Fate/GrandOrder Mistake Gift 作:人類悪出入
転生、という言葉を聞いた事はあるだろうか。
スマートフォンの異世界入りとか幼女の異世界入りだとかで大分馴染みが深くなってきたこの言葉だが、俺はこの言葉が大嫌いである。
何故転生したら特別な人間になれるって事が当然な感じになってるんだ?俺の疑問はそこからだ。
転生という言葉は、生まれ変わったら何もかも上手くいくとか、今の自分とは違う自分になれるだとか、そういう甘ったるい考えの集合体である。
つまり何が言いたいかというと、転生しようが生まれ変わろうが舞台が変わろうが、人はそう簡単には変われないという話だ。
俺はーーー転生者であるところの天野空太は、それを中学2年生の頃に知った。
前世。俺は薄汚いぽっちゃりデブのオタクだった。名前は不思議な事に思い出せない。いや、覚える価値すらないほどどうでもいい存在だったのだろう。実際親以外は俺の名前はろくに知らないし、親も俺に興味はなかった。
何故死んだのかは分からない。恐らく不健康な生活を続けてきたバチが当たったのだろう。生活習慣病とかその辺の類だ。走馬灯さえなかったのだから、眠る様な死だったのだろう。
そして俺は死に、生まれ変わったのだ。
贅肉のない体。物覚えの良い頭。
あいにく生まれ変わった先は地球にとてもよく似た世界だったので、俺TUEEEEEは出来なかったが…しかし、俺は転生者だ。生まれながらの勝ち組みだと、俺は信じて疑わなかった。
そうこうして中学生に上がり、俺はその日もまるで自分が主人公の様に振舞っていた。周りがドン引きするのにも気づかない有様だったのだから笑えない。
きっかけは肩がぶつかった事だった。
「いたっ」
「あ、ごめんよ。大丈夫かい、君」
俺は優しい笑顔で手を差し伸べた。倒れたその少女ーーー赤い髪の毛をサイドテールにまとめた、我の強そうな少女は、俺を呆然と見つめて、そしてこう言ったのだ。
「うわっ、や、遠慮します」
差し出した手を取らずに立ち上がり、逃げる様にどこかへと行ってしまう。俺は硬直していた。
クスクスとどこからか笑い声が聞こえてくる。そっちに振り返ると、クラスメートたちが笑っていた。まるで前世の自分に向けられていたあの嘲笑の様で、俺はただ呆然とそれを眺めた。
その時、やっと俺は夢から覚めたのだ。
ここは俺が主人公の世界なんかじゃない。
贅肉の付いていない体ーーーそんなの生まれつき、ただの偶然だ。むしろ見た目的には平均的だ。
物覚えの良い頭ーーー前世の俺の頭が酷すぎて分からなかったが、平均並みに上がっただけだ。
その日、俺は自室で鏡を見た。そこに写っているのは、特にイケメンでも不細工でもない、なんの特徴もないただのモブの姿があったのだった。
で、まあそれから色々と改心して、勉強も本格的にはじめて地元から離れ、遠くの県立の高校に入った。2年からの勉強だったので大分ギリギリだったが、それでもなんとか行けた。
俺はここから始めるつもりだった。自分が凡人だと理解して、それを認めて、普通に生きていこう。そんな風に思ったのだ。
まだ立て直しは効く。
そう思っていた時期が、俺にもありました。
★
俺は今、とある施設の中にいた。
外は猛吹雪。冬の北海道でもなかなか見られないほどの悪環境だ。
俺は転生者だ。だけど凡人だ。だって得意なことなんて一つもないのだし。多分秘密結社だとかに目をつけられれば一瞬で死ぬし、異世界に放り投げられたらすぐに動物の餌になるだろう。
そんな俺だが、今現在カルデアのマイルームにて呆然と突っ立っています。
うん、この世界、型月の世界だったんだ。しかも多分FGO。カルデア以外の全人類が死に絶えて、カルデアにいる人員も殆ど死ぬんだってよ。
魔法のまの字も知らなかったし、むしろこの世界あまりに普通すぎててっきりそういうものとは無縁の世界なのだと俺は勘違いしていた。
それなのに、普通に高校生活を送っていた俺の元に変なセールスマンがいきなりやってきて、てんわやんわした後にここまで連れてこられてしまった、というわけだ。
つまりマスター候補として連れてこられた、という事である。それが大体4、五週間前の事だろうか。
…一つ言って良い?良いよな?俺我慢したもんな!?
「ふっざけんなああああ!」
俺は叫んでいた。何故ってマスター候補とかただの死亡フラグの塊に抜擢されてしまった事もそうだし、行かないとカルデアに避難できないと気づいて首を縦に振らざるを得なかった事もそうだし。
だけどね?一つ聞いて?俺魔術回路もってるとか知らなかったし、そもそもFate系にわか知識しかもってないのよ?
それこそFGOの知識しか持ってねえわ!それもここ数十年で大分薄れてくてるけどな!?
ただ最初は知っている。というか思い出した。レフ教授が敵な事や、オルガマリーがこのままだと死ぬこととか。
本人に会ったんだからそりゃ思い出すわ。
オルガマリー所長は俺を見て、「あんまり期待してないけれど、せいぜい役に立つことね」とものすっごい上から目線で言ってすぐどっかへ言ってしまった。
レフ教授は「根は良い子なのだけれどね」と苦笑していた。どの口が言ってんの?
まあ、そんな訳で俺はマスター候補として、ここカルデアで訓練の日々を送っているという訳だ。
魔術もいくつか簡単なの使える様になっちった。と言っても魔術礼装・カルデアの補助無しでは碌にだけれど。
だが、ちょっと魔術が使える様になったからって、このままでは死ぬ。あの大爆発に巻き込まれて生死の境をさまようことになる。
せっかく二度目の生を受けて、調子に乗っていた自分から目を覚ますことができたんだ。
死んでたまるかよ!