聖なる夜に君を想う。 作:ふま
( こんな時だけ君を子供扱いできなくて___すまない・・・。)
ベッドの上、疲れ果てていつの間にか眠ってしまった彼女の隣に身を滑らせた。
目尻に薄っすら滲んだ涙、まだ火照っている頬を指で撫でた。
月明かりが君の体を蒼く映してるのをそっと隠せば肌寒さで暖を求めるかに身を寄せてる。
俺はやっと君の”そんな場所”になれたんだな・・・。
こんな夜は何だか___思い出してしまうね。部屋に預かってた頃の君をさ。
昔の俺みたいに・・・君は夜な夜な魘され、悪夢に苦しんでいた。
大切な誰かを”守れなかった”傷を背負っているのだと知った。
写輪眼で見た君の事実は凄まじいもので・・・正直、慄いたものだ。
刃が、人間の油で切れが悪くなるにつれて返り血を浴びながら斬り進む君を・・・。
見た目とは裏腹の、君の中の鬼を見た気分だった___だけどね?
(羨ましいと・・・思えたんだ。左門と言う男がさ。)
愛しい人を守ろうと___その場に女一人、血まみれになって駆け着けたんだものな。
俺は”オカシイ”のかもしれないけど、君のその一途さに胸を打たれてしまった。
嘗ては泣く事も、人を愛しいと想う事さえ出来なかった君を知っているのなら・・・。
俺が左門であれば、そんな君を恨んだりはしない____寧ろ、成仏さえ出来そうだ。
いつ・・・君に特別な感情を抱く様になったか・・・。だぶん、そこから・・・?
「・・・・・・・・。」
スゥスゥと、小さな寝息が聞こえ出した。ふふ、こんな無防備な君を初めて見る。
こんな時間が永遠に続けばいいと、愛しい彼女が自分の鎖骨を枕に眠るこんな聖夜。
世の中の男はだいだいそう願うんじゃない・・・・?
思わずクスリと笑い____起さない様、音も立てずそっと唇で額に触れておく。
(でもま・・・そんな事にならない様、君に守られないで済む男にならなきゃね。)
その頃____時同じく別の場所では・・・・
赤提灯の並ぶ店の中、一仕事終えた中・上忍達が大賑わいで酒を酌み交わしていた。
「あら、こっちいらっしゃいよ。」
「おお、ライドウか。何エンリョしてんだ?」
毎年恒例の、シングル組の即席・忘年会みたいなもんだ。
今回は偶然アスマさんカップルと同じ店になり遠慮して別の店に行こうとしたら引き留められた。
良く見れば周りは顔なじみのヤロウ共ばかりいる。
そしてカウンター席、空気読めないヤマトさんがアスマさんの隣でクダを吐き散らしていた。
「たぁくぅ~・・・先輩もヒドイですよねェ・・・
こっちは八香さんの為に身を削って働いてんスよぉ~?ね~、聞いてますゥ?アスマさァん!」
「あぁ・・・さっきも聞いた・・・。」
「仕方ないわね。ウチ(木の葉)が勧めた亡命だもの。
それに__あたし達同様、あの娘だって恋する権利はあるんだし?・・・・ねぇ?」
「あぁ・・・まぁな・・・。」
「あーッ!紅さん?ちょっとぉおお!アスマさんにナニ同意を求めてんスかぁ!?
今のカンジ!まさかァ、お二人までデキちゃってるんじゃないでしょうねェ~~~!?」
周りに居る他の者は、口を尖らせて二人に絡むヤマトにヒソヒソ声を一斉にあげている。
「 「「「 「 ・・・鈍感か? 」 」」」 」
「そういや・・・ゲンマはどうしたんだ?」
「あぁ・・・、女送ってから来るって云ってたからもう直来るんじゃないすか?」
イワシの言葉に何故か紅とアスマは思わず溜息だ。
「んもう___いい加減ゲンマもモテるんだから、とっとと別の女とくっつきゃいいのに!」
「まぁ・・・そう簡単じゃないさ______尚更な・・・。」
二人の呟きに複雑な想いをしていたのはこの俺、ライドウであった。
歳の差を越えて、あのクールなゲンマが・・・本気であった事を知っている。
(もしかしたら・・・、あいつはまだ諦めてはいないかもな____)
カカシは内輪では知れた、”恋愛ぶきっちょ”だ。また直ぐに別れるかも知れないと・・・。
実は、此処に居る全員が(ヤマト以外)心の奥底でそれを危惧してる筈だった。
それに比べて俺の知るゲンマという男は___女の深層心理を知り尽くしている。
けれどアスマや紅は、今回のカカシの本気も把握していてそう言っているのだろう。
「まぁ・・・ゲンマのヤツ、結構タフに出来てるから大丈夫ですって・・・!」
俺はお前を応援するから! ___そう想いつつ、ニッコリ笑った。
「ブエく。。。シュ!!!」
コレはなんの悪寒か、誰かに噂されているのかもしれない。
「ゲンマぁ~、どこかに泊まって行かないのぉ?」って、ゴネる女を家に放り込んで来た所だ。
クリスマスの夜に食事に誘えば誰だってまァ、その後”何かある”と思うんだろうな。
悪いけどそんな気分になれねェよ。アイツを想いながら別の女となんて・・・真っ平ゴメンだ。
(アイツは今頃____いや、よそう。想像したくもねェ・・・。)
ジャケットのポッケに手を突っ込み、雪雲らしきものを見上げて思い出すんだ。
考えてみりゃぁ、確かに俺らしくないホレ方であった。
ドアを開けたタイミングも悪かったんだよなァ・・・あんな近くに居るとは思わずに。
一気に入って来た八香の姿___深い、浅い、2重の色した紫の大きな瞳に白い割烹着。
そしてその日のウチに、俺の胃袋まで掴んだ挙句・・・
どう見てもそうは見えない、”マタギ姫”のアダ名や、笑えないクセに、笑おうとするサマ。
彼女は正義感の強く、優しい___実は「騙されやすい、暗殺者」だったと云うオチ。
いつも自信満々に相手に立ち向かう所も危なっかしくてねぇ・・・;
まぁ・・・カカシならアイツを守ってやれる。
だがもし、ヤツが浮気でもしやがったら俺は遠慮はしない___覚えとけよ?
「今はとりあえず、幸せでいやがれ・・・!」
二人共・・・な!
「お・・・・・・!?」
雪だ_______?
ふわふわと、鳥の羽みたいな大粒の雪が降り始めた。
もう目の前の居酒屋から、酔っぱらいが何人か表へ飛び出してきて子供みたいな声を上げてる。
「おお!雪だァ!」
「ホワイト・クリスマスじゃん!」
「メリー・クリスマスってかぁ!」
大のオトナがもう・・・。
俺は苦笑いではしゃぐ連中の肩を叩いてから暖簾を潜った。
夜が明けた。
昨夜____盛大に雪が降ったらしい。降り積もった雪が、私のよそ行きの靴で音を立てる。
チェックアウト後もいろいろな所へ行き、ようやくデートしてる実感がわいてきた。
「あ~、とうとう帰って来ちゃったねぇ・・・。」
夕方になり、里の門に近づいた頃・・・彼がそう云った。
何だろう、この・・・モヤッとした感じ。そうか__私は今、ダダをコネたい衝動に駆られてる。
あの門を潜る手前できっと、カカシ殿のこの手は離れてしまうのだろうと思った途端だ。
思わずどんなダダをコネるか考えた。市場の「アレ買ってよー!」な我侭な子供しか浮かばない。
想像力乏しいな、ジブン・・・。兎に角、離れなければ気が済むのであろうか?
ならば・・・・! 手首から先を合体したまま紐で雁字搦めにするとか__
後ろからジャケットの中へ潜り込んで二人羽織状態で入るとか・・・。
いやソレ・・・私がやるのか? 想像すら出来ない__てかキャラ的に無理じゃろ・・・;
(何を馬鹿な事を考えておる・・・カカシ殿に恥をかかす訳にはいかんのだ。)
私のもう片方の手には、紫紺たちへのお土産のケーキがあった。
これを両手で持つフリをして___自分から手を放した方が良いかも知れない。
いよいよ門番達が待つ所まで目の前に迫り、いざ私が手をムズムズさせると彼が振り向いた。
「ん___? あぁ。それ、持ってあげるよ。」
「・・・え!?」
それを私から奪ってしまわれると、あろう事か・・・・「や・・・!」と、
彼らの前、右手は私の手を取ったまま、左手で持ったケーキの箱ごと手を挙げて挨拶したのだ。
「クリスマスだってのに大変だね。ご苦労さん・・・!」
「カカシさん・・・、え____(マジで!?)・・・・・;」
「コテツ_____!(シーッ!)」
そのまま、スタスタと門を潜ってしまわれたのだ・・・。
あっと云う間の出来事に___ただポカンと彼の横顔を見上げていた。
「___? どうかした?」
「あ・・・いえ、その・・・このままでよろしかったので?」
彼は最初、何を言ってるのか解らない様だったがようやくソレらしき答えを見つけた。
「ケーキは逃げないけど君の方は今まで、”逃げちゃうやら消えちゃうやら”だったじゃない?
なんだか____トラウマになっちゃったかもなぁ~・・・。」
「・・・・・・・・!」
それが・・・私の手を放さなかった理由・・・?
胸から鳩が飛び出しそうな錯覚を覚える私をヨソに___
ニッコリ片目で微笑むと・・・ギュ!と更に手に力を込めてきた。
「さぁて。紫紺や雪羽たちに楽しいクリスマスの過ごし方を教えてあげないとね!」
そしてそのまま・・・例の、”カカシ先生・御用達”商店街へと繰り出そうとする。
心の中想う___本当に・・・色々、御座いましたと。
ギュー・・・・と、思わず手を握り返す___振り返る彼が、斜めに身を屈めた・・・。
まるで隠れる様に、軽く。それは”チュ”と音を立てる、ほんの一瞬____
「メリー・クリスマス、八香・・・! これからもヨロシクね・・・?」
耳元でそう囁いて・・・ニッコリ笑う、右目。
彼が言葉を待ってるのは解っていたが、言葉が出なくて、どうしょうもなくて____
ただ、コクンと頷いて見せた・・・。
「_______行こう。」
手を引かれるまま、私はついてゆく。
貴方が___私を必要としない日が来るまで・・・ご一緒致します。
そう誓った・・・聖夜の夕暮れに_______
【end】
オマケ話付けますw