聖なる夜に君を想う。 作:ふま
(______落ち着かない・・・。)
待ち合わせ場所は此処で合っている筈・・・。成れない格好、そしてヘアスタイル。
こんな格好をするようなキャラでない事は解っているから知り合いには会いたくない。
目立たない様に、行き交う人とは視線を合わさず、大きなツリーの近くで待っていた。
(早めに来られる事はないだろうけど___)
クリスマス気分の町の賑わいの中、広場の時計台を見上げれば約束の時間の20分前。
あまりに紫紺があれもこれもと、髪のセットや爪の手入れなど世話を焼くから・・・。
いい加減溜まりかねて、さっさと家を出てきたのだ。
『今夜は帰って来なくておkですから! 明日は私と夏風で回しますのでね!』
出てくる時、そう云われた。・・・今夜は野宿になりそうだ。
それは兎も角、カカシ殿がそう早く現れるわけも無く。
相当な遅刻魔であると、テンゾウ殿から聞いていた。
まぁ、紫紺のヤツから逃れられたんだ。待つぐらい何ともない。
(しかし・・・この私がデートとは・・・。)
カカシ殿は自分が来るまでこの広場からけして離れぬ様にと仰り、それを思い出す。
まだ範囲内である、ぬいぐるみが飾ってあるショップのウィンドウに手を当てた。
ガラスに映る自分は・・・過去の自分とかけ離れ過ぎて複雑な気持ちになる。
まるで一夜だけの魔法を掛けて貰った・・・絵本の中の少女の様だ。
紫紺なりに考えてくれたのだ。きっと、カカシ殿の隣に居ても可笑しくない様にと。
アイツは褒めちぎっておったが果たして____コレ、似合ってるのか・・・?
「・・・!?」
「あのー・・・。」
後ろからの気配に気が付き、振り向けば見知らぬ男二人が立っている。
どこか野暮ったい感じのする肉づきのいいのと、細身の男だった。
「八香様ですよね・・・・?」
「誰だ____?」
カメラを手にそう云うポッチャリ男。そしてモヤシ男が飛び出して来たかと思うと勝手に隣に並んでポーズを取り始めた。フラッシュを突然たかれ、目が眩む。迷惑も顧みず、勝手に奴らは交代しまた写真を撮った。
「オイ___これマジレアだぞ・・・!」
「私服姿の巫女様に遭遇するなんてェェェ!」
これは___鎖国を解いた途端、自の国に現れたヲタクと云う人種か・・・!?
どの国にも生息しているのか_____そう思った間なし、肩に手が伸びて来たのを瞬時に払う。
「気安く触るな・・・・!」
「うわッ!?」
無礼な連中に擦り寄られツイ・・・一歩下がってつむじ風を起すと彼らの目を遮った。
ショップの屋根に飛び移り、キョロキョロ辺りを見回す彼らを見下ろしている。
(最悪だな;この格好で立ち回るのは避けたい)
クルリと回れば、スカートが綺麗に広がるワケで・・・何より、汚す訳にはいかない。
そして相手は一般人、自の国ならともかく___火の国ではそれも避けた方が良い。
「困っている様だな」
「!?」
気配が突如、背後に沸いた。屋根の下では通りのスピーカーから流れるクリスマス・ソングを
掻き消す様な、この場にそぐわない鴉の大群の鳴き声。
見ればあの男達が群がれて悲鳴を上げて逃げ出している所であった。
「結界から____上手く出てくれたものだ・・・。」
「_______!」
そう云う事か・・・。振り向こうとするのに何故だか振り向けないのである。
何処かで聞いた事がある声、肩を掴まれたその手の感触にも覚えがあった___
「___あの時とはまるでナリが違うな・・・。」
俺の声に記憶が反応して動けずにいる、硬い体を此方に向けた。
真っ直ぐだった髪の毛先を綺麗に巻いて__桜色の紅か。
これでは・・・確かに目立つ。表情の無い人形がショーウィンドから抜け出したかに思える。
「貴方は_____・・・アッ・・・」
女の前頭部に手を翳せば俺が封印したものの中に足らない記憶がある事に気付く。
恐らく・・・殺しの場面だ。術者は山中いのいちに違いない。
(三代目に余程気に入られた様だ・・・禁術を使わせるとは。)
「一年と2ヶ月振りか・・・今から少し、お前の記憶を一部復活させる。もう痛みはない筈だ。」
「・・・・・・ッ、名前を聞いていなかった・・・・。」
「知る必要はない・・・。」
「それと__謝って済む問題ではない事は解っているが、謝らねばならぬ事が___!?」
この女に、完全に心が戻ったと悟ると同時に紅が滲まない様、唇に手をやる。
全て、知っていた。カブトに召喚された隙、右京の手の者に村が襲われ、焼き払われた事を。
だが、それは大蛇丸に留意しなかった俺のミスでもあったのだ。
逃げて___力尽きたお前を見つけ、命の有無を確認してからあの海岸に置いて来たのだ。
(お前の様に手の焼ける女を・・・拾ってくれたのがアノ人で良かった。)
俺は思い出していた。気紛れで助けた、この女が倒れる間際に云った一言を。
どこか気になっていたのも事実、何より忍でもなく・・・あんな殺しをする女に興味が沸いた。
今、考えればガラにもなくそれは他から見れば保護と言うより他無い。
あの村に辿り着くまでの数日間____俺こそ”人の心”を取り戻していたと云えよう。
ただ偶然知り合っただけの、この女にいつか・・・微笑が取り戻せたら。
俺はいつの間にか、そんな事を思うまでになっていたんだからな。
「今日来たのは・・・お前から、完全に俺の記憶を消す為だ____」
「どうして_____」
「俺との記憶があれば、お前の木の葉での生活が脅かされる・・・八香。」
「・・・・・・・?」
頬を片手で覆い、撫でる様にすればお前は素直に添う様に顔を傾けた。
お前を殺すほど、俺の気持ちが放れていないせいで二度手間になってしまったな。
残される者は皆、彼女と同じ空虚と__憎しみの火を燻らせるのだと感じたせいなのか。
心壊れていたあの時のお前は___”あの夜”以来、初めて俺を揺さ振ったと云っていい。
『貴方の目は___私と同じ・・・奥に鍵の掛かった扉が見えまする___』
俺も・・・この眼のお陰で、お前がそう呟いたワケが後で解ったせいだろう。
眼を見れば解る・・・この女は俺を知ってなお、俺の手を握り、俺を見つめた。
互いが別の力で分かり合ってしまっていた____時間の長さでは無い。
”言葉が邪魔”になる____こんな女の存在を俺は初めて知ったのだ。
だが____暁としての俺の行動が、また”人”を外れたものになって行きそうだ。
勝手ですまないが俺には目的を果たすまで、そう成らざるを得ないのだ。
俺には、他に・・・心残りがあってはならない。
「もう・・・お前に、俺を思い出させる事は無い___」
俺は___彼女に多く触れる事を、前もって己に禁じていた。
「嫌だ・・・・・!」
「お前の為だ___少し痛むだろうが我慢してくれ・・・。」
そして俺自身の為___大丈夫・・・消すのは俺の記憶だけだ。
八香は俺に頭を掴まれ、察していた。俺そのものを、忘れてしまうのだと。
頭に置かれた手を退けようとしてそんな声を上げたのだ。俺にはそれで十分だった。
(俺のエゴに付き合わせてしまったな・・・すまない。)
最後にもう片方の手で・・・またサラリ、柔らかな頬を撫でた。
お前は新たなヤドリギを見つけるべきだ____
「さよならだ______八香」
「!?」
待ち合わせ場所にいない? 時間はギリギリ間に合ったんだが。
俺は足元に落ちる、いくつかの鴉の羽にゾっとさせられた___まさか!?
事前に張っていた結界から追い出されでもしたのか・・・上か!?
「_____八こ・・う・・・、」
屋根の上に彼女が居た____棒立ちに・・・大粒の涙が右目から零れ落ちていた。一体・・・?
本人は無事で・・・俺は何があったか訳の解らぬまま彼女を抱きしめていた。
「____何で泣いてるの・・・・・。」
「・・・・・・・・泣いてる____? あ・・・。」
今、気付いたかに自らの涙を指で確かめて呆然としているんだ。
幻術に掛けられたのかもしれない___何故、彼女を泣かす様な事を?
八香は覚えている限りの事を俺に、ゆっくりと話してくれた。
「何でだろう____私はただ、逃げようとして・・・。」
「俺も前もって結界の事を君に言って置けば良かった・・・ごめんよ。」
俺は彼女に黙って写輪眼を開く・・・頭の呪印は消えてはいない。
わざわざ会いに来て、何をしたと云うのか。恐らくイタチにとって彼女は特別な存在なのだ。
記憶を封印したのも___彼女の事を想っての事ではなかったのか。
(相変わらず____人には不器用な男だ・・・。)
「でも___」
「ん___?」
「ちゃんと、見つけて下さった____」
そう呟いて、俺を見上げる瞳に・・・キュンとなる。同時に、罪悪感がドッと沸いた;
たったワンシーンだけの撮影、何テイクも撮り直す所をサクラ達とコッソリ見学した後、
俺は慌ててシャワーを浴び、着替えて此処までダッシュして来たんだ。
「もうちょっと早く来る予定が狂っちゃって・・・、・・・・・・・・・・・。」
いつもと感じが違う事に今気が着いてジーっと見つめてしまう。
少し、離れ・・・間違い探しの時間を要した。
アレ____なんか何時もより大人っぽい・・・え!? ワンピースとか・・・!!?
「少し____頑張り過ぎましたか・・・・?」
ズキュゥーーーーーンッ!!!!
射抜かれた____激しい音が俺の中を突き抜けて行った音を聞く。______
あんまりジロジロ見る俺に彼女が目を逸らし、口を一文字にして耐えながら云うんだもの。
ごめん___こんな後だと云うのに俺ときたら・・・・。
ふわん!と君の長い髪の毛先が舞う___俺がも一度、急に抱きしめ直したせいで。
「カカシ殿_____?」
萌え過ぎて言葉が出ない事態に。・・・どーしよう俺。ヤバイぐらい心臓踊ってる;;;;
本当に俺の為に頑張ってくれたの? 髪まで綺麗に巻いて・・・ドレスアップして・・・。
そんな事言う君は、いつもの君より数倍、可愛い_____
(もう食べたい、ペロリと食べたい! 今すぐ食べたい!!!)
イヤイヤイヤ、レストラン予約してるんだ; 食事が先だろ、ソコは大人の男として。
己の下半身の疼きに叱咤し、取り合えず八香を連れて屋根から降りた。
俺もいつものマスクを外し、マフラーを巻いてる口元がスースーしてる。
「もしかしたら____雪になるかもねぇ・・・・。」
何て・・・、夜空を見上げながら___彼女の手を取り、コートのポケットに入れて握った。
あの時みたいに手を振り解かれ無い様に・・・。
”私の手は硬くて醜いから、あまりこう云う事は・・・。”
あの時、君はそう云って目を逸らし、唇を小さく尖らせて両手を後ろに隠しちゃったんだよね。
少し前の事なのに、何だか懐かしく思える___チラリと見て、クスリと笑ってしまった。
「今・・・・なんで笑われたのです?」
「ふふッ・・・、ちょっと昔の君を思い出してさ・・・!」
「_____?」
困った子だ・・・、萌えさせている自覚どころか、そんな覚えも無く首を傾げてる。
「・・・ま! お腹も空いた事だし___行くよ・・・!」
「えッ」
俺は走り出した、君を連れて。
今だけは・・・今夜だけは。コレ以上、何事も起こらず___この時を過ごしたい。
「お待ち下さい・・・!」
「え____?」
辿り着いたレストランに八香はそう云った。
店頭の黒板メニューを見ちゃったせいだろう。
「凄く・・・高額です・・・・。」
「あぁ・・・大丈夫w 予約の割引券使ってるから。」
そう云わなければ彼女は揺るがないだろうから__;
俺はそう云って、店のドアを潜る。「いらっしゃいませ」と年老いた執事みたいなのが出てきた。
予約表を捲り、ジーサンはニッコリ笑う。
「あぁ____ようやく来て頂けましたか・・・はたけ様。」
ギクリ・・・!
「いやぁ___すみません、ホント俺も来たかったんですけど、ま。今その話はナシで・・・。」
そう・・・ここは名店と云われてて、俺がずっと行きたいと思ってたレストランなんだけど。
俺が歴代の、付き合いの短か過ぎる彼女にフラレ続けていたせいで__キャンセルの常連だった。
なので、名前だけは記憶されているのだろう。
「今夜はまた___素敵なお嬢さんを連れていらっしゃった・・・お席にご案内を。」
今カノの前で要らない事を言うまいと察してくれたか。
丁寧に俺のコートや、彼女の上着も預かってくれた。「此方へ」と云いかけて軽く頭を指差した。
「_____お帽子はどう致しましょう・・・?」
「あ。あぁ・・・。」
俺がそう聞かれて、帽子を取ろうとしたその時だ___会話が聞こえたんだ。
「ねェ、ゲンマ~。 どうして急に誘ってくれたのぉ?」
「なんとなくだな____クリスマスに1人ってのも寂しいだろ・・・?」
ピキ!!!
この店内の何処かに・・・ヤツがいる・・・・・!?