Fate/GrandOrder Mistake Gift 作:人類悪出入
一体何が起こったの…?
「仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!」
マシュの宝具が反転した聖剣の輝きを阻む。
「くっ・・ああああああ!」
「相変わらずなんて威力だ!」
「耐えて、マシュ!」
黒い光が一気に膨れ上がったかと思うと、ふっと消えた。
「耐えたか…だがーーー」
アーサー王は、再度剣を構える。
「---もう一回、受けきれるか?」
「っ…そんな、また…!」
剣が闇を纏う。と同時にキャスニキが飛び出した。
「させるかよ!」
杖を地面に突き刺す。木の根っこがアーサー王の足元から噴き出し、その身体を縛った。
「ほう…世に聞くドルイドの力か…だが、緩い!」
魔力が膨れ上がり木の根を全てズタズタに破壊しつくす。
「くそっ、無茶苦茶すぎるだろ!お嬢ちゃん、また防げるか!?」
「…正直、さっきの一撃で…もう…!」
「だよなぁ!畜生、行くしかねえか!マスター!サポート任せれるか!?」
「ああ、行くぞ!」
俺はキャスニキに瞬間強化を付与。キャスニキは杖に木の根っこを纏わせ、アーサー王に突っ込んだ。
「しっ!」
杖の突を剣でいなし、横払いで吹き飛ばす。それを空に飛んで身をよじって躱すキャスニキは、更に追撃を行う。
「あのアーチャーに通用したからと言って、そのような攻撃が通用するとでも思っているのか」
「ふん、そうおっかない顔するなよ。ちょっとは付き合ってもらうぜ!」
キャスニキの猛撃に、しかしアーサー王は顔色一つ変えずに全て封殺する。その強力な魔力放出と、驚異的な直感がそれを可能としていた。
「ランサーでもないのに、無理をするなキャスター。ランサーの時ならいざ知らず、今の貴様の攻撃なぞーーー」
「へえ、じゃあこういう小細工はどうだい?」
「なに?」
杖と剣がかち合う。その瞬間、杖に纏っていた根っこが蛇の様に蠢き出し、剣、ひいてはアーサー王に巻き付いた。
「そおら、もう一丁!燃えちまえ!」
杖に火を灯し、更に追撃を行う。アーサー王は魔力による怪力で後退するが、杖の火を受けて炎上した。
「くっ…!やるなキャスター!」
「年季が違うんだよ、年季が!」
魔力を放出して炎を吹き飛ばす。鎧や布で編まれていた服が燃え、肌が見えている。
「これが…サーヴァント同士の戦い…正直手を出せる領域じゃないわ…」
「空太、間違っても突っ込んでいかないでね…?」
立花にそう言われて、俺は思わず黙ってうなずいた。手に巻いた硬化のルーンがむなしく光る。
あれに突っ込んで行けって?さらに聖剣を拳や短剣で受けろと。死ぬわ。少し前の俺をぶん殴ってやりたい気分だった。
「はあ、はあ…」
マシュは肩で息をしながら、それでもいつ攻撃が飛んできても良いように俺たちの前で踏ん張っている。
「マシュ、大丈夫か?」
「ーーはい。少し回復しましたから…」
俺と立花の『応急手当』で傷や体力を回復させたマシュが頷く。
「くそっ、固すぎだありゃあ。対魔力持ちにキャスターじゃあ分が悪いな」
キャスニキが後退してそういった。それにつられて俺はアーサー王に目を向ける。確かに、服の損傷の割に傷はあまりついていない。
逆にキャスニキはすれすれで剣を回避していたのか、身体の至る所に傷を増やしていた。
「『応急手当』---キャスター、勝てそうか?」
「ああ…って言いてえところだが、火力が足りねえ。宝具を打ち込みさえすりゃ勝てそうだが、そんな隙見せるとは思わねえ」
言葉を交わすが、やはり厳しいか。
「何を駄弁っている」
聖剣を持ったアーサー王が、こちらに顔を向けた。
「こんなものか、別の時代のマスター共。もう少し私を楽しませろ…!」
「魔力が…!」
「くそっ、また来るのか、あれが!」
魔力が膨れ上がり、空気を押し広げて波紋を呼び起こす。
「…卑王鉄槌ーーー旭光は反転する。光を飲めーーー」
そして、再度マシュが前に立ち、宝具を開帳しようとした、次の瞬間だった。
どっがああああああああん!
と、洞窟の壁が外から吹き飛ばされた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あれは…!?」
ぱらぱらと小石が降り注ぐ中、洞窟の壁をぶち破って現れたその巨大な壁に俺たちは戦慄する。
「ガァァァァァァァァァァァァ!」
うるせえ!鼓膜が破れる…!
「バーサーカー…!やはり聖杯では縛り切れぬか…!」
バーサーカー…ヘラクレスは、その場にいる全員に対して鋭い眼光を放った。
嘘だろ…!?本編じゃあ、バーサーカーはアインツベルン城から動かないはずじゃ…!?
「そんな、どうしてバーサーカーが…!?」
「キャスターの話が本当なら、あれは12回殺しても殺しきれない、神々の試練を突破した半神半人の大英雄、ヘラクレス…!こちらから接触しなければ、向こうから干渉されることはなかったんじゃないの!?」
「俺にも分かるかよ!今分かることは…あの筋肉達磨、ここにいる人間全員敵としてしか見ちゃいねえってことだ!」
オルガマリーの半狂乱の声に、キャスニキの苦々しい回答。これには立花も目を見開いている。
「アーサー王に大英雄ヘラクレスーーー両方を相手取って勝てるとは到底思えません!撤退を!」
マシュの叫びに同意したのは、オルガマリーだけだった。
「ええ、そうね!立花、天野!撤退よ撤退!一度引いて態勢を立て直すの!」
「…いや、それは無理です、所長…」
俺は呆然とつぶやいた。
「一度でも背を見せたら、あの聖剣が飛んでくる…!」
「そんな…」
立花の言葉に所長が絶望を顔に浮かべた。
「…どうする、マスター、お嬢ちゃん」
キャスニキが視線を前に向けながら、俺と立花に問いかけた。
俺はーーー答えることはできなかった。もうどうしようもないんじゃないかという思いが首をもたげた。逃げても聖剣で殺され、向かっていっても死ぬだろう。
黙る俺の代わりに答えたのは、立花だった。
「ーーー特異点は、あの子を倒したら消えるんだよね?」
立花の言葉にキャスターは、「ああ」と端的に答えた。
「じゃあやることは初めから変わってない。アーサー王を倒そう」
「どうやって?」
「えっ!?どうやってって…どうしよう、空太!」
「はあ!?」
呆然と立花とキャスニキのやり取りを眺めていた俺に、唐突に声がかかった。
いや、どうしようって、今そのタイミングで俺に聞く!?
というか、何も思い浮かばずに断言してたの立花さん!?
…手の震えが止まった。
「…キャスニキ、宝具当てたら確実に倒せるんだよな?」
「ああ…って、キャスニキってなんだ?」
キャスニキは妙な顔をしながらうなずいた。
「…マシュ、立花。あれを食い止めれるか?」
「…!マシュ!」
「はい、先輩!できるかどうかは分かりませんが、全力で行きます!」
俺はその言葉を聞いて、そして思いっきりため息を吐き出した。
そうしないと、肺に空気が溜まって爆発しそうだったから。
「---よし、じゃあ俺とキャスニキでアーサー王を倒す。立花とマシュはバーサーカーを食い止めてくれ!」
「うん!」
「はい!」
俺の言葉に立花、マシュが返事をした。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
それにオルガマリーの金切り声が遮る。
「あ、貴方たち…正気なの?あんなのに正面から挑もうっていうの…!?」
「所長…」
「…私は、もう…足が震えて…!それなのに…貴方たちは…!」
見ると、所長はへたり込んで座っていた。どうやら恐怖で腰が立たないらしい。
「…所長!大丈夫!」
「…へ?」
「絶対勝ってくるから!だから、所長も力を貸して!」
立花が、手をオルガマリーに差し出した。
「…」
オルガマリーはその手を凝視して、そして俺に視線をやった。そして顔をこわばらせる。
今のはなんだろう、俺なんかには負けられないというような、そんな感じの心情なのだろうか…?
「…分かったわ。その代り、絶対に勝ちなさい!所長命令よ!」
「うん!」
そういって、オルガマリーと立花、マシュはヘラクレスに向かって走って行った。十分距離がある為、二つの戦場がかち合う事はないだろう。
立花のサムズアップを見送った。
「…正気か貴様。たった一騎のサーヴァントで、先ほどの小娘もなしにこの私に勝とうと…?」
「…」
俺はアゾット剣を握りしめてアーサー王を睨みつけた。
震える足は武者震いだ。睨みつけるのは、余裕がある証拠だ。
強がりでもなんでもいい、つまりは勝てばよかろうなのだ。
「マスター。こういっちゃなんだが、勝算はあるんだろうな?」
キャスニキがにやにやしながら俺にそういってくる。
「ああーーーー成功する確率は低いけど、やるだけの価値はあるだろ」
俺は堂々と言い切る。それを見て、キャスニキは狂犬のように歯を見せて笑った。
「へへっ、今回はマスター運に恵まれたようだな!さぁて、セイバー!悪いが全力で行かせてもらうぜ!」
「…来い。全て切り伏せてやる」
俺はアゾット剣を、キャスニキは杖を構える。アーサー王は、例に漏れず構えなどせず、魔力放出のごり押しをするつもりなのだろう、全身に魔力を纏った。
マシュとヘラクレスがぶつかったのだろう、向こうから爆発音が轟く。
「…行くぞっ!」
俺は地面を蹴った。