私の偉大な食卓。   作:高任斎

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デザートの時間だ。


4:悲しみの麦茶ゼリー。

 麦茶が好きだ。

 

 え、季節外れなので帰ってください?

 まあ、1年中麦茶を飲んでる人もいるから、そう言わずに。

 いや、私は夏だけ。

 

 麦茶を沸かす。

 沸かすのはいいのだが、これって冷蔵庫で冷やしていても、どのぐらい保つものなんだ?

 私は、沸かした日の次の日で飲みきれなかった分は捨てるようにしてます。

 なんとなく、気持ち悪いから。

 でも、一人暮らしだから、どうしても余りがちになることも。

 

 悪魔の囁きは、こんな時にやって来る。

 

 麦茶でゼリー作ったらよくね?

 余った分を捨てるのではなく、最初から余りそうな分をゼリーとして使ってしまう。

 沸かしたばかりの麦茶の一部を容器にいれ、ゼライスでも寒天でもとかして終わりじゃん。

 

 涼しげな麦茶の色をしたゼリー。

 麦茶の香りが、より爽やか。

 

 あれ、なんでこれが商品化されてないの?

 いいじゃんこれ。

 いいね、実にいい。

 では頂きます。

 

 

 先生……味がしません。

 

 

 おう、かき氷は、スイが一番だぜなんて風流な人間じゃない私には、これはちょっと。

 仕方ない、砂糖を入れて作ってみますか。

 

 

 先生、砂糖の甘さと麦茶の香りが大乱闘してます。

 

 

 むう、難しいな。

 砂糖の量を増やしたり減らしたり。

 私個人の好みもあるんでしょうが、どうやら麦茶と砂糖は相性が悪そうだ。

 じゃあ、別の甘味料を……あの、素人に何を求めてます?

 

 では定番の果実を混ぜてみましょう。

 

 

 麦茶の意味ねえ!

 

 

 果実と砂糖を。

 

 

 セツコ、それフルーツゼリーや!

 

 

 やっべ、麦茶弱い。

 いや、果実が強いのか?

 麦茶の風味を残さないと、麦茶ゼリーとは言えない。

 

 

 

『某BGMと、某ナレーションで』

 

 それは、不可能に挑む男たちの戦いであった。

 延々と続く苦闘。

 しかし、そこには夢があった。

 弱音を吐きたい時もあった。

 しかし、男たちの意地もあった。

 続いていく。

 男たちの挑戦は続いていく。

 そこには、ロマンなどという綺麗事では表せない、何かがあった。

 志あるところに道はある。 

 諦めない限り、道は続いていく。

 

 その道が、ついに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 途切れた。

 

 

 いや、無理。

 商品化されてないってことは、商品化できなかったんだよ。

 そもそも、こんなポピュラーで、安価な原料のもので商品化されてない時点で、いろいろノーチャンスだろ、これ。

 いやあ、見た目はすっごく綺麗なんだけどねえ。

 食品というより、観賞用?

 つーか、普通に飲もうよ。

 麦茶、美味しいじゃん。

 

 

 

 続いていく。

 男の見苦しい言い訳が続いていく。

 負け犬の言い訳が続く。

 

 

 悲しみの麦茶ゼリーに、今、隠し味としての涙が加わる……。

 

 




悲しみが、降り積もる……。
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