遊馬、アストラル、遊矢、遊戯が螺旋階段を抜けた先にはビルのように高い白亜の構築物がいくつも並んで広がっていた。
まるでハートランドみたいだと遊馬は思った。
「他にも入り口があるね。あと少しでみんなとも合流できると思うよ」
遊戯は来る前に支給された端末で十代や遊星と連絡をとりあっていたのだ。
ダッダッダッ キィ―――ン
「みなさん!」
遊矢が振り向くと遊城十代、Dホイールに跨がった不動遊星、神代陵牙の姿が。
「これは壮観だな」
武藤遊戯、遊城十代、彼らと同等のオーラを持つ不動遊星。
時代も世界も異なる英雄達にアストラルは畏敬の念を感じた。
「パラドックスはあの高い搭の所かな?」
一際、高い搭の天辺に巨大な闇の塊が渦巻いていた。
「遊戯さん、俺もそう思います。前の時も高い所にいましたし」
「前も、って遊戯さん達はパラドックスと戦ったことがあったんですか?」と、遊馬。
「うん、パラドックスは昔、ボクの時代の童美野町を襲ったことがあったんだ。十代君と遊星君と共に戦って倒したんだ。まさか、復活しているなんて」
遊星はコクッと頷き、後に続ける。
「パラドックスは破滅した未来から来たデュエリストだ。俺は彼の仲間とも戦った事がある。彼らの目的は破滅した未来の救済。俺は彼らに誓った。世界を破滅の未来に進ませないと。俺はもう一度、彼に会わなければならない」
「遊星さん・・・」
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高い高い搭の最上部、暗黒の球体が照らしていた。その下に計器を操作するパラドックスと椅子にグッタリともたれかかり俯く少女―イリスの姿があった。
カオスのエネルギーは制御され、デュエルディスクに流れ込んだ。
後は最終段階だけ。もう少しで私の願いが叶う。脳裏にはかつての仲間の姿が浮かぶ。
パラドックスにとってカオスの球体は希望の光。
そこへ―――、
「パラドックス、イリスは返してもらうぞ!」
陵牙は、一直線にイリスのもとに駆け寄っていた。
続けてやってくるデュエリスト達。
「待ちわびたぞ、歴戦のデュエリスト達よ!」
「パラドックス!お前の野望はここまでだ!」
遊矢の眼には囚われの覇王眷竜達が映る。
「これからだよ。私の計画は!今こそ私の計画は最終段階に入る!」
パラドックスが腕を下から上に振り抜くと、黒い炎がデュエリスト達の間を割くように真っ直ぐ伸びる。
「くっ、みんな!」
遊戯、遊馬、アストラル、陵牙と十代、遊星、遊矢に分断されていた。
「1対6は流石に厳しいのでな。1対3ずつといこうじゃないか」
「1対3ずつ?なら私達は誰と・・・」
戦うのかと、言おうとした時ハッとアストラルは気づく。
イリスに駆け寄っているシャークを視界の端で捉える。
「イリス、無事か?!」
「王様・・・」
ゆるゆると顔をあげるイリス。
「まさか!シャーク、気を付けるんだ!」
一瞬、アストラルに振り向く陵牙。
ドォオオン!
その瞬間、陵牙は壁まで弾き跳ばされる。
「ゲホッ!」
息を整えながら立ち上がろうとする陵牙は見た。
冷たい眼差しをしたイリスがデュエルディスクを構え、見下ろしている姿を。
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「何故だ!イリス!」
愕然とするシャークを見て遊馬は炎の向こうのパラドックスに詰め寄る。
「てめぇ、一体なにをしたんだ!」
「私は彼女を通してカオスの制御を行っただけだ。フハハハ!恐らくそれが彼女の本来の姿だ」
「なん・・・だと・・・!」
精一杯に眼を見開く陵牙。
「何が制御を行っただけだ。私のカオスの半分を掠めとったではないか。忌々しい。万全の状態なら塵にしていたものを」
年端もいかない少女にはあまりにも似つかわしくない怨嗟。
そして、カオスの制御。アストラルは恐ろしい可能性に思い至る。
「ドンサウザンド・・・なのか?!」
「流石はアストラル。この姿でははじめましてになるわね。私はドンサウザンドの半身、イリス」
ドンサウザンド、かつて遊馬達が戦ったバリアン世界の神。
「イリスがドンサウザンド?どういうことだよ、アストラル!」
戸惑う遊馬。あまりの展開に理解が追い付かない。
「仮説でしかないが、ドンサウザンドはバリアン七皇を仕立てるために各地に分身を送って暗躍していた。恐らく、彼女も・・・」
「そんな・・・」
シャークはイリスと親しい関係。大丈夫なのか・・・。
「イリス、どうしちまったんだよ」
陵牙は泣きそうな表情に顔を歪ませている。
「これが私の本当の姿よ。そもそも、妹に瓜二つな女の子が戦場にいるなんて、おかしいと思わなかったのかしら?まぁいいわ。王様いえ、あなた。本当の真実を知りたければ私とデュエルをしましょう」
イリスの持つデュエルディスクが怪しく輝く。
「しっかりするんだ陵牙君!こうなったらデュエルに賭けるしかない!デュエルを通してどうにかする手立てがあるはずだ」
根拠はない。伝説の決闘王の声に、希望を抱く。
「やってやるさ!イリスを戻して見せる!」
「「「「「デュエル!!」」」」」
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「地面が・・・」
地面は2つに分かれ、宙に浮く。
地面と同じく、浮かび上がったカオスのエネルギー体を中心にゆっくり、回り始めた。
「ナッシュ、まずはあなたのターンからよ」
「っ!俺のターン、《セイバー・シャーク》(レベル4 ATK1600)を召喚。手札から自身の効果で《サイレント・アングラー》(レベル4 ATK800)を特殊召喚!」
赤い鮫とアンコウが現れる。レベルはともに4。
「レベル4の《セイバー・シャーク》と《サイレントアングラー》でオーバーレイ!レベル4のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ! 《No.101 S・H・Arc Knight》(ランク4 ATK2100)!ターンエンドだ」
まずは破壊耐性を持つこのカードで様子をみる。
その様子をイリス=ドンサウザンドは可笑しそうに口元に手を当てている。
「フフッ、オーバーハンドレッドナンバーズ、ドンサウザンドの力の一部。あなたはどうやって、そのカードをどうやって手に入れたのかしら?」
「どうやってだと」
眉をひそめる陵牙。
「オーバーハンドレッドナンバーズは人間だったバリアン七皇の死の直前にカードを挿して作り上げていた」
アストラルはドンサウザンドの所業を思い返す。
「その通り。それで当の本人にはその記憶はあるのかしら?」
「俺の記憶はドンサウザンドに書き換えられていない。ベクターと相討ちになって死んだ筈。そのタイミングで作られたはずだ」
「なるほど。それも一理あるわね。ところで神代陵牙、人間のあなたはポセイドン王国の末裔よね。あなたは誰の子孫なのかしら?」
生家にポセイドン王国の紋章があったことが凌牙の頭を掠める。
そこへ、半透明の青い戦士の影、No.73の化身であるアビスが現われて、口を開く。
「王よ。あなたは紛れもなくポセイドン王国、国王ナッシュの直系の子孫です。そうでなくては、王の魂は体に定着しません」
冷や汗が陵牙を伝い、イリスに顔を向ける。
「フフッ。私のターン、ドロー!私は《RUM サウザンド・フォース》を発動。相手のエクストラデッキに宣言したナンバーズがあれば、それを自分フィールドに特殊召喚し、カオス化させる。私は《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》を宣言!」
海神がイリスの前に頭を垂れ、大地に降り立つ。
「《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!《CNo.73 激瀧神アビス・スープラ》」
《CNo.73 激瀧神アビス・スープラ》ランク5 ATK3000
「相手のナンバーズをカオス化させるってNo.96の!」
No.96はドンサウザンドの力を受けていた。今回の事象はまるでドンサウザンドを思い起こさせる。
「そうだな。だがそれだけではないぞ遊馬。No.101にNo.73、対応する遺跡のナンバーズとオーバーハンドレッドナンバーズが揃っている」
遺跡のナンバーズがオーバーハンドレッドナンバーズを倒すと、ドンサウザンドの記憶の書き換えを無効にすることができる。
かつてはバリアン七皇の洗脳を解くために使った手段。
「だが、アークナイトには破壊耐性がある」
それでも何かあるはずだと凌牙は警戒し、手札を持つ力が強まる。
「私は《禁じられた聖杯》をアークナイトに対して発動。アークナイトは効果が無効になり、攻撃力が400アップ」
《No.101 S・H・Arc Knight》ATK2100→2500
「あなたが受けていたのは記憶の改竄でなく、封印。今からあの時の真実を見せてあげる!《CNo.73 激瀧神アビス・スープラ》で 《No.101 S・H・Arc Knight》を攻撃!」
トライデントが箱舟の側面に突き刺さる。
凌牙・遊戯・遊馬LP4000→1000
アークナイトの穿たれた装甲から大きな白い光が爆発し凌牙の視界を白く染め上げる。
「ぐわぁあああ!」
精神に凄まじい衝撃が走る。咳き込んだように流れ込んでくる記憶。
そうだ。俺はベクターと相討ちになった後、何故か生きていた。埋まった遺跡から這い上がった時、出迎えてくれたのは・・・。
「イリス・・・?」
「思い出したかしら?あなたはあの戦いでは亡くなっていない。あの後、あなたはポセイドン王国を再建を果たした。私と私の子ども達と共に」
いとおしそうに、お腹をさするイリス。
「思い、出した・・・!」
刹那、黒い風がイリスを包むと妙齢の女性が姿を表す。その姿は妹の理緒を大人にした感じに似ていた。
「私はあなたの妻よ、ナッシュ」