荷物をテントに入れて自分の寝場所を確保したボクは、すぐに床に伏せた。考えていることをが口として出てしまう以上極力みんなとの会話は減らしていかないといけない・・・っていうのは建前で、本当に眠くなったから寝るっていう感じだ。
ボクが寝ていることに配慮してくれているのか、テント内の明かりを端に集めてくれたみたいだ。
「いくらなんでも寝るの早過ぎる気がするんですがねぇ少年君や」
「慣れてないところだから疲れるのはしょうがないだろ。特にこいつは体力もないしな、考えてやれよ」
「だからってさぁ店長、まだやらなきゃいけないこといっぱいあるのになぁ。他の子に押し付けるつもりかねぇ」
「どうせ今日はもう暗いんだ。明日にしようぜ」
煽りはするのに結構人のこと考えるところが2人らしいけど、聞いてなかったことにしよう。贇曰くボクは考えてることが時々声として漏れてしまうみたいだし、極力何か考えることがあったらみんなが誰もいない時に話した方がいいな。
今ボクのテントの中にいるのは、贇《いん》と店長にトロワ、そして真野《しんの》だ。ピライ君や妹達は別のテントにいるみたいだ。みたいだと思うのは、ボクが寝たふりでも横になった時は、ピライ君達はこのテントにいたからで、周りに意識を向けた時にはもういなくなっていたから別のテントにいるんだろうと思ったからだ。
すると、ボクが寝ているのを見ていたら眠くなったのか、贇達も大きなあくびをするとテントの明かりを消して少し静かになっていく。これなら今度はちゃんと寝れそうだ。
トロワは眠りにつくのがとても早いようで小さいけれど、寝息をたてて右手をボクに載せてくるのが意外にも苦しいので仰向けから横向けに身体をずらして寝袋をさらに巻きつける。今度は出入り口が近いのでちょっと寒いけどまあ寝るにはそれほど影響を受けない程度なので、ボクはウトウトと・・・・・zzzzzzzz。
ズズズズとテントのチャックの音が後ろから聞こえる。誰かがトイレにでも行ったのかな?あ、 そういやボクまだ歯磨きしてないじゃん。家ならともかく外では口臭問題になるし、目が覚めたついでに行こうかな。
荷物の中から歯磨きセットを取り出して、開いたテントの出入り口の逆方面のチャックを開いて校舎の洗面台に向かう。
校舎には微かに明かりが見えたけど、今は歯を磨きたい。もしかしたら、目のない子供がいるかもしれない。わざわざ不安になる要因を作るのはバカだしね。
歯を磨き終わり口をゆすいでいると、どザッと砂を擦るような音がした。虫にしては大きい音なので、多分ボクより先にテントをでた贇達だろうか?
音のした所の方に行ってみると、そこは校舎の表玄関だったんだけど、そこには店長と贇。そして修也がいた。校舎でトイレ等をした後にここに来たのかな?それでさっきの砂の音は校舎から外に出た時の音だったんだね。
何かとても重要な話のようなので、その輪の中には入らないようにして校舎の陰からその会話を聴こうと耳を立てる。
「もう決めたことなのにまだ悩むのかい修也君。君を生かしてくれたあの子の為にも君は———」
「分かってる。もうおいらには時間がない。けどこの成功したとしても憎しみしか集めないこの方法に罪悪感を感じたんだよ。みんなみんな自分達が大変なことになるかもしれないのに、その内容を説明せずに最後の最後まで騙し続けるのがおいらには——————」
時間がないってどういうことなんだ・・・?騙すってどういうっっがっ!?ゴッゴゥ!?意識を話の内容を聴こうとしていたのが災いして唾を飲むように口に溜めた水を飲んでしまい、音を立ててしまった。
「誰っ!!!!!」
やばっ、内容からして聞いちゃいけない奴をボクが聴いたとなると、何か大変なことになる気がする。ここは逃げよう。
山の中の広場まで逃げて後ろを振り向くと誰もいない。よかった、逃げ切れたんだ。ってか何でボクはわざわざ山の中に逃げたんだ?身を隠すのなら校舎の方がトイレに行ってたって言い訳にも使えるのにどうして・・・・・・?
「そうか・・・君はそういう子だったんだね・・・がっかりだよ。少年君」
「い——————」
右目に大きな衝撃が走るのとほぼ同時に、胸にも衝撃が来て目の前が真っ暗になってしまった。