Fate/Grand Order  凡夫なりし月の王   作:キングフロスト

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※ご指摘頂いたのでタイトル並びにマシュの髪の色についての表現変更しました。(すごく助かりましたので、ありがたいことです)



第五節 小さき獣と戯れる乙女

 

 リハビリは当然ながら、明くる日も続いた。

 息絶え絶えになりながら、汗でベトベトになる私を、ダ・ヴィンチちゃんは女神の如き微笑みを携えて監督。

 忙しい中であっても、たまに様子を見にきてくれるオルガマリーに良いところを見せようと頑張り、余計に疲労を蓄積させる私のおバカさん。

 そして、私のリハビリの様子を見にきたというのを口実に仕事をさぼるDr.ロマン。

 

 とまあ、だいたいはこんな感じが、私のリハビリ風景となっていた。

 

 リハビリは順調に進み、日を追うごとに体もようやく思い通りに動くようになってきた。

 リハビリ開始から既に五日の日数が経過しており、期日であった特異点探索実行予定日はもう目の前───明日にまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 車椅子生活はもう二日も前に終わっており、リハビリがてらカルデア内の探索をしていた事もあって、多少は一人でも迷子にはならないくらいには、私もカルデアを把握してきている。

 バタバタとせわしなく通路を行き来するスタッフと何度となくすれ違うが、作戦決行の日が近付くにつれ、喧騒も比例して大きくなってきているようだ。

 遠くからでも、話し声というか指示のようなものが聞こえてくるくらいに。

 

「おい、中央管制室の準備の進捗具合はどうなってる?」

 

「もうすぐで終了します。あとはマスター候補生に配布する資料を用意するだけですね」

 

「ついにレイシフト決行は明日なんだ。ミスや見落としは徹底的に無くすつもりで動けよ!」

 

 ……。

 慌ただしさの中にも、やはり多大な緊張感が拭えない。それも当然だろう。何せ、人類の存亡が懸かった作戦だ。些細なミスが、どんな重大な事態に繋がるかなど予測不能。

 小さなミスが、取り返しのつかないミスへと繋がる可能性も秘めているのだ。デリケートにもなるというもの。

 

 ちなみに、今聞こえてきた“マスター候補生”というのは、実際にレイシフトして特異点の探索及び原因の破壊を担う者達の事だ。

 オルガマリーは私を召喚出来たは良いが、元々マスター適性が無いが故にレイシフトは行えない。その代わりとして、適性を持つ人材を今日この時までにあらゆる手段を用いてかき集め、召喚したサーヴァントと共に特異点に送り込む───というのが、明日の作戦となっている。

 私のマスターはオルガマリーではあるが、特異点へと随行するマスター候補生に付き従う形で、オルガマリーの代行者として現地へと向かうマスター候補生へ貸し出されるといったところか。

 

 そして、そのマスター候補生は総数が48人。英霊を一人に一騎は用立てるとするなら、圧倒的に足りていない。

 だが、明日の作戦決行までにはマスター候補生たち全員分のサーヴァントが用意出来る予定で、召喚に必要なリソースが溜まるとの事なので、私が矢面に立って戦闘を行うという事はなさそうだ、とDr.ロマンが言っていた。

 ちなみにダ・ヴィンチちゃんも戦闘……というか、そもそも特異点には行かないとの事。彼女は少々特殊な方法で現界を維持しているようで、戦闘は出来なくもないが、現界に支障が生じてしまうのだそうだ。

 

 あと、私の召喚に踏み切ったのは、どうにもオルガマリーの意地も絡んできているらしかったが、そこはまあそれ。彼女の可愛い部分として流しておこう。

 

 さて、マスター候補生と言っても、彼ら彼女らを一概には語れない。

 前々から、こういった緊急の時に備えて訓練をしていた者。その期間は一年や半年と、まだ現場で対処に当たる分には心配が少ないだろうエリートたち。

 片や、急募であったがために訓練の期間が三ヶ月と短い者や、そもそも適性があるというだけの理由から、数合わせの一般公募としてここに来た完全な素人ですらも居る。それらの人員に至っては、訓練すらも受けていないという。

 

 だが、私からすれば、後者の訓練を受けていないマスター候補生には親近感が湧いてくる。

 私だって素人から始まって、月の勝利者となったのだ。素人だからといって卑下するなんて、私からすれば有り得ない。

 

 でも、聞いた話では魔術の名門から38人、才能ある一般人から10人……と、どうにもエリート志向な部類が多いようなのだ。

 なので、私はその10人が迫害されぬよう、カルデアの責任者である者のサーヴァントとして、そして素人から始まって、かつてマスターだった者として、彼らを導いていきたいと思う。

 

 

 

 時間が経ち、マスター候補生と思しき者たちが一斉に中央管制室へと向かって歩いているのを度々見かける。

 どうやら、明日のレイシフトにおける説明会と、その目的意義を説くとの事。それはオルガマリーからも、彼女が担当すると聞いていたので知っていた。

 私も、後で特異点探索に同行する、オルガマリーの代行兼サーヴァントとして来るように、と言われていた。

 そこで、彼ら彼女らと正式な初顔合わせをするのだろう。

 

 まあ、私の格好はそれなりに目を引くらしく、かなりの人数にすれ違う度にジロジロ見られたのだが。なんせカルデア内は暖房が点いているとはいえ、この雪山の僻地をワンピースで、それも裸足で過ごしているのだから、異様に映って当然である。

 

 

 そろそろ私も管制室に向かおうかとしたところで、

 

「フォウ、フォフォウ。キャーウ!」

 

 いきなり後ろから、足元にモフモフした何かが張り付いてきた。

 

「きゃっ……!? って、フォウくんか。びっくりしたぁ……」

 

 感触と鳴き声で、犯人をすぐに特定した私は、振り返り、ジッと私を見上げているフォウを持ち上げて抱っこする。

 ───あったかい。命の温もりを感じる。

 

 

「あっ」

 

 

 と、フォウを抱っこしてモフモフを堪能していると、誰かの声がした。

 声の方に目を向けると、カルデアの制服の上に白衣を纏い、薄い紫色をした髪の、ショートヘアーのメガネ女子が佇んでいるのが目に入った。

 

「イイ、メガネだね」

 

「はい? えっと、あの、初めまして、でしょうか……?」

 

 おっといけない。あまりにドストライクなメガネの持ち主の登場に、挨拶が少し変になってしまった。

 私の言葉に、少女は困惑しながらもきちんと挨拶をしてくる。うん、礼儀正しいメガネ女子でたいへん宜しい。

 

「ん? ……その声。ああ、フォウくんの飼い主の子!」

 

 そういえば、初めてフォウに遭遇した際、フォウは少女の声を聞いて私の部屋を去っていった。その時に聞こえたあの女の子の声と、この少女の声は同じのように思える。

 

「いいえ。わたしはフォウさんの飼い主という訳ではありません。フォウさんはカルデア内を自由気ままに散歩していますが、基本的に人に懐いたりもせず、何故かわたしには寄ってきてくれるので、わたしがたまにお世話をさせてもらっているのです」

 

 きっぱりと、ペットではないと言い切った少女。なんというか、この子はフォウを自分と同格に見ているような感じだ。

 

「あ! そういえば、自己紹介がまだでしたね。わたしは『マシュ・キリエライト』といいます。よろしくお願いします、えっと……」

 

「ああ。私は岸波白野。このあいだ、オルガマリーに召喚されたサーヴァント。よろしくね、マシュ?」

 

 サーヴァント、という部分にマシュは目を見開き、かなり驚いているようだった。

 

「あなたが、カルデアで行われ成功した英霊召喚の四号の……!! ずいぶんと挨拶が遅れ、申し訳ありませんでした! てっきり、マスター候補生の一人だと思って……」

 

「ううん。多分、私は君たちの年代とあまり変わりない時代の生まれだし、間違われても無理はないかな? ほら、ダ・ヴィンチちゃんとか明らかに時代が違う格好してるし」

 

 なるほど、とマシュは私の言葉に頷いて返す。ふむふむ、どうやら彼女は礼儀正しい性格な上に、几帳面なところもあるらしい。

 と、どうにも私がフォウを抱っこしているのがよほど気になるのか、マシュは私の腕の中で大人しくしているフォウを食い気味でジッと見つめていた。

 

「何かおかしなところでもあった?」

 

「あ、いえ。フォウさんがわたし以外に懐くのは珍しいので、少し興味深く思いまして。自分からはあまり人に寄っていかないので、岸波さんがカルデアで二番目のフォウさん認定者、ですね」

 

 おお……。こんな愛らしい生き物に私は認められているのか。しかも、あまり人に懐かないのに。

 それはそれで、感慨深いというか、メチャクチャ嬉しいのだが。思わず顔がにやけてしまいそう。

 

「嬉しいなぁ……。でも、そろそろ管制室に行かないとオルガマリーにどやされるから、ゴメンねフォウくん」

 

「フォーウ」

 

 いつまでも抱っこしていたいところだが、今は管制室に向かうのが先だ。名残惜しくはあるが、私はフォウをソッと床に下ろす。

 すると、今度はマシュの足を伝って、彼女の肩まで一気に駆け上がるフォウ。まるで木を登るネコかリスさながらである。

 

「あっ、そうでした! わたしも管制室に行かないと……!」

 

「そうなの? じゃあ、一緒に行こうよ」

 

「その、まだ他に用事が残っていまして……。わたしは用を済ませてから向かいますので、岸波さんはお先に行って下さって構いませんよ」

 

 時間はまだあるし、用があるのなら仕方ない。ここは一人で管制室に向かうとしよう。

 

「そう。じゃあ、また後で」

 

「はい。また」

 

 軽い再会の約束をし、マシュは私の隣をパタパタと早足で去っていった。肩にフォウが乗っていたのに軽やかなあの足取り───、どうやら普段からマシュの肩はフォウにとっての定位置なのかもしれない。

 

 マシュを見送り、私は管制室へと向かう。途中、同じく管制室へと歩いて行くマスター候補生であろう彼らと出会(でくわ)すが、やはりというか、私の格好は好奇の目で見られるようだ。

 ……もし可能なら、今度衣装チェンジを試してみよう。月海原学園の制服なら、刺さるようなこの視線もまだ少しはマシになるかもしれない。

 

 

 

 何だか、行き交うスタッフの慌ただしさも異常に増しているように思えるが、どうしたのだろうか?

 なんとなく、嫌な予感がする……。

 

 

 

 




 


設定ガバ、駄文でも気にしないで書く!!

……というのは冗談で、現状でも駄文なのはともかくとして、設定ガバだけはどうにか避けたい。
そしてはくのんボイス早くついてお願い。
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