"眼鏡女子?別に好きじゃないよ"と言うそこの君。そんな貴方に一つ考えて欲しいことがあるんだ。
もしも自分に好きな人がいたとする。そしてその好きな人が、次の日の朝会うと新しく眼鏡をかけ始めていた。
この瞬間から君は"眼鏡をかけた女性が好き"という枠組みに加わるわけだ。つまり眼鏡女子が好きということになる。うん。
だから是非とも"眼鏡女子愛好会"に参加して欲しいと思う。ちなみに会員は僕と弾君と数馬君だけ。ご入会お待ちしております。
「私は織斑君がいいと思いまーす!」
「なら私は桐崎君で!」
さて、僕と一夏の名前が生徒達から告げられているこの状況。どうやら授業内の時間を使ってクラス代表兼委員を決めるらしい。
まぁ代表ってことになってくると客寄せパンダである僕達の名前が上がるのは仕方ないことだけど、正直言ってあまり僕は乗り気ではない。自分から進んで前に出て皆の前に立ったりするのは得意じゃないんだ。
「ふむ、他にはいるか?」
千冬さんがクラス全体に問いかける。自他推薦可って言ってたからね。
「ま、待ってくれよ千冬姉!」
勢いよく立ち上がる一夏。ここは学校なんだからその呼び方で呼んだら…
スパァァァン‼︎
「織斑先生だ。次からは厳しくするぞ」
「いってぇ…も、もう十分強すぎるんじゃ「ん?」な、なんでもないです!」
僕と同じく出席簿でぶっ叩かれる一夏。どんまい。ぷぷっ。
逆らわない方がいいよ。千冬さんは言うことを聞く従順な子には優しいからね。
「って、そうじゃなくて!俺と優の名前が上がってるけど俺らやるなんて一言も言ってないですよ!?」
「推薦された者が辞退することは認めん。皆に期待されているのだから応えてみせろ」
諦めなよ一夏。後は大人しくじゃんけんなり多数決なりで決めよう。
親友が姉と言葉の格闘をしている最中、僕は先程から千冬さんの横に立つもう一人の教師が気になって仕方がなかった。
「ほ、他にはいませんかー?」
緑色の髪の毛をした"山田 真耶"という僕達のクラスの副担任。千冬さんと対称的でおっとりとした雰囲気が漂ういかにも優しそうな人だ。
いや、重要なのはそこじゃない。なんと彼女…
眼鏡をかけているではないか!
素晴らしい。素晴らしいですよ先生。まさか進んで自ら眼鏡女子になってくれているとは。
「(き、桐崎君、もしかしてずっと私のことを見ているんですか?だ、だめですっ、そんな情熱的な目で見られたら、私…!)」
おっと、ついつい山田先生の方をじっくりと眺めてしまった。女性を遠目から凝視するなんて良くないね。だからここは一つ妄想させていただこう。
『あ、あの。お弁当を作ってきたんです。よかったら一緒に食べませんか?…その、二人きりで』
い、いけない!教師と生徒なのに、このままじゃ禁断の関係になってしまいますよ山田先生!
というか眼鏡が全く関係のないシチュエーションが頭に浮かんでしまった。何故だろう。でも素晴らしい。
妄想に自己満足していると背後から何やら視線を感じたので振り返ると箒さんが僕を睨みつけるように見ていた。ど、どうしたんだろう。クラス代表決めが長引いてるからイライラしてるのかな?
それとも僕に『早く手上げて自分がやりますって言えや』的な視線なのだろうか。
バンッ‼︎
「納得がいきませんわ!こんな野蛮な男達にクラス代表の座を任せるなど!」
クラスメイトの一人、金髪の子が机に勢いよく手をついて立ち上がる。いきなりどうしたんだ?
「イギリスのオルコットか。それはつまり織斑と桐崎にはクラス代表を認めるわけにかないということでいいんだな?」
「ええ。此処はやはり貴族であるわたくしが相応しいということでこの"セシリア・オルコット"が立候補致しますわ」
ほう。どうやら僕達では不満らしい。
「クラス代表には実力がトップの者がなるべきなのです。そしてそれは代表候補生であるわたくしにこそ相応しいですわ。それを物珍しいという理由で、こんな知識も持たない猿が選出されては屈辱ですわ!」
凄い自信だなぁ…って、違うよ!猿ってどういうこと⁉︎オルコットさんの中での僕達の評価酷すぎない⁉︎
「大体、このような文化が後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体わたくしには耐え難いことでーー」
い、いやオルコットさん?どうして急に不満を述べ始めるんですか?日本だって良いところ沢山あるんだからそんなに侮辱を言われると悲しいな。後千冬さんの顔が段々と怖くなってきてるのがホラーだよ。もうそろそろ発言を控えてみてはどうでしょう。
「イギリスだって世界一料理がまずいって何年も天下取ってるだろ。そっちの国こそ大したことないんじゃないのか?」
お猿さん1号や。何故君は火に油を注ぐような発言をするんだい?猿2号である僕は疑問でしょうがないよ。愛国心でも芽生えたか!
「あ、あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの⁉︎」
「先に日本を貶してきたのはそっちだろ」
その通りだね。
「ッッ、決闘ですわ!!」
再び机を強く叩いて宣言する。ちょっと、そんなにバンバン叩いたら机さんが可哀想だよ。これからお世話になるんだからもう少し大事に扱おうよ。
「おう、いいぜ。その方がわかりやすいしな」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ずっと黙って二人の会話を聞いていた僕もこればかりは乱入しないと面倒なことになると判断し会話に割り込む。
「これはクラス代表を決める話し合いのはずです。何も決闘にまで持ち込む必要は何処にもないと思われます」
「いや、今回はオルコットの意見を採用する。折角の機会だからお前達もISにしっかりと触れてみろ」
待って待って待って。勘弁してくださいよ本当に。千冬さんが乗り気になったらもう止める人がいないじゃないですか。
「ふっ、貴方は何もせず逃げるのですね。まぁ妥当な判断だと思いますわ。今から初心者が努力したところですずめの涙程にしかなりませんもの」
ーーこのオルコットさんの発言で、僕の中で何かが切れる音がした。
"なんなんだよこの女。さっきから何ほざいてんだよ"
「誰が、逃げるって?」
ゾワッ‼︎
「「「ッ⁉︎」」」
「いいよ。この勝負受けて立ってやる」
「…そ、そうですか!せ、精々恥をかかないように努力するのをお勧めしますわ!」
「ああ。そうさせてもらう」
煽り耐性ないからね僕。完全にぷっちんだよ?おこだよ?
「優、その辺にしておけって」
「…うん。そうだね。ごめんなさい皆さん。オルコットさんも」
「へ?あ、は、はい」
随分と怖がらせちゃったかな。初日からイメージが大きく下がった気がする。はぁぁ。
「勝負は一週間後、放課後にアリーナで行う。織斑、桐崎、オルコットはそれまでにしっかりと万全の体制を整えておくように」
千冬さんから日程が告げられる。ふむ、そうか。これを"一週間しかない"と考えるか、または"一週間もある"と考えるかは大事だね。
あ、ついでに一つ言うのを忘れてた。
「オルコットさん。僕が勝ったら貴女に眼鏡をかけていただいてもよろしいでしょうか?」
「……はい?」
一日を終えた僕達はアリーナに関することを女神…じゃなかった。山田先生に聞きに行ったりと色々と行動を済ませ帰ろうとしていたんだけど。
「これがお前達の寮室の鍵だ。無くすなよ」
千冬さんに呼び止められ話を聞いたところ、どうやら初日から寮生活らしいです。偉い立場の人が僕達を学園に置いておけとのこと。監禁でもするつもりなのかなぁ。
「織斑先生、僕と一夏は同室じゃないんですか?」
「急遽決まったことだから空き部屋がない。だから一人部屋の予定だった二組の所にお前達を放り込むことになった」
えっ、一人部屋じゃないどころか同居人がいるの?それって女の子じゃ…
「さあ、もう時間も遅い。早く行け」
「えっ、ちょっーー」
突如会話を切断して職員室の中へ戻っていく千冬さん。
荷物は既に最低限必要なものだけを母さんが送ってくれたらしい。アタッシュケースのような見た目の鞄に入ってる僕の"眼鏡これくしょん"達も送られてきたし、まぁ当分は生きていけるかな。
「なあ優。女の子と一緒の部屋ってマズイよな?」
「うん。常識的にも危ないし男性操縦者として考えても女の人と一緒にされるのはダメだと思うな」
貴重な男性操縦者のデータ取りもしたいはずだからね。女スパイによるハニートラップみたいなこともあるんじゃないのかなぁ。僕の勝手な想像だけど。
「…行くしかないか」
「そうだね。お互いにいい同居人であってくれることを願おう」
できれば眼鏡をかけていて欲しいけどね。こればかりは神頼みだ。
眼鏡といえば虚や黛先輩もいますね。彼女達にもスポットライトを当てていきたいと思っています。
怒らせると怖い人っていますよね?優はそんなタイプです。
次回予告→3.僕の同居人が眼鏡をかけた水色の美少女だった