Fate/GrandOrder Mistake Gift 作:人類悪出入
「ちょっとそこの。来てくれるかしら」
訓練の間の休憩時間、いつもの様に共有スペースで寛いでいると後ろから声をかけられた。
振り向くとそこにはきつく目を吊り上げた、所長の姿があった。
「あ、はい」
「貴方、確かダ・ヴィンチの弟子とか名乗っていたわよね。今どこにいるか知ってる?」
「えっと、この時間だったら、普通に工房の方で作業してるんじゃないですかね」
そう答えると、所長はさらに目を吊り上げた。
「いないからあんたに聞いてるんじゃない!はー、他に心当たりはないの?」
「ええ…」
そう言われてもな、と考えて、そしてふと思い出す。
「そういえば、たまにドクターのところに顔を見せに行ってるって話してたから、そこじゃないですか?」
「はあ?そうなの…分かりました。ありがと」
そう言って、所長はスタスタと去って行った。
「忙しそうだなぁ」
若干目が死んでた気もする。確か今はかなりきつい時期だったんだっけ。若干体が細っこいし、ちゃんと食ってんのかな。
「あ、そういえば貴方!」
「へ?」
ツカツカと所長が戻ってくる。
「随分前に、勝手に召喚システムを起動したそうですね!あのね、ここでは私がトップなんです!勝手な事しないでくれる!?」
「え!?」
まさかここに来てバレていたとは。俺はがなり立ててくる所長の圧に押されてのけぞった。
「ご、ごめんなさい」
「ふん、貴方もどうせ私のことを下に見てるんでしょうけどね、カルデアは私の、アニムスフィアの所有物なのよ。貴方の様な勝手な人がいたらねぇ…」
「す、すみません…でも、下に見てるわけではなくてですね…」
「じゃあなんだって言うのよ!」
いや、だって魔術師が多いマスター候補の中で、魔術も戦闘訓練も全くど素人だった俺が他の人間に追いつくためにはーーーむしろ生き残るためには仕方ない事だったわけでして。
と言うことを話すと、
「そもそも一般枠のマスター候補には期待していません!」
と断言されてしまった。
「全く、レフもレフよ。ずっと黙ってたなんて…他のマスターも勝手にいろいろしてるみたいだし、そんなに私のことが信用できないの…」
そう言えば、所長はレフに依存しているんだったか。マスター適正がないのとか若いうちに所長になっちゃったとかで、傷心に付け込まれたらしいが。
ここは俺が励まして、少しでも所長のストレスを和らげなければ。というかこんな可愛い子があんな最後迎えるなんて、お父さん許しませんからね!
「そんな事はありません、少なくとも俺は、所長が頑張ってる姿に感動してこうしてカルデアで頑張ってるんです!」
「へっ?」
ぽかんと口を開ける所長に俺はまくし立てた。
「召喚の件に関しては謝罪します。だけど、所長が頑張ってるのに、俺は何もできない…俺はそんな事実が歯がゆくて、少しでも力になれたらなって俺は…俺は…!」
いつのまにか所長の肩を手で掴んで力説していた。俺はハッと我を取り返し、すぐに離れる。
「…」
所長がフリーズした。あれ、墓穴掘ったか?
「あの、所長?あのー…?」
「はっ…!な、い、い、いきなり何を言いだすかと思えば…!あ、あ、あなた、あなたにぇえ…!」
ひいっ、顔が真っ赤!めっちゃ怒ってらっしゃる!?
「も、もう良いです!まあ、貴方の心意気は伝わりました…召喚の件に関しては不問にしましょう」
「え…?い、いいんですか?」
「何か不満がありますか!?」
「な、ないです!」
所長は真っ赤な顔を背け、ふんっと鼻を鳴らした。
「…貴方、名前は?」
「え?えっと、天野空太、です」
所長の肩が一瞬止まった。
「ふーん、貴方が天野空太なのね…」
「えっと、それが何か…?」
「何でもありません。そろそろ訓練に戻りなさい、天野。人類の未来は、貴方の肩にもかかっているのだから」
そう言って、所長は歩いて言ってしまった。そういえば師匠に用事があるんだっけ。
「マズったかね…?」
まあ、過ぎた事は戻らない。気にしても仕方のない事か。
その日の夜、師匠からこの事を盛大に茶化されたりしたのだが、今の俺には知るヨシもない事であった。