遊戯王 超融合 時空を越えた絆Ⅱ   作:ミスタータイムマン

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Last Scene みらいいろ

ー舞網市 LEOコーポレーション・社長室ー

 

「遊矢、帰ってすぐ呼び出してすまない」

 

赤馬零児は机に肘をつき、遊矢の返答を労う。

 

「良いさ。覇王眷竜だ。零羅に渡してくれ」

 

机に4枚のカードが扇状に並べられる。

零児は一瞥してから、遊矢へカードを差し出す。

 

「覇王眷竜は零羅が大きくなるまで、キミが持っておいた方が良い」

 

覇王眷竜はズァークの魂が宿っている零羅が所持していたものだ。

浄化されたとはいえ、未だに強大な力を持つため厳重に管理していたが、パラドックスに奪われてしまった。元々、四天の竜をもつ遊矢ならば安全だろう。

 

「でも・・・」

 

「キミ達もそう思うだろう?」

 

と、遊矢の背後にいる3人に呼びかける。

 

「俺達が居ないんだ。この際だし、貰っとけよ」

 

「キミは今のままだと、弱すぎですからねぇ」

 

「お前達・・・。遊矢が持っていた方が安全なのは確かだ。オレは遊矢の判断を信じるよ」

 

ユーゴ、ユーリ、ユート。1つだった存在が再び分かれていた。

 

「覇王竜は分割の力を持っている。カオスの力と合わさって、君達と彼女達を分かれた状態に戻すとはな」

 

柊柚子は遊矢の帰りをディメンジョンムーバーの前で待っていたのだ。遊矢が出てくる時の光に彼女も触れていた。

柚子、セレナ、リン、瑠璃は体に異常がないか検査を受けている。

 

「零児、分かったよ。俺が持つ」

 

「頼む。そろそろ彼女達の検査も終わる頃だ。迎えにいってあげるといい」

 

遊矢達は慌ただしく、部屋から出ていった。

 

遊矢達が戻ってきてから、異世界との連絡はできなくなっている。

 

「異世界と通信が可能な海馬社長が発案したデュエルリンクスシステム。再現してみようじゃないか」

 

これからの事を考えると思わず笑みが浮かぶ。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

ーアストラル世界・エリファスの城ー

 

カオスの塊が突如、消失した直後隣でドーンという爆音が響いた。

 

敵襲かと警戒し、その場に近づく。

 

「いてて・・・、あっ小鳥!」

 

「遊矢・・・!」

 

遊矢にアストラル、シャーク、カイト。それから姿を消したベクターと璃緒さんに似た女の子。

誰だろうと聞いてみる。

 

「その子は?」

 

「彼女はイリス。敵に囚われていたが、救い出すことができた。因みに彼女はドンサウザンドでもある」

 

「「「「えーーー!!」」」」

 

辺りに一同の叫び声がこだました。

 

イリスはギューっとシャークにしがみついている。

 

それが気にくわないのが1人。

 

「ちょっと、あなた!凌牙から離れなさい!」

 

クイッ、と身を屈めて詰め寄る璃緒。

 

「私とナッシュは永遠を誓いあった夫婦なの。メラグの出る幕はないわ」

 

「なんですってぇ!デュエルよ!」

 

「ドンサウザンドである私に挑もうなんて無謀ね。【ペンギン】デッキのサビにしてあげるわ」

 

「ハッ、私が凌牙の前でアリえないわ」

 

凌牙はそんな状況にオロオロしている。

 

 

「何なの、この状況・・・」

 

「アッハッハハ!流石、遊馬君だぜ」

 

ベクターは隣で笑い転げている。

 

「どういう事?」

 

「いつも通りの事さ。ドンサウザンドまで救っちまったのさ」

 

「そっか、遊馬だもんね」

 

てんやわんやの騒ぎはエリファスが怒鳴りこむまで続いた。

 

 

―――――――――――――――

 

 

ー海馬コーポレーションー

 

「漸く戻ったか。遊戯、遊城十代!こちらは面倒な事になった!」

 

「どういう事?海馬くん」

 

「お前達のデュエルが世界中に写し出されていた。その件でわが社とI2社に電話が鳴りっぱなしだ。ずっと対応に追われている!」

 

2人は異世界の光景を思い出す。

 

「お前達のデュエルは未来や異世界、未知のカードで繰り広げられた。シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、どこも新しい召喚法のカードの詳細を知ろうと躍起になっている」

 

まさか、そんな事になっているなんて。

 

「アハハ。そうなるよね」 

 

「全く。予定が狂うではないか」

 

赤馬零児からサンプルを解析して、発表計画を立てていたが不意うちで計画を変更しなければいけないことと今回の事件の対応に苛立たしさを感じている。

 

 

「その割には海馬くん、にやけてるけど」

 

長い付き合いの遊戯にはまた、違ってみえるのもある。

 

「やかましい!だが未来と異世界のカードが解放された事で、未来は変わる事になるだろう」

 

「て、事は遊星は・・・」

 

存在が消えてしまうのか・・・!

十代はやるせない気持ちになる。

 

「安心しろ、シンクロモンスターが発展した未来と分岐するだけだ。異世界と化したようなものだ」

 

だが、と続ける。

 

「完全に会えなくなったという訳ではない。1度はつながった世界。既に不動遊星と赤馬零児と協力して、時空間に目印をつける事に成功している。再びやりとりをすることも可能になるはずだ」

 

「海馬社長・・・」

 

「まずはシンクロ、エクシーズとペンデュラムの実用化からだな。忙しくなりそうだ」

 

「ペガサスも乗り気だもんね」

 

「ああ、お前達の後に来る予定だ」

 

「フットワーク軽いな。ペガサス会長」

 

「そうだ、お前達に1つおもしろい可能性を話してやる。未来で開発されるシンクロが今開発される訳だが、そのままシンクロ、エクシーズ、ペンデュラムを受けとるだけになると思うか?」

 

「つまり、それぞれの発展形が開発されるだけでなく・・・」

 

「そう、我々はいずれ、それらとは全く異なる召喚法のモンスターを作り出す可能性が高いという事だ!」

 

「新しい召喚法!スゲェ。ワクワクします!」

 

「僕もだよ、十代君」

 

全く新しい召喚法の開発。

数年後に結実することになるが、それは別のお話。

 

 

―――――――――――――――

 

 

ーネオドミノシティ・遊星の自室ー

 

あれから1週間が過ぎた。

事後処理が大変だったが、久しぶりの休暇でもの思いに耽っていた。

 

パラドックスの警告。モーメント以外にも滅びの要因があること。

物事に完全はないとは言ったものだが、何とかできないかとつい考えてしまう。

 

「駄目だな」

 

 

PiPiPi

 

そんな時にテレビ電話が届く。

 

思わずトラブルかと身構える。

 

 

「ジャック、クロウ!?久しぶりだな」

 

出てきた相手はかつてのチームメイト達。

 

「聞いたぜ!大変だったな」

 

パラドックスはあのデュエルを始めから全世界に流していた。勿論、遊星の姿も出ている。

 

「ああ、しかしよく俺が家にいるのが分かったな」

 

「アキから連絡があってな。落ち込んでいると話していたが、やはりか。随分と腑抜けているな」

 

「おい、ジャック!」

 

空気を読まない発言にクロウはジャックを小突く。

 

「遊星、パラドックスとのデュエル、あれは何だったんだ!」

 

ああ、と遊星は経緯を話す。

 

「確かに・・・、破滅の未来の要因はいくつもあるってのは、心にくるな。だがよぉ、それはいつだって同じだろ?俺達はやれることをやる。そうだろ?肩肘はってんじゃねぇよ」

 

「クロウ・・・、そうだな。気を張りつめていたのかもしれないな。パラドックスのような存在が生まれてほしくないんだ」

 

ふぅ、とため息をつく。

 

「フン、やはり貴様は甘すぎる。割り切るものは割り切れ。できないものは次の世代に託せばいい。それこそが絆だろう」

 

ハッ、となる遊星。

 

「確かにその通りだ。次の世代に絆を託せばいい。考えすぎていた。すまない、ジャック、クロウ」

 

気にするな、といっているような表情。

 

「そんなことよりも、エクシーズにペンデュラム!あれは何だ!」

 

画面に詰め寄るジャック。

クロウは隣で、ため息を吐いている。

 

「まぁ、俺も気になるんだけどな、空気ぶち壊しだけど」

 

「いや、俺達はデュエリスト。未知のカードに引かれない筈はない。現在、解析中だ」

 

そのまま、エクシーズモンスターとペンデュラムモンスターの簡単な説明を続ける。

 

「スゲェな異世界のカード」

 

「ああ、こちらでも作るのか?」

 

「エクシーズは近々、公式発表を予定している。年内には実装予定だ」

 

「ほぅ、待ち遠しいな」

 

「ペンデュラムはどうなるんだ?」

 

「ペンデュラムはデュエルディスクの構造的に難しいが、いずれ作られるだろう」

 

「そいつは、楽しみだ」

 

未来は明るい。

良いバトンを次代につないでいこう、と違った。

 

 

 

―――――

 

 

 

それから時は巡りーーー、

 

路地裏を年の頃7、8歳位の少年が逆立てた黄金に輝く髪を揺らしながら走っていた。

 

少年は始めて参加するデュエルモンスターズの大会に遅れまいと大慌てで走っているのだ。

 

ドンッ!

 

急に出てきた人影にぶつかり、尻餅をつく。

デッキの一部が地面に散らばった。

 

「大丈夫か?」

 

眼前にはフードを被った人影。

手を差し出す人の表情はよく見えない。

 

「大丈夫です」

 

「随分と急いでいるようだが」

 

「デュエルモンスターズの大会に参加する予定なんです」

 

「それは、すまないことをしたな。俺も手伝おう」

 

男は白い枠のカードを拾う。

 

 

「シンクロモンスターか?」

 

「はい、エクシーズやペンデュラムとか、色んなのがあるけど、俺はシンクロが一番好きなんです。1番の友達のジョニーもそうです」

 

「俺もシンクロが1番、好きだ。・・・そうだ。キミにこのカードを渡そう。ラッキーカードというやつだ」

 

スッと、1枚のカードが差し出される。

 

「せんこうりゅう、スターダスト?スゲェカッコいいドラゴンだ!」

 

「そうだろう。ところで急がなくてもいいのか、大会に出るんだろう?」

 

「ヤベッ。カードありがとうございます。ずっとずっと大切にします」

 

頭を下げ再び走り始めた。

 

この出逢いに胸を躍らせながら。

 

世界は廻り続ける。

 

 

 

未来の彼方までずっと僕らは描いていく。

 

 

 

 

 

Fin




これにて完結です。

読んでくださったみなさま、ありがとうございます。

「超融合 時空を越えた絆Ⅱ」は、いかかがでしたでしょうか。

文章力はまだまだですが、自分なりのアフターストーリーは書けたと思います。

投票や感想、お待ちしています。


P.S.本作は拙作の遊戯王CWの前日談にあたります。CWの方も読んでいただければ嬉しいです。




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