私の偉大な食卓。   作:高任斎

3 / 54
餃子には、主食となれるポテンシャルがある。


2:悲しみの餃子。

 私の兄はチートだ。

 私は小学校低学年の頃から、腹筋背筋腕立てに走り込み、手の皮が破れて、さらに中の皮が破れるまでバットの素振りを繰り返し、壁を相手にキャッチボール。

 中学、高校と、1日30時間(笑)の壮絶なトレーニングを経て、鍛えに鍛えたマッスルボディ。

 怪我をするまでの全盛期で、握力90キロ、背筋力270キロ……多分、自慢できるレベルだと思う。

 まあ、筋力だけでは野球はできませんが。

 

 そして中学2年の夏から帰宅部で、趣味は読書のチート兄。

 

 なぜか私と腕相撲が互角だ。

 握力も互角だ。

 ……こういう才能に溢れたやつほど、努力しない。(興味がない)

 スポーツの世界は無情である。

 

 

 

 私が浪人生だった頃、そんなチートな兄が、昼飯時に声をかけてきた。

 

「愚弟、母ちゃんが昼は餃子でも焼いて食べなってさ」

 

 ふーん。

 

「餃子でも焼いて食べなってよ」

 

 焼けよ。

 スーパーで売ってる、出来合いの、焼くだけのやつだろ?

 

「……餃子って、どう焼くの?」

 

 え?

 このチート兄にもできないことがあったのか。(学力超優秀)

 チート兄に対してややコンプレックスを抱いていた私は、このチャンスにちょいといじめてやりたくなりました。

 暗に、私に焼いてくれと言ってるのは分かってましたけどね。

 私、勉強中でしたから。

 

 フライパンに油引いて、餃子に焼き色がついたら、水を入れて蓋をかぶせて蒸し焼きにすればいいよ。

 皮の部分がちょっと透き通るぐらいになるまでで。

 

 別に私は、ウソを教えたわけじゃない。

 だって、私は誰からも餃子の焼き方なんか教えてもらってないけど、餃子の構造考えたらこんなもんだろうって、普通に最初から出来たんだ。

 テレビ番組を見てたなら、それに近いシーンはいくらでも出てくるし。

 チート兄なら、これだけの説明で普通に焼けると思ったんだ。

 

「愚弟ー、これ、ここからどうすりゃいいのー?」

 

 どうすりゃいいのって、いつも自分が食べてる餃子の状態に近づけたらそれでおしまいなんだが。

 問題集を閉じ、台所に向かった私が見たものは?

 

 

 フライパンの縁まで、なみなみと注がれた水の中で、プカプカと泳いでいる焼き(?)餃子の姿でした。

 

 誰が水餃子を作れといった?

 

 どうすりゃいいのと言われても、もうどうしようもないというか。

 蒸し焼きって言っただろ、ちょっと考えろよおい。

 これが蒸し焼きなら、味噌汁だってカレーだって、肉じゃがだって蒸し焼きだろ。

 つーか、でかいフライパンの縁まで水を入れたのを、片手で平然と持ってるアンタ、やっぱりおかしいと思う。

 ちなみに、この時の私は、怪我のせいでもうマッスルボディではなくなっています。

 

 せっかく焼き目をつけた餃子の皮が、水にふやけて……。

 

 さあ、適当クッキング始まるよ。

 油混じりの水を容赦なく捨てます。

 餃子は一旦皿に……おう、崩れちまった。

 ああ、うん、もう焼くのは無理か。

 崩れ切った餃子を皿にまとめ、塩とコショウをふって、皮ごと練ります。

 

「ぐ、愚弟、何を作ってるの?」

 

 黙ってろ。

 基本は、豚のひき肉とニラだからな。

 練って、練って、卵投入、さらに練って。

 

 あらためて、フライパンに油を引いて、この餃子ダネっぽいものを小さなハンバーグみたいにして焼きます。

 強火で、裏返し……中火。

 んー、わからん。

 適当クッキング!

 途中でちょいっと水入れて、蓋かぶせて蒸し焼き。

 フィーリングで、香り付けにごま油。

 できたあ!

 

「なあ、そこそこうまいんだけど、これなんて料理?」

 

 知りません。

 

 




料理を知らないという人を、甘く見てはいけないと思いました。(小並感)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。