アニメや漫画の世界において"眼鏡をかけた女子学生"っていうとまず一番のイメージとして"教室の隅っこで一人本を読んでいたり、気の弱い少し控えめな性格をしている"って印象があると思うんだ。これは一種のキャラ付けみたいなものだと思う。
もちろんこれは僕の偏見だし例外はあるけど、実際に学校生活で皆の周りにも一人はこういうタイプの子がいたんじゃないかな。
さて、これを別の視点から見てみよう。『眼鏡女子=物静かでクールな人』と考えた時にその人のイメージとして新しく"もしかしたら実はドSで女王様気質かもしれない"という可能性が生まれてくるんだ。
例えばスーツを着たOLさんとかを想像してみよう。ほわんほわんほわん。ほら、見えてきたでしょう?OLさんが自分が履いているヒールで跪いている愚民をぐりぐりと踏んでいるシチュエーションが。
その人を彩る要素の一つとして無限の可能性を秘めている。眼鏡とはそんなアイテムなんです。
「この部屋で合ってるよね」
千冬さんに渡された鍵と同じ番号の部屋の前に辿り着いた。一夏は僕より先に寮室を見つけたのでもう隣にはいない。
「(考えてても仕方ない。まぁなるようになるでしょ)」
僅かな期待と少しの不安を抱える。肩身が狭くなるであろうこれからの生活の癒しになってくれるような可愛らしい同居人だったら嬉しいです。
それといきなり男が部屋に入ってきたら困るよね。中で着替えてないとも限らないしここは一応ドアノックしようか。
コンコンコン
ガチャッ
「えっ」
ちょ、ちょっと。幾ら何でもドアが開くの早すぎない⁉︎待機でもしてたの⁉︎
「あ、えっと、きょ、今日からここの部屋に入る桐崎 優です!よろしくお願いします!」
思いの外早くドアが開いたものだから焦ってしまってつい勢いよく頭を下げてしまった。変に思われちゃったかな。
「…男の子?」
頭の上から小さく声が聞こえる。まさか僕の事知らせてない感じですか千冬さん。割と本気で困りますよ。
「とりあえず、顔を上げて」
「あ、はい」
言われるがままに頭を上げ、目の前の彼女を視界に入れたその時ーー
僕の身体に、一筋の電流が走った。
「(なっ、め、眼鏡女子⁉︎)」
水色の綺麗な髪の毛に加えてまさかの眼鏡装着済み。完全に僕の時代が到来しているのだがそれだけでは終わらない。
ーー可愛い。僕の好みど真ん中だ。ど、どうしよう。目が見れないんだけど。
「あー、その、えっと…」
な、何か言わないと!
「(貴女の眼鏡姿が)…好きです」「……は?」
唐突な告白(?)の誤解を解きなんとか部屋に入れてもらった僕。彼女がお茶を入れてくれるということで椅子に座って待っています。
「はい」
「ありがとうございます」
とりあえず一口飲んで自分を落ち着かせよう。
「ふぅ、美味しいです」
「そう」
クールな人なのかなぁ。それとも警戒されてたりする?まぁそれが普通だけどさ。
「驚きました。ノックしてすぐにドアが開いたので」
「たまたま入り口の近くにいたからすぐに反応出来ただけ」
なるほどね。別に待機してたわけじゃないと。そりゃそうか。
「貴女の名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「"更識 簪(さらしき かんざし)"。苗字で呼ばれるのは嫌だから簪でいい」
「わかりました。では、簪さんと」
おお、流れで名前呼びを許可してもらったぞ。やったね。
「織斑先生から同居人が来るっていうのは聞いてたけど、まさか男の子だとは思わなかった」
「…なんか、すいません」
「気にしなくていい。見た感じ悪い人でもなさそうだから」
初対面で好きですとか言ったのに悪い人じゃないって、優しすぎるよ簪さん。本物の天使か何かですか。
「そっちのベッド使って。こっちは私が使ってるから」
「はい、ありがとうございます」
とりあえず荷物を整理しよう。まだ送られてきた物も全部は確認してないからね。
「ーーがあって、こっちの眼鏡もある。うん、大体は揃ってるかな」
ケースを開いて眼鏡達を一通りチェックする。
毎日変えるわけじゃないけど僕は気分や日によって付ける眼鏡を選ぶ。大きさとか形が少し変わるだけで印象や雰囲気を左右してくれるからね。僕なりのオシャレの一つだと思ってもらって構わない。
と、少しの間一人で作業していると簪さんから視線が向けられていることに僕は気づいた。
「どうかしましたか?」
「それって…」
「普通の眼鏡ですよ。此処にあるのはざっと10個近くでしょうか」
鞄の中にも数個と今自分でかけてるのもあるからこれだけじゃないけど。
「…眼鏡コレクター?」
「集めるのが好きというのとは少し違いますね」
「じゃあどうしてそんなにあるの?」
おや、何やら興味を持っているみたいだ。まぁアタッシュケースに入ってたのが眼鏡でそれが一個や二個どころかたくさんあったら気になるよね。
〜簪 side〜
彼との会話が終わるとすぐにベッドの上で何やら作業を始めたので気になって見ていたら凄い数の眼鏡が出てきて驚いた。
詳しく話を聞くとどうやらそれは彼の趣味で"女の人にかけてもらうため"に持ち歩いているらしい。
「(…眼鏡の女性が好き、なんだ)」
流れで彼の好みのタイプを知った。
これで最初の一言目も納得がいく。私が眼鏡をかけているからだ。
「(いきなり好きですなんて言うからチャラい人なのかと思ったけど違うみたい)」
まだ少ししかお話してないけど優しそうな人だと思う。喋り方も丁寧だし笑顔も自然で柔らかい。
「簪さんはとても眼鏡が似合っています。素晴らしいです」
「…ありがとう」
眼鏡をかけた女の人が好きって言われた後に私が褒められると心臓に悪いからやめてほしい。ドキッとして少し動揺しちゃった。
「その眼鏡達を皆にかけてもらうの?」
「はい。といっても嫌がる人には押し付けたりしません。あくまでも僕の趣味嗜好に付き合ってくれる人だけでいいんです」
一歩引いた冷静な考え。紳士的というのはこういうことなのだろうか。
「あ、そうだ。簪さんもお一ついかがです?」
「私?」
「ええ。是非とも他の眼鏡姿を見てみたいです」
見てみたいとか言われるとなんだか恥ずかしい。彼の顔から期待されてるのがわかるから尚更。
「…じゃあ、一個だけなら」
「ありがとうございます。それで、どれにしますか?」
「桐崎君が選んで」
これだけ沢山あると選ぶのに迷う。それに、眼鏡をかけて欲しいと言うのなら彼に選ばせてあげてもいいだろう。
「そうですか。なら…これでお願いします」
渡されたのは普通の黒縁メガネ。数ある中でもシンプルでよく見かけるものだ。
「ん、付けるから後ろ向いてて」
「は、はい」
眼鏡外すところ見られるのもなんだか恥ずかしいから彼に後ろを向くよう急かした。
「(やった、簪さんに僕の眼鏡をかけてもらえるぞ!)」
後ろを向いている僕は隠しきれない興奮から静かにガッツポーズをとっていた。だってこんな可愛い子に眼鏡かけてもらえるんだよ?嬉しいに決まってる。
「いいよ。こっち向いても」
ッ、遂に運命の瞬間だ。一体どんな天使が君臨しているのか、心臓が破裂しそうなくらいバクバクしてる僕には想像もつかない。
「どう、かな?」
水色の髪の毛に黒い眼鏡。落ち着かない様子の簪さんは眼鏡を触りながらそわそわしている。完全に僕好みに仕上がった彼女がそこにはいた。
ーー感想を言わなきゃいけないのに言葉が出ない。でも簪さんから目が離せない。
ああ、ダメだ。これってもしかして…
「可愛すぎます。犯罪級です」「…は、恥ずかしいからそういうこと言わないで」
僕、彼女に一目惚れしちゃったみたい。
「んー」
カタカタカタ
モニターを前に、何かを打ち込む女が一人。
「あっ」
ピタッ、と何かを思い出した女は指の動きを止める。
「そっか、今日ってIS学園の入学初日だったね」
今年は世界初の男性操縦者が二人もいる。きっと今頃学園の外も中も盛り上がっていることだろう。
「二人には専用機が必要だよねぇ。うんうん」
何かを言い聞かせるように一人頷く。
「待っててね"ゆーくん"。この束さんが自ら最高のおもてなしをしてあげちゃうよー」
主人公、まさかの一目惚れ回でした。これからは簪ちゃんの圧倒的ヒロイン力を見せつけていきます。
次回予告→4.幼馴染の姉が天災で僕の許嫁(本人談)らしい