ハンドレッド―とある転生者の奮闘記―   作:konvoi

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第七話、投稿です。

今回も中途半端な終わり方です。オリ主をメインに2話構成で作ってます。

それではどうぞ。

誤字修正しました。ご報告してくださったユーザー様へ、ありがとうございます。


一人につき武器は一つとは限らない

 天気は晴れ。青く澄み渡る空には白い雲が流れ、洗濯物を干すのには絶好の洗濯日和な一日。そんな天候の中で、数羽の白い鳩が飛び立つ。

 

 武芸科校舎から少し離れた位置にあるドーム状の建物、闘技場(コロシアム)

 

 そこで今日、ある戦いが執り行われることとなった。

 

「四宮。準備は?」

「ばっちりだ。如月の方は?」

 

 闘技場(コロシアム)内の控え室で俺専用のヴァリアブルスーツへと着替えた俺は、隣接した控え室に繋がるドアから出てきた原作主人公、如月ハヤトにそう答える。

 彼も同じように専用のヴァリアブルスーツを着用していた。

 

「俺も問題なしだ」

「そうか」

 

 確認すると、控え室の扉が開かれる。そこに立っていたのは生徒会副会長の一人であるエリカさんだった。

 

「お二人とも。準備は整いましたか?」

 

 リディさんの問いかけに、俺達は揃って首を縦に振る。

 

「よろしい。ではついて来なさい」

 

 促されるがままに、俺達はエリカさんの後ろについていく。これからクレアさん"達"との決闘(デュエル)が始まるのだ。

 

 

 この時点でお気づきの方達もおられますでしょうが、クレアさん"達"――つまりは俺達二人と相手方も二人、という組み合わせだ。

 なぜそうなったかと言うと、昨日の入学式に遡る必要がある。

 

 

 

 

 

 ★☆☆

 

 

 

 

 

「わたくし、クレア・ハーヴェイは四宮アキラと如月ハヤトの両名に、決闘(デュエル)を申請致しますわ!」

 

 

 

 クレアさんからの突然の宣言。彼女の口から告げられた言葉に周囲がざわめくのは当然の出来事だった。

 

決闘(デュエル)・・・て、どういう事だ?」

 

 若干一名理解できないでいる奴がいるが・・・言わずもがな如月である。彼の呟きに答えるのは隣にいたフリッツだ。

 

「このリトルガーデンにおいて、武芸者(スレイヤー)同士が行う私闘の事だ。普通なら新入生がそれを行うのはまず在り得ない事なんだがな」

 

 そう。通常ならば俺達新入生が決闘(デュエル)を仕掛けられることは在り得ない筈。それは新入生の全員が殆どの場合、ハンドレッドを展開できた事が無いからだ。

 すでにその経験があるエミールと俺と如月を除いて、碌に展開すらしたことがない者が大半を占めている。そんな彼らに決闘(デュエル)を吹っ掛けるというのは酷であり、何よりあのクレアさんが許さない事でもあるからだ。

 しかし、そんなクレアさんが初めて、新入生に対して決闘(デュエル)を仕掛けた。

 恐らく如月は原作通りだとしても、なぜ俺も含まれてるんだ? もしかしなくとも俺も反論したからか? でも自分で言った手前、今から撤回するなんてことはしたくないな。言った責任は取らなきゃ。

 

「生徒会長。俺達は新入生です。決闘(デュエル)を申請する理由をお尋ねしても?」

「良いですわよ。理由は二つあります」

 

 俺の疑問に、クレアさんは口元を引き締めながら、握り拳を作った右手から人差し指を突き出して答える。

 

「まずは一つ目。如月ハヤト。あなたは半年前、ワルスラーン社モトマツ支部で行われたイベントにあったヴァリアブルストーンに触れての適性試験で、わたくしよりも遥かに高い反応数値を示したそうですわね。その際、ハンドレッドも刀に似た形状へと変わったと聞き及んでおります。それほどの適性があれば、直ぐにでもセンスエナジーのコントロールにも慣れる筈ですわ。そしてあなたの履歴書には剣術の経験もあると書かれておりました。刀の形状と剣術、これだけでもすぐにあなた自身の戦闘スタイルは確立される筈です。何よりも、わたくしは自分自身の目であなた自身の実力を確かめたく、こうして申請しております」

 

 なるほど。つまるところ腕試しという事か。原作だと「強くなれる兆しのある者は寧ろwelcome」みたいな考えだったからな、今はあくまでもそれで通すつもりなのだろう。いや、実際にクレアさんがそう言ったわけではないけども。

 クレアさんは中指を突き立て、二つ目の理由を話す。

 

「次に二つ目。四宮アキラ。一ヵ月前に起きたリベリアでのサベージ襲撃の折、あなたは偶然所持していたヴァリアブルストーンに初めて触れたにも係わらず、ハンドレッドを展開できた事に起因します」

 

 クレアさんの語った理由に、講堂内の殆どの人間から驚きの声が混じったどよめきが生じる。それをここで言っちゃうの? しかし、彼女の語った理由はそれだけでは終わらない。

 

「あれからおよそ一ヵ月。話によるとあなたには知り合いに武芸者(スレイヤー)がいて、その方から武芸者(スレイヤー)としての戦い方を教わったと伺っております。つまりは如月ハヤトと同様、現時点でのあなたの実力を確認する為でもありますわ。あなたがハンドレッドを扱えるに足るか、それをわたくしが直々に見定めて差し上げますわ」

決闘(デュエル)をする理由は分かりました。ですがそれだと二人の放校処分と何の関係もないんじゃないですか?」

 

 俺の言葉に同調するように近くにいたエミールが「そうだそうだ!」と声を荒げる。黙ってろの意を込めた俺の平手打ちが原作ヒロインの後頭部を軽く打ち付ける。「何で叩いたの」と言いたげな視線を向けてくる原作ヒロインをガン無視しつつ、クレアさんの答えを待つ。

 

「わたくしは言った筈ですわよ。『あなたの仲間を思う姿勢に免じて』と。つまりはあなた方自身の手でわたくしとの戦いに勝ち、彼女達を"救って見せなさい"と言っているのですわ。因みにこれを拒否した場合は・・・わかっておりますわね?」

 

 まるで答えはわかっていると言いたげな笑みを浮かべるクレアさんが俺達からの返答を促す。

 要は彼女らを天秤にかけている訳か。俺達が勝てば彼女らの処分は取り消すが、逆に俺達が負ければ彼女らはこのまま退学という事に。拒否すれば有言実行、て訳か。

 

「解りました。その決闘(デュエル)、俺はお受けします」

「四宮! 本気か!?」

 

 隣の如月が声を荒げる。ここまで来ちまったんだ。今さら後戻りできるかってんだよ。

 

「如月。反論した時点で俺達は既に後戻りできないんだ。反論した手前、俺は今まで自分が言った事を撤回したら絶対に後悔する」

「だからって・・・」

「だからここは引き下がる訳にはいかない。俺は自分で言った事は自分で責任を取る。お前はどうする?」

 

 俺は如月に向けて訊ねる。彼は少し渋った表情を見せたが、それをすぐに決意を固めた表情に変え、クレアさんの方に向き直る。

 

「そうだな。俺もこのまま見ているなんて我慢できない・・・俺もその決闘(デュエル)、お受けします!」

「お二人とも、良いお返事ですわ。それでは日時を決めましょう。明日の・・・」

「お待ちください、クレア様」

 

 ハヤトが意を決して決闘(デュエル)を受諾し、クレアさんが決闘の日時を口にしようとした時、彼女の後ろに立つリディさんが待ったを掛ける。

 

「なんですの、リディ? これはわたくしの判断で決めた事です。あなたが口を挟むのは」

「クレア様。わたしもその決闘(デュエル)に加えていただけないでしょうか?」

「は?」

 

 驚きの声を上げるクレアさん。俺達も自分の顔に驚きの表情を浮かべているのが解る。何でそうなった?

 

「わたしは新入生の教育係です。そのわたしが奴らの実力を確かめるのも当然の事でしょう」

「それはそうですが・・・」

「同時にわたしは生徒会副会長でもあります。奴らだけでなく、新入生達にわたし達生徒会の実力を見せつけるいい機会でもあります。加えてわたしも加わる事で、クレア様にかかる負担も抑えられます。あなたが二人を同時に相手にする必要は無い筈です。それにわたしにだって武芸者(スレイヤー)としてのプライドというものがあります。あんな奴らに負けるつもりは毛頭ありません」

 

 ほくそ笑みながら言うリディさんの言葉に、顎に手を置いて考え込むクレアさん。暫しの沈黙の後、クレアさんは観念したように言葉を紡いでいく。

 

「・・・解りましたわ。わたくしとあなたで、彼らを完膚なきまでに叩き潰してあげましょう」

「はい!」

 

 揃って俺達を見据えてくる二人の女性。その眼にははっきりとした敵対する意思が宿っていて、その眼を見て俺達は揃って固唾を飲み込んだ。

 

「ク、クレア様! でしたら私もその決闘(デュエル)に」

「エリカ。あなたは審判役をお願い致しますわ」

「し、しかし!」

 

 自分も加わろうとするエリカさんの言葉をシャットアウトし、それでも尚食い下がらんとするエリカさんに向き直ってクレアさんは言葉を続ける。

 

「お願いしますわ。互いに二人ずつの戦いです。わたくし達が何処までも公平でいられるよう、あなた自身の目で見極めてほしいのです。頼めますわね?」

「ッ・・・・・・・・・・・・わかりました」

 

 葛藤があったのだろう。自分も彼女の傍で役に立ちたいという気持ちを押し込め、エリカさんは渋々承諾する。

 

「それでは改めて日時を決めましょう。決闘(デュエル)の舞台は闘技場(コロシアム)にて、明日行いますわ。開始時間は追ってあなた方のPDAに連絡をお送り致します。わたくしからはこれで以上です――明日の試合、楽しみにしておりますわ」

 

 クレアさんはそう言って壇上の袖に向かって歩き出していく。やがてその姿が見えなくなると講堂内のざわめきが次第に大きくなり、如月や俺達はただ静かに、クレアさんが通っていった袖に向いていた。

 

 

 

 

 

 その後、入学式の最中だったことを思い出し、直ぐに式を再開する。俺達はエリカさん達に促されるがまま席に着くと、些か緊張感とか色々な物が抜け落ちた気がして盛大に溜息を吐いたのはここだけの話。

 ついでに後で如月のヴァリアブルストーンを受け取りに行ったんだけど、そこはまぁ後にでも話すとしよう。

 

 

 

 

 

 ★★☆

 

 とまぁそんな事があり、今回開かれる決闘(デュエル)は如月と俺対クレアさんとリディさんでの対戦となった。

 対戦形式の方は既に今朝方PDAに送られていて、まずは俺とリディさんで戦い、その後で原作通りの展開、つまり如月とクレアさんとの決闘(デュエル)が行われる手筈になっている。俺達の場合はその前哨戦といった感じだ。見世物みたいでノれないな。

 

 暫く廊下を歩いていると、進む先の出入り口――バトルフィールドでは、盛大なる歓声が沸き上がっていた。

 

「この歓声は?」

「会場の観客席に集まった見物客からのものです。尤も、会場にいるのは生徒のみですが」

「生徒だけでこの歓声って・・・」

 

 それだけクレアさん達に人気があるってことだ。確かに廊下を歩いているだけでも歓声の熱気が伝わってきて熱い。熱中症になりそうだ。誰か俺に水分をおくれ。

 

「これより先が決闘(デュエル)の舞台となります。心の準備はよろしいですか?」

 

 俺はいつでも。勝つ見込みはないとは思ってるけど、負けるつもりだって毛頭ない。それは如月も同じようで、俺と同時にしっかりと頷いた。

 

「それでは参りましょう。・・・結果は既に見えていますが」

 

 そんな事を俺達にも聞こえる声量で呟く彼女の後に付いていき、俺達は外――バトルフィールドに入場した。

 会場の観客席にはこれでもかと言うほどの人数が集まっていて、クレアさん達の雄姿を拝む為、または俺達が無様に地にひれ伏す様を見る為に来場した生徒が殆どだ。他の新入生の姿もちらほら見えるが、疎らにしか見えない。あ、フリッツとサンテミリオンにシェルダンと劉もいた。

 

「逃げずに来た事、褒めて差し上げますわ」

 

 ワーワーと轟く歓声の中、そんな言葉が俺達の耳にしっかりと届いた。フィールドの中央にはクレアさんとリディさんが立っている。二人ともそれぞれにヴァリアブルスーツを着用していて、既に戦闘準備は万端と言った様子だった。お二人とも立派な御山をお抱えで大変眼福でございます。恐らく観客席の男子生徒の殆どもそれが目当てな筈だ、多分。

 

「始める前に、何か言う事はございませんこと?」

「貴様らは揃って初心者だ。如月は言わずもがなだが、四宮とてハンドレッドを展開できてまだ日が浅い筈だ。そんな貴様らが我々に勝てる道理はない。今ならまだクレア様に許しを請う余地はあるが、どうする?」

 

 揃いも揃ってまぁ強気だこと。普通なら許してもらうべきところなんだろうけど、そんな気は更々無い。戦って自分の意思を通す――結局のところ、今の俺に出来る事はただそれだけだ。

 

 

 昨日の入学式の後、シェルダンと劉が俺達を巻き込んだ事で謝罪に来た。その時に「今なら謝れば許してくれるかも」と二人から言われたが、俺は撤回するつもりはないという胆を伝えた。

 二人は最後まで心配してくれていたが、俺の意思に同調した如月からの後押しでとりあえずは引き下がってくれた。その上で俺達二人を応援するとも言っていた。俺達にとって、今はそれだけで十分だ。

 

 

「地面に倒れ伏す覚悟なら出来てますが、生憎と頭を垂れる余裕なんてありませんよ。俺は俺なりに全力を尽くす――ただそれだけです」

 

 勝てる見込みがないなら、相手が引くほど食らいついて見せる。それが勝利に直結しなくとも、この決闘(デュエル)に於いて俺にできる最大限の抵抗だ。

 

「俺だって男です。いくら実力差があるからと言って引き下がる訳にはいかない。例えどれほどの相手でも、俺は全力で戦う!」

 

 よく言った。それでこそ主人公だ。

 

「そうですか。覚悟のほどは承知致しましたわ――それではこれより、わたくしクレア・ハーヴェイとリディ・スタインバーグ対如月ハヤトと四宮アキラの決闘(デュエル)の開始を宣言します!!」

 

 その言葉が上がると共に、先程までの観客席からの歓声が更に高まり、より一層の厚い熱狂に包まれた。

 

「事前に告知していた通り、まずはリディと四宮アキラによる個人戦を行います。既に知っている方も多いとは思いますが、決闘(デュエル)のルールを再確認させていただきましょう。エリカ」

「はい、クレア様。ルールは通常のものを適用します。決闘(デュエル)の制限時間は十五分。気絶、降参の宣言、体力(ヴァイタル)、もしくはエナジーがゼロになった時点で勝敗は決定致します」

 

 エリカさんが説明すると観客席の上部に設置されている電光掲示板に目をやり、それを見ながら説明を続ける。

 

「制限時間や体力(ヴァイタル)、エナジーの残量については武芸者(スレイヤー)の手足についているヴァイタルリングより取得した数値が電光掲示板に表示されますので、観客席の皆様はいつでも視認できます。対戦相手のお二方、何かご質問はありますか?」

 

 その言葉に如月は「要は倒れるか武装が解除されるかって事だろ?」と言う。その通りなんだが、俺にとっては一つ疑問がある。

 

「一つ、いいですか?」

「なんでしょう?」

「もしもの話になりますが、俺とスタインバーグ副会長が同時に倒れる、もしくはエナジーが同時にゼロになったら結果はどうなります?」

 

 俺の疑問に観客席からどよめきが生じる。中には「まさか勝つつもりなんじゃ・・・」とか「在り得ないだろJK」とか言う声が疎らにだが聞こえる。前者は否定するが、おい誰だ今のネットスラング使ったやつ。

 そんな中でも、エリカさんはちょっとした動揺を見せつつも冷静に答えてくれる。

 

「その場合は引き分けになりますが、この決闘(デュエル)はノア・シェルダンと劉雪梅(リュウ・シュエメイ)の放校処分を賭けた戦いです。最終的な決定権はクレア様にありますが・・・リディ、どうします?」

 

 流石にそこまで確認を取っていなかったのか、エリカさんが臨戦態勢のリディさんに向かって訊ねる。

 

「わたしは副会長だ。このリトルガーデンにおいて最高権力者のクレア様の意向に従う」

「クレア様、如何致しましょう?」

「変わりありませんわ。昨日にも申し上げた通り、あなた方が勝てれば彼女達の処分は撤回、負ければ宣告通りに処分を執行致します。しかし引き分けになった場合、わたくし達の間で協議して本日中に決議を下します。あとはあなた方の努力次第という事になりますわ」

 

 なるほどね。結論は最終的にクレアさんが出す事になるが、俺達の敗北以外の結果になれば、俺達の戦いと意思次第によっては考えを改めなくもない、という事か。これには多くの観客が聞いている。昨日の騒動を聞き及んでこの場に集まった上級生も含めてな。これで言質は取った。

 

「了解しました。俺の方からは以上です」

「それでは両者は位置に付いてください。クレア様と如月ハヤト様は後ろの控えにまでお下がりください」

 

 確認を終えたエリカさんがそれぞれに促す。俺とリディさんは数歩後ろに下がって所定の位置へ。クレアさんと如月は後ろに常設されている控えにまで下がっていった。

 

 

「エミール!? お前、何でこんなところにいるんだよ!?」

「いいじゃん、僕だってハヤトの応援をしたいんだもん! あ、アキラも適当に頑張ってねー」

 

 

 後ろの控えにいつの間にかいたエミールが投げやりな応援をしてくる。お前後で校舎裏な。

 

 

 ★★★

 

 

 クレアとハヤト、二人がそれぞれの控えに下がり、残ったリディとアキラはそのままにらみ合いの状態で立っていた。

 

「四宮アキラ。貴様がヴァリアブルストーンを持って一ヵ月・・・その間に培った実力がどれほどのものか、わたしがこの場で見定めてやる! 全力で向かって来い!」

「やれやれ・・・熱くなりすぎると後で辛いですよ。もうちょっと肩の力を抜いたらどうですか?」

 

 リディさんの言葉に溜息混じりに答えたのがいけなかったのか、彼女の目元がピクリと揺れる。

 

「貴様・・・そのやる気のない返事は何だ? わたしを嘗めているのか?」

「いえ、そんなつもりはないですよ。俺はただ『もうちょっと気楽に戦いましょう』と言いたいだけです」

「それを嘗めていると言うんだが・・・まぁいい。どうせ我々はあくまでも"余興"だ。クレア様の雄姿を拝みたい生徒もいるだろうから、さっさと終わらせるとしよう」

 

 そう言って、彼女は右手に握られた鉱石――ヴァリアブルストーンを握り締める。対する俺も右手で玩んでいた自分専用のヴァリアブルストーンを握り直し、二人揃って胸の前まで掲げる。

 

『両選手、ハンドレッドを展開してください』

 

 実況席に移ったエリカさんの声がマイクを通してスピーカーから流れる。その言葉に従い、俺達は揃ってヴァリアブルストーンに命令を下す。

 

 

「「武装、展開(ハンドレッド、オン)!!!」」

 

 

 その言葉にヴァリアブルストーンは砕け散り、俺達の体に纏わり付くように周囲に飛び散る。

 リディさんの体に纏わり付いた微粒子状のエナジーが両腕を囲うように集束、左右一対の防具となり、左右の手には同じくエナジーで形成された大型のランスと上半身を丸ごと覆い尽くす巨大な盾が現れる。

 それが彼女のファランクス型のハンドレッド――通称《漆黒の天槍(ミドガルドシュランゲ)》。右手のランスで攻撃を、左手の盾で防御を行う攻防一体の武装だ。

 

 対する俺には両手足にエナジーが集まり、四肢を保護するプロテクターが装着されていく。

 以前展開した時のような歪な突起物は生えておらず、代わりに腕と足を覆うガードは面積が狭くなっている分、洗練されていて防御よりも手足の動作に支障をきたさない設計となっているように思える。

 俺の分はこれで一応展開の工程は終了だ。・・・他に武装はって? それについては直ぐに答えが出ます。

 

「それが貴様の武装か」

「そうですが。それが何か?」

「いや、以前見た時のとは形状が異なっているように思えてな。遠目で見えた限りではだが」

 

 あー、両手足のプロテクターね。それも当然だ。フランソワ王国で父さんと母さんが原子配列を整理してくれたのだから、こんな形にもなる。

 

「そういえばそうでしたね。でしたら・・・"これ"も初めてですね」

 

 以前の不完全な展開状態を遠目から確認していたと零すリディさんに答えつつ、俺は自分でも解るくらいに不敵な笑みを浮かべながら両手を肩と同じ高さに掲げる。俺は意識を集中して、左右に開いた手にエナジーを"集束"させる。

 

「なっ・・・エナジーが、集束していく・・・!?」

 

 驚きの声を上げるリディさん。彼女だけじゃなく、周りの観客席からも驚きと困惑のざわめきが上がり続ける。フリッツ達は当然として、控えにいる如月やエミールも同様の反応を示しているだろう。

 俺の両手を中心に集まり始めたエナジーがそれぞれの手の中で形を成していき、同じ形をした二振りの剣を形成していく。それらは所謂双剣と呼ばれる武器で、右手の剣は刃が白く、反対の刃は黒い。非対称的な二振りの剣は異様な雰囲気を伴いながらも、それぞれの刃の内側から漏れ出すエナジーが陽炎の様に揺れ動き、見る者に幻想的な印象を与える。

 俺はそれらが手の中で完全に形成させると、左右の人差し指の当たる箇所を中心に、まるでトリガーに指を掛けた拳銃を回すような動作でそれぞれの手の中で遊ばせると刃を下に向かせる形で保持する。俺なりに編み出した防御の姿勢で顔の前まで持ってくる。

 

「二振りの剣・・・なるほど。貴様のハンドレッドはシュバリエ型という事か。だがそれではわたしの攻撃は受け止めきれないぞ」

「止められなければ受け流すまでです」

 

 "都合の良い事に"俺のハンドレッドが剣を主武装としたシュバリエ型だと思ってくれたリディさんに返しつつ、互いに構えて臨戦態勢を整える。リディさんは盾を前方に向けながら右手のランスを前に突き出し、俺はその場から動かず刃を下に向けた双剣を顔の前に構えたままだ。

 

 頭上に設置された掲示板に『10』の数字が表示され、それが1つずつ下がってカウントダウンを開始する。

 カウントが減る度、俺達は揃って武装を構えたままジリジリと地面を擦って距離を縮めていく。

 

決闘(デュエル)――開始!』

 

 やがてカウントが『0』を表示すると、実況席のエリカさんが開始の合図を送り――刹那、リディさんはファランクス型らしく、真正面から突撃を敢行。

 すぐ目の前に迫るリディさんのランスを、俺は左側にズレて軌道から逸れる。この時、右手の白剣をランスに叩き付け、上に救い上げるように打ち上げる。

 

「ふっ!!」

 

 反対の黒剣で切りつけるが、リディさんの盾で防がれる。が、俺はすぐに黒剣を下げ、代わりに白剣で切り付ける。再び盾でいなされるが、俺は白と黒の双剣で交互に切り付けていく。攻撃の手を緩めず、盾の表面に鋭い傷を生み出していく。

 しかし、リディさんは打ち上げられたランスを横薙ぎに振るい反撃。間一髪、双剣で横薙ぎを防ぐがその衝撃で俺は後方に後退させられる。あっぶね! 今の当たってたら相当体力(ヴァイタル)が持ってかれていた。

 

「チッ・・・防がれたか」

 

 舌打ちしつつ、再びランスを前に突き出して突撃してくるリディさん。目前にまで迫った彼女の鋭い一刺しが俺を貫かんと突き出される。直撃コース――だが、俺はそれを躱さず、代わりに体を捻って直撃コースから無理矢理逸れた。

 

「なっ!」

 

 驚きの声を上げるリディさんに構わず、俺は体を捻った拍子に足を振り上げ、回し蹴りの要領で目の前に迫る彼女の盾を正面から蹴り飛ばす!

 

「ッ・・!?」

 

 リディさんは蹴り飛ばされた衝撃を正面から受けるも、そこはやはり熟練者。腕に力を込めて盾の位置を無理矢理固定していた。蹴られた盾は一瞬ブレただけで姿勢はそのままに、右手のランスを引き戻して再び突かんと俺に矛先を向け直す。が、俺はそれを読んでランスの矛先の側面に右手の白剣を叩き付けてまた軌道をずらす。その拍子で体を回転させながら左手の黒剣でリディさん目掛けて右から斬りかかる。

 これに反応して盾で防いだリディさんだったが、今度は体を回転させて生まれた遠心力を利用した回し蹴りならぬ回し斬りによってリディさんを後方に吹き飛ばす。

 

「ぐぅっ!」

 

 後退させられたリディさんの苦悶の声に構わず、俺は両手の剣を正しい持ち方で構え直し、突撃。ランスと盾の両方に双剣で攻撃を与える。

 突き、薙ぎ、斬り上げからの斬り下ろし、回し斬り。次の手を読まれないようランダムに連撃を仕掛け、攻撃の手を緩めずにリディさんの動きを封じていく。

 

 俺は双剣特有の『手数の多さ』と『速度』で攻め、大振りで『刺し貫く』事と『威力』に優れたランスの唯一の長所を潰す――昨日の内に考えた、シンプルな手段で攻めていくつもりだ。

 前世の知識もあって、至って単純な作戦になったが、ハンドレッドでの戦闘に未だ日の浅い俺にとっては唯一有効性の高い策だ。フランソワ王国で俺の教官を務めてくれた、リディさんと同じくファランクス型の『彼女』との訓練の経験を活かして、"勝ち"は取れずとも"引き分け"で終わらせる。それがこの戦いに於いて、現状の俺が唯一取れる成功率の高い作戦だった。

 

 しかし。やはり現実は先読みが不可能なものだ。俺がこのまま攻め続けるのを相手が許す筈も無く、状況は一気に変わっていく。

 

「くっ・・・舐めるなぁ!!」

 

 それを物語る様に、リディさんの雄叫びが猛る――突然彼女の動きが変わった。切り結ばれていた両手の武装を、彼女は前面に『突き出した』。

 

「っ!?」

 

 俺が驚く刹那。彼女の武装が、俺の武装と正面から衝突する――しかし、『ただ』ぶつかった訳ではなかった。

 突きを放った筈の左手の黒剣がランスの側面に刺したまま『繋がり』、右手の白剣が盾の縁の部分を切り裂くように抉っているものの、わずかに盾の角度を変える事で刃を引っ掻けるように『繋ぎ止めていた』。

 

「そこっ!!!」

 

 突然の出来事に一瞬だけ次の手に迷いが生じた俺を見逃さず、真正面からリディさんは蹴りを放ってくる。咄嗟にEバリアを張ってダメージを最小限に抑えつつ、俺は両手の武装を手放しながら後ろに後退させられた。

 

「痛っ・・!」

「なるほどな。どうやらそれなりの即応能力はあるらしい。わたしの蹴りを咄嗟にEバリアで防ぐとは・・・貴様を鍛えた武芸者(スレイヤー)は相当な手練れのようだ」

 

 そりゃ教官は子供の頃からハンドレッドを展開出来ていたと言うしな。彼女の祖国じゃ実家は貴族に仕える騎士の家系だし、それも当然だ。

 

「しかし、今ので貴様の手から武装は離れた。これが何を意味しているのか、貴様自身、十二分に解っているのだろう?」

 

 ランスと盾に繋がった俺の双剣を地面に落とし、それを踏みつけて双剣を砕くリディさん。これで俺の攻撃手段を奪ったリディさんがランスの矛先を俺に向けて構え直す。

 

「貴様の手に武装は無く、反撃の手段もない。これ以上続ける理由はないが、どうする? まだ続けるか?」

「逆に訊ねますが、降参する理由がありますか? 事前にルールを確認した筈ですよ。『どちらかの武装が解除されるか、倒されるか』だと。今の俺はまだその『どちらにも当てはまっていない』んですよ」

 

 リディさんの表情に疑惑の感情が浮かび上がる。観客席からも「どういう・・・ことだ・・・」等の困惑の声が上がり始める。おいちょっと今のセリフを言ったやつ、それ絶対元ネタ分かって言ってるよね?

 そんな事はともかくとして。文字通り、俺の武装が解除されていないのが何よりの証拠だ。武装は破壊されたが、俺にはまだ手段が残っている――否、『俺のハンドレッド』に限っては、元から手段など『幾らでもある』のだから。

 

「・・・確かにその通りだな。だがそれでも、次の一撃で貴様の終わりに変わりはない!!」

 

 肯定しつつ、エナジーによるブースト、加速(アクセラレート)で俺との距離を一気に詰めてくる――"今だ"!

 俺は瞬時に両手の中でエナジーを集束――それが先ほど形成した双剣と同じものを"模造"すると、距離を詰めるリディさんのランスをクロス字に薙ぎ払う!

 

「何っ!?」

 

 突然の出来事に驚きを露わにするリディさんに、俺は両手の双剣にエナジーを付与し、上段からの振り下ろしでエナジーの刃を生み出す――双剣から解き放たれた二本の刃がリディさんに迫り、回避が間に合わないと悟った彼女は咄嗟に盾を前方に構えつつEバリアを展開。

 二本のエナジー刃がEバリアに衝突した事で爆発が二回起こり、爆炎が彼女の全身を覆い尽くす。一瞬の出来事で周囲の雰囲気が暫しの沈黙で支配されたが、それも爆炎の中からリディさんが姿を現した事ですぐに掻き消えた。

 

「くっ・・・馬鹿な、貴様の武装は確かに・・・!」

「そう思うのも無理はないでしょうね。何せ、俺は最初(はじめ)から『武装を展開していたわけじゃない』んですから」

「なんだとっ!?」

 

 俺の言葉で再び驚きの声を上げる。観客の口からもそんな声が上がり、周囲がどよめきに包まれる。

 

「俺のハンドレッドは特殊でしてね。幾重にも積み重なった様々なヴァリアブルストーンの原子配列を整理した結果、このハンドレッドは特定の武具を"模造"して始めて武装を展開出来る代物なんですよ」

「馬鹿な・・・では、貴様のハンドレッドの型は・・・!」

 

 お察しの通り。俺のハンドレッドの型は、『シュバリエ型』ではない。

 

「俺のハンドレッドは、『一度見た武器をエナジーで模造する』――オリジナルの武器よりも幾分かは性能が落ちますが、どのような剣であれ、エナジーの許す限りは幾らでも複製できる――即ち」

 

 俺の周囲に陽炎の様に揺れ動く微粒子状のエナジーが、両手の双剣の他にも、長柄の先に禍々しい朱色の矛が付いた長槍、銀色に煌く鍔の無い七尺余りの長刀、岩のようなゴツゴツとした武骨な大剣、そして金色に輝く刃を有した"聖剣"と呼ぶに相応しき神々しさを放つ長剣としてそれぞれ形を成していく。

 

イミテーション(模造)型ハンドレッド、名称『衛躬矢(エミヤ)』――これが俺のハンドレッドの本領です」

 

 エナジーを消費して模造した武装が俺の周りに次々と地面に突き刺さる。

 

「さて。それでは副会長殿――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決闘(デュエル)の続きといきましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとオリ主のハンドレッドが出せました。

最後に現れる無数の武装や名称から察している方は多いと思いますが、元ネタはあの赤い弓兵です。ぶっちゃけアニメの中で好きなキャラはダントツであの人でしたので。

他の二次創作でも似たような能力を持ったオリ主はいますが、当作品のオリ主は特別な能力は持たない仕様でございます。代わりに前世と原作知識がある程度と身体能力が高い位です。これから原作知識を駆使して原作介入が始まる所存でございます。こんなのでも気に入ってくださる方がいれば、何卒生暖かい目で見守っていてください。(<●><●>)オイデマセイ!
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