強個性だよ! ガタノさん!   作:嫌いじゃない人

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 『娘太丸』さんの擬人化ガタノゾーアさんに惚れ込んで見切り発車。
 ガタノゾーアさんを知らないという方は是非ホームページでチェックしてください。個人的には口元が好きなので、擬人化計画公式ホームページよりも電撃ジーマガジンのホームページで見て欲しいです。


No.1 重き宿命を負う少女

 人口の八割が"個性"と呼ばれる超人体質を身に着けた社会。悪しき"ヴィラン"と正義の"ヒーロー"が個性による戦いを繰り広げるそんな世界の中。それでもほとんどの人達は自分の個性と上手に付き合いながら、割と平穏に暮らしていた。

 でもまあ"個性"と言うだけあって結局は人それぞれ。上手くいかない人だって居る。

 

 

 

―― ピピピッピピピッ。

 

「う、んっ……。ふぁ……」

 

 そんな個性を持て余した少女の一人『真潟(マガタ) 望海(ノゾミ)』の朝は早い。

 彼女が通う中学校の始業時間を考えれば、だいぶ早い時間に彼女の目覚ましはセットされている。しかし別に彼女の生活が規則正しいとか、部活動の朝練があるとかそういうことではない。その理由は彼女の厄介な個性であった。

 

 カラフルな海星(ヒトデ)柄のベッド。その掛け布団は小山のように盛り上がり、ごそごそと動いていた。人一人が中に納まるにしてはあまりに大きな盛り上がり。

 しかして海星柄布団がベッドからずり落ち、その正体が明らかになる。

 

 そこにあったのは一般のご家庭にはまず無いであろう巨大な巻貝のような殻だった。幅も直径も一メートルは優に超える巨大な巻貝。そしてその下にはうつ伏せになった少女が下敷きになっている―― ように見えるが、この巻貝も彼女『真潟 ノゾミ』の身体の一部。(れっき)とした個性なのだ。

 

 

 一口に"個性"と言えど、様々な種類がある。いわゆる超能力者的なイメージで能力を振るうことが出来る"発動型"、自らの身体の形状を状況に応じて変化させる"変形型"、身体機能の一部あるいは全体を強化する"増強型"。そして肉体からして常人のそれと異なる"異形型"や、幾つかの個性の性質を併せ持つ"複合型"。

 ノゾミはその内の一つ、異形と発動の複合型個性の持ち主である。

 

 

「うー。……よっ、ほっ」

 

 巨大な巻貝のような"殻"はちょうど帽子のようにノゾミの後頭部に覆いかぶさっている。日常生活を送るにあまりに巨大すぎるこれがあるせいで、彼女はうつぶせ寝を余儀なくされる。さらにその重量も見た目に違わず超ド級。ここから起き上がるのも一苦労。

 

 しかし彼女にはある秘策があった。

 

「……手伝ってぇー」

 

 呼び声に応え殻の穴から顔を出したのは二匹の蛇。厳密には蛇の頭に似た、それぞれに意思を持つ"腕"である。

 ノゾミの頭の殻は、例えるなら普通の巨大巻貝が三つ並んでくっついた様な形をしている。真中の貝にはノゾミが、そして両横の一回り大きな貝殻からは蛇が顔を出しているという構図だ。

 

 その蛇さんたちの助けを借りながらなんとか起き上がる。次は着替え。

 頭が大きすぎるため、首を通す形の服は着られない。バランスを取るのが難しいので靴下を履くのも一々大事。左右の蛇の力を借りて赤ん坊の掴まり立ちのようにしながら、なんとか中学の制服に着替える。

 

「うーん。こんなもんかぁ……」

 

 因みに本人はまだ寝ぼけ(まなこ)。右の蛇が差し出す制服のリボンを忘れている。

 

 

「ノゾミー。早く降りてらっしゃーい」

 

「は~い」

 

 階下からの母親の声。ノゾミは自分の部屋を出て一階のリビングに向かう。

 

 ノゾミの家は大きな一戸建て。しかし経済的には特別豊かという訳でもない。ノゾミの個性の発現に合わせ、彼女が不自由なく暮らせるよう彼女の親が建てたのだ。家中の扉や廊下はノゾミの頭が突っ掛らないようにかなり広く造られている。そうすると必然的に建物自体が大きく膨らんでしまい、結果として大きな家になる。

 個性に必要な住居の増改築には国からの補助金が出るとは言え個人の負担額も決して安くはない。仕方がないこととは言え、時折ノゾミは親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

 一階のリビングでは母親が朝食を用意してくれていた。

 彼女の母親もノゾミと同じく頭に殻を被っている。が、しかしその色や形は全くの別物。紅白の縞が鮮やかな殻は、遠目にはお洒落な帽子のように見えるほど美しい。ご近所でも美人さんと評判の人妻だ。

 

 母はお弁当のおかずを包丁で切りながら、触手のように動く長い御髪を上手に操ってお玉で鍋をかき混ぜていた。

 この辺の個性はノゾミにも遺伝しているが、残念ながら料理に活かせるほど繊細に操るレベルには到底達していない。年季の違いと、何かと蛇に頼って来たツケである。

 

「お味噌汁温めなおすから、顔を洗ってらっしゃい」

 

「わかってますよぅ」

 

 そうして洗面所で顔を洗い、髪を整えてからリビングに戻ると、丁度テレビのニュースで今日の早朝に起きた事件を報道していた。なんでも酔っ払い同士の喧嘩で、はた迷惑な個性が使われたらしい。尤も、そのニュースが取り上げていたのはそれによる被害と言うよりも事態を鎮圧したヒーローの活躍だった。

 

「いやねぇ。暴れまわって人様に迷惑かけるなんて……」

 

「あ、このヒーロー最近活躍してる人だ。前もテレビで見た」

 

「ヒーローの活躍。喜んでいいのか悲しんだ方がいいのか、ちょっと複雑よね」

 

「……? 喜んでいいんじゃないの? 言いたいことは分かるけど、でもヒーローは必要だし」

 

「それもそうだけど……。あら? このニュースの現場って結構近くじゃない?」

 

「え、そう?」

 

 テロップに映る地名は、ノゾミにとって見覚えが無い。

 

「ほら。ちょっと離れてるけど、バスの路線沿いでしょ? ダイヤ、乱れてるんじゃない?」

 

「ふぇ!? もうっ、早く言ってよー!」

 

 ノゾミは慌てて朝食を飲み込み手早く口を濯いだ後、大急ぎで玄関から飛び出した。

 学校のチャイムにはまだ時間がある。でもいつものバスを逃してしまうと、少しばかり面倒なことになるのだ。

 

「あんまり急ぐとー転ぶわよー」

 

「そんなしょっちゅう転ばな ――ふぎゃ!!」

 

 

 つるっ。

 

 ぐるんっ!

 

 ゴンッ!!

 

 …………。

 

 

「大丈夫!? ノゾミっ! ……って、あらあら。またなのかしら」

 

 物音に驚いて駆けつけて来た母親。玄関先から彼女が見たのは、いつもと同じ、ひっくり返った愛娘が目を回しているという毎度おなじみの光景だった。

 

 

「……ふぎゅ~」

 

 

 

 

 

 

 これは持って生まれた"個性"故にすぐひっくり返ってしまう宿命を背負った、悲しくも逞しい少女の物語である。




真潟 望海
個性『邪神』
・"現存しない生物の特徴を持つ"という異形系の個性。頭に身長と同じ大きさ、体重の数倍の重さの殻が乗っているからすぐに転ぶぞ! 起き上がるのも一苦労だ!!
・蛇に似た"腕"は伸縮自在! それぞれが別々の意思を持っているが彼女の命令には基本服従だ! 毒は無いので噛まれても安心だぞ!!
・蛇の腕以外にも、『あらゆる攻撃を弾き返す強靭な肉体』『生物や機械の活動を停止させるシャドウミスト』『万物を貫通する必殺の光線』など、幾つも強力な能力を持っている!! 偶に複数の個性持ちと間違われるが、全部まとめて一つの個性だ!!

望海の母親
個性『オウムガイ』
・生物の特徴を持つ個性の一つだが、個性の発現度合いはかなり低め。帽子みたいな殻がチャームポイントだ!
・水棲生物の個性だが泳ぐのは人並み。鰓呼吸しながら水中を浮いたり沈んだりするぞ! さらに髪の毛を触手のように操れる! 乾燥が大敵だ!
・いつまでも若々しく美しいのは"古代から姿が変わらない"オウムガイの特性だという噂もある! 真偽は不明だ!!
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