顔や腕になにかが這う感触がある。何だろう?確認するために目を開けたが、何も見えない。眼がなくなった訳じゃなくてただ暗いだけみたいだ。
むくりと体を起こすと、ゔぃぃぃと虫の羽音が耳元で鳴り、それに驚いて肩を大きく上げてしまった。
「虫かぁ・・・本当にビビったなぁ」
身体に付いた落ち葉や土を払い、少し慣れた目を使ってもう一度周りを見る。・・・・・・うーむ、やっぱり暗い。周りを見るのが難しいし、まずはどうしてここに寝ていたのか確認しよう。
ボクは歯を磨いている時に贇や修也達がコソコソと話しているのを見たんだったな。それで、裏切り者じゃ何じゃこうじゃと話している間に、向こうに気づかれて何故かそこでボクは逃げたんだ。そうしたら今そこで寝ていたんだよね。
素直に逃げたことに対して謝りたいし、下に降りよう。
後者の方には明かりがあってそれを頼りにすれば、みんなのところに行けそうだ。けど、足元が見えないにはやっぱり怖いなぁ。まあこれはボクが山に逃げたのが原因だから、ボク以外の誰のせいでもない。
足をずらしてちゃんと踏むところがあるかを確認しながら、ゆっくりと山を降りていく。
ザクザクザクザク——————ボクの大丈夫かな?とか行けそうだとかの心の声以外は一切聞こえない。今まあ虫の羽音は相変わらず聞こえるけど、人の声は聞こえない。
山を降りると何人かの人が足を引きずりながら校舎の周りを歩いていた。贇や修也達ではなく全くの他人だ。何なんだろう?左右を確認したりしているので、多分誰かを探しているんだろうけど、なんか変だ。なにが変なのかというと、身体全体的に力が入っていないような感じだ。
真っ直ぐ近づくのはマズそうなので迂回して校舎の裏側から入っていく。裏の入り口に着いた時、ぎぃぃぃという木の床を歩いた時に鳴る音に近い音がしたので、多分贇達だろうと思いボクも校舎内に入っていく。
入ってまずは右を見る。・・・事務室のような部屋は扉は微かに開いているけど、中に人がいそうにない。
次は左だ。・・・おっ、妹達がいるじゃないか。そっちに行けば良いかな?
一歩を踏み出して贇達の所に向かうと、足元が電話のブザーの様に少しだけ揺れた。みんなが歩いてるから揺れたのかな?と思ったけど、廃校になった校舎だとしても人が歩いたぐらいでそんなには揺れないでしょ。地震かな?
揺れは少しずつ強くなっていく。やっぱり地震か・・・けどみんなは気づいてる様子がない。何かに怯えてるのかな?地震がきてるからって伝えた方が良いよね。
贇達の方へ声をかけようとおーいの「お」を言おうとした時、立つことも出来ない様な揺れがした。そこでみんなも気づいた様で1つのところに集まろうと動きだした。けど、何でだろうか?これは地震じゃないと、直感的に感じた。何か下から来る・・・!
酷い揺れの中ボクはバランスを崩しながらも、ボクの位置から1番近かった芹と修也、そして妹の近くに走っていく。
「みんな前に飛べっ!!!!!」
いきなりだったのもあって反応しきれずみんなはその場でこちらを見ると、店長が鉄の塊をボクに向けていた。贇はそれに即座に反応してその鉄の塊を下げさせてこちらを見る。
そんなことしてるよりも先にみんなを動かしてよ・・・!そんなことを言うのも億劫だ。まずは芹と修也を押し飛ばす。
ガガガガッズツッ!!!!!
床が割れて先程まで修也達がいた場所は穴が開いていた。もう少し反応が遅れていたら、落ちる前に上に打ち上げられていたかもしれない。
穴を開けながら出てきたのは、豚の様な見た目だが巨大な人型の化け物だった。
「兄貴!!!!!」
あっ!妹はどこ!?まさか打ち上げられて・・・穴に落ちていってる。・・・・・・やばい!助けられるかな?いや関係ない!助けてみせる!!!!!
脇目も振らずに穴に飛び込んで妹の手を掴み、ボクの体を捻って回転させて妹を穴の外に投げた。まあ、逆にボクは床に手が届かない程穴の中心に行ってしまったので、そのまま下に落ちてしまった。
聞こえるか、見えるかどうかまでは分からないけど、それでもボクの方に泣きながら手を出している妹に向かって「大丈夫」と口を動かして、そこでボクの意識は途切れた。