IS学園に入学したので皆に眼鏡をかけてもらいたい   作:陽夜

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番外編 〜赤髪眼鏡っ娘の意外な一面〜

 

 

「…桐崎、優」

 

僕の名前を呼ぶ目の前の彼女の名は"ベルベット・ヘル"。ギリシャの代表候補生にして赤髪美人お姉様の眼鏡っ娘だ。

あまり人と関わらない孤高の存在っていうのが彼女を表す言葉だろうか。『私に関わらないで』と面と向かって言われたこともあるが、そんな彼女に何度も僕から話しかけに行っていつしか心を開いてもらった…んだと思う。今は普通に雑談相手になってくれるもの。

まぁ眼鏡っ娘は一人たりとも逃さないのが僕の流儀なんだけどね。

 

「な、なんでしょう?」

「…どうして、此処にいるの」

「えーっと、その、た、たまたまですかね」

 

嘘だ。珍しく上機嫌なベルベットさんを見かけたから気になって後をつけていたんだ。表情には出ていなかったが少し浮き足立っていたのを僕は見逃さなかった。

 

「…偶然で、こんな所には来ない」

「そ、そんなことはないですよ?僕が学園内を散歩するときは此処を絶対通りますし!」

 

今僕とベルベットさんがいるのは学園の中でも人目から外れた場所。校舎裏みたいな感じの所だ。滅多に人は通り掛からないだろう。

 

「…………」

「…………」

 

絶賛無言で睨まれ中でございます。でも頬はちょっと赤くなってて照れも混じってるのが可愛いよね。…うっ、目つき鋭くなった。ベルベットさん僕が妄想とか邪な考えしてるの見抜くの得意だからなぁ。

 

 

にゃーお

 

 

「ーーッッッ‼︎」

「可愛いですね、その猫。ベルベットさんの足にすりすり甘えて」

 

ベルベットさんの顔がより一層真っ赤に染まる。別に猫が好きなのって恥ずかしがることじゃないと思うけどなぁ。まぁ他の生徒は驚くだろうけど。

 

「…変かしら?私が裏で猫を可愛がっているなんて」

「そんな事ないですよ。普通の女の子らしくていいと思います」

 

 

にゃあ、にゃあっ!

 

 

「随分と懐かれてますね。何回も迷い込んで来てるんですか?」

「…ええ。少なくとも1ヶ月以上前から私はこの子を知っていたわ」

 

可愛がり方が手慣れてますもんね。猫の方も気持ちよさそうだ。

 

「その子に名前とか付けてないんですか?」

「…あるけど、貴方には教えない」

「えー。意地悪しないで下さいよー」

 

 

みゃあみゃあ、にゃっ!

 

 

「あっ、ちょっと。はしゃぎ過ぎよ"ルビィ"」

「へぇ、ルビィちゃんですか。いい名前ですね」

 

…いやいや、そんなに睨みつけないで下さいよ。僕何も悪いことしてません。貴女が勝手に自爆しただけです。

 

「…もういいでしょう。用がないなら早く此処から消えて頂戴。私はこの子の相手をするから」

「はーい」

 

ちぇっ。仕方ないか。珍しいものも見れたし、ここは大人しく退散しますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルベットさんからお邪魔虫宣告を受けた僕が一人廊下を歩いていると、向こう側から水色の髪をした女子生徒がやって来る。

 

「あら、優君じゃない。元気にしてるかしら?」

「ええ。元気ですよ。楯無さんもお仕事を放ったらかしてお元気ですか?」

 

放課後のこの時間は生徒会室で虚さんが溜まった書類を片付けたり、本音さんが寝ていたりお菓子を食べたりと何かしているはずだ。楯無さんが廊下をブラブラしているということはサボりのはず。まぁいつもの事だけど。

 

「仕方ないじゃない!私だって疲れてるんだから!」

「だからってサボりはよくありませんよ。虚さんも頑張っているんですから」

「…優くんって簪ちゃんと虚ちゃんにはやたらと甘いわよねぇ。この眼鏡フェチめ」

 

僕にとっては褒め言葉でしかありませんよ。

 

「眼鏡をかけていただけるなら楯無さんにも紳士的に接しますが」

「うーん。遠慮しておこうかしら。私視力は悪くないもの」

「そういう方には伊達眼鏡を勧めているのですが…楯無さんはかけてくれなさそうですね」

「ふふっ、よく分かってるじゃない♪」

 

簪さんとの仲直りに一応僕だって貢献したんだから少しくらいかけてくれてもいいのに。今まで出会った女性でトップレベルに頑固かもしれないなこの人。

 

「眼鏡はかけてあげないけど代わりにいい話があるわよ」

「何でしょう?」

「今週末から駅前のショッピングモールに新しく"ペットショップ"がオープンするそうなの。優くん暇だったら簪ちゃん誘ってデートしてきたら如何かしら?」

「(…簪さん、週末は整備室に籠るって言ってた気が)」

 

嬉しい話ではあるが彼女は誘えなさそうだ。束さんを連れて街中にホイホイ出るわけにも行かないし、今回は見送りかなぁ。

 

「…あ、そうだ。ベルベットさんを誘おう。楯無さん、いい話をありがとうございました」

 

お辞儀をしてこの場を離れる。猫好きも発覚したことだし多分来るんじゃないかなぁ。むしろ僕が誘わなくても一人で行ってそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「優君って簪ちゃんと篠ノ之博士だけじゃなくてベルベットちゃんも好みだったのかしら。…はっ⁉︎ま、まさか、う、浮気⁉︎お姉さんこれ以上乱れた関係は許さなーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜日曜日・駅前の街灯の近く〜

 

「あ、いた。ベルベットさーん!」

 

大きい木の下にいつも通りの立ち姿で待っていた私服姿のベルベットさん。大人っぽいオーラが普段より一層漂っている。綺麗だなぁ。

 

「こ、声が大きいわよ!」

「別にいいじゃありませんか。何か問題でも?」

「……ない、けど」

 

変な所を気にする人だなぁ。何もこれからやましい事するわけじゃないのに。

 

「おっと。ここで話していてもあれですね。早速行きましょうか」

「…ええ」

 

僕達はこれから新しくオープンしたというペットショップへ向かう。楯無さんから聞いた次の日に誘ってみたが、二つ返事で了承が返ってきたよ。珍しい。

 

「……早く、行きましょう」

 

ちゃんと着いて行きますからそんな力強く引っ張らなくても大丈夫ですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーー」

「…ここ入り口なので他のお客様の邪魔になっちゃいますよ」

 

お店に入るなりすぐにカチン、と氷のように固まるベルベットさん。その視線の先にはショーケースに入れられて展示されているたくさんの可愛らしい子猫達が。

 

「ふ、ふんっ。そ、そそそそこまで大したことないわね。猫がいるくらいで私は動揺しなーー」

 

 

にゃーお

 

 

「はぁぁぁ…か、可愛いわぁ…!」

「(流れるような即堕ちありがとうございます)」

 

目を輝かせてへばり付いてるよショーケースに。

 

「ふふっ、可愛らしい彼女さんですね」

「…はい。そうですね」

 

店員さんが僕に話しかけて来ちゃった。恥ずかしい。はしゃいでいる子供を持つ親の気分だ。

 

「猫が好きな女性は"猫をかぶる"のが得意なんて言うんですよ。普段はクールを装っていたりする人が、実は甘えたがりみたいな一面を持っているなんてこともあるんです」

「へぇ、そうなんですか」

 

ベルベットさんはどうなんだろう。彼氏とか夫が出来たら裏では猫になって甘えるのかなぁ。

 

 

『あの、ベルベットさん?もうそろそろ1時間くらい経ちますよ?』

『…まだ、離れたくない』

『寝る前にまたハグしてあげますから。とりあえずお風呂にーー』『やだ』

 

 

『…もっと、優のことぎゅってしていたいの』

 

 

…自分の才能が恐ろしくなるよ。ここが外じゃなかったら鼻から大量出血で倒れてた。絶対。

 

「おっと、まぁこれは余計なお世話かもしれませんね。それではごゆっくりどうぞ。そして彼女さんとお幸せに♪」

「(彼女じゃないんだけど…まぁいっか)」

 

必死になって否定するのもなんか悲しくなる。ベルベットさんも聞いてないし、いいよね。

 

 

にゃっ、にゃぁっ!

 

 

「…ああ。天国はここにあったのね」

「どうでしょう。お気に召しましたか?」

「ええ、最高よ。でも触れないのが残念ね…」

 

まぁ此処はペットを飼うためにやってくる場所だからね。きっと触れ合いコーナーみたいのをやってる所もあるんだろうけど、基本は鑑賞しかできないからなぁ。

 

「(いや、待てよ?)あの、ベルベットさん」

「何。私今忙しいから後でーー」

 

あるじゃないか。猫と好きなだけ戯れられる場所が。

 

 

 

 

 

「"猫カフェ"って知ってます?」




ISABのベルベットさんとの交流シナリオにて猫好きが発覚したので書かせていただきました。
孤高キャラとか言っておいて猫にはデレデレで満面の笑みが出るとか反則でしょう。可愛すぎなんだよ‼︎(最高)

次回予告→番外編 〜赤髪眼鏡っ娘の意外な一面 その2〜

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