私の偉大な食卓。   作:高任斎

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餃子を泳がせたチート兄が、立派に成長した。


9:おふくろのマカロニサラダ。

 週末にチート兄が泊まりにやってきた。

 まあ、なんだかんだ言っても仲の良い兄弟だと思う。

 そしてチート兄がぽつりと。

 

「母ちゃんのマカロニサラダが食べたいんだよ」

 

 ……実家に戻って、頼めばいいんじゃないでしょうか?

 

「逆に聞くけど、お前実家に帰る気になるか?」

 

 はっはっはっ。

 僕たち兄弟は、仲良しです。

 

「いやな、自分でも作ってみたんだけど、なんか違うというか、全然違うというか……」

 

 なん……だと?

 あ、あの、ギョーザを焼くのに、フライパンの中でギョーザを水泳させていた、チート兄が、自分で、マカロニサラダを作ってみた……だと。

 

「……そのツラは、ものすごく失礼なことを考えているツラだが、まあいい。というわけで頼むわ」

 

 まあ、いろいろ想像はつくし、いいんだけどさ……なぜこのチート兄は、私が『母ちゃんのマカロニサラダを再現できる』と確信しているのだろう。

 解せぬ。

 

 

 スーパーでお買い物。

 マカロニはある、卵もある……せっかくだから、ポテトサラダも作ってみっか。

 ハムにきゅうりに、カニカマも。

 

 

 さあ、適当クッキング始まるよ。

 面倒だから、マカロニと、ジャガイモを同時茹で、ついでにゆで卵もいっちゃえ。

 まあ、最初にじゃがいも、次に卵、そしてマカロニの順番に投入してますけどね。

 その間に、きゅうりを刻んで塩振って、水が出てきたら、ギュッと握って……何よ?

 

「そ、そうか……サラダに入れたきゅうりって、そうやったら、あのきゅうりになるのか」

 

 ああ、あのパリっとしたきゅうりのサラダも普通にあるからいいんじゃないの?

 まあ、母ちゃんのサラダのキュウリは、こうやってシナっとさせたやつだけどね。

 ついでに言うと、チート兄のレベルもなんとなくわかった。

 ハム切って、カニカマほぐして、氷水につけて……。

 火を止めて、ゆで卵とジャガイモ。

 んじゃ、こいつをマッシュポテトにしてくんな。

 スプーンでグイグイやってくれ。

 マカロニ上げて、水で洗って、冷やして……。

 ゆで卵の殻むいて、刻んでぽい。

 

「うん、大体同じ手順の気がする。一体どこで、味の差が……」

 

 はは、チート兄よ、これから悲しい現実を知る事になるよ。

 さあ、冷えたマカロニに具を混ぜて……。

 

 マヨネーズを一気に投入!

 投入だ、疾風怒濤の投入だ!

 

「え、ちょっ?」

 

 混ぜる混ぜる混ぜる、マカロニを傷つけないように混ぜる。

 

 さあ、ポテトサラダ行きます。

 きゅうりに卵に、こっちはハムじゃなくてカニカマで。

 こっちにもマヨネーズ投入!

 

「いや、お前、マヨネーズどんだけ……」

 

 さあ、混ぜるんだ。

 未来に向かって混ぜるんだ!

 

 

 

 できたぁっ!

 

 

 

 

 それでどうかね、味は。

 

「……母ちゃんの、マカロニサラダです」

 

 まあ、そういうことさ。

 本当は、冷蔵庫に入れて冷やして時間をおいたほうが味がなじんで美味しいと思うんだけどな。

 

「そっか、母ちゃんのマカロニサラダって、『マヨネーズ』の味だったんだなあ……」

 

 

 

 こうしてチート兄は、また一つ大人になった。

 人は、死ぬまで大人になり続ける。

 次に大人になるのは、あなたかも知れない。

 

 

 

 

 おい、チート兄。

 俺が仕事に行ってる間に、どんだけ食ってんだよ?

 

「いや、美味いし」

 

 子供は、母親というか、子供の頃親しんだ料理の味に洗脳されます。

 ゆめゆめお忘れなきよう。

 

 

 

 




おふくろの味さえも、汚していくスタイル。
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