Fate/GrandOrder Mistake Gift   作:人類悪出入

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特異点F 炎上汚染都市 冬木
7話目


「…ここ…は…?」

 

俺はゆっくりと起き上がって、そして辺りを見渡した。

 

目を覚ましたその場所は、炎が燃え盛る廃街だった。

 

「…ここは…冬木市か…」

 

俺はまずほっと胸をなでおろした。意味消失しなくて良かったと本当に思う。確か90%以上の確率で消えるんじゃなかっただろうか。なんというか、紐無しバンジージャンプをやって生き残った後のような気分だ。

 

「…おーい、マシュ?主人公ちゃーん」

 

俺は立ち上がってそう呼び掛けた。

 

…返事はない。

 

ははは、おいおい。待ってくれよ。

 

「ドクター!ドクター、応答してくれドクター…!マシュ、ドクター!」

 

しばらく無為に声を張り上げて、そして俺はようやく諦めた。

 

しょっぱなから特異点で化け物やサーヴァントがそこらへん闊歩しているような場所に独り放り出されて、しかもカルデアのサポートもないとか。

 

何それ無理ゲー。やばすぎるだろ。

 

「…くそっ、とりあえず…寺を目指すんだっけ?」

 

俺は辺りを再度見渡した。

 

「いや、どこだよ…」

 

はー、とため息を吐き出しながら、とりあえず俺は概念礼装であるアゾット剣を取り出す。問題なく出し入れする事が出来る。

 

「…『応急手当:LV1』」

 

次にスキルを使う。やけどや打ち身をしたのか、ヒリヒリしていた場所が無くなって、身体が幾分か軽くなる。魔術礼装の動作も滞りはない。

 

よし、準備はこれでいいか。

 

俺は周囲を探索する事にした。何はともあれまずはマシューーーもう一人のマスターと合流しなければいけない。

 

そうしてマシュとマスターを探しに歩き始めたのだが、角を曲がったところで、視界に現れた影に俺はとっさに隠れていた。

 

「…っ、まずいな…!」

 

見ると、スケルトンが何体か群れて歩いていた。

 

今の俺じゃああいつらと戦うのは無理だ。無理無理。今着ているカルデアの魔術礼装の『瞬間強化』を全力で使っても星1のLV1サーヴァントと同じかそれ以下程度の強さしかない俺には、あれらと戦うのは無謀というものだった。

 

「この道はいけないな…他の道を探そう」

 

ため息を吐き出して、回れ右をして歩き出そうとした、次の瞬間だった。

 

俺の目の前に、骸骨の真っ黒な瞳と、白く輝く影が鋭くこちらへと向かって来ていた。

 

「はあっ!?」

 

俺は驚愕しながらも、不意打ちに打ち込まれた錆びた剣をアゾット剣ではじこうとして、そのあまりの重さに足で踏ん張った。

 

(重っ!?)

 

 

アゾット剣に魔力を込めて強度を増して、刃に滑らせるように剣をいなす。そして身体ごとゴロゴロと前転。すぐに距離を取った。

 

(敵の数はーーー!?)

 

素早く辺りを見渡して、敵が不意打ちしてきたスケルトン一体だけであることを確認する。

 

「肩慣らしってか…!」

「ギャギャギャギャギャ!」

 

俺はアゾット剣を握りしめて、すぐにスケルトンへと肉薄した。声に反応してさらに敵がわいてくる可能性がある。速攻で仕留めてすぐにここから離れるべきだ。

 

振り落とされた剣を上半身をそらして避けて、その胸にアゾット剣を叩き込む。その際に魔力を開放して攻撃力を増させる。当たった部分の骨が大きく欠けて、スケルトンはその骨だけの身体を吹っ飛ばした。

 

「まだだ…よ!」

 

剣を持っていた方の腕に追撃を仕掛けて、剣を落とす。最後に頭蓋骨に短剣を突き立てた。

 

「ギャ…が…」

 

スケルトンは沈黙し、そしてすぐに黒い煙となって消えていった。

 

「ふう…一対一だと問題ないか…」

 

あー、怖かった。っとと、一息ついてる暇はねえか。

 

「って、うわっ」

 

そこから距離を取ろうとした俺の足元に、何かが飛来して突き刺さる。

 

「弓…って、まずい!」

 

遠くの方でスケルトンが弓を使ってこちらに狙いを付けているのが見えて、俺は走って遮蔽物に身を滑り込ませた。割とすぐ近くの空気を割いて飛来する矢が心底怖い。

 

と、隠れたら、次は俺が行こうとして引き返した道の方向から、ガチャガチャと骨の擦れる音がする。こっちに来ているようだ。

 

「くそっ、どうする…!?」

 

流石にあの数を相手にして戦うなんて、出来っこない。そもそもアーチャーのスケルトンがいる時点でやばい。

 

逃げようにもアーチャーがいるし、今逃げ出すと足音に反応して向こうで群れていたスケルトンが絶対に追ってくる。

 

つまり、詰みという奴だ。

 

「…はー、くそっ、どうするかな…」

 

ここまで絶望的な状況だと、逆に笑えて来る。

 

ああもう、腹くくるか。

 

「…『瞬間強化:LV5」

 

俺は自分の身体を強化して、小石を拾い上げて自分の身体を遮蔽物から飛び出して晒した。

 

「遅え、よ!」

「ぎえっ!?」

 

すぐに矢が飛んでくるのを、強化した身体で避けて、カウンターに小石を全力で投球した。狙いは寸分たがわずアーチャースケルトンの頭に吸い込まれるようにしてぶち当たった。

 

「よし!」

 

瞬間強化で目まで強化出来て良かった!そう思いながら駆け出す。

 

「ギャギャ!」

 

後ろからガチャガチャとやかましい足音が追いすがってくる。

 

「くそっ、やっぱりバレるか!」

 

俺はぼやきながら、出来るだけ広い場所まで誘導して敵を返り討ちにすることにする。

 

スケルトン。身体に肉が無い所為か、ほぼスタミナの上限が無いため、逃げ続けても恐らくいつかは追いつかれて、消耗戦になって死ぬだろう。

 

「これが、特異点、か!」

 

後ろから飛来する剣の切っ先を跳ね返して、その肋骨に師匠直伝の掌底をぶち込んでやる。身体を強化しているため面白いほど吹っ飛んで、他の敵を巻き添えにしてぶっ倒れた。俺はそれに追いすがって首を飛ばす。

 

「よっと、おら!」

 

連携も何もない攻撃を、剣を使っていなし受け流し、または身体をひねって避けて、そして隙を見つけては首を飛ばす。四方八方から飛来する斬撃に、俺の身体に多数の切り傷が出来た。

 

「っ…!くっそ、多勢に無勢だなぁ!」

 

5体目を切り倒して、残りは10体程度。あまりの絶望に口角が上がりそうだ。

 

「ぶっ!?」

 

剣を弾き飛ばしてやったら、思いっきりほほをぶん殴られた。口が切れて血が出る。視界が涙で滲むほど痛い。

 

「やりやがったな…!」

 

足元の石を拾って牽制しつつ、そいつの背中にアゾット剣を突き刺して、魔力を開放して中から壊してやった。

 

「はあ、はあ…強化切れたか…」

 

がくっと身体が重くなる。

 

「『瞬間強化:LV5』」

 

バフをかけなおす。俺の魔術礼装はダウィンチ師匠と俺が改造した特別性。スキルの魔力消費を少なくしつつ、また小出しでスキルを発動できるようにする事でリキャストタイムを少なくすることに成功。さらに服自体にダメージカットの効果だ。

 

「とはいえ、これじゃ消耗戦だ!」

 

何時か俺の体力か魔力が切れて死ぬ。

 

何とか状況を打開しねえと。俺は迫ってくるスケルトンから距離を取りつつ、様子をうかがう。

 

と。矢が飛来する。奥の方でアーチャースケルトンが弓をつがえている。

 

「とわっ、あぶねえ!」

 

矢をとっさに身体をひねって避けるが、そこに剣を持ったスケルトンが大ぶりの攻撃。これも避ける。次はその後ろからスイッチしてきたスケルトンの突き。避けれない。

 

「うおっ…!ぐあっ!?」

 

突きをいなした瞬間、腹にけりを叩きこまれて俺は吹っ飛ぶ。

 

「ぐっ…!」

 

痛い。大分クリーンヒットした。俺は地面に倒れ込んで、そしてすぐに起き上がってバックステップ。俺がいた場所に剣が2本突き刺さる。

 

「容赦ねえ、な…」

 

まあ、相手に容赦できるほどの脳もないんだろうが!

 

レイシフトしてきて一瞬でピンチに陥るとか。主人公はマシュがデミ・サーヴァントになっていたから何とかなった訳であって、ただの素人マスターが来たらそりゃこうなるわ。

 

そもそも、このカルデア魔術礼装だってサーヴァントをサポートする事が前提な訳だから、俺に使っているのがおかしいんだけどね。ちなみに使いすぎると副作用に筋肉痛が酷くなる。あまり多用はしたくない。

 

魔力もそろそろやばいし、流石にこれは…。口から垂れた血を拭って、スケルトンを睨む。

 

そう思った、次の瞬間だった。

 

「ぎゃああああああ!?」

 

目の前のスケルトンたちの足元が、一気に火に包まれて火柱に飲まれた。激しい熱量に耐え切れずに消えていくスケルトン達を、俺は呆然と見るしかない。

 

「へへっ」

 

頭上から声が落ちてきて、そして水色の影がすっと地面に降り立った。水色のローブに木でできた杖。面倒見のよさそうな、酷く整った勝気な顔つき。

 

その男は、にやりと俺に笑いかけて、そして口を開いた。

 

「よお、坊主。悪くねえガッツだったぜ?」

 

その男はーーー光の御子クーフーリンは、杖を肩に置きながら、そういった。

 

って、クーフーリンんんん!?

 

なんで!?なんでここにクーフーリンいるの!?

 

「あ、貴方は…!?」

「俺か?俺はキャスター。まあ、本当は助ける義理なんざないんだがーーー見どころのあるガキは嫌いじゃねえ。構えな、坊主。もう2,3体は倒せるだろ?」

「…あ、ありがとう…!」

 

俺はすぐに立ち上がって、アゾット剣の柄を握りなおした。

 

「よし、それでいい。いいねぇ、骨のある若いのは。見てると血がたぎる。それに戦い方も悪くねえ。全てを見通して、どんなもんでも自分の有利な方向に行く様利用する狡猾さ。センスがある…だが、戦い方を視りゃ分かる。まだてんでど素人、本番を迎えたのは今回で初めてなんだろう?」

 

ドンピシャな推理に、俺は目を真ん丸にして驚愕した。確かに今回で本番は初めてだ。今まで仮想空間での戦闘訓練だけだったし。

 

「そんな事まで分かるのか…いや、今はそれよりも。キャスターさん。誰かは知りませんが、ご助力感謝します」

「よせやい。そういうむずかゆいのは苦手なんだ。ま、詳しい話や自己紹介は荒事の後ってね。まずは目の前の骸骨どもを蹴散らすとしようや!」

 

「んじゃ、いくぜ!」と、言いながら、キャスターは杖を振りかざした。サーヴァントの力はまさしく一騎当千で、俺が苦戦していたスケルトン達がまさしくちぎっては投げちぎっては投げの状態だった。

 

(すげー、これがサーヴァント…!)

 

そのあまりの強さに、スケルトンの首を跳ね飛ばしながら俺はただただ息を飲む事しかできなかった。

 

ただ、キャスターなのに嬉々として杖で殴打している姿には、それでいいのかキャスター、とかすかに思ったのは内緒である。

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