原作再構成(笑)(フェイトTS、実質オリ主)   作:ねぎま全盛期の大トロ

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 フェイト・テスタロッサの覚醒から十数時間、日付が変わり陽が昇り始めた時分にプレシア・テスタロッサは目を覚ました。

かなりの長期にわたって夜型の生活を送っていたプレシアにとって、およそありえない起床時間ではあったが、彼女の目覚めは奇妙なほどすっきりとしていた。

そして、数日振りにその役目を果たした豪奢な寝台の上で2度の微睡を楽しむ事もせず、身だしなみの手入れもそこそこに、慌しげにプレシアはキッチンへと向かった。

フェイトと自分の朝食を用意するために。

 

 昨晩の夜は栄養ブロックを一人でもそもそ齧るだけで済ませてしまったプレシアであったが、これからはもうそんな生活は許されない。

プレシアの考えるところでは、フェイトの食習慣もまた彼女が施す教育に含まれる事柄であるからだ。

朝食の材料も、、何年も空っぽだった食料庫は、昨日のうちに古今東西の新鮮な食材で満たされていた。

研究に費やされる諸々を考えると極端な浪費が許される家計でもなかったが、それくらいの贅沢をする余裕はあった。

伊達に大魔導師などと呼ばれてはいないのである。

 

 寝室からダイニングへ続く、けして短くはない廊下を足早に通り抜け、数年ぶりにキッチンへと立ったプレシア。

まずは時間という忘却の魔法、大魔導師の頭脳をもってしてもなかなかに手強いそれと格闘しながら、複数ある収納から調理器具を引っ張り出す。

最初に思っていたほどの労力は費やさず済み、少し気をよくするプレシア。

内心できちんと整理整頓を行っていた数年前の自分を褒めようとして、時の庭園に移住してからは一度も調理など行っていなかった事に思い至る。

どうやら手柄は自分のものではなく引っ越し業者のものだったらしい。

 

 如何に過去の自分が荒廃した生活を送っていたかを再々々々...々度自覚したプレシアだったが、今それで落ち込んでいては朝食が出来ぬうちからフェイトが目を覚ましてしまう。

空腹の子供をダイニングテーブルで待ちぼうけさせる趣味は、プレシアには無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 調理器具を発見するまでは上手くことを運んでいたプレシアだったが、いざ調理を始めると数年のブランクが高い壁として彼女の前に立ち塞がった。

中でもプレシアにとって痛恨だったのは、昨晩のうちにパン生地を用意していなかった事だ。

これによってフェイトに焼きたてのパンを食べさせるというプレシアの目論見は脆くも崩れ去った。

他にもトマトをざく切りにしようとして指を切ったりなどしたが、主食をシリアルで妥協してしまった事に比べれば、プレシアにとってはそれらは些事と言えた。

 

 とにもかくにも、満足とは言えないものの、それなりに見栄えのする朝食が完成したところで、プレシアはダイニングの時計へと目をやった。

そしてプレシアはしばし硬直した。時計の針は既に朝食と称すにはいささか遅い時間を示していたからだ。

慌ててテーブルの上の料理に保存魔法をかけ、フェイトの部屋へと駆け出すプレシア。

そのまま進めばあと数秒でフェイトの部屋へと着くところであったが、廊下を半分ほど走破したところでプレシアは早足へと切り替えた。

もうフェイトが独力で目を覚ましている可能性が、低いものではなかったからだ。

自分がもたもたと調理をしていたせいでこんな時間に起こしに行く破目になったなんて、フェイトは知る必要がないことなのである。

 

 自室に隣接するフェイトの部屋の前へと着いたプレシアはそっと息を吐いて心を落ち着かせようとした。

昨日この部屋にフェイトを運び込んだ際には、『この部屋は本来アリシアのものになるはずだった』などと愚にも付かぬ感傷を抱いたりしたが、今は、そんなものは邪魔なだけだった。

自分がどこへ向かおうとしているのかすら、最早プレシアには判然としなかったが、それでも今ここで一歩前へと踏み出さねばならない事は理解していた。

プレシア・テスタロッサがフェイト・テスタロッサの部屋の前で佇んでいた時間は数秒にも満たなかった。

 

 ノックの音が廊下の静寂(しじま)を破る。

1度目のノックからしばらく待った後、プレシアはまだフェイトが眠っていると理解し、もう一度部屋の扉をノックをした。

そして、そっと目を閉じて部屋の様子を窺うプレシア。

しかしフェイトの部屋は寂として何の反応も示さなかった。

 

 もう一度、もう一度、もう一度、もう一度、、、、

ノックを繰り返すたび、プレシアの中で『フェイトに何と声をかければよいのか』という緊張と不安から来ていた動悸が、『昨日酷い言葉をかけてしまったせいでフェイトも居なくなってしまったのではないか』という恐怖から来る動悸へと変わっていった。

17回目のノックの後、恐怖に耐えかねたプレシアは強行に扉を開け、フェイトの部屋へ足を踏み入れた。

そして、すぐに寝台の上で静かに寝息を立てるフェイトを視認し、安堵の息をこぼした。

 

 それからフェイトを揺り起こそうと近づいていくプレシア。

よくよく見るとフェイトの寝姿は、アリシアのそれと瓜二つだった。

この場合のそれは容姿だけではなく寝相まで含めた話で、それを見たプレシアは思わず泣き笑いのような表情を浮かべてしまった。

ちなみにフェイトの寝相はなかなかにひどいもので、掛け布団も毛布も寝台の下へ蹴落とされ、フェイト本人は枕を抱き締めながらヨダレ塗れにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 プレシアの20回近いノック攻撃をことごとく防御してみせた割に、フェイトの寝起きは意外に良かった。

プレシアがフェイトの腕から枕を抜き取った際には「リニスぅ……」と呟いてプレシアを大いに動揺させたが、逆に言えばそれくらいしか語るべきことは起こらなかった。

その後プレシアがそっと肩を揺すり、優しく声をかけただけであっさりとフェイトは目を覚ましたのである。

 

 そして今2人はダイニングへ向かって廊下を歩いていた。

プレシアが沈黙を守ったままフェイトを先導し、フェイトはおずおずとそれに従う。

相も変わらず2人の間に会話は無かった。

流石にフェイトに早足や駆け足を強いるような無体をしてはいないが、それでもやはりフェイトは寂しげな表情を浮かべていた。

 

 道半ばまで来たところで、プレシアは微かに右手を引かれるような感覚を受け、視線を落とす。

するとそこには自身の服の裾をつかむフェイトの姿があった。

プレシアがそれを確認するのとほとんど時を同じくして、フェイトとプレシアの視線が合う。

その瞬間、弾かれるように裾から手を離し、おろおろと視線を彷徨わせた後に俯いてしまうフェイト。

それら一連の出来事を余すところなく目撃したプレシアであったが、やはり、フェイトには何の言葉もかけることはできなかった。

しかし、言葉もかけることはできなかったが、力なく垂れ下がったフェイトの左手と自身の右手を繋ぐ事は出来た。

 

 「あ……!」と、フェイトの極短い、それでいて喜色に満ち溢れた声が廊下にこだました。

それを受けてほんの僅かにプレシアの歩調が上がり、必然的にフェイトは早足をすることになる。

だが、果たしてそれは無体と言えるだろうか?

フェイトの跳ねるような足音に、プレシアは耳を澄ませていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フェイトが3回もシリアルをおかわりしたことを除けば、大した波乱も無く朝食の時間は終わった。

出来合いのものをパクパク食べるフェイトに、パンを焼けなかった事へ内心忸怩たる思いを抱えていたプレシアは微妙な顔をしていたが。

フェイトから言わせれば大好物であるラッフルのミルクが卓上に配されていた時点でおかわりをしないと言う選択肢はなかった。

ともあれ、朝食を摂り終えたプレシアとフェイトの2人は、そのままダイニングに隣接するリビングへと移動した。

 

 そうして、昨日のプレシアの宣言通りに、魔法の座学が始まる。

朝食を摂ったばかりのフェイトにとってはなんとも忙しない話であるが、真実忙しいのは昨日のうちに教材を用意した、、しかもこの授業が終わった後にはすぐ昼食の準備へと取り掛からねばならないプレシアの方であった。

もっとも大魔導師たるプレシアにとっては授業などさしたる労苦ではなかったし、家事もブランク明けの勘さえ戻れば同様。

むしろ子育てをしながらフェイトのためにワンオフの高性能デバイスを用意するくらいの余裕があった。

プレシアはフェイトにそんなものを与える心算はなかったが。

 

「――――と大別して2種類のデバイスが現存しており、管理局などで用いられているわ。

 もっとも、私があなたにそういったデバイスを与える予定は今後もないのだけれども。

 デバイスの演算能力に頼る魔導師は1流の魔導師にはなれないから……。

 フェイト、それが何故だかわかるかしら?」

 

ワンオフの高性能デバイスを使用する、それを許された管理局のストライカー(エリート魔導師)達が聞いたら猛烈に抗議するであろう暴論を平然と言い放つプレシア。

まあ、もし実際に抗議してきたとしても、管理局員でもないのに条件付SS(後年、総合SSと改称)などというキチガイじみた高ランク保持者でもあるプレシアは鼻で笑って済ませるだろう。

 

「う?

 えと、あの、、わからな……わかりません」

 

唐突な無茶振りをされて、挙動不審になりながら解答できないことを謝罪するフェイト。

プレシアも初めからそれをわかっていたのか、一つ頷くだけで言葉を続ける。

 

「そもそも、魔法資質とは何なのかしら?

 レアスキル、防御魔法への適正、召喚魔法への適正、射撃魔法への適正、変換資質、、細かく挙げていけば際限(きり)が無いわ。

 でも、それらは全て枝葉末節。

 魔法資質の根幹は、魔力量・放出量・演算能力……この3つなのよ。

 『高い魔法資質』という言葉は、往々にしてこれらに優れる者を指した言葉です。

 さて、もう一度あなたに聞きましょう、フェイト。

 デバイスの演算能力に頼る魔導師が1流の魔導師になれない理由、自分なりに考えを述べてみなさい」

 

改めて問われたフェイトは、プレシアの言葉を反芻しながら必死に考えをまとめていく。

プレシアは"自分なりに考えを述べてみなさい"と、不正解でも構わないことを婉曲的に伝えていたが、フェイトには全く通じていなかった。

それに、フェイトはプレシアの期待に応えたかった。

フェイトは、プレシアの目から微かににじむ期待の色を正しく読み取っていた。

 

「デバイスが、耐えられないから……ですか?」

 

沈思黙考していたフェイトが絞り出すようにして呟いた答えは、プレシアを満足させるものだった。

満面の笑みを浮かべたプレシアは、フェイトの頭を撫でながら補足を行う。

 

「そうよ。それも正解の一つ。

 高ランク魔導師の強い魔力をまともに受け止めたデバイスは、あっけないほど簡単に砕けてしまう……。

 一般に、使用者の魔法資質が高ければ高いほどデバイスは枷としての負の側面を増大させるのよ。

 ちなみに、そういった弱点を克服するために、管理局ではデバイスの安全装置(リミッター)を一時的に解除するフルドライブなどという技術まで採用されているらしいわ……愚かな事ね」

 

100人の管理局員が聞いたら100人とも「簡単にデバイスを砕く魔導師(バケモノ)なんてオーバーSランクにすら数えるほどしか居ねーよ!」と叫ぶのだろうが、プレシア自身が過去にいくつものデバイスをぶっ壊し続けてきたSSランクの大魔導師なのだからどうしようもない。

魔導師として見えているものが違う。立っている領域が違う。ただ単にそれだけの話だった。

それから更にプレシアは『大魔導師から見たデバイス』の話を続ける。

 

「付け加えると、魔法の発動にデバイスの演算能力を活用する場合、当然ながらデバイスへ魔力を供給する必要があるのよ。

 しかも現在のデバイスにおいては循環や圧縮といった複雑な魔力運用が当たり前のように要求され、そして実際に行われている。

 それらは魔力の効率が云々ともっともらしい理屈で正当化されているけれど、結局のところデバイスに魔力を供給するから起こる問題に過ぎないわ。

 そもそも、①リンカーコアを活性②魔法発動というデバイスを用いない手法と、①リンカーコアを活性②魔力供給③魔法発動という手法……。

 どちらがより速く、より効率的か、子供でもわかる構図ね」

 

10,000人のミッドチルダ人が聞いたら10,000人とも「いや、その理屈はおかしい」と突っ込みを入れるのだろうが、残念ながら時の庭園にはプレシアとフェイト以外の住民は存在しなかった。Wボケ、いわゆるツッコミ不在。

こうしてフェイトは大魔導師として着実に成長していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前中の座学の時間、見事プレシアの期待に応えて褒められたフェイトだったが、それは昼食後の魔法実習の時間も同じだった。

プレシアの教えを受けたフェイトはすぐにリンカーコアの存在を自覚し、その活動レベルをコントロールして見せる。

加えて、フェイトにもプレシアと同じ電撃の魔力変換資質があると判明し、フェイトとプレシアは2人して顔を綻ばせた。

 

 結局のところ、一般には楽しくないとされる勉強の時間もフェイトにとってはプレシアと一緒に居られる楽しい時間だった。

しかも、かつては自身の魔法資質の低さ故に望み得ない時間であったのだから、喜びも一入(ひとしお)である。

まさしく『好きこそ物の上手なれ』という言葉の通りであった。

 

 ところで、『親の心 子知らず』という言葉がある。その一方で、『子の心 親知らず』という言葉は無い。

実際、親というものは子のことを意外なほどに良く見ているものである。そしてまた、想像以上にその心も見通している。

その上で子に対して苦言を呈してしまうのが親心だったりするのだが……。

だが、しかし、プレシアは上述したようなフェイトの心情を全く看取することができていなかった。

そんなプレシアからすると、今日のフェイトはとても良く頑張っていた。率直に言って期待以上だった。

20年後の大魔導師フェイトの姿を想像してテンションが上がった。

だから夕食の後、軽々しくもフェイトへ告げてしまったのだ。

「フェイト、今日のお勉強は良く出来ていたわ。だから、約束通りご褒美をあげる。何か欲しい物や、して欲しいことはある?」と……。

そして「マ、、一緒に寝たい……です」とフェイトに即答されたプレシアは石のように固まった。

 

 その後、如何にしてプレシアがフェイトの目を盗んで寝室の片づけを行ったのかは定かではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたら怖い顔をした母がいて、一方的に罵倒され、わけもわからず泣き疲れて眠ってしまった1日目が故に。

フェイト・テスタロッサにとって2日目は喜びよりも戸惑いの感情がより大きなウェイトを占めていた。

だが、その戸惑いも1日が終わりかけている今となっては、フェイトの聡明さによって徐々に別のものへと昇華されつつあった。

 

(ママは、、わたしとお話したり、わたしを見てくれることが少なくなったのはさびしいけど……それでも昔の優しいママのままだったよ)

 

 変わってしまっていたことは、数え切れないほどにあった。

それでも、変わらないものもまた、数え切れないほどにあった。

例えば、プレシアはフェイトに対してあまり積極的に声をかけることはしない。

それでもプレシアがふとした拍子に見せる微笑はアリシアに向けられていたものと変わらぬ様に感じられた。

例えば、プレシアが苦しげな表情や冷たい表情をアリシアに見せることはほとんどなかった。

しかし今日のようにずっと傍にいてくれたこともほとんどなかった。(……あれ?これは"変わった事"と"変わった事"だ)

他にも、アリシアの頃に住んでいた家はこんなに大きくなかった。

だが今日の食卓で用いられた器、、デフォルメされた山猫が描かれているそれは、自分が特に気に入って大事にしていたものだった。

 

(リニス……)

 

 フェイトは変わってしまったことの中でも、特に寂寥を抱かせる事の一つを思う。

リニスは、あの優しく賢い山猫は、あの時の金色の爆発で自分と一緒に死んでしまったのだろうか。

それともリニスが老いて死んでしまうほど長い間、自分は母親を一人にしていたのだろうか。

後者なのかも知れないし、前者と後者の両方かも知れない。

何れにせよフェイトは母の変貌に関してほとんど確信に近いものを抱いていた。

 

(わたしは、ママのそばにいるよ……。

 ずっと一人でいるのは、かなしいことだから…………」

 

 フェイトはそう胸中で呟いて、プレシアに抱き着き目を閉じた。

プレシアは微かに体を震わせたが、フェイトがそれに反応する事はなかった。

そうして5分も経たぬうちにフェイトは寝息をたて始めたが、プレシアは微動だにせず様子を窺い続けた。

30分が過ぎてから、ようやくプレシアは体から力を抜いて溜息を吐いた。

深い深い溜息だった。

 

 




プレシアのキャラ崩壊が止まらない。
「使い魔(リニス)に劣る主(プレシア)などいないっ!」ということで一つ……。


・シリアル>>>焼きたてのパン
子供ってちゃんと作った料理より冷凍食品やフリカケご飯で喜んだりするよね。
まあフェイトの場合はそんな理由ではないけど。

・条件付SS=総合SS
はい、捏造です。
てかプレシアさんの強さがいまいちはっきりしない……。
とりあえずこのSSのプレシアさんはチート仕様ということで。

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