私の偉大な食卓。   作:高任斎

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ブラック企業なんて言葉がなかった時代。
一部フィクションなので、つっこまれても困ります。


19:深夜の白滝炒め。

 しばらく買い物に行けない日々が続いた。

 それは、補給のない戦場のようなもの。

 冷蔵庫から糧食が失われていく。

 非常時のための備蓄食料が失われていく。

 

 その日の会社帰り、深夜3時のコンビニの品揃えは、壊滅していた。

 まあ、家に帰れば何かあるだろう。

 そんな甘い見通しが、私の胃袋を鋭くえぐる。

 そもそも、そんな甘い見通しを導いたのは寝不足だ。

 あああ、悩んでいる間にも時間が過ぎていく。

 飯食って、寝て、シャワー浴びて、仕事に行かなきゃ。

 睡眠時間が。

 チクショウ、こんなことなら朝の5時か6時まで仕事して、それから帰れば、コンビニにも弁当やおにぎりなんかが売ってただろうに。

 

 カロリーが取れないなら、調味料でごまかせばいいじゃない。

 

 おそらく2ヶ月以上前に3袋100円の特売で買った白滝、キミの出番だ。

 フライパンに油をひき、白滝を炒める。

 脳をごまかすために、歯ごたえが欲しい。

 なので、最初は弱火で、白滝から水分を絞り出す。

 ある程度水が出てから、容赦なく焼きそばソースをぶっかける。

 ソースが焦げる匂いが、台所を支配する。

 そうそう、このソースの香りが食欲をそそるんだよね。

 

 チクショウ、なんだか涙が出てきた。

 

 なぜ俺はこんな時間に、こんな侘しい料理を作っているんだ。

 そもそも、5人のチームで回してた仕事を、3人で回そうとすることが間違ってるだろ。

 そんなことするから、社員が行方不明になったり、療養中で自宅待機してたはずの人間が、わざわざ本社のビルまでやってきて、(ぴー)したりするんだよ。

 つーか、未だに一度も顔を合わせたことがない職場の先輩とかどうなってんだよ。

 

 〇阪の海には、いろんな人間が悲しみを捨てにやってくるらしいが、こんな愚痴をこぼされる料理は、一体どんな色に仕上がるというのだろう。

 

 よし、出来たあ。

 すごく、ソース色です。

 睡眠時間を確保するため、明日の朝に浴びる予定のシャワーを今浴びよう。(錯乱中)

 その間にお湯を沸かして……。

 

 

 

 適度な歯ごたえ、味覚を刺激する香辛料。

 でも白滝。

 つーか、これって酒のつまみにいいかもしれん。

 結構美味い。

 白滝だけどな。

 いやあ、時代は脱カロリーですから。

 ははは、今俺が飲んでるのは、砂糖をぶち込んだお湯だけどな。

 カロリー大事、超大事。

 おお、身体が温まってきた。

 寝れる、今なら寝れる。

 

 深く潜れ、俺の睡眠。

 3時間で8時間分眠るんだ。

 

 ああ、明日はちゃんとカップめんとか、買わないと。

 そうしないと、白滝すらない。

 でも、小麦粉はあるなあ……。

 

 

 

 次の日の朝、砂糖水を飲んで駆け出す。

 世界よ、これがジャパニーズビジネスマンだ。

 

 

 




今でもたまに、惣菜がわりに作ったりします。
思い出だけは、どこかに捨ててきた。(笑)
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