Fate/GrandOrder Mistake Gift   作:人類悪出入

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10話まで来ました…とりあえず冬木終了まであとちょっとなので、頑張ってみます。


10話目

「さて、そろそろ移動しますかね」

「ええ、そうね。もう休憩は十分でしょう」

 

全員の状態を確認して、オルガマリーがキャスニキに同意した。俺や立花、マシュが立ち上がって頷きあう。

 

「もう一度確認しておくわ。敵の総本山はこの国の神社…寺、というのだっけ?その足元の大洞窟の中、で間違いないのね?」

「ああ。そこに大聖杯はあるはずだ」

 

キャスニキは肯定して、そして俺に目を向けた。

 

「おう、坊主。それの調子はどうだ?」

 

そう言われて、俺は自分の拳を見た。

 

今、俺の拳には布が巻かれていた。そこら辺に落ちていた布なので薄汚れているが、結構丈夫そうな布だ。

 

そして、その布にはキャスニキより刻まれたルーンが光り輝いていた。

 

『硬化のルーン』。なんでも布にとても固い魔術的な壁を作り出すらしい。

 

オルガマリーの言葉によると、なんでもコレ一つで、鉄の板を殴っても傷一つつかない所か凹む程には固いらしい。使用者の筋力に寄るが、例えばプロボクサーの二倍の速度で殴ったりすると、石の壁や床でも砕く事が出来るのだそうだ。

 

まあ、俺はそんな速度の拳出せないが。しかしキャスニキの計らいにより、アゾット剣を手に握るとアゾット剣も硬化する機能を付けてくれたため、攻撃力や防御力は増した筈だ。

 

それと、先ほどマシュの盾を利用してカルデアから転送されてきた『アレ』もきちんと魔術礼装に組み込んでいる。師匠、万能の人であるダ・ヴィンチちゃんからのプレゼントだ。俺が自分から突っ込むタイプであることを見越して、こんな時の為に準備してくれていたらしい。なんでもお見通しかよ。それとも俺が分かりやすいだけか?

 

少しでも敵の意表を付けるといいのだが…。

 

俺はグッと簡易グローブを引き締めて、うなずいた。

 

「ああ、大丈夫そうだ」

「そうか。そりゃ上々だ。お嬢ちゃんたちも行けるかい?」

「はい、行けます!」

「うん、大丈夫!」

 

立花とマシュも強くうなずいた。

 

「よし、じゃあ行こう!出発だー!」

「あ、ちょ、ちょっと!何勝手に仕切っているの!?私、私が所長なんだから!」

 

キャスニキの噛み殺すような笑い声と共に、俺たちは廃ビルを出発した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

洞窟にたどり着いた。

 

「ふー、敵とはあまり遭遇しなかったね」

 

立花が安堵したようにそういう。確かに2,3体の敵と戦うだけで済んだのは僥倖だっただろう。

 

「油断しないように。どこから敵が来るか分からないんですからね」

 

それを見て、オルガマリーが諫める様に立花に口を出した。立花は照れたように頭を掻いてコクコクうなずいた。

 

 

「…っ、あぶねえ!」

 

 

その時だった。

 

洞窟の暗闇。その奥が、一瞬ピカっと光ったかと思うと、キャスニキが立花の腕を引いて離脱していた。

 

立花の元居た場所を、ビームのような光の線が通り過ぎ、ソレが空気を割いてたゆませる。俺たちはその弾風に足を止めた。

 

「な、なに!?」

「敵だ。早速信奉者のお出ましかよ。相変わらず聖剣使いを護ってんのか、てめえは」

 

洞窟の暗闇から、ぬっと人影が現れて口を開いた。

 

「ふん、信奉者になった覚えはないがね。つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

「要は門番じゃねえか。何からセイバーを護っているかは知らねえが、そろそろここらで決着を付けようや。」

 

キャスニキが杖を構える。俺と立花が前に出た。

 

「マシュ!」

「はいっ、マスター!守ります!」

「矢の防御は任せたぜ、お嬢ちゃん!行くぜ!」

 

キャスニキが手のひらを滑らせ、空中に文字を刻み火の塊を射出した。

 

「ふっ!」

 

シャドウサーヴァント…エミヤはそれを巧みに足さばきだけで避け、最後に一飛び、矢を弓につがえ打ち出す。すさまじい速度だ。もう人の目では追いきれない!

 

その瞬間、白い髪の毛が揺らぎ、前に出た。

 

「っ!」

 

マシュが盾を構えてそれを受け、爆発する。

 

「くっ、なんて威力…!」

「まだだ!」

 

矢が次いで降り注ぎ、爆風がこちらまで届いてきた。

 

「くうぅっ!」

「お嬢ちゃん、そのまま耐えてな!」

 

キャスニキが爆風に向けて飛び出す。

 

「おらぁっ!」

「なにっ!?杖でランサーの真似事など…!」

「へへっ、なぁに、クラスと趣向は別ってなぁ!」

 

杖が炎を纏い、威力が増した一撃をエミヤは咄嗟に生み出した双剣で防ぐ。双剣が砕け、エミヤは後ろに吹き飛ばされた。

 

「くっ…!」

「まだだよ、悪いがお前さんとそう長く付き合ってるわけにはいかねえんだ!」

「なんだと…!?」

 

キャスニキが杖の先をエミヤに向ける…その瞬間、エミヤの足元から木の腕が生え、エミヤをむんずと捕まえ、そしてーーー

 

「そおら、潰れろ!」

 

すっぽりとエミヤを覆ったまま、その拳を地面に思いっきり叩きつけ、炎上させる。

 

「なんで…さ…」

 

エミヤはそんな言葉を残して消えてしまった。

 

「良かった、敵にもならないみたいね…」

「本当はもっと厄介な奴だったんだが、まあ、今回はノーカンだな。お嬢ちゃんと俺同時に相手しちゃ流石にこんなもんだろ」

 

杖を握りなおして、キャスニキはそういった。

 

「さっすがマシュ!怪我はない?」

「はい、先輩…まだまだ大丈夫そうです!」

「本当に大丈夫なの?言っておくけれどね、貴女の守りが薄くなると、私や立花、天野も危険になるのよ。何か気になることがあったらすぐにでも言いなさい」

 

所長がマシュに詰め寄ってそういう。一目見て怪我がない事はすぐに分かったらしく、それ以上は言わなかった。そんな所長を、立花はじっと見つめている。オルガマリーは少しうろたえた。

 

「…?な、なによ」

「いや、所長って意外と優しい所があるんだなー、って」

「はあっ!?何よそれ!?ちょっと、貴女ねーーー」

「ロマニもそう思うよね!」

『え?ああ、うん…確かに所長はいつも厳しいし、人の事を道具だなんだと豪語していつも怒っているような人だけど、根はとてもいい人だよね!僕は気づいているとも!』

「ロマンーーーー!?」

 

真っ赤な顔をして否定するオルガマリー。立花はそんなことない、優しいの一点張りでさらにやかましい事になっている。マシュを中心に追いかけっこもどきを始めるまであった。

 

「女三人寄ればなんとやら、とは言うがね。俺には何もないってな寂しいもんだ。なあ、マスター?」

「そうだねー」

「ねえ、空太もそう思うよねー?」

 

逃げながら立花にそう言われて、俺は一瞬考えた。確かにオルガマリーはぐちぐち文句を言いながらもマシュや俺のかすり傷を治療してくれたり、マスターとしての心得をちょっとした時間に俺と立花に教えてくれたりしていた。

 

オルガマリーは優しい。ファイナルアンサーだ。

 

「ああ、俺もそう思うぞ!」

「ふぇっ!?なっ、あ、あ、貴方まで…そんな…」

 

ごにょごにょ、とオルガマリーはうつむいて震え始めた。やべっ、からかいすぎた…?

 

「違うって言ってるじゃない!わ、私はただ…!」

「…!」ウンウン

「ほら、ここの薄汚い化け物も頷いているじゃない!」

 

オルガマリーの隣で化け物が頷いて、それを見てオルガマリーはほっと一息、指をさして笑顔を浮かべーーーそして、時が止まった。

 

「…へっ?」

「っちょ、ひええええええ!?ま、マシュ!マシュ、助けなさいマシュ!食べられる!食べられるからああああ!」

「は、はい!」

「はっはっは!そっちのお嬢ちゃんは随分と面白いな!」

 

大聖杯前だというのに、その雰囲気はとても和らいでいた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さて、そろそろ奴さんの足元だ。準備は良いな、お嬢ちゃん、マスター!」

「うん、ガンガン行こうぜ」

「立花、貴女は少しは緊張しなさい」

「マスターは少し肩の力を抜きな。じゃねえと動きが鈍るぜ」

「わ、分かってるって…」

 

立花がいつも通りそういう。流石主人公なだけあって人類の存亡をかけた戦いを前にしてもケロッとしている。そこまで正気でいられる気持ちがもう分からない。SAN値90以上はありそうだ。

 

「ふー…よし、行こうか!」

「ああ!」

「うん!」

「はい!」

 

俺たちは大空洞の中に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

大空洞。その中心にその者はいた。

 

黒い甲冑に、冷たい印象を受ける色素の薄い金髪。鋭い瞳は鷹の様に黄色く、彫像の様に静かにたたずんでいる。

 

その美しさに、俺は思わず目を見張った。

 

「よせ。敵に見惚れるのは良い結果にはならねえ」

 

キャスニキにすぐに指摘されて、俺は頭を振った。

 

「ごめん、もう大丈夫だ」

「気にすんな。確かにアレは目を奪われても仕方がねえ。英雄…それもとびっきりの一級者だからな」

 

 

 

「----------」

 

 

ぶおっ、と、全身が逆立つような。血が一気に冷めるような。そんな感覚に全身が支配された。

 

「なんて魔力放出…あれが、本当にアーサー王なのですか…?」

『間違いない…何かが変質しているようだけど、彼女は本物のアーサー王だ。性別が伝承とは違うけど、それは恐らく宮廷魔術師の入れ知恵だろう。マーリンは本当に趣味が悪い』

「見た目は女だが、甘く見るなよ。あれは筋肉じゃなく魔力放出でカッ飛ぶ化け物だからな」

 

つまり人間型戦車。対城兵器も搭載済みなのは悪い冗談だと思いたい。

 

俺は短剣を取り出して、手に持った。じっとりと手のひらが汗に濡れているのが気づいた。同時に足も震えている。

 

これが、本物の騎士王。前世でも、今世でも、感じたことの無い威圧感に、俺はただただ圧倒されていた。

 

「奴を倒せばこの街の異変は消える。いいか、それは俺も奴も例外じゃないーーーその後はお前さんたちの仕事だ。何が起こるか分からんが、出来る範囲でしっかりやんな」

 

それはつまり、キャスニキの協力はこの戦いが最後だという事。

 

頼もしい戦力が消えるのは悲しいが、しかし聖杯戦争はこの戦いで終わる。つまり、セイバーを倒した後の事を示した。

 

勝てる、と暗に言っている気がした。

 

クーフーリンの力強い言葉に、俺の震えは自然と止まっていた。

 

キャスニキが杖を構えて、マシュが盾を立てかけた。

 

 

ーーーー次の瞬間だった。

 

 

「----ほう。面白いサーヴァントがいるな」

「なぬっ!?」

 

キャスニキが目を見張る。

 

「テメエ、喋れたのか!?今までだんまり決め込んでやがったな!」

「ああ。何を語っても見られている。故に案山子に徹していた…が」

 

アーサー王の目がすっと薄くなり、マシュを見やった。

 

「…?」

「だが、面白い。その宝具は面白いーーー構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう」

「っ…!」

 

ガキィィィッン!

 

「くううううう!」

「なっ!?」

「マシュ!」

 

早い!気が付けば、マシュが剣を受けていた。

 

「っと、させるかよ!」

 

キャスニキが杖を振りかざして爆発を起こす。アーサー王はそれをバックステップで避けた。が、キャスニキの追撃が爆炎を突き破ってアーサー王に追いすがる。

 

「ふっ」

 

が、アーサー王の剣が黒く輝き、それを振り下ろす。すると黒い輝きが斬撃と化して空を飛び、炎の玉を全て撃ち落とした。

 

―――まだ、キャスニキの追撃は止まらない。

 

今度はキャスニキは杖を地面に突き刺した。アーサー王の足元から木の根っこが勢いよく飛び出して、アーサー王を締め上げようとうねる。

 

「ふん、甘い!」

 

それも切り伏せられる。

 

「相変わらず無茶苦茶だな!」

 

キャスニキは苦々しい顔で吐き捨てる。

 

「----卑王鉄槌。旭光は反転する。光を飲め!」

「まずい!宝具が来る!」

「っ、マシュ!お願い!」

「はい!」

 

マシュがキャスニキと交代するように前に出た。

 

「約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

次の瞬間、反転されし暗黒の輝きが、俺たちの視界を時差なく埋め尽くした。

 




誤字を直しました。

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