Fate/Grand Order  凡夫なりし月の王   作:キングフロスト

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※文字数は回によって長かったり短かったりします。


第二節 アニムスフィアの系譜

 

 扉を開けて入ってきたのは、気の強そうな美人。腰まで伸びた長い銀髪を三つ編みサイドテールにしている。多分、そこがチャームポイントなのだろう。

 

 服の上からでも分かる、それなりに豊満な体つきは、同じ女の私から見ても羨ましいとさえ思う。

 容姿に関してはパーフェクト。どこも文句のつけどころが無い程に、整っていると言っていい。

 

「わたしの名は『オルガマリー・アニムスフィア』。話はロマニから聞いているわ。召喚の際に不具合が有った事で、あなたのステータスに問題が起きているそうね。現状問題なのは主に身体、次点で記憶。でも予定しているレイシフト当日までには、どうにか身体面の方は目処が立っているそうよ」

 

 オルガマリーと名乗った女性は、私の横たわるベッドに腰掛ける。

 いきなりの事に驚き、私が目をパチクリさせていると、

 

「何よ。あなたはわ・た・しのサーヴァントでしょう? そのわたしのサーヴァントが使っているベッドに、あなたのマスターであるわたしが腰掛けてはいけないのかしら? それに同じ女同士。何も問題ないわ」

 

「いや、別にその通りだけど……」

 

 な、何という高慢さ……!

 同じマスターとして、ここはビシッと言わないと。……あ。今はマスターじゃなくて、この人のサーヴァントなんだった。

 

「話を戻しますが、あなたはサーヴァントではあるけど、どのクラスに当てはまるのかは不明だそうね。しかも見たところ、私より年下の少女───高校生辺りかしら? 服装はそんなだけど、どことなくあなたからは近代の匂いがするわ。なら、キャスターかしら。それならそれで、三号と被ってしまうわね……」

 

 なるほど。既にカルデアに居るサーヴァントのクラスは、キャスターらしい。ふむ、キャスターは戦闘向きのクラスではない事が一般的だ。

 だから、より戦闘向きな新たなサーヴァントを召喚しようとして、私が召喚されてしまったと。

 

 ……それって、私が言うのもなんだが、大失敗というやつなのでは?

 

「さて、記憶が欠落しているのなら、カルデアや今の世界に関する情報も無い状態なのでしょう。わたしのサーヴァントなら、せめてこのわたしが所長を務めるカルデアについてくらいは知っておいてもらうわね」

 

 おっと。この美人さん、今から長ったらしい説明を開始しようと?

 寝たきりなので、逃げようにも逃げられない。ここは諦めて、素直に聞いておくべきか。

 

 私が黙って彼女を見つめているのを、説明を待っていると解釈したらしきオルガマリーは、得意気に話し始める。

 

「いい? 我々カルデアの使命とは、不安定な人類の歴史を安定させ、未来を確固たる決定事項に変革させる。霊長類である人の(ことわり)───即ち、人理を継続させ、保障すること」

 

「ふむふむ。それで?」

 

「そしてカルデアはこれまで多くの成果を出してきたわ。過去を観測する電脳魔『ラプラス』の開発。地球環境モデル『カルデアス』の投影。近未来観測レンズ『シバ』の完成。英霊召喚システム『フェイト』の構築。そして霊子演算機『トリスメギストス』の起動。これらの技術をもとに、カルデアでは百年先までの人類史を観測してきた。人類への百年先の安全を保証し続けてきたのよ。でも……」

 

 そこで、オルガマリーの顔に影が差す。今回の一件で、その保証してきたという人類史は、2017年より先の未来が途絶えてしまった。

 人類史を保護する機関。それもそのトップという立場である彼女にしてみれば、人類を救うなどというその重責はあまりに重すぎる。

 言ってしまえば、彼女の背中に全人類の存亡がのしかかっているようなもの。

 まだ年若い身であろうに。その若さで背負うには、重すぎる使命であるのは間違いない。

 

「結果は最悪。だけど、言い換えれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とも言える。それがたとえ、非道に手を染めていたとしても……。人類史をこれから先も続けさせるには必要だったのかもしれない。そう、だからわたしは、レイシフトの決行を定めたのよ」

 

 決意の眼差しは堅く。されど、その瞳には一筋の恐怖の光が滲んでいた。

 怖くないはずがない。投げ出したくないワケがない。

 人類史が途絶えてしまうような大事件。そこにはとてつもない何かが待ち受けているはずだ。失敗すれば、人類は終わり。その終焉が、彼女の手に掛かっているとすれば、なおさら怖いはず。

 

 何が彼女を突き動かすのか。その原動力は分からない。けれど、恐怖心を抱きながらも前に進もうという確固たる意思は伝わった。

 

 ならば。

 私が彼女のサーヴァントであるのなら。

 私のするべき事は決まっている。

 

「ねえ、オルガマリー。ちゃんとした契約、まだしてないかな?」

 

「え? 召喚したらそれで契約成立なんじゃないのかしら……?」

 

 なるほど。どうやら正式な契約はまだのようだ。なら、これも良い機会。寝たきりで格好悪いが、それはこの際割愛しよう。

 

「こういうのは、通過儀礼みたいなものだよ。それじゃあ、こほん。……問おう、あなたが私のマスターか?」

 

「な、何よ。さっきからそう言ってるじゃない。わたしがあなたのマスターよ!」

 

 形式だと言ってるのに、頭の固いお嬢様なんだから。まあ、それでも良い。形だけでも、これは言っておきたかったし。……一度言ってみたかったし。

 

「ふふ。……ここに契約は成立しました。今後ともよろしく、私のマスター?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 オルガマリーとの邂逅から感覚的に一時間程が経っただろうか。彼女が退室してから、Dr.ロマンが再び私を訪ねてきていた。

 

「ねえ、白野ちゃん。君、所長と何かあったの? なんか所長の機嫌が最近では類を見ない程に良くなってたんだけど」

 

 うーん。別にそんな特別な事はなかったと思うが。強いて挙げるとするなら、正式に契約を結んだ事くらいか。

 その事をかいつまんでDr.に説明すると、

 

「ああ。そういう事か。道理で所長の機嫌が絶好調な訳だ」

 

 納得した、と何度か頷いてみせるDr.ロマン。それを不思議に思っていた私の顔を見て、察したらしい彼は続けて話す。

 

「いや、君を召喚したのは所長だって言っただろう? でも本当は所長が一人で召喚したってワケでもないんだよ」

 

「え……?」

 

「あれ、所長から聞いてない? でも遅かれ早かれ分かる事だし、僕から言っても問題ないか……」

 

 何やら考え事をしていたらしいDr.ロマンだが、何やら決めたのか、佇まいを整えると、改まって話を再開する。

 

「所長の家系、アニムスフィア家っていうのは、魔術世界でも有名な血筋でね。カルデアもアニムスフィア家が運営をしていたんだ。もちろん、人理を保証するなんて大役を任されても問題ないくらいだ。基本的にアニムスフィアの血筋は魔術師としても一流。所長も例外ではなく極めて優秀な魔術師と評価されている」

 

「……? なら、何が問題だったの? どうして一人で召喚しなかったの?」

 

「まあまあ。で、そんな優秀な所長でも、何故か持ち合わせていない才能(モノ)があった。それが、マスターとしての適性さ。レイシフトはサーヴァントと契約を結べるマスター適性を持つ者でなければ、まず不可能。これはそもそも身体面での問題だ。生まれた時から決まっていると言っても過言じゃない。それを、所長は持っていなかった」

 

 召喚、そして契約。地上でのサーヴァントの召喚には魔術的な素質が必要不可欠だとムーンセルの記録にあった。

 契約は、直接的でなくとも間接的にであれば才能がなくとも可能ではあるらしいが、それでも正規の契約でない以上、かなりの制約が付きまとうはず。

 

 そんな、人理定礎を修正する上で、必要不可欠とされるマスター適性をオルガマリーは有していない……?

 

「なら、どうやって君を召喚したのか。細かな点を省いて説明するなら、所長を補佐する形で何人かの魔術師も召喚に携わったのさ。召喚陣を書く者、触媒を用意する者、儀式を執り行う者、そして魔力を通す者が所長だ。ざっと言ったけど、この工程までで十数人は召喚に関わっていたからね?」

 

 思っていた以上に手が込んでいた!

 そこまで補強してやっとサーヴァントを召喚出来たのに、それがまさか私のようなサーヴァントが現れようとは思うまい。

 なんだか、必死だったであろうオルガマリーに申し訳なく思えてきたのだが。

 

「そうしてやっと、何度目かの召喚に挑戦して君が喚ばれた訳だよ。多分、君の不具合の要因もそこにあるかもしれないね。多くの魔術師が携わったとは言え、マスター適性のない魔術師が主体で行われた英霊召喚だ。今思えば、何が起きても不思議じゃなかった」

 

 ふむ。何にせよ、サーヴァントの召喚自体は成功し、オルガマリーが主体で行われた儀式だったが故に、私は彼女のサーヴァント、という事か。

 

 すごく喜んだのだろう光景が目に浮かぶ。ゼロに近い可能性に賭けて、私というハズレではあるが、サーヴァントを召喚出来たのだから。

 

「でも、残念ながら所長には令呪がない。召喚に成功したは良いけど、肝心のサーヴァントを律するための手段は得られなかった。マスター適性が無い故だろう。けど、君が話の分かるタイプで本当に良かった。だって君、お人好しな性格してそうだし。まさに不幸中の幸いだよね」

 

 会って間もないが、既に私の性格は彼にはお見通しらしい。意外と目ざといな、Dr.ロマン……。

 

「さあ、話は一旦終了! これから君のバイタルチェックと、それによってリハビリ日程を組んでいくよ! 英霊とはいえ、君はデータを見るに限りなく現代人に近い状態だ。無理せず、それでいて期日までに何としても万全を取り戻してもらうために、ビシバシ行こうじゃないか! あ、ちなみにビシバシやるのは僕じゃなくて君の先輩サーヴァントだからね? 君の事を説明したら、目を輝かせて請け負うと言ってくれたよ」

 

 ……。なんだか、とても嫌な予感がするのは、私の気のせいだろうか?

 

「いやぁ、天才もあそこまでいくと変態だよねぇ! 天才と変態は紙一重ってのをよく体現してるんだからさ。あれ? 日本にはこんなことわざがあったと思うんだけど、違ってたかな?」

 

「違いますよ。馬鹿と天才は紙一重、です。そして私の嫌な予感的中!! もういやぁ!!?」

 

「あはははは。心配しなくても、確かにアイツは天才で変態だけど、君が思ってるような変態ではないから安心していいよ」

 

 いやだから変態という時点で全く安心出来ないんですけどぉぉぉ!!!!

 

 

 




 


※こんな感じで、サクサク行けるところはサクサク行こうと思います。あと、気ままに書いてみるつもりですので、過度な期待はしないでください。
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