今更ながら、擬人化計画の怪獣のチョイスが謎。初代バルタンが未だ擬人化されてないという事実。
あとアニメに登場するキャラクターのチョイスも謎。初代とセブンの怪獣がメインなのは分かるけど、なぜザンドリアス……。二期にはノイズラ―も出てくるし、80怪獣だとメカギラスだけハブ。イジメかな?
放課後、ノゾミは今朝の友人と一緒に地元のデパートに来ていた。ごく一般的な、女子中学生の寄り道である。
友人が自分たちの買い物をしている間、ノゾミは同じフロアの通路をぶらつく。巨大な殻のせいで気軽に店舗の中には入れないので、手広い通路側から何となくテナントの中を覗いて暇をつぶすのがノゾミなりの買い物の楽しみ方。ボーっとフロアを見渡していると、自分たちと同じ中学の制服や別の地元の学校の制服を着た学生がちらほら見えた。地元にはこのデパートの他にはあまり遊ぶ場所が無いので、平日のお昼過ぎにはよく学生が
そんな風に目的なく散策するノゾミだったが、少し気になる物を見つけて足を止めた。そこは少し変わり種の文房具を扱っているテナント。暇をつぶすには最適な場所である。
ノゾミはその文具店の店先に吊り下げられたボールペンを手に取った。キャラクターグッズだろうか? ボールペンのノックする部分に、ガマガエルとクジラを足して知性と愛嬌を差し引いたような人形がくっついている。
(なんですかこれ……? 『ガマちゃん』?)
可愛くないし、使い辛そう。何でこんな物を客の目に付く通路側に陳列したのか意味が分からない商品をフックに戻す。
そして視線を上げ振り返ったときだった。
偶然、文具店の向かいの店舗にいた一人の男子学生の姿が目に入る。
着てる制服は確か隣町の高校。別にどこにでもいるような、異形系個性でもなんでもない普通の学生である。
しかし妙にノゾミが引っ掛かりを覚えたのは、彼の不審な挙動。特別目立つようなワケでもないが、しかし一度意識してしまうとヤケに気になってしまうようなそんな動きだった。
嫌な予感。
"間違いが起きる前に"。そんな気持ちでノゾミは向かいのテナントに近付いていく。もしかしたら魔が差しただけかもしれない。もしかしたら人が近くにいることで抑止できるかもしれない。そんな思い付きでの行動。
しかし非情かな、彼女の行動は今一歩間に合わなかった。
(……あ。あー。あー!)
ノゾミの目の前で、男子高校生は商品を自分の学生鞄の中に滑り込ませてしまった。
万引きである。
初めて目にする軽犯罪の現場。予期していたこととはいえ、善良な女子中学生であるノゾミにそのショックは大きい。
余りのショックで、立ち止まったまま万引き犯を凝視してしまうノゾミ。
しかしそんなことをすれば当然彼女も周囲から浮くわけで、今の今まで周囲が見えなくなっていた万引き犯も否が応にも彼女に気が付く。そして二人の目が合った。
「……あ。万……引き?」
バッチリ目撃していたノゾミだが、何故かショックで疑問形になる。
「あっ、ヤ違げっ……!! 何見て、クソッ……!」
そして万引き犯はと言えば、目撃されたという事実に半ばパニックになっていた。逃げるでもなく言い訳をするでもなく、その場で足踏みをするような挙動を取りながら商品を入れた学生鞄の中をあさっている。その顔はお酒でも飲んだかのようにどんどん真っ赤になっていく。
そんな彼の様子を見ていたノゾミは相対的に冷静になっていた。近くに自分以上に慌てている人がいると逆に気持ちが落ち着けるというアレである。
とまれ、考えるのはこれからどうするべきか。
常識的に考えれば、警備員か店員に知らせるべきなのだろう。ノゾミだってもちろんそのつもり。見逃せば窃盗罪の片棒を担ぐことになる。
しかしそれはもしかしたら、この男子高校生の人生を大きく狂わせてしまうことなのかもしれない。もちろんそれはこの男子の自業自得だが、だから自分に関係ないことだと、そう割り切るのは未だ中学生の幼い少女には難しいことであった。
だから祈る。彼が鞄の中の商品を戻すことを。確かこの前見たテレビでは商品を店の外に持ち出さなければ万引きにならなかった……ハズ。うろ覚えだが、そんな感じ。
なので商品を戻し店から出るか、ちゃんとお金を払って買えば犯罪にはならないハズ。そして彼にはこれを機に改心してもらいたい。現に犯した罪に対しては罰を受けるべきだと言う人もいるかもしれないが、そんな風に言う人は自分たちで万引き犯を捕まえればいいのである。ノゾミには関係の無いこと。
(……まだ引き返せます! 私は偶然見ただけです! 正義感にはあまり燃えない、事なかれ主義の一般市民です……!)
彼には一度冷静になってほしい。そう考えるノゾミはそれとなく顔を逸らしつつ、チラチラと『見ちゃいました』アピールを続ける。
しかしそんな努力も報われず、次の瞬間に男子高校生は走り出してしまった。
「……あっ!!」
「―― おっと待てや学生さん」
そしてすぐに、店員に捕まった。どうやら店のバックヤードから回り込んでいたらしく、学生が逃走を始めた瞬間には既にその経路を抑えており出合い頭に捕捉。ノゾミが出る幕など無い、あっという間の逃走、逮捕劇だった。
捕まった学生は大人しく店の奥に連れていかれる。流石に観念したらしい。
ノゾミはそれを見届けてから、ようやく一息ついた。
良かった。自分が手を下さずに済んだ。店員は仕事をしただけだし、万引きした少年は自業自得。そして自分は部外者であり目撃者。
めでたしめでたし、一安心……のはずである。
でも何故か、心が妙に落ち着かない。その正体は自分の行動が本当に正しかったのかという疑問と、それに付随する後悔。
そのモヤモヤとした感情をノゾミはそっと宥めつける。仕方がないことなのだ。ノゾミの中に、人の罪を指摘する程の正義感は根差していない。ヒーローを目指さない自分に、そんな物は在りはしない。
そんなことよりも自分の個性で人様に迷惑を掛けないことの方がずっと大事であり、無理をしてまで事件に首を突っ込むなんてのは以ての外である。
(そろそろ、二人の買い物も終わったでしょうか?)
気持ちを切り替えて、友人が買い物をしている店舗に向かおうとする。するとちょうど向こうから二人がこちらに歩いて来ていた。無事に買い物は終わったらしい。
ノゾミが二人に向かって一歩踏み出した、その時だった。
爆音。そして背後から叩きつけられる衝撃に、ノゾミは前のめりに転がった。
「なっ……ナニゴトですかっ!?」
訳も分からず目を回してしまうノゾミ。友人の手により助け起こされて目にしたのは、さっきまでの平穏な日常とはかけ離れた景色だった。崩壊した商品棚に、黒く焦げ付いて所々火が燻っている床や壁。
何かが爆発した。それはこの凄惨な形跡を見れば一目で分かる。
そしてその爆発の中心は、さっきの万引き高校生が連れていかれたテナント。
蝶番が外れぶら下がったバックヤードの扉のから、その男子が姿を現す。だが、何か様子がおかしい。心此処に在らずといった様子でふらつきながら歩く。制服の背中の部分が敗れ、煙のような物を吹き出していた。
「なぁガタノん。アレって……」
「爆発の原因。キレた若者」
「ヤバくない? ねぇ? なんかこっち見てるよ!?」
確かに友人の一人が言う通り、爆発高校生の視線は三人の方を向いていた。より厳密に言うなら、ノゾミを見ている。
これはアレっぽい。昔よく体験した、無意味に不良に絡まれるパターンと同じである。むやみやたらと目立つ外見のせいか知らないが、因縁を付けられるのはこれまでもあまり珍しくなかった。
そしてそんなときの段取りも、この友人たちとの間では出来上がっている。
「たぶん、ターゲット私だと思います。二人は階段で逃げて、ヒーロー呼んできて」
「オッケー。んでガタノんはどうする気だ?」
「とりあえず話してみる。あんまり爆発されると、放課後遊ぶ場所が無くなっちゃう」
「いつものだな。良し、行くぞ!」
「……気を付けてね。ガタノ」
ノゾミは友人の避難を見送ってから、ゆっくりと爆心地の少年の元へ近付いていく。俯きがちで正気かどうかも分からないが、やはりその視線は彼女を見つめ続けていた。
ノゾミは慎重に対応する。こういった場合、とにかく刺激しないことが大切。
「……テメェ、見てやがったな……!!」
予想通り、近づいたノゾミに少年の方から話しかけてきた。キレている、というよりは
「はい。見てました」
「くっそっ最悪だよ……。なんで俺が見つかんなきゃいけないんだよ……。クラスの女子たちの方が絶対万引きしてるだろ!」
出ました『みんなやってる理論』&『偏見に基づく弁解』。個性で暴れたこと抜きにしても、明らかに駄目な人間の理屈。正直、関わり合いになりたくないレベルである。
しかしそんな態度を露骨に表してしまえばまず間違いなく話が抉れるので、やはりここは穏便に、さも同情していますというポーズを取る。
「……納得いかないんですか?」
「当ったり前だろ!! なんで俺ばっかり……。ああ嫌だヤダヤダ。不公平なんだよ絶対不公平過ぎるんだよ」
「納得できない理不尽って、たくさんあります。皆さんどうしてこんな理不尽な世界で平気でいられるのか、私も理解できなくて不思議に思うこともあります。でもその納得できない気持ちを暴力に変えると、これからの自分をどんどん追い詰めてしまいませんか? だから一度落ち着いて――」
「遅ぇよ!! 分かってるっつのンナこたぁ! 俺の言い分も聞いてくれよ。あの店員が殴って来たんだ!!」
ノゾミが少年の顔を改めて見ると、確かに殴られたような腫れがある。が、正直ここまでの騒ぎを起こすような怪我だとも思えない。
「殴られたんですか!?」
けれどここはちょっとオーバーにリアクション。相手を宥めるときには共感が大事。
「殺されるかと思った! 捕まって抵抗できない人間を殴るとか常識的にありえねぇだろよぉ、なぁ……?」
「だったら……もしかしたら正当防衛が成立するかも知れないです。だからヒーローが来る前に一旦落ち着いて、個性を抑えて下さい。私も一緒に訳を説明しますから……」
散々道理に合わない不満をぶちまけていた少年が、ここへ来てようやく静かになる。
ノゾミは峠を越えたと思い安堵し、ゆっくりと近づいた。しかし近づきその俯いた表情が見えたことで、自身の思い違いに気付いてしまう。
―― 違う。これは観念した顔じゃない。
「…………」
万引き少年が何かを呟いている。だが何を言っているのか、耳を澄ませて言葉を拾っている余裕はない。
少年の肉体が、大きく変化しつつあった。
煙を排出していた背中が大きく瘤のように膨らみ、さらに激しく蒸気が噴き出し始める。
「仕方ないだろ、殺されると思ったんだ。
吹き出した蒸気はかなり湿っぽく、そして硫黄のような匂いがする。その白い蒸気の中で、少年の身体は目に見えて巨大化していく。
ノゾミにはひっくり返らないよう気を付けながら、ソレを見上げることしか出来ない。
そうして蒸気の中から現れたのは、赤黒い岩のような肌を持つ巨人だった。
身長は三メートルほど。巨大化の個性の中では"大人しい"サイズ感だが、室内だとその威圧感が半端ではない。巨人が身じろぎすると、それだけで辺りの空気が揺れ動く。ノゾミの肌を掠めた空気は熱を持ち、そして硫黄ともまた別の悪臭を湛えていた。
個性『活火山』
・肉体を高エネルギー状態の火山のように変化させる個性。その皮膚は岩のように固く、体内はマグマの力で溢れている! 活動が激しいと身体が少しずつ大きくなるぞ!!
・時折身体からガスやマグマが噴出する! 火山活動は感情の起伏で激しくなるため、意識的な制御は不可能だ!! 火山だから仕方ないな!!