブルストーンが更に輝きを放ち、微粒子状に分解されていく。

 その微粒子は俺の両腕に纏わり付くように集まり出し、やがて収束するように形を形成し始める。

 剣道着の防具によく似た形状で、ゴツゴツとした武骨な印象を与えつつ、手首辺りから伸びた濃紺に光るラインが、防具全体に迸る電流のように伸びている。

 防具の所々にもまるで棘のような歪な針が飛び出していて、当たれば大怪我は避けられないだろう。全体的に見て防具らしからぬ形状をしたそれが両腕に備わり、展開が完了する。

 

「で、できた・・・」

「それが、あなたのハンドレッド・・・まさか一回で展開できるなんて」

 

 俺の感嘆とした声とエリカさんの呟き。彼女に限っては驚きのほうが強く、反面は信じられないといった心境が見て取れる。そこまでなんですかねぇ。

 ・・・・・・というかこれだけ? ただ防具っぽい物を展開しただけ? というか何型よこれ。

 

「お姉さん聞いてもいい? これ何型?」

「・・・な、なんでしょうね」

 

 眼鏡をクイッと上げながら曖昧な返事で返された。でしょうね。

 しかしだがしかし。展開されたハンドレッドに感想を言う暇はない。何故ならサベージがもう目前に迫っているからです。

 

「おっと!」

 

 俺は咄嗟に空いた右腕を前にかざして意識を集中。かざされた手の先からエナジーが広がり、不可視の壁が形成される。それが迫るサベージの振るわれた鋏を弾き返す。弾かれた衝撃でサベージは数歩後ろへ下がりながら俺を牽制するように犬のような唸り声を上げる。

 

「Eバリア・・・あなた、そこまで・・・」

「ぶっつけ本番だよ。正直できるかは半信半疑だったけど」

 

 というかできてよかった。でなきゃ今頃エリカさん諸共に鋏でチョッキンだったんだもの。いや、本当にできてよかった。これでしばらくは走る必要もなくなった。ぶっちゃけ言うとエリカさん(武装込み)は重かった。そんな彼女を抱えてサベージから距離を離すほどに走った俺を一生分褒めてやりたい。

 

「それで? どうするつもりですか?」

「ん? 何を?」

「え?」

「え?」

 

 え?

 

「ちょっと。待ってください。ハンドレッドを操れるあなたが戦うのではないのですか?」

「え? そんなつもりはないですけど」

「え?」

「え?」

 

 ん?

 

「え、と・・・それでは、この後はどうするのですか?」

「えーと、とりあえず・・・武芸者(スレイヤー)なら誰でもいいから来てくれるまでサベージ(コイツ)をここに足止めしておく。俺はとにかく躱すなり防ぐなりして時間を稼ぐ。これが最良」

「えー・・・」

 

 俺の最良の案を聞いて呆れた表情になるエリカさん。仕方ないじゃない。俺は戦闘経験なんて皆無なんだし、逃げるよりもはるかにマシだよ。決して走るのが疲れたなんて理由ではない。

 

「ま、まぁ案が無いよりはマシですか。そろそろ下ろしてください」

 

 片腕に抱えたエリカさんから降ろすよう促される。多少は疲労が抜けたのだろうか、地面に下ろした彼女は先ほどよりもしっかりと立てるまでに回復したようだ。

 

「私は通信でもう一度増援を望めないか確認してみます。あなたはその間にサベージを引き付けておいてください」

 

 え? 下ろしたなら手伝ってくれるんじゃないの? 俺がそんな事を言いたげな視線を向けると、エリカさんはごく自然な口調で言葉を紡ぐ。

 

「ベルグリット・レオンハルト達がいない以上、私達だけであのサベージをどうにかすべきです。ですが、あなたは実戦経験が皆無。私はエナジーを使い果たし、碌に戦える状態ではありません。ならば増援を呼ぶしか他に手はないです」

 

 そういえばエナジーって休めばそう簡単に回復するモノではなかったね。忘れてた。つまり俺がサベージを足止めしてればいいわけか。普通民間人にそんな役を任せるかね。

 

「あなたがハンドレッドを展開できたのは僥倖でした。幸いにも、あなたはサベージの攻撃を防ぐだけの術を得ています。でなければ私達は今もずっと逃げ続けていたことでしょう。ともかく、私が増援を呼びかけている間、あなたはサベージを引き付けてください。そうすれば、あなたの役目は終わりです」

 

 そんな悪役が言いそうなセリフを吐くエリカさんに吃驚しつつも、俺は正面のサベージを見据えながら身構える。

 

「引き付けるのは良いけど、何でそんな役目を俺のような民間人なんかに?」

「不幸中の幸いとは言え、あなたは自らの武芸者(スレイヤー)としての素質を示しました。ですから利用する価値がある――理由はそれだけです」

 

 ようは『利用できるものはなんでも利用する』、か・・・。この人ってこんなキャラだっけ? まぁ状況が状況だからそれに従うほかないか。他に手もないみたいだし。

 

「じゃあ俺はバリア張るのに集中するから、お姉さんは早く通信で呼びかけて」

「解っています!」

 

 なけなしの勇気を振り絞って敵の出方を窺いながら、エリカさんは比較的安全な地点まで離れていく。

 後ろで離れていく足音を聞き届けていると、直ぐにサベージが行動に移る。片腕の鋏で狙いを定めるのは――俺か!

 

「よっ、と!」

 

 後ろに飛び退いて一撃を躱す。俺を切り裂く筈だった鋏は空振りに終わり、鋏が届かない位置に離れた俺を追ってサベージが距離を詰めてくる。このままエリカさんから距離を置くのが得策なんだが、それでは俺が何時までもサベージ(こいつ)を引き付ける事になる。一般人の俺にも体力や気力には限度がある。辛抱強く引き付ける為には一時離脱も必要だ。

 

「こっちだノロマ! 悔しかったら俺のケツを刺してみやがれ!」

 

 俺はサベージに背を向けて走り出す。奴さんが追いかけてくるのを止めないよう、一定の間隔まで距離を詰めさせてまた離れる。こうすれば俺の体力と気力の温存につながるしエリカさんにも危害が及ばない筈だ。尚、俺が吐き捨てた台詞に深い意味はない。

 俺はこのままサベージと距離を離しつつ、軽い足取りでその場を走った。

 

「・・・・・・そういや、何でサベージ(あいつ)は砲撃しないんだろ」

 

 

 ★☆☆

 

 

「こちらはリトルガーデン所属、エリカ・キャンドルです。リベリア軍支部へ応援を要請します。繰り返します」

 

 アキラがサベージを引き付けて遠ざかっている間、破壊された建物の陰に隠れたエリカは手首の通信機を通してリベリア軍支部への直接連絡を図っている。しかし、通信機を介して返ってきたのは「困難」の二文字だった。支部のオペレーターによると、どうやら他区間に現れたサベージの対処に追われているようだ。

 

「そうですか・・・そちらの状況は理解しました。こちらも私達で何とかしてみます。無理を言って申し訳ありませんでした」

 

 無情な返答を聞いて少しばかり気落ちするものの、すぐに気持ちを切り替えて今度は自らが尊敬する"彼女"――クレア・ハーヴェイへ通信を繋げる。

 

『私ですわ。どうかされましたの?』

「クレア様。お忙しいところ申し訳ありません。実は・・・」

 

 エリカは今の状況について向こう側にいるクレアに話した。遭遇したサベージによって戦闘不能に陥ったベルグリット達と離れて戦う事になった事。エリカ自身に継戦能力は殆ど残っていない事。そして、アキラがハンドレッドを展開してサベージを引き付けてくれている事を。

 

『そうですの。あの少年が・・・状況は飲み込めましたわ。こちらも片付き次第そちらへ向かいますので、GPS機能を起動しておいてください。リトルガーデンから逐一位置情報を更新してもらうので、あなたはあの少年に出来得る限りの援護を行ってサベージをその場に足止めしてください』

「了解いたしました。そのように伝えます」

『エリカ、分かっている事とは思いますが、無理はしないように。あの少年も同様に、ですわ』

「理解しております。クレア様もどうかお気を付けて」

 

 最後に『ええ』と短い返答と共にブツリと通信が切られる。言われた通り腕の機器を操作して自らの位置を示すGPS機能を起動しておき、後は彼女達が来るまでの辛抱となった。

 

「まさかクレア様のお手を煩わせることになるとは・・・私もまだまだ半人前という事ですね」

 

 歯痒い気持ちと共に込み上げてくる小さな苛立ち――憧れであり崇拝する対象であるクレアの手を煩わせる自分に対して芽生えた感情が胸中を占め始める。

 

「いえ、今は自分の事よりも先にサベージをどうにかしなければ・・・それではクレア様に合わせる顔がありませんね」

 

 とにかく残るサベージをどうにか締め上げたい衝動に駆られつつも、その衝動を頭の隅に追いやり、アキラへ増援が来る事を伝えなければならない。

 

「あの少年は・・・向こうですか。サベージの暴れている音が聞こえるという事は、しっかり役目を果たしてくれているという事ですか」

 

 自分から言い出した事とはいえ、距離を離すまでしてくれるとは思っていなかった。内心でアキラに感心しながらも、物陰から立ち上がる。

 破壊し尽くされた市街地へ向き直った彼女の視線の先では、死角となった建物の向こう側からサベージが何かを叩きつけたような打撃音が聞き届く。

 

「ですがこれ以上は彼自身にも疲労が溜まる一方ですね。急がないと」

 

 ふとエリカは、あの少年の名前を知らないことを思い出す。

 

「そういえば、彼らのファミリーネームさえ知らないままでしたね」

 

 事態が事態とは言え、少しは知るようになった彼らの事くらいは名前だけでも覚えておこうと思いながら、エリカはアキラの下へ走り出した。

 

 

★★☆

 

 

 エリカさんと分かれて俺はサベージの誘導を、当のエリカさんは増援の要請をしに行ってから5分ほどの時間が経過していた。おかしいなー、そろそろ来る頃合いなんじゃないかなー、と思いつつサベージと距離が近づいては離れていく流れ作業を延々と繰り返す俺。

 あれからサベージは砲撃のほの字も浮かべない物理攻撃で俺に襲い掛かってくるんだけど、俺はそれを全て躱すか防具擬きで滑らせて受け流すしかしていない。

 一番の気掛かりは砲撃を放つ口部で、それが何時開いてもおかしくはない筈なのだが。

 

「そもそも何で俺のヴァリアブルストーンを狙いやがるんだ?」

 

 このサベージの行動原理から推測したエリカさんの考えは多分正しいのだろう。

 サベージは恐らく、俺が持つヴァリアブルストーンに惹かれて寄ってきているのだろう。理由はわからないが砲撃してこないという事は、『壊さずに手に入れること』に意味があるのかもしれない。根拠はない。あくまで推測の中で導き出した結果なのだから、これが本当に正しい事かもわからない。

 しかしだ。理由が何であれ、今は模索などしている場合ではない。相手が砲撃してこないというのであれば逆に好都合。そこを利用して俺は地道に避けるなり引き離すなどして増援が来るまでの時間を稼ぐだけだ。ぶっちゃけバリア張るの疲れるから出来る事ならしたくない。増援が来たら俺はさっさと某三代目の大泥棒並みの逃げ足でトンズラさせてもらおう。結果的に俺の行動原理はそこに集約されるので文句を言われる筋合いはない。「あーばよー!」って言いたいのはここだけの秘密だZO☆。

 

「おーい! 聞こえてますかーっ!?」

 

 そんな声が聞こえてきて俺はサベージとの距離を離しながら、その声がした方へ振り向いた。

 丁度真後ろで追走してくるデカい壁(サベージ)の向こう側――ヴァリアブルスーツ姿のエリカさんが立っていた。彼女は口元に両掌を広げながら、大声で俺に言葉を投げてくる。

 

「つい先ほど連絡が届きましたーっ! あと数分もすれば増援が駆けつけてくれます! ここから先は私が引き継ぎますので! あなたは武装を解除して何処かに隠れていてください!」

 

 それは嬉しいニュースだ。ならば後は任せよう・・・と言いたいところなんだけど、エリカさんにエナジーは残っていないからそれを任せる事は出来ない。俺は目の前に迫るサベージの鋏を屈んで避けながらエリカさんに向かって大声で返す。

 

「ごめんなさい! それはちょっと難しいかもしれない!」

「何故ですか!?」

 

 そう聞くのも当然だ。何せサベージは俺のヴァリアブルストーンを狙っているのだ。それの武装を解除したところでコイツ(サベージ)が諦めてくれるとは到底思えない。ならここはいっその事増援が来るまで俺が持たせるしかないだろう。どうでもいいけど通信機が無いと不憫だなこのやり取り。喉が枯れそうだ。

 

「多分だけど! サベージはヴァリアブルストーン(コレ)を狙ってるんだと思う! 確証はないけどそんな感じがする!」

「・・・ッ!」

 

 俺の言葉で思い当たる節があったのか、エリカさんは黙り込む。ごめんね。でもこれ多分気のせいじゃないんですわ。確証も根拠もないけど。あ、またサベージの鋏攻撃。バックステッポォッ!!

 

「・・・・・・・・・それでは私も加わります!」

 

 ファッ!? まじで言ってんのかそれ! 続く第三撃の鋏を踏み台にして高くジャンプする。ちょっとアクロバティックな動きになってきたな。

 

「無理はしないで! お姉さん怪我もしてるんだしさ!」

「あなたが引き付けてくれたお陰で走れるくらいには回復できました! ハンドレッドを展開できたとはいえ民間人のあなたを巻き込んでしまったのですから、私にだってそうするくらいの責任があります!」

 

 責任て・・・言われた事とはいえ俺だって進んでやってることなんだし気にしなくてもいいのに。続けて振るわれてくる鋏を屈んで避け、反対側から迫る鋏を両足のバネを全開にして地面を蹴り高く飛び上がる。そのまま空中で身を翻しつつ真後ろに後退。地面にスタッと綺麗に着地する。

 

「あと、さっきから思っていたのですがあなた動きが段々と洗練されつつありませんか!? 新体操選手も吃驚なくらいの!」

 

 俺自身もそう思います。さっきから体が妙に軽い気がするんだよね。これもあれかな。エナジーが体に順応してきたって所かな。ともあれサベージを翻弄できるのであればこれくらいの身体能力はあってもいいよね。でも多分新体操選手の方が身体能力は凄まじいはずだけど。どうでもいいなこれは。

 

「兎に角! お姉さんは下がってて! 俺も適当なところで避難するから!」

「ですが・・・ッ!」

 

 それでも尚引き下がらんとするエリカさんだが、彼女の存在に気付いたサベージが俺ではなく彼女の方へゆっくりと振り向いた。触覚を揺らめかせ、ギョロリとした双眸がエリカさんの姿を完全に捉える。彼女自身もそんなサベージの動きに気付き、一歩後ずさる。

 

「! お姉さん逃げて!!」

 

 俺は腹の底から絞り出すような叫びを上げるも、サベージの腕が薙ぎ払わんとばかりに彼女に向かって振るわれる。

 

「チィッ!!」

 

 舌打ちを打ちつつ、咄嗟に走り出した。エナジーのおかげで体が軽いと感じるせいか、地面を蹴っただけで十歩分の距離を詰めながらサベージの腹の下を掻い潜り二歩目で更に十歩分、反対にエリカさんとの距離を縮めていく。

 サベージの腕がエリカさんに届くまであと数センチ。俺の手が彼女に届くのも数センチ程。庇うには少し、いや結構危なすぎる!

 

「こなくそッ!!」

 

 俺は頭で考えるよりも早く体が動いた。両腕を前に突き出しながら、更に地面を蹴ってエリカさんを抱き止めるように抱えて自分ごと突き飛ばす。その行動が功を奏したのか、間一髪のところでサベージの攻撃から逃れる事に成功した――のは良いのだが、ここから先が問題です。殆どタックルの要領で突き飛ばした後、俺達はどうなるのか。その結果は当然、地面に向かって倒れる事になる。

 更に悪い事にこのままの体勢だと、自然とエリカさんを押し倒す事になってしまう。突き飛ばす+押し倒す=地面をバウンドしながらエリカさんにさらに重傷を負わせることに。それだけは避けなくては!

 

「ふっ!!」

 

 俺は咄嗟に身を翻し、俺が下敷きになる様にして地面に無防備な背中を晒す。そのまま強く地面をバウンドしながらなんとかエリカさんが傷を負わないよう、俺は自らをクッションにして地面を転げ回る。5回ほどバウンドしした後、背中で地面を削りながらブレーキが掛かってようやく止まる。

 止まったのは良い。だけど背中が焼けるように熱い。あと全身が鞭を打ったように痛い。バウンドしたんだから当然だが、これは思っていた以上にヤバかった。打ち所が悪かったらこのまま人生終わってたかもしれない。

 

「痛ッ・・!!」

「だ・・・大丈夫ですか?」

 

 両腕に抱き止めていたエリカさんから心配する声が聞こえる。俺が下で上がエリカさん・・・傍からはまるで抱き合っているように見えて中々に危ない体勢だ。おまけに肌の露出が多い全身ピチピチスーツを着込んでいる分余計に危うく感じる。その上今の姿勢からエリカさんはまるで上目遣いでこちらを見つめるような感じになっていて艶めかしく見えてしまう。

 

「っ・・・だ、大丈夫です、よ・・・?」

「? なぜ疑問形なのかはわかりませんが、早く立ってください。今のうちに退避しましょう」

 

 下敷きになった俺の上から退くように立ち上がり、エリカさんから差し伸べられた手を握り返して俺は立ち上がる。あぶねぇ、今のが脳裏に焼き付いて俺の分身が立ち上がる寸前にまでなった。そんな状況じゃねぇってのに。

 

「さ、早く行きましょう!」

 

 そのまま腕を引かれてサベージとの距離をまた開け始める俺達。後ろを振り向けば、サベージは全速力で俺達に追いつこうと走ってくる。

 

「走ってきてる! 追いつかれるよ!」

「大丈夫です」

「へ?」

 

 何故――そう聞く前に俺達の頭上で"緑色の閃光"が走る――エナジーによる遠距離攻撃だ。それが一直線にサベージに吸い込まれるように飛び込み、奴の顔面に直撃する。小さな爆発を起こしながらサベージの頭部にあったシェルターが破壊されていて、(コア)が露出していた。

 

「今のは・・・」

「! あそこです!」

 

 エリカさんの喜色を込めた言葉と共に、走った先にある建物の屋上へと指が指された――そこには赤いヴァリアブルスーツを身に包んだ金髪の女性、クレア・ハーヴェイが立っていた。彼女の手には自らの武器である赤く巨大な銃器が握られている。その隣で褐色肌で濃紫色のヴァリアブルスーツを着用した女性、リディ・スタインバーグが立っている。

 

 

★★★

 

 

「――お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 その一言と共に、クレア・ハーヴェイは目線の先に見据えたサベージの頭部へと手の中の銃器――バスターキャノンを構え直し、エナジーをチャージし始め再び砲撃を加えようとしていた。その隣でリディは静かに得物であるスピアを構え、いつでも突撃できる体制で待機した。

 彼女達がこの場にたどり着いたのはたった今だ。先ほどまで他区間のサベージを駆逐していた時に通信を繋げてきたエリカの増援に向かうため、早急にサベージを撃破してここまで飛んできたのだ。

 この時点で他の区間に現れたサベージは粗方討伐され、残るはエリカ達を襲うサベージのみとなった。リトルガーデンからの指示を頼りに殆ど瓦解した建物の屋上へ降り立つとともに、視線の向こう側にアキラの手を引くエリカ――と、それを追いかけるサベージの姿が見えた途端、クレアは咄嗟の判断で遠距離攻撃を放ったのだった。

 クレアの紡ぐ言葉は通信機を介してエリカの下へ届けられる。その言葉が届いたのか、エリカが嬉しそうな表情を浮かべているのが遠目でわかった。

 

『クレア様! お待ちしておりました!』

「間に合ったようで何よりです。エリカはそのまま少年を連れて退避してください。後の事は私達にお任せを」

『分かりました!』

 

 若干興奮するような声が通信機を通して届き、遠目で鼻息を荒くしながらも敬礼の姿勢を取るエリカに微笑みを浮かべる。クレアはそんな彼女に退避するよう促す。

 遠目でエリカがアキラの手を引いてサベージから離れるように走っていくのが見えた。

 

「私のエナジーも残り僅か。これが最後の砲撃になります。これで仕留めきれなかった場合は・・・リディ」

「わかっております」

 

 バスターキャノンをサベージに向けながら確認を取るクレアに、リディは頷き返してスピアと盾を構え直す。

 すると、狙いを定めたサベージが口を開くのが見えた。その口部内にある筒状の砲口から黄色のエナジーが集まり出し、向こうも砲撃の態勢に移った。しかし、その時点でバスターキャノンのエナジー集束率はすでに臨界点を迎えており、いつでも引き金を引ける状態に入っていた。エリカとアキラはすでに射線の外に避難済みな事を確認しているので心配する必要はない。

 

「今頃砲撃するなど・・・遅いにも程がありますわ!!」

 

 その言葉と共に、クレアは引き金を引いた。圧縮されたエナジーが銃口から開放され、それが先ほど放った砲撃よりも極太の閃光となってサベージに向かっていく。

 ワンテンポ遅れて、サベージも砲撃を放ち始めた。黄色のエナジーが緑色の閃光とぶつかり合い、互いに均衡するかのように真正面から相殺されていく。しかし、それも一瞬の出来事で徐々に押し始めたのはクレアの砲撃からだった。

 発射地点から放ったクレアは力ずくで踏ん張りながら、グリップを握る手に力を込めた。それに伴って放出されるエナジーの濃度が増し、巨体を誇るサベージが放つ砲撃を徐々に相殺しながらも削り始めていく。

 それがやがてはサベージの口部に届き、大きな爆発を伴いながら緑色の閃光が頭部を丸ごと包み込んでいく。高濃度に圧縮されたエナジーの濁流が敵の(コア)を押し潰し、ひび割れながら崩壊していく。

 放射が止む頃には、既にサベージはその生命活動を完全に停止していた。(コア)も完全に破壊された事が確認され、クレアはリディと共に安堵したように一息付いた。

 

 

 

「サベージの討伐を完了。仲間と民間人の安全も確認・・・任務、完了致しましたわ」

 

 

 

 そんなクレアの宣告と共に、リベリア軍支部から届いたオペレーターからも他区間のサベージが全て討伐されたという知らせが送られた。

 リディと共に安堵した表情を浮かべるクレアはバスターキャノンを粒子に還元しつつ、2人揃って眼下の崩壊した街に飛び降りたのだった。

 

 下に降り立ったクレア達はエリカと合流を果たし――後にリベリア軍が敷いた避難所のテントを借りてアキラと、再開した四宮夫妻に事情聴取を執り行う事となった。




前回よりも2000字以上は減らしました(やったぜ)。

次回はもっと短くできるようにします(最低10000字以下)。

ところで最近『刀使ノ巫女』というアニメにハマっておりまして、近頃は皐月夜見さんが好きになりつつあります。リスカで荒魂を生み出すあのメンヘラ感が良いです。皆さんはどのキャラクターがお好きですか?
早くアプリ配信されないかなとゆっくり全裸になりつつ待機しています。

因みに第五話も投稿日は未定です。ですが次回でプロローグは本当に終了します。次々回でやっと本編を開始できます。

読んでくれる方がいれば、よければまた見て行ってください。それではまた次回で。
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