聖なる夜に君を想う。 作:ふま
『でかしたぞ、スガシロ・・・!』
当時、まだ当主でもない弟の冬馬様が勝手な野望を抱いていたのは薄々知っていた。
亡き父君の他国への侵略構想に魅入られた大馬鹿者にして、才の無いダメ陰陽師で・・・
のほほんとした兄・静馬様は天才でありながら嫡男の自覚も、跡目になるつもりも無く。
修行と称して、諸国を旅する事を夢に抱いておられた。
『静馬様___国をお出になるのを黙認致します故・・・お願いが御座います。』
『云いたい事は解る。しかし、お主から私に式を譲ればマズイであろう?』
『禁術を預けまする。これにて___奪って行かれるがよろしかろう・・・。』
こうして___雪羽は侵略の手段にされる事無く、静馬様に引き継がれていったのだ。
「もし、ハルオリの生まれ変わりが現れたなら必ず関わりが出来る筈。だが奇しくも
八香の様な者だとは、既に運が尽きておったのだ。これで若も諦められると・・・。」
試すだけ___そうすれば、気も済むであろう。
偽者を立てたのは、肝心な雪羽を操れない様にする為___
十中八九、何れこの娘には木の葉から助けが来るだろうと踏んでおった。
「だがまさか___それほど迄に自の国の巫女に恋焦がれておったとは知らなんだ。」
誤算であった。なので、気絶している間に別の巫女と摩り替えたのだ。
ただ、今頃は術も解け元の姿に戻っておる事だろう。
「八香の心は・・・闇に囚われ過ぎて術中、深く仄暗い場所へと落ち過ぎたのよ。
ハルオリ___いや、八香が居る場所は木の葉で正解じゃった。
ヒルゼンは間違ってはおらなんだ___良い仲間を・・・持てたのだからな・・・。」
「・・・春織なる巫女・・・弟に殺められたのであろ・・・・?」
「_______どうして・・・・!」
八香が若造の腕の中で目覚めたか僅かに動き、目線をわしに遣す。
「水槽にいる間____話しかけてきた・・・。」
兄に、想いを寄せていたハルオリは自分が巫女である事に苦悩していたのだ。
自らの想いに迷った挙句___洞窟に篭ったものの、其処に出向いてまで詰め寄った弟と言い争いになり、刺し殺されたのだ・・・。長き間、封印されていた史実であった・・・・。
「スガシロとやら・・・あの男を見放せぬのだろう。荒治療で改心させると約束するなら___
私は春織に礼をしよう。それが果たせぬなら、この地は再び闇に戻るが。どう答える。」
「馬鹿な・・・・・まさか。だが可能なら・・・約束しよう。」
「カカシ殿・・・申し訳ないが___私を、外へ連れ出してはくれませんか。」
「・・・・・あぁ。」
案内した、ひと度開けた外へのドア。若造は八香をそっと雪積もる地に下ろした。
寒かろうに、彼女は消えかけた月の位置を確認して・・・見たことの無い印を組んだ。
流石は左門の弟子である____自の国の伝承か。
「___・・・・。」
わしの目にも映る・・・瑠璃色の高等な光の持ち主が力を放出し始める。
もう・・・お目に掛かる事は無いだろう・・・その場面。
その後姿に燃ゆる、蒼い炎の様なチャクラが重なる。すなわち・・・・憑依だ。
「なんだアレは_____!?」
「八香・・・・・ツ」
「慌てるでない___待て。」
若造たちが動揺し、彼女を保護しようとしたのを片手で制した。
八香は顎を上げて____全身全霊を傾け、ハルオリの意を纏い出したのだ。
「彼の地に____陽を求める・・・!」
カッ・・・・!と稲妻が吹雪の中、ビシ・・・!!と轟く。
黒雲が分かれ、月をハッキリ照らし出すと八香は静かに言った。
「良いか・・・約束が守られねば全て無効になると心せよ。
スガシロよ、彼の地には___ハルオリが見張っておる・・・誤魔化しは効かぬぞ。」
私はそう云うと立ち上がろうとして、カカシ殿にまた抱きかかえられた。
「もうじきゲンマたちが戻る___急がないとね。」
「うう、さぶい;早く中へ。バァサンも風邪ひくぞ」
年寄りは夜空を見上げ、あと数時間後の太陽の兆しを予感して泣いておった。
ああやって見る以上・・・アヤツは民の事を想うて今回の事をしでかしたのであろうな。
「あれで良かったのかい・・・?」
それを尻目に、私を巻くコートの隙間を埋めながら彼は訊ねた。
「雪羽を戦争の道具に使わなかった___あの婆なら、冬馬を叩き直してくれる。」
式は主の使い方次第なのだからな・・・。
「撤収だ・・・・!急ごう___」
戻って来たゲンマ達が声を掛けた___皆、来てくれたんだな・・・・。
朦朧とする意識。急ごうと云ったのは、私がいろいろ弱っておるせいか。
ゲンマが苦味ばしった顔でコートの中の私を覗き込んでいる。
「ありがとう。」そう云うと力を失う私に、抱き抱えるカカシ殿の力強さが伝わって来る。
スガシロが云った___ヒルゼン様の判断は正しかったと。
それがこうも私を安心させたのかもしれない。
そして、カカシ殿_____
”愛しているんだぞ____”
そう云って下すった・・・彼の知らない向こう側でハルオリはこう云ったのだ。
『ヨシ!やっと言いおった!!! 今じゃ・・・! 今、目覚めよ・・・!』
何故、そう推すのじゃ;
まるで・・・何もかも知っておる様に。
私は彼女にまるで背中を押されるかに、解き放たれ___失意の水を潜ったのだ。
あの時からカカシ殿は・・・私にとって恐らく、一生忘れられぬ、心の人となった。
ガラス越しの接吻を交わした時___私も己の気持ちを解放する事が出来たのだ・・・。
(永遠にとは言いませぬ___貴方のお傍に居たい・・・・。)
私も・・・我慢・・・いえ、遠慮しておりました。
斯様な、鬼の力と痣を宿す私が___けして貴方に相応しい者である筈がないと・・・。
(けれど、本当に愛して下さっていた・・・・・・。)
「流石は___自の国の大巫女と言われるだけはあったと言う事か。
自の国の現・巫女である皐月(八香の実妹)まで奴らの手が及ばなかったのは幸いだったな。」
翌朝、俺は五代目への報告を終えていた所だ。
各国へ他の巫女らを送り届け___八香も無事奪還できた。
「しかし___天の国の太陽を取り戻したとなればまた名が轟き・・・
”巫女ヲタク”の侵入者達の排除にまた追われるかも知れませんね____」
「頭の痛い話だが、それも仕方ない;」
___そう。
八香が火の国、木の葉に亡命したと聞き、アレ以来、彼女を一目見ようと妙な侵入者が増えた。
この所、テンゾウが忙しくなったのもそのせいなのだ;
ただ、八香にはけして知らされる事はなかった。
綱手様に、アア啖呵を切ったのだ。知れば彼女の事、出て行くと言い出しかねないから。
「ご苦労___明日は休暇を取っていいぞ。届けは受理した。」
「えッッ!?」
「何だ・・・!その、意外そうなリアクションは__」
「いえ・・・、まさかこうアッサリ受理してもらえるとは思ってもみなかったので・・・。」
今日はイヴ、そして明日は25日の本番なのだ。
突然、ニヤァ・・・と笑った五代目に思わずたじろいでしまう。
「で__?ちゃんと良いプランはあるんだろうな?」
「___何の事です?」
「シズネが町で買い物をしてるお前を見かけたと言っていたんだがなぁー・・・。」
「いやー、人違いでしょ~。じゃ、私はこれで・・・!」
シュタ!と手を挙げ、俺は火影室を後にした。危ない危ない・・・;
今日の俺はツイている・・・・! 良かった!全ての予約をドタキャンせずに済んだ!
今夜は彼女と初めての本格的なデート____ケチが着いてはならないのだ。
(今日はこれからカットに行ってー・・・と・・・)
「カカシ先輩・・・! お疲れ様でした。」
「テンゾウか、お疲れさん___」
丁度出てきた所、後ろから声を掛けられた。目の下にクマができてるのに声にハリがある。
真面目なこの男の事、きっと彼も「八香を魔の手から救わねば」と正義感に燃えているのだ。
捕まった侵入者達の中にはヲタクを一脱した者も稀におり、ロープやスタンガンみたいな
アブナイものを持ちこんで来てるバカがいる為だ。
「八香さんも怪我が無くて良かった・・・大活躍だったそうですね。」
「そう云うお前も・・・毎日すまないな。大変だろ?」
八香が世話を掛けているのに、その張本人と「今日デートなんだw」とは言えないし言わない。
きっと露骨に「エーーーーっ!?」って云うだろうから・・・。
「ところで先輩、今晩空いてますか?」
「エッ? 何で?」
いかんいかん、声が上擦っちまった・・・;
「いやぁ、お暇なら僕も開いてるんで久しぶりにメシでもどうかと。」
「テンゾウ・・・お前ねぇ___なんでクリスマス・イヴに男とメシなのよ;;」
「いいじゃないですか、大抵この時期”侘びしい”ヤロウ達でどこも一杯ですよ?」
それは____去年までの俺も含めてか。
そういえばこの時期に顔見知りのシングルな木の葉の忍らは忘年会を開いたりするんだよな。
そして毎年、二日酔いした続きで任務に出ていたもんだった・・・。
「悪いんだが___俺も写輪眼の使いすぎで疲れててね。ちょっと休ませて貰うよ。」
「___そうですよね・・・じゃぁ、仕方ありません。また今度にしましょう。」
「すまないな。」
「いえいえ・・・、ゆっくり休んで下さい。じゃぁ。」
すまない・・・。俺は今回からシングル組を卒業するよ。
そう心に想いながら、テンゾウに手を振った。
「御頭様____!何をビビってるんです!?」
「び・・・! ビビってなどおらぬ!」
いや・・・、明らかに鏡の前、八香様は凍り着いていた。
私には使命がある____それはッ。
八香様のイメチェンに今、命を掛ける勢いで仕上がった服を試着させていた。
少しだけ暗い赤の、フレア・ワンピにアオザイ風の風味を利かせ、上着にフード付きのストール。
ピッチリした長袖を嫌う御頭様の為、ワンピの袖はちゃ~んと姫ソデに仕上げてあるw
「___いいッ!良いですよ! こんな御頭様を見たら誰だってモエモエ・キュンですって!!」
「カカシ殿はロリコンではない・・・;」
「勿論ですとも! なので今回はちょっぴり大人めな感じに仕上がってますから!」
「しかし・・・・スカートとは;;;」
「そう云うと思って、丈も長めでしょ!?」
「むぅ・・・・・・・・;」
ふふ・・・うふふ。
コレで、はたけ殿もノックダウン間違いナシ_____!
「さぁ!!! 今からお肌のお手入れに入りますよ!?」
「そんなに荒れておるのか___!?」
荒れてなどいませんが・・・若さのアッ・ピールですって!!
私は____出来れば、はたけ殿と八香様がくっつくのがヨロシイかと常々思っていた。
ウチの御頭様は自由人・・・。恐らく、ゲンマ様では理解しがたい所が出てくる筈。
それに、はたけ殿だって八香様をお誘いになったのだから、まんざらではないご様子。
(はたけ殿___!上手くやらないと、御頭様は見合いを断りませんぞ・・・!?)
ここだけの話、御館様の事・・・。あと何年自分が生きられるか解らぬと___
お涙頂戴的に「ヨヨヨ」とか言って、八香様に脅しを掛けているに間違いないのですからねェ;
御館様の気持ちも解らなくは無いのです。八香様が不幸を辿った負い目を感じておられる。
しかし____そうだと云うなら尚更、私としては、はたけ殿とくっついて頂きたい。
(それが唯一・・・・左門様からの呪縛を解く力となるだろうから・・・。)
「あれ___!カカシ先生!髪、切ってきたんですか?」
もう___急いでるこんな時に・・・・。家に戻る所でバッタリ出くわす偶然。
まぁ、まだ時間あるから、この位はね。
「おお・・・お前達か。目ざといねサクラは。」
「あれだけ伸びてたんだもん、解りますよ::」
「____ホントだ、カカシ先生、なんだかシュッっとしたってばよ!」
「ところでお揃いでどーしたの、二人とも。」
「ん___よく解らないけど・・・映画の撮影やってるって言うから・・・」
「そう!自来也様の本が映画化になったでしょ?そのワンシーンを今から見に行くんです!」
「な・・・・・・・・・・・・・・!!!!?」
サクラが言う事を推測すると、間違いなくあのシーンの撮影だとすぐに解った。
「そんな貴重な場面を・・・・! それ、何時!?」
「もう始まってるんじゃないですか?」
「何!?___早く行こう!」
「好きだなァ!カカシ先生もー!」
大丈夫____まだ、時間はある・・・!!