「チッ…まあ見つかっちまったからには仕方がねえ。こっちは俺しか戦えない上に、イルカは暗部付き…。でもなあ、こうするとどうかな?」
そう言うとミズキは寝ていたナルトの首にクナイを近付けた。
「………」
暗部は何も言わず、しかし警戒態勢を崩さない。
「クソっ…ミズキ!お前は一体何故こんなことを…!?」
「平和ボケしたこの里は俺の実力をちっとも認めてくれやしねえ!アカデミーの教育改革のために扱き使われるばっかりだ!だからな…俺は里を抜け、もっと刺激的な環境に身を置こうと決めたんだよ!」
確かにヒルゼンは教育改革を始めてからアカデミー講師への要求を高めた。一方でそれは彼等に初心に帰って身も心も洗練させる機会をもたらし、中にはその成果が認められて上忍となる者もいた。つまりミズキの言い分は御門違いも良いとこなのだ。
「それはお前の勝手じゃないか!何故ナルトを攫う必要があるんだ!」
「イルカ、お前は特に平和ボケしたな…外の世界を何もわかっちゃいねえ。闇の深い集団に入るにはな、それ相応の覚悟を見せつけなければならない。スパイなど掃いて捨てるほど寄ってくるからな」
「それでナルトを!…ミズキ、お前も墜ちたな」
「アカデミーで飼い殺しにされる木の葉の犬に成り下がるよりはマシだよ、イルカ。さて、お喋りはこれ位にして.どうする?この状況ではお前は何も手を出せないもんなあ!」
「クソっ、ナルトさえ何とか出来れば…」
「それが出来ないから立ち尽くしてるんだろ?ほらほら、こんな感じで首を少しクナイで…ぐっ!!!」
ミズキはナルトへ更にクナイを近づけようとすると、突然後ろから何者かに吹っ飛ばされた。
「誰だ!?お、お前は…瞬身のシスイ!」
「シスイ!?何故君が此処に…もしかして暗部の正体って…」
ミズキを吹っ飛ばしたのは、うちは一族が誇る木の葉随一の瞬速忍者、うちはシスイだった。
「バレちゃったら仕方ないっすね…イルカさんが上手くミズキさんを引きつけてくれたので何とかなりました。おい、ナルトー、起きろよー」
「…ん、ここは…あれ!?シスイの兄ちゃん?どうしてだってばよ、確か俺は教室で掃除を…」
「ナルト!大丈夫か!?」
「あれ?イルカ先生!ミズキ先生もいるってばよ…ミズキ先生ってさっき教室で会った気が…あれ、よく思い出せねえ」
「ナルト、お前はミズキに眠らされて攫われたんだよ!怪我はないか?」
「え!?どうしてミズキ先生がそんなこと…俺の身体は大丈夫だってばよ」
「それなら何よりだ…とりあえずミズキとその仲間を捕らえる。シスイ、頼む」
「おい、やめてくれよ!イルカだけならまだしも流石に上忍相手には…」
ミズキは慌てだしたが、it's too late.
シスイの幻術によって3人は直ぐに倒れた。
「瞬身のシスイの幻術が生で見れるとは…」
「大したことないですよ、イルカさん」
「ちょっと待った!いや、シスイの兄ちゃんは確かに凄かったけど、俺ってば何が何だか…」
「簡単に言うとミズキが里に対して反逆してたってことだ!それもそうだがナルト、お前に渡す物がある。ちょっと目を瞑れ」
「え、うん、わかったってばよ…」
イルカは自分の額当てを取り、ナルトに着けた。
「…よし、これでいいか。目を開けていいぞ」
「…額当てだってばよ!俺ってば木の葉の額当て着けてる!」
「お前はイタズラばかりする生徒だったが…真摯に努力に励んで己を磨いてきた優秀な俺の生徒だ。少し寂しくなるが、忍者になっても俺はお前の味方だ」
その言葉は、アカデミーである程度友達に恵まれながらも大人の冷たい視線を受け続けて色々辛い経験をしてきたナルトにとって非常に心強いものだった。三代目やサスケの両親以外にも自分を認めてくれる大人がいることに気付き、ナルトは自然と涙を流していた。
「イルカ先生…俺ってば…」
「一端の忍者がすぐ泣くんじゃない。まあ…今日はお祝いだ。特別に一楽のラーメン奢ってやる」
「…イルカ先生!!」
「うぉ、おいナルト!鼻水が服に付く!」
イルカの温かい言葉にナルトは思わず抱きつき、イルカも驚いていたが、とても嬉しそうだった。
「さて…俺はお邪魔かな。とっととこの三人連れて火影様のところへ行くかね」
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「…報告は以上になります」
「そうか、ミズキの取り巻きの尻尾が掴めたと思えば芋づる式で犯罪集団が出てきて全て捕まったということじゃな…しかしシスイ、無事に収まってよかったのう。里の為にも、お主のためにも、な」
まだ忍でない一少年の術で上忍が気絶して任務失敗、人柱力も奪われる。ってなったらやばかったな。こいつよくこれまで何とかやってこれたよな。無茶苦茶優秀だけれども。
「…返す言葉がありません」
「ハッハッハッ、最後のは冗談じゃよ。御苦労であった。下がってよいぞ」
「…はい」
ミズキによるナルト誘拐は何とかイルカとシスイによって事なきを得た。取り巻きの集団も大した集団ではなかった。…まあ暁や大蛇丸ならこんなヘマをするはずがないもんな。あ、大蛇丸も暁にいるんだったな。
さて、こうしてアカデミー卒業生の内忍者を志願した下忍候補27人が揃った。間も無く上忍達に改めて担当の割振りを伝える会議が始まる。
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「…以上が第6班じゃ。呉々も宜しく頼む」
「御意」
「そして第7班。担当上忍はたけカカシ。班員はうずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ」
俺がそう告げるとカカシは少しダルそうな表情で返答した。
「…はい。しかし火影様、この班だけ少しバランスが偏ってませんか?首席卒業のうちはサスケに、実技1位タイのうずまきナルト、座学、チャクラコントロール1位の春野サクラって流石に強過ぎじゃあ…」
「うむ。カカシの言う通り、第7班は残り8班と比べて戦力が頭一つ抜けている。じゃがの、寧ろそれが一番良いのだ。下忍のスリーマンセルは仲間との連携の基礎から覚え込ませなければならない。その場合に3人の中の格差があまりに大きいとその基礎を疎かにしてしまう下忍が出てきてしまうからの。異論があれば遠慮なく申してみよ」
これは自分でも正論だと思う。勿論原作通りの流れを崩し過ぎないことは俺にとって非常に重要だが、自分自身暗部で仕事をしてきた中で仲間と連携する能力の重要性は何度も痛感してきた。
やっぱり、どの上忍も何も言ってこなかった。
「…異論はないようだな。カカシも大丈夫だな?まあこの場合はお主が一番大変になる感じになりそうじゃの…頑張ってくれ」
「はぁ…仕方ありませんね。第7班担当、引き受けました」
「そして第8班。担当上忍夕日紅。班員は犬塚キバ、日向ヒナタ、油女シノ」
「はい」
紅…そういえば俺の息子と付き合ってるんだっけ。ぶっちゃけ2人とも殆ど私的な絡みはないんだよな。父親になったことないからわかんないけど息子が大人になるとこんなもんなの?
「紅、お主はまだ上忍になったばかりで難しいこともあるだろうが儂はお主ならできると思っておる。宜しく頼むぞ」
「御意」
「最後に第10班。担当上忍猿飛アスマ。班員は奈良シカマル、山中いの、秋道チョウジ」
この里では九尾を想起させる「9」という文字は忌避される傾向にあるので第9班や9号室などといったものは基本的には見られない。よって1〜8,10班という構成になる。
「…はい」
何か全然目合わせて来ねえ…もしかして俺違和感ある?流石に息子にはバレちゃうのかな…。まあまだ何も言ってきてないし、放置で。
「こちらも第7班と同じく例外的な処置だ。奈良家、山中家、秋道家の伝統的な三位一体戦術を尊重したという訳じゃ。アスマ、宜しく頼む」
「…御意」
「以上で担当上忍の任命を終わる。次に下忍昇格の判断基準について今一度確認をしておく」
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ふう…色々大変だったけど何とか原作第1話は完了した。さてさて帰宅すっかね。
「ただいま、ナルト」
「じいちゃんおかえりだってばよ」
「ナルト、こんな時間まで起きてたのか。先程は大変じゃったのう。無事で良かったぞ」
「心配かけたってばよ。でも俺ってば大丈夫だ」
「さて、儂からまだナルトに卒業祝いをあげてなかったのう?」
「え?じいちゃんなんかくれるのか!?」
「勿論じゃ。とっておきのものを授ける。二代目火影様が開発された術じゃ」
「え!?二代目火影の術…じいちゃんそんな凄い術俺に教えてくれんのか!?」
「そうじゃ。ただな、これは本来上忍クラスの術じゃ。そこらの下忍が使えば忽ちチャクラが無くなり、最悪の場合…死ぬ」
「!俺ってば…」
「大丈夫じゃ。お前は母クシナから受け継いだ豊富なチャクラと九喇嘛の膨大なチャクラがあるからの」
カカシも原作で言ってたけどマジでこいつのチャクラ量やべえ。九喇嘛なしで俺の3倍くらいかな?
「そっか!で、それで一体どんな術なんだってばよ?」
「では実際にやってみるとするかの。印はこれだけじゃ。影分身の術」
俺は術を発動し、影分身を1体出した。
「じいちゃんが2人…ってこれってばただの分身の術じゃねーか!」
「馬鹿、よく見ろナルト。残像では無いぞ?」
「え?…わ!マジだってば!本物だってばよ…」
「己の実体を作り出す術、それが影分身の術じゃ。実際の使い方も色々あるが、一遍に言っても混乱するだけじゃ。まずはとにかくやってみるのじゃの」
「わかったってばよ!」
こうしてナルトは夜遅くまで修行を続けた。俺はもう眠くて寝てしまったが。
朝起きたら家にナルトが50人くらいいて夢だと勘違いして二度寝して遅刻してホムラに怒られたのはまた別の話…
原作1話、終わりました。