聖なる夜に君を想う。   作:ふま

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スガシロ→八香→いの→カカシ→八香の順でお話は進みます


11、ろくでなしの告白+引退宣言

 

 

「術者であるわしを絶ちおった。これでは・・・”命綱”が切れたも同然・・・!」

「 「「 ・・・!?」」 」

 

 

 

 

 

 

 

______想い返せば、私、小田原八香はロクデナシだった・・・・。

だって・・・そうであろ・・・私はいつも誰かを困らせてばかり____

 

巫女となった日からある日の事、

『左門目当てにやって来る”女ども”を追い払え』と御館様から命が下った。

あの大会後、有名になってしまった左門様が困っておいでなのだと私は察した。

____そして

”ソレら”が、国手前まで押し寄せた時、地の力を借りガスを溜め吹き飛ばした。

 

『八香___? ちょっとイミが違ったかも・・・;』

『う~ん、”追い払え”とは云ったけど、”焼き払う”のはチョット駄目かな~?;』

 

結局、女共はウチの病院に担ぎ込まれ___軽い騒動になったのだ。

あの時、額を押さえた左門様と、御館様のヒキツリ笑いは忘れられない。

 

他にもいろいろあったか・・・

配下である”兎”達の一員、一兎が女湯を覗いた事を御館様に相談した時だ。

 

『一兎め、色気づきおって。好きな女子でも出来れば自然と興味も薄れる__まぁ捨て置け。』

『___御意。』

 

次の朝。御館様がしくしく泣いてる数人の”兎”達を見つけ、訳をお聞きになり__

事情を知った彼は、庭で朝の演舞練習をしていた私の元へゼイゼイ云いながら駆けつけて来た。

 

『八香よ・・・一兎に何故、そんな重い罰を? たかが女湯のノゾキであろう?』

『____御館様がおっしゃったのではありませぬか。忘れたとは言わしませぬぞ?』

 

暫く考えた後、彼は自分の手の平でビタン!と自ら額を打ち付けた。

思い当たるフシがあったのだろう。へなへなと廊下に膝を着き何やらブツブツ云っている。

 

『”捨て置け”って云っちゃったなぁ~;ワシ、なんでソウ云っちゃったかなぁ~;;

でも”捨てて置いて来い”とは云ってないんだよなぁ~・・・;;』

 

私は主に忠実だ。

よって昨夜、一兎に一服盛ってから海のある遠い国まで運ばせておいた。

あの事件は後に紫紺や、一兎から十兎までを震えあがらせたと聞く____

 

なんやかんや、思い出せば色々と出てくるものだ。

そして、神足静馬の事も私は左門様にも秘密にしていた事がある・・・。

ある日___文をよこして来た事を黙っていたのだ。勿論、返事は返してはいない。

私には・・・あの悪僧・下弦から、大枚を叩いて私や紫紺そして兎どもを引き取って下さった

御館様に並々ならぬ恩がある。そもそもは武芸者___その他を極める気も無かった。

 

(貴殿の気持ちには答えられなかった、このロクデナシを・・・許されよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いの、彼女はまだ生きている。ただこのままじゃ、自分の呼吸を止めかねない状況だ。

何とかして彼女に俺達が助けに来たって事を伝えて、負の呪縛から解いてやらないと・・・。」

 

カカシ先生に1人呼ばれて中に入った時、ブルーライトに照らされた様な水槽に目を見開く。

震える程に__こんなに恐ろしくて・・・綺麗な光景を私は嘗て見た事が無い。

水槽の中の八香さんは___まるで、脚を与えられた人魚が眠っているかの様だった・・・。

 

「・・・できそうか?」

 

肩を叩かれ、私はハッとなる___この人をどうにか、こちら側へ・・・!

 

「やってみます_______心転身の術・・・!」

 

あの分厚いガラス越し、何とか彼女の意識の中に入り込む事が出来た様だ。

 

(窓しかない・・・・此処は___?)

 

窓際に大きな鷲が。その傍らには立ったまま文を広げる彼女が居た。

 

『越後屋よ・・・、お前からもバカ殿に云ってくれないか。結婚などまだ早いと___』

 

鷲の頭を撫でながらそう云い、溜息をついている。

 

『婚期を逃してしまえば此方のモノ。見合いなど勧めはしなくなるだろうと思うんだが。』

 

____え!? お見合い!? 自の国の婚期ってそんなに早いワケ??? 

 

『あのオヤジめ、”近い内に見合い相手を此方に遣す”と云うて来ておる・・・どうするか;』

「ダメよ!! 八香さん!」

『______いの殿? どうして此処に。』

「八香さんだって、恋愛のヒトツやフタツ、経験して良いと思うの! 勿体無いですって!」

 

思わずその後ろに飛び出してしまった私は首を傾げる彼女にお構いなしに言う。

 

「そんなに綺麗なのに___私だったら、玉の輿狙います! それに・・・知ってるんです。

貴方の悪口を言ってる人は”ブス”ばっかなんだから! 明らかに”妬み嫉み僻み”だって事よ!」

 

彼女の境遇は父から聞いている___里の一部の者から阻害されてる事も・・・。

八香さんは俗世にとても疎い人、私が見た、聞いた事実など知る由も無かったのだ。

 

『いの殿は・・・父上譲りの優しい人だ。』

「え・・・?」

『最終的には私に・・・女としての幸せは掴めそうに無い。』

「何故____そんな・・・!」

『誰かを愛してしまえばいずれは、そのお方との子が欲しいと思う様になるかも知れぬ。

だが、誰が鬼の力を宿した子を欲しいと思う。例外がいるとすれば、悪人しかおらぬ。』

「______!」

 

言葉が出ない。彼女は何故此処に連れて来られたかを意識上、理解しているのだ。

 

『私はもう全てを封印したい。過去も、力も、想いも___』

 

壁だと思っていた右側に突如、スクリーンの様に映像が映し出されてギョっとなる。

長い御髪を一つに束ねた小さな雲水さんが居た。あの大きな瞳のその色、間違いない。

 

(_________彼女の記憶・・・!?)

 

死、そしてまた死。人の死に纏わる記憶が多過ぎる。後になるにつれ、その映像は

だんだんクリアでハッキリとしたものとなる。それだけ今も心に焼き付いて離れないのか。

そして最も鮮明な映像では焦げ臭いまで感じられ、微かな高貴な香の匂いも混じってた。

 

黒髪が美しい青年は白拍子の衣装を血に染め、池の辺で八香さんに抱きかかえられていた。

朝が明ける間際、池の大きな蓮がゆっくりと花開くのを彼女は涙を溜めて眺めている・・・。

 

『私さえ居なければ___あのお方も殺されずに済んだのだ・・・私は罰を受けねばならぬ。

この世に生かされて、己の幸せを望むなど許される事ではなかったのだ____』

 

スウと、静かにそう言った彼女の姿さえ映像でがあるかにチリッ!と音を立て消えそうになる。

 

「___待って! 今、貴方を此処から救い出そうと皆が来てる! お願い、戻って来て!!

カカシ先生やガイ先生、ゲンマさん達に、ネジ達、それにシカマルだって・・・!」

『・・・・・・・すまない___』

「八香さんッ・・・・・・!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬ!?」

 

バァさんが声を上げた。ガイらと合流してから30分は経った頃だ。

いのはまだ戻っては来ない。八香と接触できたのか___水槽からピシ!と音がしたんだ。

 

「負の意識を増幅してなければ良いが____」

 

バァさんの言葉にガイが唾を飲む。

さっきヤツが壊そうとした水槽には厄介な部分が着いていて、それさえ壊さなければ爆破は免れるそうだが、大変デリケートに出来ており、振動に弱いとの事だ。

そしてスガシロ曰く、”失意の泉”の湧き水には負の意識を抱えた魔物が棲むと云う。

 

「意識を呼び覚ます事が出来れば___時間を待つ事もできるだろうにな」

 

ゲンマと俺は知っている。嘗て八香に”後追い願望”があった事を____

もし、いのが何かしくじれば彼女はその力でこの水槽ごと自分を葬りかねないのだ。

 

「ウ_______!」

「いの____!」

 

そう考えていた頃、丁度いのが自分の体に戻って来た。どうやら彼女にはこれが限界か。

八香と接触をし説得はしたらしいが、すっかり”失意の泉”の湧き水にやられている様だ。

 

(君の罪悪感はそこから来ていたもの・・・心が戻ってしまったせい、余計苦しいのか。)

 

八香の全てを肯定し、愛しんだ男の死。

ポッと出の___まして、こんな中途半端な俺なんかが・・・左門に敵う筈も無い。

俺に、嫉妬する資格なんてなかった・・・。自ら”たまにしか来ない男”と云ったあの夜。

見合いの事を君は何も言えずに___俺に身を任せた。俺は見えない釘を打ってしまったのだ。

どんなに・・・淋しい想いをさせていたのか計り知れない。紫紺が拉致られた時もそうだ。

こんなんじゃ”俺を頼れ”なんて、どの口が云っていたんだ?と自分に腹が立つ。

八香は俺の言い訳さえも指一本で・・・言わさずに置いてくれたというのに。

 

(男である以上___そんな君を取り戻さないワケには行かないんだ・・・・!)

 

「___皆、今度は俺に試させてくれないか。」

 

少し時間を貰い、二人だけにして貰った。彼女の目が開かない以上期待は出来ないが。

水槽に手を当てる、君に聞こえればいいんだが・・・。

 

「俺は・・・恨んでいないと云った君の言葉に甘えていた。けど事実、後を追う君を止めたのは俺だ。その俺が後に、君を粗末に扱い過ぎたと___今更、思い知ったんだ。・・・ごめんよ。」

 

そこはとても寒いんじゃないか・・・?

___酷く切ない。こんな時に__君の、暖かく柔らかな体温を思い出そうとしてる。

本当に俺は・・・、ロクデナシだな。

 

「八香___25日は開けといてね。夏の花火まで待てそうになくてさ・・・。」

 

約束、覚えているだろ? 

目を・・・開けてくれ。そしてまた俺に微笑む様な仕草を見せてくれ。

もう一度、頼むよ___八香・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______”魑魅魍魎ども・・・下がれ・・・!”

 

声がすると同時に・・・纏わり着いていた何かがヌルッ、ヌルリと体から離れてく。

天からのお迎えか、瞼を閉じていても明かりに照らされた事を感じ取っている。

 

______”聞け・・・転生の巫女よ”

 

(貴方は・・・?)

 

______”我が名はハルオリ・・・お前に助言を与えに来た”

 

(____私に助言?)

 

_____”せっかく戻った心に、嘘を吐いてやってはいかん。・・・前を見よ”

 

(・・・・・・・・・。)

 

カカシ殿が、傍にいる____下から手を伸ばして・・・私に話し掛けていた。

 

____”嘗て私も・・・この世で〔未知の感情〕を見つけた。生憎、それに気付いた時にはもう手遅れだった・・・私の転生者であるお前は同じ過ちを犯そうとしている。必ず後悔する。私は

殺められた寸前に・・・そしてお前は今、自ら負の魔物に獲り憑かれ、冷たくなる寸前にな__”

 

(声が____聞こえない)

 

_____”聞こうとしないからだ。耳をすませてみよ”

 

「・・・君が浴衣を縫って、俺を待って居てくれたって知った時は本当に嬉しかったんだ。

だから今度は俺の番でしょ?でもあまり時間が無いんだ、クリスマスが終わってしまうからね。」

 

あぁ___そう云えば誰かがそんな事を言っていたっけ。

自の国には無いイベントで、我が家ではぶっちゃけ何の祭りだか知ってる者がおらず・・・。

 

『何でも、赤い服着た太ったジィさんが子供たちにプレゼントを置いて行くんだとか。』

『赤い服のジィさん・・・?年寄りに年金振り絞らせる、そんな極悪非道な祭りなのか?』

『御頭様・・・悲しくなるから、還暦祝いのジィさんを想像するの止めましょ;』

 

紫紺が云うその”異教徒の酷い祭り”に興味もなく、それ以来すっかり忘れていたが・・・。

 

「あと・・・撤回したい事があるんだ____ぜひ、聞いて貰いたい。」

 

珍しい事を彼が言い出した・・・?

 

「俺は_______”たまにしか来ない男”を引退する・・・・!」

 

________え・・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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