ゴシックは魔法乙女 短編集   作:BANG(いつか帰るところ)

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雪山に行っていたら、こんなエスエスになってしまいました。


ゴシックは魔法乙女27

ゴシックは魔法乙女27

 

 

 

第67話  カルミアチョコレート

 

 

カルミア「私は今、標高2千メートルを越えた山頂付近にいる」

 

カルミア「辺り一面は雪、雪、雪、踏み込むとクククと雪が圧縮される音を立てて、腰高まで埋まる」

 

カルミア「アイゼンの効きは良い、前爪が雪奥の氷にしっかりと刺さるのが分かる、こびりつく雪だまは、まだ大丈夫」

 

カルミア「その下にどれ程雪が積もっているのか、想像もつかない、想像したくもない」

 

カルミア「幸いの晴天、太陽は直視できないほど輝いている、バラクバの隙間の目尻の付近に当たる紫外線が痛い」

 

カルミア「濃すぎる青色の空、いや、群青色の空、時折雲が流れる」

 

カルミア「真っ白な斜面はどれくらいの傾斜だろうか、ピッケルを差して体勢確保出来るギリギリぐらい」

 

カルミア「風は緩やかで白い斜面を撫でるように流れて、何かキラキラと吹き飛ばしている、雪?水?水蒸気?分からない」

 

カルミア「山頂付近に近づくとやはり傾斜がきつくなる、振り返るとラッセル跡がウネウネと寂しそうな一本線を書いていた」

 

カルミア「足場をククッと確保して、ピッケルを伸ばしてサクと突き刺し、足を前に上に出す」

 

カルミア「ダガーポジションは、取らない、体が冷えすぎている」

 

カルミア「少しずつ山頂に近づいている」

 

カルミア「腹が減った」

 

カルミア「お腹が空いた」

 

カルミア「声に出すと、意識すると、その思いはよりいっそう強くなる」

 

カルミア「後、5歩だけ進もう」

 

カルミア「声に出して、誰も聞いていないのに、声に出して、行動を決める、誓約する」

 

カルミア「ザックから何か取り出すか?駄目、下ろすのがしんどい」

 

カルミア「何か、ウエストに入れてなかったっけ?練乳チューブは喉が渇きすぎる、ハイドロから水を飲む手間も避けたい」

 

カルミア「胸ポケには?そうだ、食べかけの子袋入りのアーモンドチョコレートがあった、後、2、3粒くらい残ってるはず、やっほい」

 

カルミア「ミトン型トリガーフィンガーの手袋のリーシュの結着を一瞥して確認、うん、黒と赤のリーシュが腕に巻かれている」

 

カルミア「ピッケルを左手に持って斜面に突き刺して、足を踏み込んで体勢確保、ザック腰のピッケルリーシュも確認」

 

カルミア「右手のグローブを外すと赤茶色のインナーグローブが見える、うっすらと水蒸気が立ち上っている」

 

カルミア「アウターの左胸ポケのジッパーを下ろす、ザックの胸の調整ベルトと干渉していない、いい位置にある」

 

カルミア「カサと音が響く、指先にビニール包装のギザギザが当たるのが、インナーグローブ越しに分かる」

 

カルミア「親指と中指で摘まんでそっと引き出す」

 

カルミア「たぶん、落としたら取る気力がなく、そのまま捨てていくかもしれない」

 

カルミア「山にゴミを捨てるのは許せない、ゴミを見るとムカつく、でもそんな気分、矛盾している」

 

カルミア「ほら、ちゃんと引き出せた」

 

カルミア「私の掌に赤色の包装のチョコレート、赤色、久しぶりに見た気がする、しばらくは白と群青色しか見てなかった」

 

カルミア「開けていた穴から指を使って楕円形のチョコレートを一粒押し出しながら口に近づける」

 

カルミア「指を引っかけ、バラクバをずり下ろして、鼻と口を外に出して、チョコレートを口に含む」

 

カルミア「素早く、バラクバを戻して、チョコレートを胸ポケに入れて、グローブをつける」

 

カルミア「口の中には冷たい楕円形の何かがコロコロと揺らいでいる」

 

カルミア「いや、チョコレートなんだけどね」

 

カルミア「私の柔らかで温かな舌の上でチョコレートが所在なさげに転がる」

 

カルミア「私はまた、上に進み始める、チョコレートに少し意識を割きながら」

 

カルミア「チョコレートはまだ固い、全然味がしない、けど、うっすらと想像上の味が広がる、舌が期待にうねる」

 

カルミア「少し溶けた」

 

カルミア「とたんに、私の舌の上にチョコレートの甘さが突き刺さる」

 

カルミア「口が甘くて熱くて、舌がビクビクと歓喜に跳ねる」

 

カルミア「舌の上にうっすらとチョコレートの膜が張られる、まだ飲み込まない」

 

カルミア「私は、はしたなく、チョコレートを飲み込まない」

 

カルミア「私は恐れるように、期待するように、口内のトロトロに蕩けたチョコレートをコクりと飲み込んでみる」

 

カルミア「喉から胃にチョコレートが垂れ落ちていくのが分かる、喉が熱くなる」

 

カルミア「私の胃がチョコレートを吸収しようと激しく蠢く、クラリときた」

 

カルミア「胃に血液が回されている、少し歩調を落とす必要がある」

 

カルミア「胃にチョコレートを流し込むと、舌の上のチョコレートの甘味が暴力的なまでに強くなる」

 

カルミア「意識しているから」

 

カルミア「私の舌が、意識が、脳ミソが、チョコレートに屈している、舌が甘い」

 

カルミア「ゆっくりとチョコレートを流し込むと胃が蠢く」

 

カルミア「もう、ゆっくり味わえない、胃にチョコレートを流し込むのを止められない」

 

カルミア「やがてチョコレートは全て溶けて胃に流し込まれる」

 

カルミア「私の舌は、はしたなく、あさましく、チョコレートの残骸を求めて口内をまさぐる」

 

カルミア「針の先くらいのチョコレートの残滓すら舌先が蠢いて舐めとる」

 

カルミア「少し温かなアーモンドが口内に残る」

 

カルミア「チョコレートがじわじわと私を解放すると、アーモンドの感覚に意識が向く」

 

カルミア「土臭い」

 

カルミア「口一杯に土を入れて、噛み締めたら来んな味がするのかな」

 

カルミア「嫌じゃない」

 

カルミア「この香りは嫌じゃない、土臭い」

 

カルミア「味はない」

 

カルミア「私はアーモンドを舌の上でコロコロと転がす、チョコレートと違ってアーモンドは溶けない」

 

カルミア「私の胃がおねだりしている、噛み砕いたアーモンドを寄越せと、おねだりしている」

 

カルミア「でも駄目」

 

カルミア「私は胃を無視してアーモンドを舌先で転がして土臭さを堪能する」

 

カルミア「私の鼻腔にアーモンドの香りが広がり、私は雪の下の大地を想像する」

 

カルミア「私の顎が動き歯がアーモンドを噛みしめ砕く、全くの意識外」

 

カルミア「胃に意識を支配された、くそ、何でもおねだりするビッチめ」

 

カルミア「私はアーモンドを楽しもうと丹念に噛み砕く」

 

カルミア「噛み続けているとアーモンドが溶けてなくなった、口内にアーモンドの味と香りが残る」

 

カルミア「私の舌は再びアーモンドの残滓を求めてウネウネと蠢く、はしたない」

 

カルミア「口内にはアーモンドチョコレートの記憶しか残らなくなった、私はそれも楽しむ」

 

カルミア「落としていた歩調を戻す」

 

カルミア「全身にアーモンドチョコレートのエネルギーが行き渡る」

 

カルミア「絶対に一万キロカロリーはある」

 

カルミア「これで山頂までのラッセルが可能となった」

 

カルミア「あと、味の記憶で5千キロカロリーも追加されている」

 

カルミア「エネルギーに振り回されるな、クールに、クレバーに行動しよう」

 

カルミア「私は山頂を見上げる、その先には群青色」

 

カルミア「私だけの斜面、私の雪原」

 

カルミア「私は手首のリーシュ、腰のリーシュを一瞥して、ピッケルを白い斜面に突き刺す」

 

カルミア「自然と笑みが浮かぶ、笑うのを止められない、ははっ、おもしろいっ」

 

 

 

 

 

第68話 シング ア ソング

 

 

公園にて

 

真少年「可愛い顔して、いーろじろでぇー」ルンルン

 

真少年「知恵が回って、明るくてー」テクテク 

 

真少年「笑いじょーごは、いーけれどー」

 

真少年「はーでな、イタズラたまにきずー」

 

真少年「あーれはー、どこの子ー、まーほーぉーの子ぉーおー」

 

真少年「あくびっ・・・」ビクッ!!

 

ロザリー「・・・」ジーッ

 

真少年「・・・」

 

ロザリー「・・・」

 

真少年「・・・」

 

ロザリー「あくび娘と人は言うぅー」

 

真少年「!!・・・シュワー」

 

ロザリー「シュビデュワー」

 

真少年「あくび娘は素敵な子っ!」

 

ロザリー「・・・」

 

真少年「・・・」

 

真少年、ロザリー「イエスッ!!」ハイタッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 




雪山のあれこれと、声に出して歌を歌う姿を見られる話でした。
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