聖なる夜に君を想う。   作:ふま

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イタチ→八香→綱手→カカシ→冬馬の順でお話は進行します。


7、ハルオリと云う女

 

____呪印に反応があるとはな。

ダンゾウめ・・・あの女に手を掛け様とするからこう云う事になる___

 

俺には彼女を木の葉に留まらせて置く理由がある・・・

それに・・・サスケは里を出た___戻る場所が無くなってしまっては困るのだ。

 

「聞いたか____闇市場で自の国の、元・巫女にとんでもない値が着いたそうだ。」

 

俺たちは洞窟の中、まだ揃わない面子を待っていた。

今居る1人がそう云った。その言葉に無関心を装っていた俺も実は心穏やかでない。

木の葉崩しの際、陰で”式”を操り一区域程の忍を駆除した事がいけなかったのか。

じっとしてれば良いものを____。

そしてその類の話に一番興味を持つ筈の男は意外な返事を返したのである。

 

「天の国《アマのクニ》の連中にどうせ先を越される___徒労にしかならん。」

 

彼が言うには、”忍には面倒な敵”・・・良い噂のない、陰陽師集団だと云う。

八香___鬼子母神はお前に必要以上の力を与え過ぎた様だな。

俺は己の判断を振り返る。この世の果ての崖っぷちに立つお前を止めた事だ。

間違ったとは思わない、ただ___俺も無責任なものだ。

木の葉に居れば・・・お前にも多少の安息の時が送れるかと思っていた・・・。

 

「もう手中の様だ___我々には関係無いがね・・・・。」

 

ゼツが現れそう云った。

さて・・・木の葉の忍はどう動くだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

同業でもないが___彼らにしてみれば同業と云う誤解があるのかもしれない。

召喚と言うヤツだ。以前あの”陰気メガネ”が私を強引に呼んだ、あの術。

酷い話、私はキャミソールと下着しか身に着けていない状態で、冷たい床の上に描かれた

星の絵図の中に放り出されてた。”五芒星”と云う名の___

 

「成功した様です___冬馬様」

 

声が響く___天井が高い様だ。

蝋燭の灯りの元、その端に位置付けられて座る5人の術者はいづれも陰陽師であろう・・・。

 

「_____!」

 

コツコツと近づく、二つの影。老婆と___20前後の、冷たい表情の青年である。

 

「スガシロ___この者が・・・?」

「はい・・・新しい、冬の化生の主に御座います。静馬様は真に強運なお方__これを。」

 

スガシロと呼ばれた老婆は私に近づくと、年寄りとは思えぬ力で片手だけで両手首を吊るす。

ただでさえ頼りないキャミソールを捲り挙げた。この陣の中では抵抗もままならぬ・・・・。

私はこの年寄りにでさえ、されるがままだ。胸が露にされ、前側の痣を曝け出す。

 

「紅ばしかの痣を___鬼子母神の力によって書き換えられた自の国の巫女に御座います。」

「話には聞いていたが・・・これは___すばらしい・・・ピンク色・・・!ハァハァ」

「ソッチじゃねーでしょーが!! 人の話をちゃんと最後まで聞きやがりませ!」

 

モキュモキュさせるイヤラシイ手つきで体に触れようとした男を老婆は脳天チョップで制す。

そして私から手を放し、まるで軽蔑の眼で見下げて云うのだ。

 

「しかし、この巫女は既に汚されて、今では武術者に身を落としておりまする。

冬馬様、やはり___別の者をお探しになる方が宜しいかと・・・。」

「戯けが・・・お前にはこの縁が解らぬか・・・!」

「ならば! せめて、身代わりをお立てなさいませ・・・!」

「考えよう___お前たち、下がれ・・・!」

 

術者までも追い出し、冬馬と呼ばれた男は前から後ろに回り痣を繁々と見つめてる。

 

「ほほう・・・・このツタ模様、尻まで続いておるか・・・。」

「___触るな。・・・一体、私をどう使うツモリだ。」

 

やっとの事、男の手を払う。

しかし・・・体は鉛の様に重いのだ。男もそれを知ってて嘲笑っている。

 

「ふふ・・・気丈な女子よの・・・。その殺気の有り方、私の周りでは珍しい。

どう使うか___か。我々は”予言の巫女”を探していたのだ・・・。」

「・・・・・!?」

「お前は何も心配しなくて良い___」

 

ガチャリ・・・! 突然、硬く、黒い首輪をはめられた。これは力を制御するものか。

非常に不味い事態だな、僅かな風も起す事も出来ないとは。

 

「神足静馬の縁者か・・・ウマは合わなかった様だな。」

「そう____静馬は私の兄・・・この国を捨てた、裏切り者・・・!」

 

確か出身は小国である、天の国だった筈。

それにしてもこの違い。あの温厚な静馬に対して___何か泥々しい悪い気を感じる。

冬馬と呼ばれた青年は私から目を離さず、徐に手を大きく2回叩いた。

 

「この女に清めの湯浴みをさせ、装束を着せろ___丁寧に扱え。」

「しかし・・・!スガシロ様が・・・。」

「構わぬ。そして巫女探しは打ち切りだ。」

「はッ・・・。」

 

女官らしき者が二人表れ両脇を取られて歩かせられる。

暫く歩けば大きな扉が目の前に。女官の1人が自分の羽織を私に被せ、1人がドアを開ける。

 

「_______!」

 

其処は外!? 雪で吹雪いている。高すぎる壁の影が辛うじて見える視界の悪さなのだ。

 

(おかしい・・・しかも夜だなんて___そんなに時間は経って居ない筈・・・!)

 

湯気が立ち上る中、女たちは足元の灯りを点すと私の手を引き先へと誘う___

 

 

 

 

 

 

 

「巫女ばかりを誘拐・・・!?」

 

そう云うと彼は思わずカカシの顔を見ている。ガイみたいなニブチンでも解っていたと言うのか;

早朝、ガイ班とカカシを呼び出し任務内容を告げていた。

 

____八香が消えた。内側から鍵の掛かった寝室からだと云う。

カカシから、まさかの報告を受けてアタシは頭を抱えていた。

まさか___そんな仲になっていたとは・・・女の勘が鈍っておる様だ。

 

「綱手様、一体・・・八香さんはッ・・・____」

 

ショックを隠しきれないネジの肩をガイが軽く制した。

カカシはただ眼を瞑り、何にも口を出さない。アタシは5枚の女の写真を机に並べる。

 

「これが各国の行方不明の者達だ」

 

火の国境にある、小さな小国からも助けを求める書状が届いており、暗部の調べでは

八香を含めた5人が行方知れずとなっていた。

 

「・・・・天の国を知っているな?」

「確か、別名”黒い国”と云われるカルトな陰陽師衆が束ねる国でしたか・・・。」

「一週間前・・・不穏な動きありと、隣国の”草”が云ってきたので暗部を遣したが・・・。」

 

ぱったりと音信不通になっている。場所は___自の国よりは遠くない。

何故”黒い国”と呼ばれるのか?北に位置し、常冬で太陽が現れず一日中、ほぼ夜なのだ。

 

「神足静馬の故郷であり__権力争いの内紛も記憶に新しい。」

「ええ___家督に興味が無かった神足は里を捨てたと聞いています。」

「うむ・・・家督を継いだ弟・冬馬が各国の巫女を拉致して何をする気なのか・・・。」

 

あまり関わりを持たない独立国・・・他国を一切寄せ付けず、その正体は定かではない。

未知の国、そして___八香を、腕の中から失ったカカシが・・・冷静さを失うのでは?と、

心配ではあるが行かせてくれと云うのだ、止められはしない・・・。

妹の存在を超えた___恋仲である。

 

「___カカシ。ガイ班と任務に就け。空き次第、追って増援も遣す。」

 

ガイを筆頭に彼らが八香奪還に名乗りを上げたのだ。

詳しい事は内密にしておく・・・特にネジには刺激が強い話になるだろうから_____

猿飛先生の手記に、日向ネジが八香に恋心を抱いているのではと疑いの文面があった。

彼のこと、カカシが傍に居ながら何をしていたんだと・・・モメても困るのだ。

 

「___有難う御座います」

 

カカシはそう云って頭を今までに無いぐらい、深く下げてから消えた。

 

 

 

 

 

_____『はたけ殿、これをお持ちなさい。』

 

紫紺から渡された手の平に収まる小さな容器には、八香愛用のシャンプーが染み込ませてあった。

追跡用のそれと、あと数枚の”柊の葉”である。

これは八香にしか使えないアイテムだが、渡す事ができれば強い味方になるからだろう。

移動中、胸ポケットにしまったソレがチクチクと刺激する錯覚を覚えている。

 

”私は、この上無い___果報者で御座いますよ・・・。”

 

そう云った君の眼が焼き付いている___小心者の俺を、知っての言葉・・・。

今になって俺は後悔している。何故、嘘のヒトツでもついて君を安心させてやれなかったのか。

君を失いそうになってる今でさえ、俺には覚悟が決まっていない。本当に酷い男だ・・・。

心の中でさえ俺は___君を”どう思っている”か、決定的な言葉での表現を避ける臆病者だ。

 

(ただ今は・・・君を救出する事だけに集中するよ、どうか待っててくれ___)

 

「カカシ___心配は要らんぞ。俺達が着いてるんだからな・・・!」

「そうですよ!カカシ先生___僕らで必ず八香さんを取り戻しましょう!」

「勿論だ!」

「そうよッ・・・!」

 

俺達が目指すは・・・未知の”黒い国”。ガイ班の連中に励まされながら先を急ぐ___

 

「あぁ・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

「嘗て___我が天の国にも巫女がいた。名は春織《ハルオリ》と言う。

美しく、聡明で、我ら陰陽師は当然ながら、民にも、自然にも愛された存在であったと云う。

私達の祖先でもある兄弟は巫女を取り合う様になり___どちらの寵愛も受け入れなかった彼女は

兄弟の諍いを嘆き、独り洞窟に篭り、神に祈りを捧げ続けた挙句___亡くなった。

それ以来、我が国に___太陽は現れなくなったとの言い伝えがある・・・。」

 

だがそんな、私が生まれる以前の問題はどうでも良いのだ。

グラスの中に揺れる蝋燭達が、夕食のロマンティックな雰囲気を演出していた。

そして目の前の、運命と云わざるを得ない巫女のその美しさに感動している・・・!

恐らくは、あの兄でさえ彼女との縁を感じた筈。

 

「して___この衣装、おかしくないか。」

「我が国、最新の巫女装束だが? 肩の出具合やシースルーの透け具合が、

薄紫の色合いが__そなたの痣と、美しさを最大限に引き出しているではないか?」

「じゃぁ、このヴェールは何だ。」

「花ヨ・・・ひ・・・・!」

 

ゴツッ・・・!

女官が要らぬことを口走りそうになったので思わずフォークを頭に投げた。

もう1人が、床にそれを落としては自分も同じ目に合うと悟り慌ててそれをキャッチしてる。

 

(醜女は黙っておれ・・・!ふふ・・・スガシロめ、身代わりを立てろとは笑止・・・。

仮に、この女の皮を被せたとて___これほどの者、いつか摩り替えてくれるわ・・・!)

 

スガシロは尽く私の選ぶ者にイチャモンを付けてばかり___乳母の嫉妬やも知れぬ。

しかし今回ばかりは違う___この女は私のものとなり・・・この国に利益を成す者であろう。

 

「さぁ・・・遠慮なく食事を楽しむが良いぞ___」

「悪いがベジタリアンだ、肉は食さぬ。」

 

そう云ってバリバリとサラダのレタスを食べ始める。何と___何だって??

あれ、巫女って肉ダメなの?せっかく用意させてるジビエの鹿肉がメインディッシュなのに!

肉の焼ける匂い・・・鼻が利くか___ふん・・・フルーツや野菜に眠り薬は盛れなかったな!

 

「冬馬___もう一度聞く。一体私を何に使う気だ____?」

「・・・・・・!!」

 

侮れぬ・・・、私を見据えた眼は___目論みを見透かしているだと・・・?

立ち上がると彼女の顎を手に取る。大きな薄紫の瞳が私を見る、優越感・・・。

 

「お前の__力と、体が欲しい。その体は間違いなく___春織の、生まれ変わり・・・!」

「馬鹿な事______、!?」

「いや・・・・・・!」

 

我慢できそうに無い______私は彼女の全ての力を・・・封じた。

 

 

 

 

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