金属の支配者 作:眼咤琉
その島は良質な金属と優れた鍛冶技術で名が知れている。
全ての金属製品を辿るとその島にたどり着くと言われる程に。
その島の名前は『タルム島』。
タルム島に所謂、前世持ち、特典持ち状態で転生した俺。
この物語はそんな俺の物語。
俺の終わりは突如として訪れた。
死因は溺死。海行ってたら足がつって溺れた。
はっきりと呼吸気官に海水が入るのがわかった。
呼吸ができないのに、体はどんどん沈んでいく。
浮き上がろうとしても、結局水が入っているから無意味だ。
ああ、死ぬのか。
無様だ。こんな死に方をするなんて。
一体俺は何をしたのだろう。何を成したのだろう。
俺は何もしていない。
結局俺が死んだ所で世界は変わらない。
それが無性に悔しくて。
そう感じたのもほんの束の間。
なぜなら、俺が死んだのだから。
「ああ、ここは?」
病院でもない。家でもない。というより建物という雰囲気を感じない。
『転生したいか?』
唐突に届く声。重厚で威圧感があるのに、どことなく親しげで優しいオーラを感じさせるような。
その声から質問されて俺は戸惑う。
どう答えるべきか分からず、しばらく黙った。
転生するか、と問われてもすぐには答えられない。
生きたい事には生きたい。けれど。
「どこに転生するんですか?」
『ONE PIECEと呼ばれる世界だな』
「架空の世界なのにいいんですか?」
『人間とは、二次元の神になれるだろう? 我は三次元よりもずっと高位の次元に位置する存在。我の次元以下なら自由自在だ。ほら、二次元世界の加工をよくやるではないか』
そう説明を受けて納得した。それでも死亡フラグが林の如く連なる世界で生き抜ける気がしない。
うーん、と唸って考える。
死ぬのは苦痛だ。なによりも苦痛だ。二回も死ぬのは絶対に嫌だ。
このまま転生を選ばなければ、一度の死で済む。
しかし、選ばなければ生を謳歌できない。
まさに生殺し状態。一長一短。俺が優柔不断な訳ではないはずなのに。
『勿論、転生特典くらいはやろうか。しかし、世界の崩壊を誘うような特典はダメだ。転生したお前ごと死ぬ。よく考えて選択することだな』
「オリジナル悪魔の実、というのはいいですかね?」
『それなら世界が辻褄をうまく合わせるだろう。ダメな物の具体例を挙げるならば、他の世界から人を呼び寄せる。超能力を悪魔の実以外で手に入れる、などだな。原作から大きく離れたらそれはアウトだ』
転生特典があるならワンチャンあるかもしれない。
転生が少しだけ死の恐怖を上回り始めた。
「転生特典はいくつ位あるんですかね?」
『ざっと六個ってところだな』
悩む。下手に特典を選べばあっさり死にかねない。
慎重に選ぶ、原作キャラクターと対等に渡り合える特典を。
お約束の【身体強化】に【オリジナル悪魔の実】【覇気】は必須だとして、残りの三つはどうするか。【武術の才能】に【能力を活かせる環境に転生】【覚醒しうる能力】を特典に転生しようではないか。
俺は思考を言葉にした。
神による厳正なる審査の結果、無事に特典は許可された。
『ところで、悪魔の実はなににする?
「
神の声はややあってから答える。
『メタメタの実、金属人間。金属の全てに体を変化させることが可能で、生み出すこともできる。水銀で攻撃から守ればいいし、硬い金属で攻撃すればいい。覚醒すれば周囲の物を金属にすることが出来る』
あれ、強すぎね? と思ったが、原作キャラクターに立ち向かうにはそんくらいあっても足りないレベルだ。
能力としてはギルド・テゾーロの“上位種”といったところか。
「どうして俺を転生させようと思ったんですか?」
『くじ引きに当たったからだ。転生特典を選べる転生者は年に一人だけくじで選ばれる』
なるほど。俺は幸運だということなのか。
自分の運のよさに感謝する。
『心の準備は出来たか?』
神がそう訊ねるので、俺はしっかりと呼吸してから強く頷いた。
すると俺の体が粒子となって消えていく。
これからONE PIECEの世界に転生の開始だ。
死ぬ事への恐怖はどこへやら。無駄にワクワクして転生が終わるのを待った。