Fate/Grand Order  凡夫なりし月の王   作:キングフロスト

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第二節 何度も出てきて恥ずかしくないんですか?

 

 小次郎から聞かされた、この世界でも特に妙ちくりんな格好をしているという二人を探すために、滅んだ街を後にする私たち。もちろん、目に付いた遺体だけでなく、瓦礫に埋もれた遺体も全て掘り出し、きちんと埋葬した。

 

 彼が街から適当に見繕ってきた、まだ使えそうな衣類を着て、装いも新たに私は気を引き締める。

 ……というか、何故この世界に探検家風の服が有ったのだろう? しかも、不思議と既視感のあるような、ないような……。

 ちなみにあの白いワンピースは後で修繕するため、レガリアに保存してある。アレは私がムーンセルで生きた証でもあるので、捨てるには忍びないと思ったからだ。

 

 さて、件の二人を探すワケだが、一体どこに居るのか。それがまるで分からない。

 小次郎がその情報を耳にしたのも、もう何日も前だという。ならば、その二人とていつまでも同じ場所に留まっているかどうか。

 とりあえず、目撃情報は首都から離れた村に限られているとの事なので、首都郊外の街や村を重点的に捜索するという事で方針が決まった。

 ……うーん。情報からして、もしかしたらその二人も竜の魔女を避けている、あるいは逃げているのだろうか?

 

 

 

 

 ひとまず首都のあるであろう西を避けて、東へと私たちは進む。推測が正しければ、その二人も同じように首都から遠ざかろうとしているかもしれないからだ。

 

「……、」

 

 あの街を発ってから、既に何日か経過している。食料は時折飛来してくるワイバーンを狩ったり、野生の動物や魚を穫ったり。サーヴァントに食事は必要ないとされるが、カルデアからの支援が無い今、魔力の補充手段として食事は必須となっていた。

 

 翼竜の肉は、最初は食べるのを憚られたのだが、これが食べてみると思っていたよりも美味しかった。肉は引き締まっていて、旨味も凝縮されており、臭味は強めだが、そこいらに群生しているハーブなどの香草を用いれば完全にではないが解消出来た。

 

 肉を焼くにも火が要るが、小次郎が原始的な方法(枝と木の板でやるアレ。木の板は小次郎が見事な刀捌きで丸太などから精製)で火を起こしてくれたので問題ない。

 

 そんな旅路を続けて何日か経った頃。立ち寄ったとある村で遂に二人についての情報を入手する。

 どうやら、本当に首都から離れるように郊外の方へと移動しているようで、今度は西に向かって出発していったそうだ。

 

「西の街───ボルドー、か」

 

 それが、二人の少女が向かったとされる街の名前。加えて、村人にこの国の首都の名前も聞いてみたが、返ってきた答えに私は驚かざるを得なかった。

 

 その名をオルレアン。

 それは、世界で最も有名であると言っても過言ではない聖女──ジャンヌ・ダルクが活躍し、そして同時に悲劇を迎える事の発端となった百年戦争でも出て来る都市の名前。つまりは、この特異点の舞台は過去のフランスという事になる。

 というか、フランス王国時代であるのなら、首都ではなく王都と呼ぶべきだが、この地方で最も栄えているのがオルレアンであるらしく、ある意味ではこの地方の首都と呼べなくもない。

 

 特異点とは過去の世界に異物が紛れ混んで発生するもの。ならばこそ、その時代を生きた英雄が存在してもおかしくはない。

 もしかしたら、時代さえ合致していれば生きている頃のジャンヌにも会えるかもしれない。まあ、向こうは完全に私の事など知りもしないのだが。

 

 しかし、それにしてもボルドーまではかなり距離があるとの事で、また長旅になりそうである。オルガマリーの様子も相変わらずで、定期的に食料をレガリア内に転送しているが、一応食べてはくれているようだ。

 早く立ち直ってくれると良いのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体、どれだけの距離を歩いたのだろう。カルデアから冬木の特異点に強制的にレイシフトされ、そしてそのまま帰る事もなく、この新たな特異点に来て、どれほどの時間が過ぎ去ったのだろう。

 まともな休息など取れず、最近は野宿ばかり。そのため、もう心身ともに疲労困憊になっていた私は、日数の経過も分からなくなってきていた。

 心配なのは私の事よりも、オルガマリーの方だ。

 飢えは、どうにか凌いでいる。けれど、オルガマリーをいつまでもレガリアの中で、そして特異点で居させるのは良くない。彼女の傷ついた心を癒やすためにも、もっと落ち着ける慣れ親しんだ場所……カルデアに帰してやるべきだ。

 

 小次郎は旅に慣れているのか、特に苦もない様子で余裕を崩さない。暇さえ有れば、刀の手入れをするくらいには余裕があるらしい。

 同じ日本人とはいえ、生きた時代も違えば、価値観も違う私と小次郎。細かな点を言えば、私なんてオリジナルが日本人というだけで、正確には生まれも育ちもムーンセル。

 私は不思議で仕方ない。何故、こんなにも付き合ってくれるのか。助けてくれるのか。何の得も無いはずなのに。

 護衛してくれるのは、本当にありがたい。それは確かなのだが……彼の真意、それが計りかねていた。

 

 無論、命の恩人である彼に、そんな不躾な質問をするべきではないから、結局は聞かずじまいなのだが。

 

 

 

 

 何日か掛けて、やっとの思いでボルドーへと到着した私たち。

 噂の二人も、サーヴァントとはいえ少女であるとの話だ。体育系でもない限り、休み無しで歩き続けたりはしないだろう。もしかしたら、追い付けているかもしれない。

 

 ここがフランスである事が分かり、そして一番の危惧であった言語の壁もどういうワケか存在しない事も分かっているので、小次郎と手分けして、私は臆せず町人たちに聞き込みを開始した。

 

 ……とは言うものの、どう聞き込みをしたものか。

 悩みながらも、恰幅の良いご婦人に声を掛けてみる。

 

「すみません。少しお訊ねしたい事が……」

 

「私かい? なんだい、答えられる事なら答えてあげるけど」

 

「えっと、珍妙な格好をした少女の二人組に心当たりはありませんか? 噂でも構わないんですが……」

 

 珍妙、という単語にすぐにピンときたらしく、ご婦人は両手でポン、と音を鳴らすと景気良く答えてくれた。

 

「珍妙と言えば珍妙な服を着た娘さんなら見たねぇ。どっちもえらくベッピンだったんで覚えてるよ」

 

「ホントですか!? 今どこに居るとかは?」

 

「さあ、そこまではねぇ……? そういえば、さっき宿の方で男共がやたらと騒いでたような……。もしかしたら、そこかもしれないよ? なんたって端から見ても仲の悪い二人組だったからね。また喧嘩でもしてるのかも」

 

 その宿の場所を聞き、情報をくれたご婦人に礼を言って、急ぎ走る。

 宿へと近付くにつれて、確かに喧騒が大きくなっていき、やれ「もっと派手にやれー!」だの「いいぞ! そこだ!」だのと囃し立てるような声が聞こえてくる。

 

 あ、これは完全に喧嘩の流れです。いやだなー、サーヴァント同士の喧嘩とか。サーヴァントって魔術世界では核兵器に匹敵する高位の使い魔らしいし、それがガチンコで殴り合いとか洒落にならない。

 願わくば、キャットファイト(ガチの殺し合い)にはなっていませんように……!

 というか、仲悪いのに二人旅してたの? という疑問はあるが、今は早く現場に駆け付けないと。騒ぎが大きくなって、それが原因でワイバーンに嗅ぎ付けられでもしたら大変だ。

 

 喧騒がどんどん大きくなり、宿が見えてきた。人だかりも見える。そして、人混みを掻き分けていく中で、ついにご本人たちの怒鳴り声も聞こえるようになった。

 

 

「だから! ステーキはミディアムレア若しくはレアって言ってるでしょう!? 肉から血が滴り落ちるくらいの焼き加減が最高に決まってるじゃない!!」

 

 

「いいえ! やはり、しっかりと焼いて調理されているべきです! お肉を食べるのでしたら、衛生的にも中まで火の通ったうぇるだんであるべきでしょう!!」

 

 

 ……とても、とてもくだらない内容の喧嘩だが、その内容よりも気になる点が一つ。

 最初に聞こえた方の声に、どこか聞き覚えがあるような───うぐっ!? 思い出そうとした途端に、何故か腹痛が!? 具体的には胃がキリキリ痛い!

 

 思い出したいようで、思い出したしたくもない記憶が、蘇ろうとしている。もっと言えば、頭では忘れたがっているのに、体が嫌でも苦痛な記憶として胃に刻み込んでいる感じ。

 

 ───そう、確かそれは、鮮血の赤よりも朱かった、地獄の料理……。

 

「すぅ、はぁ……」

 

 辿り着き、取っ組み合いをしている少女たちの片割れが目に入る。やはり、思った通りだった。

 ならばこそ、私は()()を言わなければならない。いや、私には言う義務がある。

 深呼吸をして……よし、行くぞ。せーの、

 

 

「何度も出てきて、恥ずかしくないんですかー!?」

 

 

「何よ!? 今回はまだ初めてでしょ!?」

 

 

 間髪入れずのツッコミ。やはり彼女はアイドルよりお笑いの道が似合っているのではないだろうか?

 などと思っていると、すぐに我に帰った彼女がこちらに振り向く。

 

「どこかで聞いた声に、聞いた台詞だと思ったら、子リスじゃない!? やだ、もしかして追っかけ? これがアイドルの追っかけってヤツ!? ヤバいわ、アタシ。追っかけのファン第一号が、まさか初恋相手の子リスだなんて……。これって運命よね? そうよね? ね!?」

 

「いいえ、違うと思いま」

 

 最後のす、まで言い切る事も許さず、少女ことエリザベートに突進されて押し倒される私。

 一瞬だけ息が止まるが、すぐに吹き返したので問題ない。それよりも、この目の前の少女こそが私たちの探し求めていた人物であり、予想外にも知り合いでもあった英霊───エリザベート・バートリー。

 ハンガリーでは悪名高い伯爵令嬢にして、若い娘ばかりを攫っては拷問の末に殺した殺人鬼。自称ではあるが、鮮血魔嬢とはよく言ったものである。

 

 側頭部からは天へと伸びるように突き出た巻き角。紫がかった長い赤い髪。ヒラヒラのドレスに平坦な胸。スカートから飛び出た蜥蜴のような尻尾。

 およそ、少女に似つかわしくない要素は、全てが『無辜の怪物』によるものというだけではない。彼女には、本当に竜の血が混じっているらしく、それも一因であるのだろう。

 

 さて、いつまでも頭グリグリ押し付けてきて角が当たって痛いので、見知ったエリザベートは押しのけて、見知らぬもう一人の少女にも目を向ける。

 

 一人取り残されて呆然としていたが、果たして、この少女もまた美しかった。

 薄い緑色の長髪。多分、14、5才くらいだろうが発育の良さそうな肢体を、これまた色っぽい和服で着飾っている。

 何より目を引くのは、その少女にも生えている角。エリザベートとはまた違った形をしているが、多分あれも竜の角だ。ただ、彼女には尻尾はないので、本当にそうかは断言出来ないのだが。

 

 子リス、子リス、と尻尾を左右に振りながらじゃれついてくるエリザベートは無視して、私はもう一人の少女へと声を掛けた。

 

「喧嘩しているところを邪魔してゴメン。私は岸波白野。このエリザベートとは縁があって知り合いというか腐れ縁というか。あなたもサーヴァント……なんだよね?」

 

「……岸波、白野?」

 

 私の名乗りに、その少女は訝しむようにマジマジと私を見つめてくる。何か気に障る事でも口にしてしまったのだろうか……?

 そんな心配は要らなかったようで、少女は「あ」と思い出しように声を漏らした。

 

「岸波白野さん。そのお名前、どこかで聞いた事があると思ったら、タマモさんのご主人様と同じ名前ではありませんか。もしかして、ご本人様でいらっしゃいますか?」

 

「え、キャスター……じゃなくて、玉藻のこと知ってるの!?」

 

「ええ、存じ上げておりますよ。だって、タマモさんはメル友ですし」

 

 メル……友……だと!?

 和風サーヴァントだなぁ、とは思っていたが、まさか玉藻の知り合いだとは思いもしなかった。世の中って以外と狭いよね。この分だと、私の知り合いの英霊のそのまた知り合いなんていう英霊と他にも出会いそうな気がしてきたんだけど。わりと本気で。

 

「ところで、少しお顔を拝見しても?」

 

「あ、はい」

 

 面食らっていたので、思わず二つ返事で了承したのだが、はいと答えた次の瞬間には、恐ろしいほどの速さで、彼女が顔が私の目の前にあった。

 ひたり、となめらかな手が頬を触れる。ちょっだけひんやりとした少女の手に、私の頬から熱が奪われていくような感覚。それがどこか気持ち良くて、じんわりと暖かいものが体の芯まで浸透していくような、不思議な気持ちになる。

 

 黄金色の瞳に、私の顔が映っているのが分かる程の至近距離。ともすれば、その瞳に吸い込まれそうな気さえする。

 

 ひとしきり眺めて満足したのか、頬から手が離され、彼女もまた離れていく。

 

「……タマモさんの話もあながち思い込みではありませんね。確かに、このお方は素晴らしい魂をお持ちのようでございます。イケ魂、というものでしたかしら? ……もしや、安珍様?」

 

 安珍……? それって清姫伝説に出てくるお坊さんの名前じゃ───

 

「ああ、そうでした。まだ名乗っていませんでしたね。サーヴァント、清姫。こう見えてバーサーカーですのよ? よろしくお願いいたしますね、白野さん……」

 

 おっふ。まさか、本当に清姫本人であろうとは。流石は玉藻のメル友というか何というか。日本でも有数の歴史に名を残すヤンデレ、それが清姫という人物だったはずだ。

 『玉藻の前』を調べるついでに出てきた情報では、清姫は安珍という僧侶に一目惚れし、しかし逃げられた。それを怒った彼女は蛇に姿を変えて、安珍をどこまでも追いかけ、最後には殺してしまった───と、だいたいはそんな話だったと記憶している。

 

 そんな彼女に安珍と認定されてしまいかけているの、私?

 もうヤンデレの知り合いはお腹一杯なんだけど……。具体的には月の裏側で満腹になったんだけど!

 

「よ、よろしく……清姫、ちゃん」

 

 とりあえず、清姫の友好的な挨拶に笑顔を捻り出して応じる。多分、引きつった笑いになっていたに違いない。

 だって、横でエリザベートがお腹を押さえながら笑うのを堪えているし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所を移して、さっきまでエリザベートたちが目の前で取っ組み合いをしていた宿の中。そこの食堂で腰を落ち着けて、私は二人から情報の交換を行う事にした。

 もちろん、先程の喧嘩の内容に関してはスルー。あまり掘り下げすぎて藪蛇るのも御免被りたかった。

 

 小次郎とは、予め待ち合わせ場所を決めており、時間を見計らって集合する約束をしている。今から彼を探しても、無駄に時間を食いそうだったので、彼には後でここで聞いた事は伝えるつもりだ。

 まあ、小次郎もこの世界では奇異な装いだし、探そうと思えば難しくはないのだろうが。

 

「それで、二人はどこまでこの特異点について知っているの?」

 

「特異点……? ああ、ここの事。別に。アタシだって召喚されたのはいいけど、状況なんて何一つ掴めてないわ。そっちの蛇女はどうかは知らないけど?」

 

「そうですね……。わたくしも、実はあまり詳しくは把握しておりません。通常の聖杯戦争ならまだしも、どうやらわたくしやこのエリマキトカゲは野良のサーヴァント。聖杯から与えられるはずの情報というものがまるで有りませんので」

 

「……そっか」

 

 サーヴァントが二人。何かしらの情報を得られると期待していたが、残念ながら二人はこちらの期待には答えられないようだ。いや、勝手に私たちが期待しただけなので、彼女らには何も非はない。

 彼女たちにすれば、押し付けがましい期待でしかないのだ。

 

「ですが、」

 

 と、落胆した私を見かねてか、清姫が一旦一息ついて区切りを入れ、それを切り出した。

 

「敵と呼ぶべきものが、わたくしどもと同じサーヴァントであるのは分かっています」

 

「やっぱり、敵にもサーヴァントが……?」

 

「アタシとコイツはまだ一回しか遭遇してないわ。でも、その一回の遭遇がナンセンス。それで完全に目を付けられたのよね~」

 

 エリザベートはウンザリとばかりに語るが、目を付けられたというのに、よくもまあ無事にやり過ごせていると私は感心する。

 竜の血による第六感でも働いているのだろうか?

 

「それでその敵のサーヴァントの正体は分かっているの?」

 

 何事もまずは情報がモノを言う。敵が如何に強大であっても、情報さえ得ていれば対策の立てようもある。

 が、それを聞かれた途端、エリザベートは気まずそうに口を噤んでしまう。何か、言えないか言いたくない事情でもあるのだろうかと訝しんでいると、エリザベートの隣の清姫があっさりと口を割った。

 

「このトカゲ、どうやら敵が自分───それも英霊としては同一人物にして別存在とでも言うべきサーヴァントだったようでして」

 

 それは、何か? 冬木の特異点で出会ったセイバーのように、オルタという彼女の持つ別の側面で召喚されたのと同じような現象という事か?

 もしくは、クー・フーリンが若い姿とキャスターとしての姿とで同じ空間に同時に存在しているのと同じか。

 

 なら、エリザベートが言いたくないというのも頷ける。彼女は、以前から成長した自分を嫌っている節があった。

 理由までは私は彼女ではないので計り知れないが、やはり嫌っている自分の未来の姿については語りたくもないし、聞きたくもないのだろう。

 

「確か……『カーミラ』、でしたか。それがわいばーんや屍の兵士を率いて、わたくしたちを狙い回しておりまして。まあ、そこはこのトカゲ女が同一人物として思考を読めるので、どうにか回避できているのですが……」

 

 カーミラ! それは世界で最も有名な吸血鬼の一人として知られる女性の名前。

 そもそも、カーミラという吸血鬼伝説の元となっているのがエリザベート・バートリーだとされている。血の伯爵夫人として、数多の少女たちの生き血をその身に浴びたという彼女だが、その逸話から彼女が吸血鬼であるカーミラのモデルになったのだ。

 

 エリザベート・バートリーが吸血鬼であるという実証はどこにも存在しない。ならば、この特異点でカーミラと名乗るサーヴァントは『吸血鬼』ではないという事にならないだろうか。

 エリザベートが自己嫌悪するくらいだ。そのサーヴァントが彼女の未来の姿であるのはまず間違いない。ならば、その彼女が吸血鬼でない以上、カーミラもまた吸血鬼ではないと考えられないか?

 そうであってほしいとしか言えない。もし吸血鬼が英霊として現界した時、並みのサーヴァントでは太刀打ち出来ない超級サーヴァントに匹敵するだろう。

 

 吸血鬼と英霊のハイブリッド。それが本物の吸血鬼であった時、最悪の展開であると断言する。月の聖杯戦争で、私はそれを嫌と言うほど痛感させられた。

 第四回戦、ガトーとそのサーヴァント───バーサーカーであり真の吸血鬼であった()()と戦ったからこそ、断言できるのだ。

 敵は本調子でないのに、相当に苦戦を強いられた。もし全力のバーサーカー───アルクェイドと戦っていたらと思うと、ゾッとする。

 

 

 それにしても、同一人物であるが同一存在ではない、か……。

 まさか連続して、同じケースに出会(でくわ)す事になるなんて、想像もしていなかった。

 だが、となるとカーミラこそが竜の魔女なのか? 確かにエリザベートは竜の血を引いており、今の彼女は生前と比べればデミ・ドラゴンと言えなくもない。

 故にカーミラにも竜の血が表面化している可能性は十分にあり得る。

 

 それを言おうとして、清姫の悪口にも反応せず黙っていたエリザベートが、嫌々とばかりに私の先を行った。

 

「言っておくけど、アイツは黒幕じゃないわよ。竜の魔女だっけ? 多分、アイツもその竜の魔女ってヤツに支配されてるわ」

 

 何故、そう思ったのか。カーミラが竜の魔女ではない根拠は何か。エリザベートは、溜め息と共に答えた。

 

「だって、アイツはアタシだもの。あの時に見たアタシ(アイツ)は……既に狂ってるアタシから見ても、あの強い狂気は尋常じゃなかったわ。アレは、カーミラだけど、カーミラじゃない。誰かに手を加えられてカーミラが変質した存在……そんな感じかしら」

 

 エリザベートが苦々しい顔で述べた仮説。こちらもあちらも、どちらも自分(エリザベート)という存在だからこそ分かる違い。エリザベートからしたら普通では考えられないカーミラの異常性。

 サーヴァントが変質するには、それ相応の要因がなければ不可能だ。それこそ、聖杯やそれに匹敵するほどの強い呪いか。

 聖杯……レフに奪われたあの水晶体。あれならば、或いは……。

 

 思考が終わりの見えない泥沼に沈んでいきかけたその時、パチン! と渇いた音が鳴り響く。

 清姫だった。清姫が、両手を勢いよく合わせたのである。

 

「ともあれ、です。“竜の魔女”とやらを放っておけば、遠からずこの世界は滅びるでしょう。なら、そうならない為にも、その彼女さえ倒してしまえばいいのです。それに、下僕であろうカーミラとて竜の魔女を倒す上できっと戦う事になるはず。戦うと分かっているのなら、ここであれこれ推測するよりも、彼女に関する情報を集める方が幾分かは有意義でございましょう」

 

「そうだね……。時間も頃合いだし、街の入り口に向かおう。そこで私の連れと落ち合う事になってるんだ。二人も来てくれるかな?」

 

「旅は道連れ、と申しますものね。では不肖清姫、お供させていただきましょう」

 

「アタシへの了承は不要よ。子リス居るところエリザベート有りだもの。だから断られても付き添うわ。あ、付き添うのであって、あくまで付き従うのはマネージャーの子リスなんだからね? そこのところは間違えないでよね!」

 

 無理矢理ぶっ込んできた感は否めないがテンプレですねありがとうございます。

 

 話はまとまった。そうと決まれば、早速待ち合わせ場所に行くとしよう。

 仲間が一気に二人も増えて、口にはしないが内心では心強く感じながら、私は二人と共に宿を後にしたのだった。

 

 

 






もう今年の夏も終わりますね。そしてサバフェスも終わる。私は5日前ほどにようやく素材交換もポイント稼ぎも終わりました。疲れた。

さてさて、気になるのは今年のハロウィンがどうなるのやら?(←もう10月の話をする気の早い奴)
異聞帯絡みか、いつも通りに時系列があやふやな過去の物語になるのか。
そして今年もまたエリちゃんは増えるのか。そしてエリちゃんメインだったらこう言うのです。

「何度も出て来て恥ずかしくないんですか?」

もしそうなら、ああ、今からとても楽しみです。(←だから気が早すぎ)

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