聖なる夜に君を想う。 作:ふま
ガイ→八香→カカシ
この順でお話は進みます
「____この時間帯に・・・この夜景とはな。」
オレの時計では夕方16時___カカシは黙って頷いた。
黒い国といわれるだけはある・・・、とっぷり暮れているのだからな。
国境で俺達は”草”の人間が手配した服装と、石炭の積んだリヤカー、そして通行証を受け取った。
正体を隠し、リヤカーを押しながら5人での潜入に成功していた。
この国の気温は下る一方で燃料が不足している。お陰でこの時間帯だけは結界が解かれるのだ。
ロクに休憩も取らず青春パワーで此処まで来れたが___カカシの言葉の少なさときたら。
妹の様に可愛がっていた八香を___突然、さらわれてしまったのだから無理も無い。
オレは彼女に感謝しているんだ、どこか荒み気味だったこの男を癒してくれていた事に。
八香が来てからカカシは、本来の姿に戻った様な気がしていた。
「ガイ___すまない。お前まで巻き込んでしまうなんて・・・。」
先頭で荷を引く俺のすぐ後ろで、彼が言った。
農民を装う頬かむりの下の顔はやはりドンヨリしたもので。
「馬鹿を云うな。彼女は俺達にとっても救いだったんだ。そして里の味方でもあった。」
「_____あぁ。」
公にはなっていないが・・・一部の里の者が”大きな鬼”に救われたと云っている者らがいた。
八香は出来るだけ己の殺傷力を使わず、自身の仕業と解らぬ様に”式”を放ったのだ。
それに、我が弟子のリーやテンテンにも優しく接し、若くしてネジの心をも解きほぐす人格者。
何より治療を施すあの心地良さときたら・・・回数券を買おうか、迷っていたところだった。
「カカシよ___オレがお前を、おにい、」
「いや、キツイでしょ」
あっさり返された__皆まで言わなくても解るとは流石、我がライバル。
「アレがそうでしょうか?」
「その様だな___かなり大きい屋敷だ。」
後ろで荷を押す二人の声に前を見直す。篝火が二つ燃える入り口が遠目に見えてきた。
「全く____この色ボケ当主めが・・・!」
私は力で捻じ伏せられ、天蓋の着いたベッドに放り投げられた所であった。
覆い被さった冬馬はクタリと気を失い、その背後にはスガシロと言う老婆が棍棒を手にしてた。
なかなかに乱暴な部下である。忌々しそうに男をゴロリと向こうに転がし、私を起す手を貸す。
「八香よ___悪いが貴様の”その体”で若と契りを交わして貰っては困るのだ。」
「どう云う事だ・・・。」
「ハルオリは再びこの世に巫女として現れる。当主と契りを交わし、娶る事によって
この国の自然はまた我々に微笑むだろうと云う予言・・・だが、これではな・・・。」
脱がされ掛かっていた上衣から覗く私の痣を差した。さっと衣服を整えると老婆を見据える。
何故か困ったかの苦笑いを一瞬に浮かべ、直ぐにそれを打ち消した。
「もはや貴様の力だけではこの天候を変えるのは不可能。此処では天候の常識が狂っておる。」
今まではこの環境下でも何とか育つ作物もあったらしいが、毎年気温は下がる一方で
今では他国から食料、燃料まで、全て輸入に頼るまでになったと嘆く。まるで嘗ての自の国だ。
「貴様が生まれ変わりならば、もう手遅れかもしれん。我々はこの国でもう二度と太陽を拝めぬと云う訳じゃ。明日は久方ぶりの満月だと言うのに。しかし、これでダメなら若もきっと___」
若(冬馬)には申し訳ないが___そう云い、手を叩きまた女官を呼ぶ。
彼女らの腕に抱えられた娘が運び込まれて来た。スガシロは九字を切る___
「恐らく___若の野望はそれだけにあらず・・・」
この老婆はかなりの術者・・・、私の頭に手を当て____意識を剥がし始めた・・・・。
女官の1人が発した言葉が遠のいて行く。
「スガシロ様、八香様の”寝室”の準備は整って御座います」
”寝室”とな____カカシ殿・・・。何だかもうお会いできぬ様な予感が致します。
私は薄れる意識の中___夕べの貴方の体温を思い出せば一滴・・・零れ落としている。
何時、途切れるだろう不安なまま、思考できる限り言葉を捜していた。
(同じ気持ちで御座いました____約束の”花火”・・・叶いませなんだなぁ・・・・。)
あの時の優しい夢を見ていた。ほんの僅か・・・こんな私に許される筈の無い___夢を。
またホロリ_____瞳から、暖かい大粒の水滴が溜まっては剥がれ落ちた・・・。
「_____!?」
「どうした?」
「・・・・・・いや・・・。」
俺は八香の声を聞いた気がしたんだ。それは悲鳴でもなく__穏やかな、いつもの声を。
今俺達は屋敷内部に留まる事に成功した。影分身で石炭を降ろした一行を去らせていた。
ネジに通路を割り出してもらい、俺はパックンに匂いを辿らせる。
「微かだが・・・・コッチだ。」
中は意外にも近代的な廊下へと彼が導きだしたその時である。
ビーッ、ビーッとサイレンが高く鳴り響いたのだ。
「お出ましだ」
「ああ、その様だ____」
ガイも俺も、後の3人も、暗闇から出てきた大きな鬼の姿の”式”どもと対峙する構えとなった。
「デカイですね___燃えて来ましたよ・・・ガイ先生、ココは僕たちで!!」
「早く、八香さんを!」
「ネジ、術者を探すんだ!」
「やっている・・・!」
リーがそう云うとネジ、テンテンが前に出て、彼らに立ちはだかる。
得体の知れない敵を彼らに任せても良いものかと一瞬躊躇するが、ガイが俺の背中を押した。
「任せたぞ! カカシ、先へ急ごう!」
「ああ・・・!」
パックンを先頭に俺達は先に進む____すると、通り過ぎそうになった扉の前で止まる。
その部屋の隙間からは暖かい空気が感じられ、慎重にドアを開け手鏡で中を確認した。
小さく頷き合い、俺達はそろりと中へ入る。
誰も居ない・・・、ここは食堂の様だがさっきまで人が居たらしい。
長いテーブルの一部、角に二人分のディナーの後・・・何があったか銀食器が床に落ちてる。
それは彼女の座っていた席か、パックンは眉間のシワをギュ!と寄せて云う。
「間違いない、男と一緒か・・・。この食事で”当たりを引いて”なけりゃ良いが・・・。」
八香も鼻が利く。自の国でも朝餉の安全を俺達に保障したぐらいだ。
きっと肉の入った料理は口にしないだろう、クスリ入りなら尚更だ。だが・・・
「続いておる、こっちだ!」
何だろう・・・嫌に激しい動悸がするんだ。冷静になれ___
クソ・・・と、パックンの声にハっとなる。目の前には5人の陰陽師らしき人物らが立つ。
「_____この先、お通しする訳には参りませぬ。」
この声!? 全員がバ!!とフードを脱ぎ去れば俺もガイも・・・目を疑った。
細い体の線をしているとは思ったが___女、まさか・・・全員が八香なのである・・・!
消えた当時と同じ、ランジェリー姿だ・・・。俺は直ぐ写輪眼を使い、全員を見渡す。
「ぬぁああああ! リー達が此処に居なくて良がった・・・・!」
「ガイ、安心して鼻血を拭け! 全員偽者だ・・・! 遠慮は要らん・・・!」
「そうか! しかし、やり難い;; あのカッコウだぞ! 何故か激しくエロい!!」
「バカ、中身は皆オッサンだ!」
「なにィ!? オッサン如きが___オレの純情を弄ぶなどと・・・許せん・・・!!! 」
「純情ってナニ・・・・;;」
「”木ノ葉剛力旋風”ゥウゥウ!!」
「「「「「 きゃぁあああああッ!! 」」」」」
「____________!!」
これは____不味いぞ。八香の悲鳴なんて聞いた事が無いのに彼女のソレを初めて聞いた。
相手は間違いなくオッサンであるのに___俺達の良心が困惑する。
「オイ____本当に本物は居ないんだろうな!?」
「あぁ・・・居ない。」
ガイも揺さぶられている___その内、5人の中の1人が首を押さえ、のた打ち回り出せば
他の4人がワザトらしく心配したフリでその者に掛け寄っている。
「一体、お前は何者____!」
「木ノ葉の気高き碧い猛獣・・・・!」
「止めろッ・・・・!」
俺は慌てて名乗りを制止した。それこそ奴らの思うツボなのだ。
「互いに名は明かさずに置こう____”呪にかかる”ぞ・・・!」
「・・・そう云う事か・・・!」
見れば明からに舌打ちした様な口元___呪にかかれば動きを封じられるばかりか・・・
その姿で現れたのだ、間違いなく「途轍もなく破廉恥な術」で俺達は撃沈させられるだろう。
「イカン、イカン・・・、もう少しで___うッ!? 何を・・・ぶわァあああ!!」
「!?」
5人が揃い立ち・・・全員がキャミソールを一気に脱ぎ去った・・・!?
鼻血を噴出すガイは、八香に生き写しなボディの破壊力で床に転がって悶絶している。
俺はもう_____堪忍袋の尾が切れた・・・・!
(気安く___彼女のその体を晒すとは許せん・・・!)
浅はかだったな___生憎、俺は彼女の体の全てを知っている・・・・。
惑わすには違和感があり過ぎたと云っていい。感締めは受けてはいるものの ____
俺の前では・・・本当に初々しい処女で___俺が困るぐらいなのだから・・・!!
「雷切・・・・ッ!!!!」
「「「「「 ギャァアアアアッ!!! 」」」」」
影分身とは違い・・・そのままの姿で倒れている。あまりいい光景とは云えない。
ガイが持ち直すまで俺は奴らの首後ろからヒトガタを剥がし取っている。
その正体はやはり年配のオッサン陰陽師どもだ。服を着てくれていて内心ホっとした。
(八香・・・・・。)
剥がしたその裏には___切られたであろう、八香の髪がいづれにも張り付いていた。
「気をつけろ___ガイ、奴らは心の隙間に入って来る。」
「カカシ・・・・、お前・・・。」
俺はそう呟くと同時に、自分の中の”泣きどころ”にもフタをしなければと思う___
痣のせいじゃなく、彼女のカラダを人前に晒された事にこんなにも腹を立てている。
俺にとっては今、彼女が一番の”弱み”なのだと___思い知った。
「この部屋だ___途切れておる、香のせいで八香の匂いが解らなくなりおった・・・。」
彼らが行かせたくなかった奥の部屋か___慎重に忍び込む。
ギクリとなる・・・此処は寝室である。まさか・・・?
パックンはベッドに飛び移るとその匂いを嗅ぐ。そして手を差した。
「彼女の髪だな・・・それと別の誰かの匂い・・・食堂にあった男の匂いと同じだ。」
「・・・・・・・!」
「もしや___食事の後、此処で・・・・ナニか!?」
ナニって____何?
食事にします?お風呂にします?それともワ・タ・シ?
一昔前のコントの様な、そう云う類の、ナニか___________?
「いや・・・オイ、カカシ? 大丈夫か!?」
「どうしたカカシ!頭から煙・・・!? オイ、しっかりしろォオオ!!」
「えーい!しっかりせんか!」
跳び上がり、ピタンペタン!とパックンの往復ビンタでハ!と我に帰る。
そして肩に移ると彼はコソっと耳元で囁いた。
「安心せい!その・・・ナンだ、___”えっちな匂い”はしておらぬから!」
「!」
「命が優先だ・・・!後はお前の愛で救えば良かろう!」
「ガイ・・・・・・・。」
そうだ___何があろうと・・・彼女が生きてさえ居てくれればいい。
気を取り直し、俺は口寄せで全犬を呼び出し彼女の匂いを嗅がせた。
「手分けして探そう____頼んだぞ。」
ドアを開け放ち、彼らを放った。
すると向こうから足音がして暗い中、眼を凝らす。
「ペット同伴はお断りじゃと言うのに____」
「誰だ____!」
「誰でもない・・・ただの年寄り___そして阻む壁・・・!」
「 「!?」 」
やっと姿が確認できた___老婆だ。
既に2本指を立て、何やらぶつぶつと唱えている・・・!
「父さん・・・・!?」
「!?」
ガイの様子が急変した。その理由を直ぐに俺も身を持って知ることになる。
『カカ・・・シ・・・・!』
「_____リン!?」