Fate/Grand Order 凡夫なりし月の王 作:キングフロスト
「やあやあやあ。君がロマニの言っていた、
翌日。早速昨日Dr.ロマンから提示されたリハビリの課題が実行に移されたのだが、車椅子に乗せられ連行された私の目の前には、とんでもない美人が立っていた。
服装は少々奇抜だが、それを差し引いても有り余る美貌。艶の有る美しい黒髪。微笑みはまるで女神の如し。
絶世の美女と呼ぶに相応しいだろう。
「おや? 私の美しさに見惚れて呆けるのは分かるが、曲がりなりにも君はサーヴァントなんだろう? 別に私は魅了のスキルは持っていないんだ。いつまでも固まられちゃ困るんだけどなー?」
この美女。恐ろしい事に、自身の美貌がずば抜けて優れていると自覚している。むしろ自信に満ち満ちている。
言葉の端々から読み取れるナルシストっぷりも、この美貌なんだから頷けるというもの。
「えっと。あなたが三号──私の前に召喚されたサーヴァント、ですか?」
「ほうほう。どうやら私の事は前もってロマニから聞いていたかな? その通り! 現状のカルデアにおいては、まだまともに現界している唯一のサーヴァントがこの私さ」
美女はえっへんと胸を張る。それに連動して、そのたわわな双丘も比例するようにプルンと揺れていた。
……ここに召喚されてから、同性に会ったのはまだ二人だけだが、こうも格差を見せつけられると、膝から崩れ落ちてしまいそうだ。
いや、やろうとしても満足に動けないから、無様に倒れ伏すのが関の山だろうが。
「クラスについても聞いているんだろう? 私はキャスターだから、戦闘はそこまで得意ではないんだ。いやね? 別に出来ない訳ではないんだが、そういう力仕事というか肉体労働はセイバーとかランサーみたいな前衛の専門家に任せたいところだからね」
「でも、そのセイバーもランサーも居ないんじゃ……」
カルデアに現存するサーヴァントは彼女と私、そして不具合で現界が出来ていないという召喚二号の英霊だ。
二号はまず除外して、現状戦えるとするならカルデアの保持する戦力はサーヴァント二騎となる。
だが、戦力としてはキャスターはその性質から心許なく、私に至ってはクラスでさえ判明していない。
途端、戦力面にかなりの不安が出て来たのだが、目の前の美女はそんな事に歯牙も掛けていないようだった。
「その点に関しては心配しなくていい。英霊召喚システム自体は、君の召喚を経て、その後の調整でほぼ完璧に仕上がった。コストと時間という課題さえ合致すれば、次の英霊を召喚出来るからね。まあ、英霊が来るか、それとも特殊な礼装が生み出されるかという運任せな要素もあるけれど」
それは、つまり──ガチャガチャ的な?
率直な感想を伝えてみると、美女……いや、キャスターは神妙な面もちで頷いて返してくる。
「それだ! もっと具体的に言えば、私も現代のソーシャルゲームというものを幾らか
えー……。サーヴァントがソーシャルゲームって……。ちょっと現代に馴染み過ぎてません?
「そうだ。まだ自己紹介がまだだったね。もしかしたらロマニやオルガマリーから聞いているかもしれないが、そこはこの際関係ないとする。それでは改めまして、私の名は『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。あらゆる叡智をも凌駕する、万能の天才……それが私さ! 気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ!」
……これは、驚いた。フランシス・ドレイクが女性だったというのも衝撃的だったが、まさかあの稀代の天才と称され、
「ふむ。その分だと、私の真名までは聞いていなかったか。なになに? もしかして私の性別に驚いてる? ちなみに言っておくけど、今の体は後付けのようなものだから、元々は男だよ、私は」
「は……? はあぁぁ!?」
えー、つまりアレか。生前は男だったけど、英霊になってから、今の見た目になったと?
「もう少し補足しようか。私は常に美しさを追求している。モナリザってあるだろう? 私が書いた自信作。あの美しさをどうせなら体現しようと思った私は、このように体を作り替えたのさ。もちろん、一から十まで徹底だ。肉体だって全て女性のものだよ?」
ほら、と言って私の手を自らの胸に誘導するダ・ヴィンチちゃん。あ、ふにゅってした!
間違いなく本物の感触だ。だって、私は女であり、もっと特大サイズを揉みしだいた事だってある経験者。本物と偽物くらい見分けられる。
魂がオッサンとか言われた事もあるが、きっと何かの間違いだ。
「ふふん。どうだい? 私の体は最高傑作と自負しているんだ。なので、おさわりは初回限定のサービスなのであしからず」
意地悪な微笑みを浮かべて、ダ・ヴィンチちゃんは私の手をその胸から遠ざける。
あの柔らかい感触は、「至上のマシュマロだった」。
「おいおい。思った事が口に出ているよ? まあ、満足してもらえたのなら、私としても誇らしいけどね」
あ。思わず言ってしまっていたらしい。指摘されて、たまらず私は恥ずかしさで俯いた。
魂がオッサンとか、否定しておいてすぐにコレだ。情けないにも程がある。
「ま、私と同等なマシュマロは他にも居るから、今度からはそちらにお願いするといい。多分、させてくれないとは思うけど。さて、本題に入るとしようじゃないか」
「本題……? 本題、本題……」
そういえば、何か目的があって彼女と面通しをしたはずだったが、何だったっけ?
本題が即座に思い出せない私を見て、ダ・ヴィンチちゃんは渇いた笑いを零していた。
「白野ちゃん、そんなに私の胸に首ったけなのかい? 君にはリハビリが必要だって話だよ。思い出したかな?」
あっ……!
そうだった。期日までに何とか体だけでも万全に整えられるように、昨日Dr.ロマンがリハビリの日程を組んでくれたんだ。
そして、その担当者がダ・ヴィンチちゃん。色々なインパクトがあったから、ついその事が頭から抜け落ちていた。
「ようやく思い出したか。それでは、これから君のリハビリを開始しよう。とは言っても、だ。まだ満足に動かせないのなら、まずはそこを解消しよう。よっこらしょっと……」
と、ダ・ヴィンチちゃんは何やら器具の準備をし始める。何かコードとかいっぱい見えるんだけど、一体何をしようというのか。
大きな機械に次々とコードやら何やらを接続していくダ・ヴィンチちゃん。何というか、かなり手際が良い。
「あの、それは何をする機械でしょうか……?」
準備が進んでいくにつれ、ごちゃごちゃし出した機械に、私は多少の恐怖を覚えていた。故に、おっかなびっくりといった具合で尋ねたのだが……。
「ああ、これはね───電気ショック」
「いや、電気ショックにしてはすごく大袈裟過ぎやしませんか!?」
何でもないとばかりに軽く言ってのけたダ・ヴィンチちゃんに、私も軽く戦慄する。何を平然と言っているんだ、この人は!?
「仕方ないじゃん。だってのんびり回復を待ってられるような状況じゃないんだぜ? それに君は人間に近い体ではあるが、それでもやはりサーヴァント。多少の無茶くらいなら大丈夫だよ。ま、死んじゃ元も子もなくなるし、加減はするから安心してお姉さんに任せなさい」
あ、お姉さんでいいんだ、この人。じゃなくて!
そもそも電気ショックだけなら、そんな大掛かりな機材は必要ないと思うのだが。
「不服そうだねぇ。言っておくけど、弱っちい電気ショックじゃ効果なんてないからね? それなりの威力じゃなきゃ、荒療治になんてならない。荒療治と言うくらいなんだ、もちろん、強めが必要だ。だからこの私お手製の電気ショックマシーンを使うのさ。何度も言うが、私は万能の天才だ。下手な改造なんてしてないから、危険はないと約束しよう」
そうこうしているうちに、ダ・ヴィンチちゃんは説明がてら私の指先にパチパチと器具を装着していく。
まるで電気椅子の刑を待つ死刑囚の気分だ。正直な話、かなりビビっている。
「そんなに怯えなくとも、別に拷問をするってワケじゃないんだからさ。痛いのは最初だけだよ? それに今は先っちょだけだからさ? 力を抜いて、リラックス、リラックス」
「なんか台詞がいかがわしい感じになってるのは私の気のせい!? 誰か助けて! Dr.ロマン! オルガマリー!!!」
「アッハッハ。二人からの許可があるんだ。助けは来ないよ?」
私の叫びは虚しく、こうして半強制的なリハビリ(という名の若干拷問)は開始されたのだった。
「ぎにゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「さあ、もっと強くしていくよ~」