聖なる夜に君を想う。   作:ふま

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カカシ→テンゾウ→八香→カカシの視点でお話は進みます。





15、俺を守って。

 

「どうかなさいましたか・・・?」

「えッ!? ああ、いや・・・!」

 

この髪を隠すのに丁度良かったワーク・キャップに似合う格好をしてきたまでは良かった。

返ってバレ憎いだろうとマスクを外してきたが、ま・・・イザという時の為、喉元に隠してる。

 

「まだちょっと寒いからー・・・マナー違反だとは思うけどもう少しこのままで・・・。」

「お気になさらず。いやぁ、こう寒いとテッペンには堪えますものね、仕方御座いませんよ。」

 

上品なおじいさんは自分の薄い頭を指差し、うふふと笑う・・・・。

良かった、理解のある___ちょ!? 

 

「いやいやいや、そう云う事情じゃありませんからッ! ファッション的な事もあってですね!」

「カカシ殿____なぜ相談して下さらなかったのです? 私がフサフサになるツボを・・・。」

「いや!? 誤解よ!? 俺、全然困ってないからッ! 何、君まで!?」

 

コソッと云うとか、変に気を使わなくていいから!! 遺伝的にもソコはダイジョブだから!!

 

「いやはや___大変ご無礼を。自分がコレなものでツイ・・・ではごゆっくり。」

「誤解が解けて何より・・・・。」

 

いかん、声を荒げそうになった。此処は落ち着いて____

さっきはたまたま、ゲンマの声に気付かなかったらしいが・・・俺としては避けたい。

向こうも女連れだが、あの会話から察するにどうでも良さ気な雰囲気だった。

ここは火の国でも有名なベジタリアン対応可のレストラン・・・。

もしかしたら八香を誘うツモリで予約していたのではないか?

誘って直ぐ一緒に連れて来れる代わりの女がいるなんて、やはりヤツはモテるんだろう。

 

「でもまさか、マスクをしないカカシ殿とお出掛けするとは夢にも・・・。」

 

細めた目を伏せ、俺の顔も見ないで彼女が云う。

その彼を本気にさせた女が今、俺の目の前に居ると言うほんのりした優越感を隠した。

 

「今日は特別な日だからね。」

 

テーブルで彼女の両手を取る。君にいろんなものを見せてあげたいって云ったのは俺だものな。

まだ何も実行できてないって事が君に会う度、心の奥に燻っていてね。

何時も君はそんな事を覚えていないかに振る舞ってくれるものだから、心苦しくて。

 

「お待たせ致しました。トウフのカプレーゼで御座います。」

 

席に届いたグラスの中の前菜のキレイさに__君が首を傾け、目を輝かせている。

そんな微笑んだ様に見える、八香の瞳に俺も顔を緩めてしまう・・・。

ノンアルコールのワインもどきでグラスを傾けると軽く鳴らし、喉に流す。

 

「美味しい___」

「うん、本当にね。」

 

・・・君と、やっとこんな機会を持てて良かったよ。

欲を言えば___今夜、君が笑ってくれれば俺は・・・何をしでかすか解らない位だ。

料理が進んで行くにつれ、俺は同じ店内に居るであろうゲンマの存在をも忘れかけていた。

普段、見る事のできない彼女の瞳の表情を追いかけるのに少し夢中になり掛けていたから。

 

「・・・・・!」

 

しかし否応なしに俺は現実に引き戻されていた。どうして___こう邪魔が入るのか。

窓の外、木の上に気配。そして厨房の方角から殺気じみた空気が感じられる。

 

「八香、」

「ええ___メインは諦めたほうが良さそうです」

 

俺の言葉を軽く遮って八香は膝元のナフキンを静かに畳み出した。

何時から気が着いていたのか顔を上げると、髪を一纏めに束ねようとする。

「待って」と、俺はその手を下ろさせ、自分のマスクを喉下から引き上げた。

 

「云ったろ? 今日は特別な日だって___君はそのまま、ね・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

(幸せそうだなぁ・・・先輩。)

 

僕は双眼鏡で窓越しの、カカシ先輩の照れた微笑みを覗き見ていた。

さっきは僕に気を使ったのか、「疲れてるから」なんて云っちゃって・・・。

だけど、申し訳ありませんね。これも八香さんの為なんですから、後で怒らないで下さいよ?

そう思うと徐にイヤホンを耳の中を再度、耳穴に押さえつけると小声で云った。

 

「___ゲンマさん、中の様子はどうです?」

[特に変わりなし___連中は?]

「裏口付近に集まった様ですね___そろそろかな。」

[了解___俺達はいつでもイケるぜ?]

 

その裏口で雄叫びが上がった様だ。団結した集団は裏口から厨房へ入るドアを押し開けた。

 

「おっと・・・・、突入しましたよ・・・!」

 

後ろに控えている暗部に”行こう”と合図する___

そのイヤホンから、他の女性客の悲鳴が聞こえた。そして連中の大声も。

 

「はたけカカシ・・・!! 貴様にこの人をくれてやるワケにはイカーン!!」

 

突入の最中、その甲高い、不慣れな啖呵に思わず口元が引きつった。

既にゲンマ達らによる割り込みも始まったようである。

 

「そこまでだ・・・! 全員、確保!!」

 

面を着けた暗部に驚き、クナイを直ぐ傍に突きつけられ全員降参の両手を挙げている。

呆気ないのは当然である、彼らは忍ではないのだ。

総勢20人程の、一般人であり___不法入国者達であり・・・巫女ヲタク達なのだ。

 

「すみませんね、お二人共。しっかし・・・・綱手様もヒデェ事を考え付くよなァ・・・。」

「確かに合理的ですけどネ。そう云えば先輩、デートならそうと・・・!?」

「 「 !?? 」 」 

 

何も言葉を発しなかった二人は突如、その場から煙の様に消えた___

 

「いつの間に・・・。」

 

ゲンマさんも驚く、分身だった___八香の分までが。一体、何時摩り替わったんだ??

ニコニコしながらお店のオーナーらしきお爺さんが近づいて、僕らにメモを開いて見せる。

 

「事前にお報せして頂いたので助かりました。」

 

”ご迷惑が掛かりそうなので退散します。とても美味しかった、また来ます!”

 

「___流石はカカシさんだ・・・・・。」

「オーナー、お騒がせして申し訳ありませんでした。ご協力に感謝します。」

 

つまりこう云う事だ。綱手様は先輩から休日願いが出された時からコレを狙っていたのだ。

 

”はたけカカシがこの日、自の国の元・巫女を口説き落とすらしい”

”はたけカカシが今夜、いよいよ彼女にプロポーズするらしい”

 

___と・・・; 真しやかな噂を流させた。

上手くエサに食いついたヲタク達は集結、阻止に現れた所を一網打尽にできたと云う訳だ。

 

「やっとご来店あそばしたと思いきや___ふふ。次回はサービスさせて頂きましょうかね。」

 

オーナーは何故か先輩を気に入った様子で手書きのメモを見て再びニッコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~危なかったねー・・・。」

「カカシ殿___お見事で御座いました・・・!」

 

彼の腕に抱きかかえられながら、ポーンと屋根づたいに跳んで移動している。

何だろう、この・・・胸の中から聞こえる___”ウィーン、ウィーン”と云う音。

まるで、警告のサイレンの様にも聞こえて落ち着かない・・・。

お店を出る時、「上着だけは着て貰わないとね」と、手間を惜しまない余裕。

支払いはとっくに済ませていると言う、スマートさ。

今日のこの日の為の私を”そのままで”と___崩させなかった。・・・大人だなぁと思う。

いかん・・・、思えば思うほど”ウィーン、ウィーン”鳴るではないか・・・;

 

「いろいろ悩んだんだけどさ、クリスマス限定で夜にやってる遊園地があるんだ。」

 

彼はそう云って微笑み___煌びやかなその門前に降り立った。

ユウエンチが何かは知らないが、誘われるまま着いて行く。

眩いライトに照らされ、辺りには何か甘い匂いが漂っている。

周りは賑わうカップルばかり。肩を寄せ、キャッキャッ・ウフフな声をあげて楽しげだ。

・・・ふと思った。

 

(私_____場違い過ぎて、カカシ殿に恥ずかしい想いをさせてはいないだろうか・・・。)

 

知っている。カカシ殿が時々、私に淋しそうな笑みを浮かべる事・・・。

私の、顔が___人形の様に、無表情であるが為に。

申し訳なく思う。私にはあんな風に笑えない・・・顔の筋肉が動かないのだ。

御館様も昔は私を笑わそうとして、カメラを手にいろいろ手を尽くして下さったものだ。

だが、感絞め教育とは恐ろしいもの。

可笑しい、楽しいとは思えるのに___顔の筋肉は笑う為に・・・動いてはくれないのだ。

 

(一度で良い____彼と、笑い合ってみたい・・・。)

 

こんな私の想いも知らずに彼は・・・隣の私をチラリと見下ろし、ニッコリ笑う。

 

 

 

 

 

 

 

「遊園地は初めて?」

「ええ____」

 

どうしたんだろう・・・何だかションボリしたかに見える。メインの料理が食べられなかった

せいだろうか? そうだよなぁ・・・特別の日と云って置いて、アレじゃぁねぇ・・・;

しかし、道理で休暇願いが直ぐ受理されたワケが解ったよ。ハナから綱手様は俺達のデートを

エサに、里に隠れているヲタクどもを集結させて一気に捕縛するつもりだったんだろう。

人が悪い____恐らくあの時、俺と擦れ違った後のテンゾウにこの任務を与えたのだ。

 

「埋め合わせはするよ?____ごめんね。」

 

俺は思わず手を握り傍に彼女を寄せた。

 

「え・・・・?」

「ん・・・・?」

 

彼女は立ち止まり、俺を見上げて小さく首を振る。

この賑わいの中、君は静かに言った。

 

「ねぇ、カカシ殿___私・・・顔が変わらなくても、今とっても楽しくて嬉しいのです。」

「八香・・・。」

「とても解り辛くて、いつも気を使わせるばかりで___申し、いえ・・・ごめんなさい。」

 

また、そんな焦げつく様な眼差しで俺を見る・・・キュンとなってしまうではないか。

気にしているのだ___自分が笑顔を見せられない事・・・・。

俺は周りのカップルの声を聞く。しまったな・・・コレが原因だったか。

 

「俺は写輪眼を使わずして君の瞳の色で___君の喜怒哀楽が解るんだ。

だから落ち込む必要はないよ? 少しづつだけど、最初よりずっと表情が豊かになったしね。」

「・・・・・本当に?」

「確かめてみる___?」

 

彼女の手を取り、コートの中の胸の上へと当てがう。

そんな事を気にして謝る君に、俺はこんなにドキドキとしているんだって事を解って欲しくて。

ほら___察してくれた。口が少し開いて、眉間にシワが寄ったじゃない。 

君は本当に、感情を表すようになっているんだってば・・・。特に、唇ね。

小さく尖がった口や一文字に結んだ___ソレ。見たら、どうしても萌える・・・・;

 

「行こう・・・・!」

「何処へ・・・?」

「いいから・・・!」

 

俺は我慢できず、彼女の手を引いた。まだこの時間帯、アレなら直ぐに乗れる.

チケットを即買い、俺は彼女を観覧車に引き連れて乗り込んだ。

今・・・、二人きりにならなければ___いや、なりたいんだ・・・!

グラン!とそれが上に上がった時点で俺は彼女を抱きしめていた。

 

「きっと___八香だって、いつかは笑える様になる・・・。」

「・・・・・・!」

 

戸惑った様な目をした君の唇を塞いだ、そんな事に負い目に感じなくていいんだ、と。

君を拾った日の事を思い出しながら・・・。

生まれて初めて見る、実在せぬ様な美しい___体に、崇高さを感じさせる痣を持った少女。

暗殺者の肩書きとは裏腹の、世間知らずで騙されやすい、世話好きな女の子で・・・。

俺にとって、彼女が鬼の加護を受けた事さえ・・・いまや関係ない____

君は俺の心の傷さえ悟っていた。何も云わず、そっと寄り添ってくれていた。

俺の勝手で、会えない時があっても・・・。

 

「俺と言う男を理解してくれる君に___ずっと傍にいて欲しい。」

 

出来れば我侭な俺を叱って欲しい。そして、そんな俺にタマにはスネて見せて。

腕の中、何か反論しそうな彼女の頭をギュとまた押し隠した。予想はしてたから。

 

「解ってる・・・。今はカタチに拘らないさ___」

 

結婚や子供がどうだとか、君にはまだ早い。

俺だってそうだ。俺はもっと大人にならなきゃ本当の意味、彼女を守れない。

だけど俺としては、君の中に”俺と言う存在”をちゃんと置いておきたいんだ。

 

「____でね?」

 

俺はコートのポケットからやっとそれを取りだし、彼女の左手首に嵌めた。

この日の為に内緒で、君のところの職人さん(紫紺)に作って貰った__バングルだ。

やんちゃな君の為にリングは避けたよ。やや太めの緩やかに編まれたキレイな細工。

 

「・・・私なんかが頂いてよいのですか・・・?」

「頂いてくれなきゃ困っちゃうよ; 君のサイズなんだから。」

 

君が寝てる間に図ったサイズ___暗器の指輪以外身に着けない君の事。

恐らく、太刀を振るう感覚が鈍るだろうと思ったんだ。

出来れば__ずっと着けていて欲しいから。

 

「これからも君には・・・俺を”守って”欲しい。俺の___”ココ”(心)をね。」

「え・・・。」

「君の事は全部、俺が請け負うから・・・さ・・・!」

 

難しい事は言わない、ただ傍に居てくれればいいんだ。

俺だけを見ていて・・・俺だけのものであって欲しいって___ありがちな、男の独占欲。

 

「・・・返事を聞いてもいい?」

 

少し抱く力を緩めた。彼女が、もし「イヤだ」と言う時の為に。

あぁ、でも。・・・これで断られても放してあげられるだろうか; 正直な所・・・

 

「_____望む所です・・・。」

「_____!」

 

迷いが吹っ飛んでもう・・・ギュウゥゥウッ!と、するしか___ないじゃない?

 

「八香・・・・・・!」

「良かったな・・・!」

「うん、ホント良かった____え!?」

 

観覧車が一番てっぺんに来た頃、夜景が見える筈の外に___何で暑苦しい男の顔が。

もう___ツイ、イラッっと来るでしょ。。。

 

「カカシィ・・・! 俺はライバルとして、こんなに嬉しい事はないぞ!グスッ、おめでとう!」

「いや____ガイ、いつからソコに・・・!?」

 

油断した____

べったりと張り付き、更にヒドイ形相になってるモンだから、思わず八香の顔を背けさせる。

 

「いつからって・・・さっきから見守っていたぞ!? 親友としてライバルとして当然お前の、」

「・・・・・・・・・・。」

「おい・・・止せ・・・、俺はただ、噂を聞いて心配になってだな、アアアアアア!」

 

俺は彼女の顔を胸に抱き込むと、手に電光を纏い・・・軽い怒りをヤツに感じさせておいた。

下を見れば、墜落して行ったガイに群がる___何故だ、ナルトとサクラ、リー君まで・・・!?

 

「___八香?場所、変えよっか;; 此処よりもっと夜景がキレイで、静かな!!所に行こう。そうだ、暖かいお部屋でゆっくりパフェでも食べない?」

「パフェ・・・・? プリンの乗ってる、アレで御座いますか___!?」

「じゃ、それも着けて貰おうね! さ、行こうか・・・!」

 

少々、慌て気味に彼女にそう云う。俺はゴンドラの非常口を開けると彼女を抱え飛び出した。

君がプリン好きだとは知らなかったけど___君の為なら今夜、何でもしてあげるから。

 

「あーッ!! カカシ先生が逃げたってばよ!!」

「女の人も一緒だわ!やっぱり噂は本当だったのよ・・・!!」

「見届けねば・・・! ガイ先生の代わりに!!」

 

ナルト達が俺達を指差して騒ぎ出してる。噂ってなんなの;全く____ア。

 

(そお云う事____!?)

 

今やっと飲み込めた。オタク達が集結した理由も・・・! 

何でそっとして貰えないわけ?? 流行のゲス不倫でもないのに;;

 

「あれ、今_______お部屋と・・・?」

 

抱かかえてる八香の、今更な言葉に苦笑した。

君は____何も知らなくていいの。初デートのこんなドタバタも後で笑い話にしよう。

夜はまだまだこれからだよ? これから俺達は特別な時間を過ごすんだから・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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