肩が自分のではないかのように大きく動く。緊張と恐怖、そしてやりきったという感情がボクの中に満ちていた。
それはピライ君も同じなようで、肩を動かしているが手持ちの槍を弄っていた。
「はぁはぁはぁはぁ・・・ピ、ピライ君・・・ごめん」
「無理なら止めてただろ?お前を信じて向かわせたんだ、尻拭いぐらいは俺もするさ」
「取り敢えず窓原と合流する。まずはそれをやってから未来のこと考えようぜ?」
「うん」
少女を背負ったままビルの上に向かうためにエレベーターに乗り込む。予備電源は生きているみたいだ。
ほぼ最上階まで行くと、窓原さんが電話を両腕に持っては置いてを繰り返していた。多分仕事中なんだろう。外がああだから、火事場泥棒みたいなのに合わないために処理活動をしている感じかな?
「一度コピー取ったもんはさっさとシュレッターにかけろ!集めれば内容がバレるかもしれないが、少なくとも時間はかかる。問題ねえ!デジタル物はデータのバックアップを取り次第削除だ!急げ時間がないんだぞ!」
声をかけるタイミングがない。変にかければ仕事の邪魔になる。けどピライ君は御構い無しに窓原さんの所に行った。
「ピライ君・・・?」
「窓原帰投した。俺も手を貸そうか?」
「ピライか!いやてめえらには殿を頼みたいから今は休んでくれ。それに今から入られても邪魔なだけだ。いいな?少年もだぞ!」
こちらに見向きもせずそう言うと、また電話を両腕に持って命令を出し始めた。声をピライ君がかけてくれたおかげでボクらのこれからすべきことがわかった訳だけど、問題は背負ってるこの子だよね。
他の人はボクに対して恐怖の視線を出しているが、実際のところどうなんだろうか?この子に向けているのかも・・・。「少年」と窓原さんは言っていたからもしかしたら知らないのかもしれないけど・・・いや、知ってるよね多分。
部下であろうピライ君が知っていたんだ。その上にいる窓原さんが知らないとは思えない。情報の伝達がしっかりとされているなら多分ボクは大丈夫だと思うけど、この子の情報はない。疑われてもしょうがない。
「リオン。休憩室がとなりにある。お前はそこでその子と休んでろ。お前も察知してると思うが、視線が子供だけじゃない。お前にも向けられてるぞ」
「情報伝達してないの?」
「自我があるBOWなんて漫画でも見たことないだろ普通。言ったところで信用なんてされる訳がない。だって見た目が似てるんだぞ?外の奴らとお前」
予想はしてたけど、ボクだって襲われたんだ。信用してくれても良いはずだ。
「こんなところで言うことじゃないが、俺もお前に校舎でもう一度会った時、コイツ発症前なのか?って思ったんだ。いや、もう一度発症してたか。昔の自分を思い出して俺を襲いにきたのかって思った。怖かった。運転してる時も何処かで怖がってた。さっきもシャッターが閉まる時信じてくれと言ったが、そのまま共喰いになんねえかな?って思ってしまった。勿論最低なことだって分かってる。けどさ、いくらお前がそんなことをしないって分かっても、それでもやっぱり怖かったんだ」
何でここでいきなり暴露するのさ?ボクのこと信じていなかったって怒らせたかったの?
「・・・そんなこと言わなくても良いじゃん。そんなのただの自己満じゃないか。今ここで言うことじゃ———」
「友達相手に対してこう思ってるんだぞ?赤の他人ならどうなるか分かるだろ?」
ピライ君はボクにここがどれだけ危ないかを教えてくれてるんだ。外より安全なのは事実だけど、それはピライ君たちにとってなわけでボクからすれば、あまり変わらないということかな。
「だからさ、休憩室に入っててくれ。背中の子も一緒にな。俺が出る時になったらちゃんと呼ぶからさ。な?」
背中を押されて休憩室に無理やり入れられると、鍵を閉められて閉じ込められる。
「ピライ君!鍵を閉めることはないでしょ?トイレの時とかどうすれば良いのさ!」
声が返ってこない。もうその場所にいないのか?それとも窓原さんに呼ばれたのかな?
その後も声をかけるけど、相変わらず反応がない。向こうが開けてくれるまでここで休むしかないか。
背中の子を優しく横に寝かせる。枕は休憩室にはないようだったので、首は痛くなるかもしれないけど、首元には何も置かなかった。
ケータイもなく時間を把握する方法もないが、向こうが開けてくれない限りボクはここから多分出ることは出来ないと思ったのもあるし、ちょうど睡魔も来たので、それに身を任せてボクも子供と一緒に眠りについた。