聖なる夜に君を想う。 作:ふま
「君の隣に_____他の男を据えるツモリは無い・・・・!」
言えた・・・・!!
と、そう思った次の瞬間___ビシ、ビ・・キリリ!!と鈍く響く音がしたんだ。
音に気付いたバァサンと二人が戻って来た。
「ヒィイイイイイ!!!カカシ!一体何をした!」
「カカシさん・・・・これはヤバイ・・・。」
「まずいぞ・・・もうダメじゃ・・・!当人を正気に戻さぬまま此処から出せば
永遠に目覚めぬぞ・・・! これではもう持たぬ・・・・!」
3人が驚愕しながら水槽を見上げる。水槽に大きく亀裂が入り出しているのだ。
これだけ分厚いガラスだ・・・まだ時間はある。
「いいからお前達____ここから避難してくれ」
「ナニ!? お前は・・・!」
「まさか_____」
「いいから此処から出ろ!俺は被害を最小限に食い止める___
ゲンマ、ライドウたちと急いで合流するんだ。他の奴らを頼む・・・。」
「・・・・・・カカシさん・・・。」
「_____死ぬなよ、カカシ・・・・・・!!」
「あぁ______」
俺もいい加減な返事を返したもんだ。
泡を吹くバァサンを担いで出て行った彼らを見届けた後、彼女を見上げる。
(まったく___俺に2度も心中の覚悟をさせるなんて君はたいした女だよ・・・。
だけど・・・・きっともう、そんなひとが俺に現れる事は無いな・・・。)
「だから死んで貰っちゃ困る・・・八香、飲み込まれるな・・・!」
まただ。ピシ!っと一筋、ヒビが入った。反応しているかに・・・。
恐らく彼女には俺の声が聞こえているんだ、だが一方通行で俺には伝える事しか出来ない。
君は”危ない装置”の事は何も知らない、寧ろ知らなくていい。
知れば、また自分を押さえ込むに違いないから・・・教えない。
「たまには我侭を云ってくれ____”此処から出たい”と願ってくれ!」
もう4時間も持たないであろう、何時壊れるか解らない水槽。
そしてそこには負の魔物に唆され、自ら息を止めようとしている八香がいる。
彼女をここで、負の念を取り払い正気に戻さないと・・・君は永遠にそのままだ。
時間がない事だけは明白だった___だが相変わらず彼女は瞳を閉じたまま・・・。
ガラスのひび割れも今は音が止み、維持装置の音だけが”ジー”っと静かに聞こえている。
まさか・・・・!? 彼女はもう・・・・! そう疑えば心臓がドクン!と揺れて鳴った。
「ゲンマにだけ・・・プロポーズさせて、俺にはさせないツモリか・・・!?八香・・・!」
もう限界だ___声は情けなくも擦れ、涙を堪えてた。
届かない手に・・・伸ばしていた手を拳に変えて俺はついに口走ってしまった。
「愛してるんだぞ・・・・・・・・・・!」
何時からだろうな。前は・・・本当に君は可愛い妹だったのに。
周りの者からは常に羨ましがれ、露骨に妬まれたりもしてさ・・・。
『カカシ____もしも八香に男ができたらどうする?』
『・・・・・・・構わないケド___門限は16時にするかな。』
『ぶッ・・・、ゲホゲホ・・・ッ・・・それ、ゼンゼン許してねェな;・・・ククッ』
そう云ったアスマぐらいか___俺の本音に気づいていたのは。
三代目から、預かりって名目で君と暮らした2ヶ月足らず___
八香が居たお陰で俺は失い掛けていた、いろんなものに気が着いたんだ。
それに・・・君に『カカシ殿』って呼ばれるの___本当は凄く気に入っててさ・・・。
「_____カカシ殿」
「そう、それが好きなん・・・________エ!?」
濁る声は水槽の中の八香が発した声・・・・! 今、目の前に居る・・・!
「あ・・・・・・あぁ・・・!」
驚きで俺は自然とガラスの内外で彼女を手の平を重ね・・・顔を近づけた。
お互いが目を伏せて____通じ合っていた。
触れられない君の唇を奪わずには居られなかった・・・。
無宗教の俺が・・・この時ばかりは神に感謝していた。
「______・・・此処から出たい」
「______お安い御用だ・・・少し離れて。」
負の魔物に解放された彼女は水槽の中、自由に動ける様になっていた。
もし、壊れる瞬間がこの眼で捉えられたら___額あてをグイと上げる。
「俺を信じて____必ず君を連れて帰る・・・・!」
雷切を出来る限り小規模に___この水は特殊で感電は多少免れる筈。
例の装置の位置を確認すると覚悟を決めて亀裂に拳を当てた・・・!
___________ドンッ!
ビシ!!! グワァラグァラガララッッ!!!
(間に合え・・・・・・・!!!)
ガラスが重く崩れた瞬間___フタが浮いた。連動しているそこから丸ごと・・・!!
俺は全神経を写輪眼に集中させる。まさか此処で練習の成果を試すなどと思いもよらなかった。
グニャリと空間が歪む____せめて、あのヤバイ方だけでも向こうへ・・・!
「・・・・・・ッ!! ・・・・・・よしッ・・・!」
ガラスが砕け流れる中、八香が押し流されそうになっていたのを抱き救い移動する。
怪我はないか・・・・確認を終えた後、急いで自分のコートを脱ぎ彼女を包んだ。
フタごとあの、ヤバイ装置を異空間に飛ばす事に成功した俺は___その場に崩れて・・・
「カカシ殿____どうぞ・・・チャクラを・・・。」
「・・・・・・ダメだ、君も今は・・・んッ・・・。」
馬鹿だな・・・こんな時にまで俺を気遣うなんて___
彼女の口付けから何だかとても濃厚なチャクラが吹き込まれてくる・・・。
こら____はしたないぞ。そんなに大人びたキスを・・・誰に習ったんだ。
(・・・・・・・・・・俺か;)
あのシズネがいっぺんに元気になった訳がわかる・・・彼女のチャクラは異質だ。
それも鬼子母神の恩恵か____? 体の隅々の細胞を活発にさせて行くのを感じる。
そして何より、暖かいんだ。これは”俺”にだから特別なモノだって・・・自惚れていい?
(君が無事で・・・・良かった・・・・・!)
俺は尋常でない体力の復活を感じ___寝転んだまま八香を抱きしめる力をやっと取り戻した。
「ダメだ____」
「しかし・・・!我々の任務は八香さんの奪還です!」
「ネジの云う通りですゲンマさん!___置いて帰るなんて出来ません!」
「お前達____カカシは、木の葉の未来であるお前達の、万が一を考えたんだ。」
「上官の命令だ____お前達、さっさと輪の中に入れ。」
「私もイヤです!」
「私も!」
「お前らを送った後___俺達はもう一度戻るツモリだ。いいから入れ・・・!」
「後は俺たちに任せて先に戻るんだ・・・・!」
「ガイ先生・・・・!」
「_____仕方ねェ・・・・。おい、いの・・・!テンテン!」
いろいろ考えてたシカマルが溜息を吐き彼女らの手を引く。
俺だって八香を置いて行くなんて御免だ____ライドウ達にはつき合わせてしまうがな。
モメに揉めて、やっと子供らを中へと渋々移動させたトコだった。
「何モメてるんだ」
「いや、八香とお前を置いていけないって、こいつらが____って!オイ!!!」
「・・・・・!」
「 「「「 カカシ先生・・・!! 」」」 」
腕の中に___木の葉のコートに包まれた彼女が居た。
「”神威”の後・・・俺にありったけのチャクラを渡して少し疲れてるが、無事だ。」
アレか・・・。
嘗て自の国で、御館様の治療にシズネが倒れた時___接吻で彼女は・・・・。
(俺じゃ敵いそうもねぇな・・・。)
カカシはあの状況で今、此処に彼女を連れ戻って・・・ケロリとしてやがるんだ。
それに八香のあの顔____なんて、安心し切った顔で眠ってるんだろう・・・。
「これで安心したろ?先に戻りなさい。」
「 「「「「 はい・・・・! 」」」」 」
奴らの目に光が戻り、ライドウ、イワシら、俺達は共に笑って頷いた。
「行くぞ______」
ゲンマ達が行った後____俺は隠しきれない感動をカカシにぶつけた。
「カカシィ・・・! お前の愛はハンパじゃなかった!俺は今・・・激しく感動している!」
「ちょ;;この状況で抱きつかないでくれる? ところで___このバァサンどうするの。」
「あー・・・・・すっかり忘れておったな・・・。」
スガシロってバーサンは泡吹いたまま、寝かせてあったんだ。
このまま置いてっても、なんら問題ないだろ。そう云おうとした時だった。
「「 ・・・・・! 」」
「_______行かせはせぬ・・・!春織だけは・・・・!!」
「ソッチも・・・忘れてたねぇ・・・・。」
振り向けばユラリと影が現れた、フラフラの男。人相が焼けて誰だか解らない顔になっていた。
カカシがそう云うのを合図に俺達は構え、黒焦げの冬馬が二本指を立て殺気のぶつかる間___
「”臍噛の術”___________!」
「「 バァサン!? 」」
ハァハァと息を荒げたご老体は起き上がり、主である筈の冬馬に術を唱えた。
すると冬馬は何とした事か____自分の罪を告白し出したのだ。
「兄さん・・・俺を裏切ったから__呪に掛けたんだ・・・・!!」
「______やはりか・・・・病で倒れたと聞いた時はまさかと思うたが・・・!」
「おい!」
「まさか・・・兄を・・・呪い殺したのか・・・?」
懇親の力を振り絞り、老婆は悪しき主を封じ____そのまま後ろへ大の字になって倒れた。
八香を腕に抱えていたカカシは俺に救いを求めた。
なので、バァサンは俺が抱き起した。
「大方____こう云う事じゃ・・・。」
____あれは3年前の夏の事。
とある都では、訪れる筈のない冬の到来に困惑していた。
名のある陰陽師を呼んではこう云われたと言う____
『西の森に要因がある・・・化生の者が住んでおるのだ』と。
退治に出掛けた陰陽師は尽く破れ去り、”氷の彫刻”と化してしまう始末。
そして我が国に声が掛かり、この婆が自ら足を運んだ。
西の森___雪深い其処へ辿り着くと、一人のワラシが遊んでおった。
黙々と、小さな手で雪を固めて大きな塊をこさえてる様じゃった。
『これ、ワラシよ。そんな大きなものを作ってどうするツモリなんじゃ?』
幼女は声を掛けられるとニッコリ笑い、枝を拾った。
『此処にこうして・・・入り口を作って、カマクラを作るのですぞ?』
枝先で描いた入り口に、無邪気に笑う。
ははぁ・・・と思った。
『ならば、この婆で良ければ手伝ってやろう。』
『・・・・おぉ、嬉しいのです・・・!』
考えて見れば此処に来た陰陽師は皆、男。そして頭から化生の退治を考えておったのだ。
こうして____一緒に、遊んでやる事も考えなかったのだろう・・・。
『どうしてカマクラを作ろうと思ったのじゃ?』
『里の子が、冬になればコレを作って友達と遊べるって云ってた!』
柊の樹の下・・・里の子供達の話を聞いたらしくワラシはそう云ったのだ。
寂しかったのじゃろうな____だからコレを作って、遊ぼうとしたのじゃな。
カマクラを完成させた後、その中に入り、持参していた塩豆大福を馳走してやった。
ワラシは眼を輝かせてそれを頬張っておった。
『ワラシよ、この婆がお前の友になろう。そもそもな、お前が此処でした事で子供達は
雪に阻まれてもう此処には来れぬのだ____都では皆が困っておるのだよ。』
大福を食べ終えたワラシはヒトツ頷いてまた笑った。
『あいすみませぬ、婆さま。雪羽はもう満足で御座います。楽しかった___』
『そうか___すまぬのう・・・・。』
スカっと笑って____両手を合わせた化生の子に九字を切った。
なんの悪気も無い・・・ワラシの願望を遂げさせてやり、退治に至った。
そして、その力の強さゆえに”式”として持ち帰ったのが不味かったのだ・・・。