おなべとエルフと七魔将(ナイトセブン)   作:シュウナ・アカネ

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ヒトの記憶

 人間とは、生物に感情を追加したようなものに過ぎない。なぜかと問われる。それは人間の本質だからと答える。

 答えたのは、世界を守り続けてきた龍、古龍と呼ばれる存在。

 しかし人間はすばらしい。言葉はまさに矛盾しているが、どうしようもなく完璧に近い生物とも取れる。信頼もできた。そう、信頼もできた、なのだ。

 

 古龍は失望していた。いや、失望せざるを得ないのだ。

 何に失望したのか、それは人間の本質自体に失望したのだ。何を思えばいい、淘汰か。交渉か。どちらも望めない正答だった。

 人間は理解していた。生物は、ひとつの生物を絶滅に追い込めないことを。世界という牢獄がそれを許さないためだ。ゆえに、それを利用して古龍との距離をギリギリに抑えていた。

 だが、人間は滅んだ。古龍と、闇の存在・魔獣によって。だがそれは、古龍にとって断腸の思いでのことだった。人間を絶滅に追い込み、世界に待っていたのは、巨大隕石の落下。

 強烈な衝撃波と地響きは、すべての生物に恐怖を与え、隕石の衝撃によって舞い上がった粉塵は、日光を遮り、母なる大地を氷雪の世界へと変える。古龍には知性がある。人間と同等の知性が備わっているにもかかわらず、人間と共存し得なかったゆえ、技術を持たない古龍は冷え切った体を丸め、巨大な洞窟の中で一生を終えた。だが古龍は、一つ持っていた。体に宿していた生命の根源。又の名を、ユグドラシル。

 幾百年後のこと、ユグドラシルが覚醒。

 古龍の骨を土台として、洞窟に根を張り巡らせ、ひとつの生命の領域・フェアリーフィールドを作り出した。そして再び、人間・人類が生まれた。

 

 

「世界を変えるには、それ相応の覚悟が必要だ。その覚悟がなければ、我は世界を見守る権利も生物の終焉を見届けることも許されない。滅ぼすことも然り。故に、我はやらねばならんのだ。この世界の古龍として。そして、世界の生命を持った唯一の生物として」

 

 絶滅古龍調査書・第1説18ページ参照

 

 

 ユグドラシルの記憶に残っていた、古龍の伝言だった。

 

 それから数千年、怒号が響き渡る。

 戦ではない。博打でもない。酒場の店内で行われている、喧嘩大会。

 互いが血だらけになる殴り合い、蹴り合い。麦酒瓶を持ち、殴りあう。

 

 それが今の、楽しげな世界だった。

 

 

  ────────

 

 

 とある学校、とある通路で一人の高校生がそこに立ち尽くしていた。男の姿に漆黒のスーツ、顔は美しく体格も細いモデルのような体型。この高校生は、風の中に舞う桜を、ただ、見つめていた。

 

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