どうやらヤクザさんではないらしい、普通の魔法使い・魔理沙ちゃんと、素敵な巫女さん・霊夢ちゃんと、なんやかんやあって仲良くなりました。二人ともとても気さくで、いい人そうです。ひねくれてるところのある紫ちゃんにも、彼女らの素直さを見習ってほしいです。
「なあなあのの、そこのお地蔵様借りていっていいか?」
「魔理沙ちゃんは素直ですねー。宝物ですのであげられません」
「もらうわけじゃないぜ。ただ借りてくだけだぜ」
「あ、それなら別に……」
「魔理沙の口車に乗せられちゃダメよ」
「いてっ」
霊夢ちゃんが魔理沙ちゃんの頭をコツンと叩きました。とんがり帽子のとんがり部分がへにゃりと折れましたが、すぐに元の形に直りました。
霊夢ちゃん曰く、魔理沙ちゃんは『死ぬまで借りてく』とか言いながら人の物を盗んでいくことが多々あるので気をつけた方がいいとのこと。むむ、悪い人には見えないのですが……人は見かけに寄らないとはこのことですか。
「っていうかあんた、大切な宝物っていうなら何でそれを売ってるのよ」
「えっ、儲かるかなあって……」
「がめついわね」
「霊夢の言えることじゃないぜ」
がめつくない! と魔理沙ちゃんに抗議する霊夢ちゃん。私も別にがめつくないです。
そういえば、と魔理沙ちゃんが話題を変えます。
「さっきの宝物の話って、誰かから聞いたのか?」
「いえ、私が自分で聞きました」
「あんたも妖怪なの?」
刹那、霊夢ちゃんの雰囲気が微妙に変わった気がしました。慌ててかぶりを振ります。
「いや、別に妖怪ではありませんから! えーっとですね、そのへんは私の能力のお陰なのです。そう――『宝の声を聴く程度の能力』という!」
ドヤッ、と大きく胸を張ってみます。小さいだろ、というツッコミが何処からか聞こえた気がしますが気にしません。
「で、どんな能力なの?」
「え、そのまんまの力ですけど」
「あー? 宝の声を聴く、とだけ言われても私らには何も聞こえないんだから、どんな能力だか分からないぞ」
「んー、正確に言うとですね……宝にまつわる想いや、想い出が聞こえる感じですかね。こうイイ感じの情景も浮かびつつ」
例えば先程のお地蔵さん。アレは傘屋のお爺さんの宝物で、中々品物が売れなくて生活に困っていたお爺さんが、ある雪の日に埋まりかけていたこのお地蔵さんを掘り出し、傘を被せてあげたというエピソードがあります。
「妙に細かいしそれ、聴くってより見てないか?」
「聴くって方が何処と無くカッコよくてよいのです」
「『宝の声を見聴きする程度の能力』に改名ね」
「えー」
不満なので唇を尖らせてみましたが、正直反論の余地はないし自分でもこれはどうかなーと思っていたので素直に受け入れます。私は反省する女なのです。
「で、なんでののはこんな辺鄙な場所に店なんて開いたわけ? 儲けを考えても普通に客足を考えても大変そうだけど……」
「……ただのミスなのです……恥ずかしながら何も考えてなくて……」
思い出すだけで目頭が熱くなってきました……『広々としているし木の具合もいい塩梅ですね! よしここにしましょう!』なんて考えていた過去の自分にぼでぃぶろうでもくらわせたくなってきました。
霊夢ちゃんも「それは……なんというか、ご愁傷様」と痛ましそうな視線をくれています。むしろ悲しいです。