Fate/Grand Order 凡夫なりし月の王 作:キングフロスト
何故、第一節からではなく、プロローグの時点から序章が始まっていたのか……。
それは、全てはこの為だったからさ!
と、茶番は置いといて、本編どうぞ。
第十節 再会
「お………て……」
近くから、誰かの声が聞こえる。
私は、一体どうなった……?
起きようと思っても、体が休息を欲しており、瞼が異様に重く感じる。
このまま、怠惰のままに微睡みの中に沈んでしまいたい欲求が、脳の奥底から湧き上がってくる。
「……き…………い!」
また、誰かが私を呼んでいる。
だけど、今はゆっくり休ませてほしい。疲労と火傷の痛みで、思考する事がもう辛いのだ。
「起きなさいって言ってるでしょうが!!!!」
「ぶへぇ!?」
何かとんでもない衝撃を頬に受け、
「うぅ……ほっぺがすごく痛い……!!」
目覚めた私は何が起きたのかと、痺れる腕でどうにか体を起こすと、目の前には───
「オルガマリー!?」
爆発の際に見失ったはずの、私のマスターが居た。
「何ですか、その素っ頓狂な声は? 驚きたいのはこっちよ……」
上から覗き込むように屈んでいた彼女だったが、私が目を覚ました事で安堵したのか、その場でへなへなと座り込んでしまう。
私はといえば、オルガマリーが無事でいてくれた事が嬉しいあまり、起きたばかりの態勢のままに彼女へと抱きついた。
「な、なに!? なんなの!?」
「良かった……!! 本当に良かった……!! あの爆発で、死んでしまったのかと……」
私は彼女の無事を確かめるように、手をオルガマリーの体へと何度も何度も這わせて再確認する。
特に大きな怪我もないようで、五体満足、最後に見た時の何も変わらない彼女が、確かに私の目の前に居たのだ。
「わ、分かったから。とにかく落ち着いて。わたしだってまだ状況の把握が出来ていないのだから」
「……あ、ごめん」
背中を撫でられて宥めてもらい、私はようやく心の整理がつくと、ゆっくりオルガマリーから離れる。
改めて見るが、傷も一切見られない。
だが、あの爆発の中で全くの無傷とは、一体何故……?
「ここはどこなの? この様子だと、カルデア……というワケではなさそうね」
周囲の光景を前に、冷静に分析を始めるオルガマリー。
しかし、私はこの時やっとマシュと藤丸の事を思い出す。あの時、機械が勝手に起動し、私と藤丸は半強制的にレイシフトしたはずだ。
もしかしたら、一緒にマシュも飛ばされたかもしれない……。
「オルガマリー、多分ここはレイシフト先の過去の世界。あの時、私と藤丸、そしてマシュは急にレイシフトのアナウンスを聞いて───」
「待って。レイシフトって言ったの、あなた? まさか、まだそんな時間ではなかったはずよ。それに、どうしてわたしまで……」
そういえば、オルガマリーはマスター適性が無いために、レイシフトは出来ない……と言っていた。ならば、何故?
ここがレイシフト先の過去の世界である事は、状況から考えても確実だろう。なのに、どうしてオルガマリーはここに居るのか……。
「……、あなた。今爆発がどうこうって言ってたわよね。一体何が起きたの? どうにも、レフに壇上に登る事を勧められてから、それ以降の記憶が曖昧なのよ」
なら、オルガマリーはあの惨状については何も知らないのだろう。黙っていても、いずれは知る事になるのなら、今言ってしまったほうが彼女にとっても良いはずだ。
私は、管制室で見たこと全てを彼女に話した。燃え盛る管制室。瓦礫に囲まれ、数多くの亡骸が横たわっていた事。そして、藤丸とマシュとの事を。
話すにつれ、どんどんオルガマリーの顔色が悪くなっていくのが分かったが、途中で止めても意味がない。
心を鬼にして、ありのままの地獄の如き管制室の様子を伝え終わった頃には、彼女の顔からは一切の余裕が失われていた。
「そんな……わたしの、カルデアが……」
「起きてしまった事はもう仕方ないよ。それより、マシュと藤丸はどこか知らない? ここに倒れていたのは私だけだったの?」
問いかけにも、絶望したような表情のオルガマリーはまるで答えない。何度か強く肩を揺さぶってやっと、オルガマリーも正気に戻ってきたようだ。
「……分からない。わたしも、気が付いたらここで倒れてて……。近くを見たら、すぐそばにあなたが倒れていただけ。他には誰も見ていないわ……」
……。なら、レイシフトの際に彼とは別の場所に飛ばされてしまったのかも。
この時間軸に私と彼が共に存在しているのは間違いないとして、距離がどれほどのものかは検討も付かない。
それに、気になるのはマシュの容態もだ。レイシフトで瓦礫からは抜け出せたとして、すぐにでも手当てしなければまず助からない程の重傷だったはず。
加えて、藤丸は魔術に関しては全くの素人と聞いていた。治癒の魔術など使えるワケがなく、かといって用具もない場所で応急手当てなど困難を極める。
「オルガマリー。治癒の魔術に心得は?」
「あるには、あるけど……」
「よし。なら、早くマシュと藤丸を探し出そう。急がないとマシュの命が危ないの」
放っておけば間違いなく出血多量で失血死する。助けられるかもしれない命を、むざむざ見殺しになどしてなるものか。
あの時、マシュを瓦礫から助け出せなかった分、無力さに打ちひしがれていた私は、今度こそ救おうと、より気合いが入るというもの。
オルガマリーはまだショックを引きずっているが、とにかく今は生きる事を優先して行動するべきだ。それは、自分たちだけに限った話ではなく、仲間同士で助け合いながら。
私のこれまでの経験則も、それが正しい選択であると語っている。
「……何だっていうのよ」
二人を探し出すために歩き出した私の後ろでは、運命を呪うように愚痴を零しながら付いて来るオルガマリーが。
───本当は、さっきの説明の時にわざと言わなかった事がある。
……レフの事だ。オルガマリーは、心の底から彼を信頼し、信用しているようだった。だからこそ、そのレフこそがあの爆発を引き起こした張本人である可能性が高いとは、どうしても告げられなかった。
これ以上、不必要に彼女の心を傷付けるべきではないと思ったから。
どれほど歩いただろう。
二人の捜索を開始してから、もう20分は経っている。腕の端末で確認していたので、それは間違いない。
負傷した足はオルガマリーが魔術で治療してくれたので問題なく動く。額の傷に関しては、行動する上で特に支障はないので、彼女の魔力節約のためにも治療は断った。
端末で思い出したが、カルデアからの連絡があるかとも思ったのだが、一向にその気配はない。
まだ向こうの騒ぎも収まっていないのだろうか。
「……白野。本当にマシュと、その、藤丸? とかいうマスター候補もレイシフトしたの? 話の通りなら、さすがにマシュはもう……」
「そんなの分からないよ。藤丸が応急手当てを出来て、一命を取り留めているかもしれないし。それなら、オルガマリーの治癒魔術は必要になってくる。それに、私と彼は同じ場所でレイシフトされた。しかも、対象は私じゃなくて彼の方だったもの。きっと彼もここに飛ばされてる」
私がレイシフトされたのは、同行するサーヴァントとして認識されたからだろう。それに、主なマスター候補として適任だったのが彼だけだったというだけで、生存者はオルガマリーのように同じくレイシフトされたかもしれない。
なら、マシュだってここに飛ばされた可能性は否めない。
とにかく、こんな絶望的な状況下にあるのだ。せめて希望だけは捨てず、前に進まなければ。
「……それにしても、何なのよここは?」
オルガマリーの言葉に、私も改めてこの周囲を見渡してみた。
レイシフトの座標は日本のとある地方都市、冬木と設定されていたが、およそ都市には程遠い光景が広がっていたのだ。
いや、
管制室のあの光景も地獄だったが、こちらもそれに引けをとらない地獄の様相を見せていた。
「! ちょっと! まさか、これって……!?」
と、オルガマリーが何かを見つけたらしく、振り返り彼女が何を見て驚いたのかを私も確認する。
すると、
「……なんて
オルガマリーの視線の先にあったもの、それは人間の死体だった。しかも、単なる死体ではない。
おそらくは男性だが、判別が難しい。何故なら、何か鋭利なもので斬り殺されたかのような、鋭い傷跡が幾つも全身に刻まれていたからである。
「死体、よね……? この様子だと、死後かなり経っているようだけど……。この時代の、この街の住人かしら」
「………、」
これは、天災による死ではないだろう。何者かによってこの人は惨殺された。それも、かなりの悪意や憎悪を持った者による仕業だ。
常人がこれまで執拗に切り刻んだりなどはしない。いや、まあ常人ならまず殺人などしないだろうが。
でも、この死体は常軌を逸している。
「オルガマリー」
私は、なるべく静かに語りかけるように、オルガマリーの名を呼んだ。
これは何者かがやった事。なら、死後かなり経過していようとも、その犯人がまだ近くに居てもおかしくはない。
そして事実───
「近くに何か……居る」
「……っ!!」
私は何かの気配を感じていた。少し離れた所、瓦礫の後ろ辺りか? 何か動く存在が居るような、直感。
伊達にアリーナでエネミーハントをしていたワケではない。サーヴァントとなった事もあってか、より感覚が研ぎ澄まされている。
だが、これは困った。私は戦う手段を持っていない。コードキャストでもあれば、まだ話は変わってくるのだが、あいにく今は持ち合わせがなかった。
レガリアだって、これは本来のレガリアの残滓のようなもの。あまりアテにしないほうが良いだろう。
緊張が走る。オルガマリーも私の後ろに隠れるように様子を窺っているようだ。
やがて、炎の燃える音だけが響いていたこの空間に、大きな変化が訪れた。
瓦礫の後ろに居た、何か。それが、私たちの前に姿を現したのだ。
「なに、あれ……!?」
オルガマリーが息を呑むのが分かる。私も、初めて見たその異形に、驚きを禁じ得なかった。
現れたのは、何の変哲もない骸骨だった。人間のものだろう。
それが。
手には刃先の欠けた刀を。辛うじて布切れがくっついているが、肉は根刮ぎ落とされたようにまるで付いていない。
正真正銘、骸骨そのものが、意思を持ったかのように動いていたのだ。
「……!! 来る!!」
骸骨はこちらを向いた途端、カタカタと骨を鳴らせて、辿々しい足取りで、なのに想像以上に早く私たちの方へと走り出した。
「オルガマリー、ガンドは撃てる!?」
「撃てるけど!? まさか、わたしにアレを倒せって言うの!?」
「だって私、まだ自分のクラスも分からないし、戦う手段が無いもの! ほら、早くしないともうすぐこっちに着くよ!?」
「ああもう!! 分かったわよ、やればいいんでしょ!?」
かなり嫌々ながら、私の陰から隣へと飛び出したオルガマリーは、指で拳銃を形作ると、人差し指から
一発、二発。しかし狙いが反れてしまい、骸骨には着弾しない。
「くっ…!! 当たれ、当たりなさいよ!!」
「焦らないで! しっかり狙いを定めて!」
土壇場で、それも怪物に襲われようとしているのだ。恐怖と焦りで狙いがズレてしまうのも仕方ない。
だが、彼女は優秀な魔術師だ。集中すれば、あんなデカい的に当てられないはずがない。
「合った! シュート!!」
もうあと二メートル程という所まで骸骨が迫って、ようやくピントが合わせられたのか、オルガマリーのガンドはスケルトンの頭部目掛けて一直線に放たれる。
撃ち出された弾丸は、スケルトンの頭部に直撃すると同時、その頭蓋を完全に打ち砕いた。
すると、骸骨はピタリと動きを止めて、間もなく盛大に音を立てて崩れていった。
「やった……? やったの……?」
「勝てたよ、オルガマリー! さすがは私のマスター!!」
「
今頃、私が残念なサーヴァントだという事に気付いたのか。なんというか、遅い。
「何はともあれ、ひとまず危機は去ったね。さあ、二人の捜索を再開……、」
と、私は言葉の途中で思わず口が固まる。
私の様子が変だと訝しむオルガマリーに、私は自らの視線の先を指差し、彼女に起きている事態を伝えた。
「冗談、でしょ……?」
その視線の先に居たのは、さっきと同じような骸骨が、10体ほどで大挙してこちらに押し寄せている姿だった。
「……殲滅、出来る?」
「遮蔽物を駆使すればどうにかなるとは思うけど、こんなに一斉に来られたら一人じゃ無理よ!!」
うん。なるほど。
よーし、それなら取るべき行動は一つだな。ここは───
「逃げるよ、オルガマリー! 走って!」
「結局!? わたし、あまり運動は得意じゃないのにぃ!!」
一目散にその場を離脱した。
無論、骸骨の群れは私たちを追ってくる。およそスタミナという概念が有るようには見えない化け物だ。
このまま逃げているだけでは、いつか追い付かれてしまうだろう。何か手を考えなければ。
泣き叫びながら走るオルガマリーと、どうにか反撃の手段はないかと考えながら走る私。
時間にして10分は走ったところで、ついにオルガマリーに疲れが目立ち始めた。
私はサーヴァントであるからか、まだ余裕がある。(実際はアリーナで鍛えた足腰のおかげだが)
ここは私が囮となって、オルガマリーから奴らを遠ざけるか……?
「敵性体捕捉。これより脅威を排除します、先輩!!」
……今、のは。
走る私たちの横合いから聞こえた、少女の声。私は、その声の主を知っている。
薄紫の髪を持つ、その少女の名は───
「ああ! 任せた、マシュ!!」
これを書いてる時はもっぱら白野のMMD動画見てます。踊るはくのん超可愛い。踊る白野くんマジイケ魂。