池上と
「何してる?」
「方向音痴だから念の為な。明後日逃げる時に線があれば帰りやすいだろ?」
「あの化け物たちはこれを見てみんなの場所特定とかないよな?」
「あったらとっくの昔にやられてるだろ。やられてないんだから気にせず書くぞ」
池上の質問という名の批判を簡単に切り裂いて油性線を引き続ける。
何度か壁を離れることになるがそれでも引き続けていると、道の先にエレベーターらしきものが見えた。
「店長・・・!あれエレベーターじゃないか?目の先にある奴だよ」
「むっ・・・」
目が悪いのか店長は目を小さく細めてやっとそれに気づいた。
確かにそうだ。あれはエレベーターだ。みんなが乗れるものならワンチャン・・・。と言ったところか。
その先に何があるがここからは分からないが、とりあえずそのエレベーターに近づく。
池上が先に近づいてボタンを押すが反応がない。電源は入っているようだが、ボタンの接続が切れているのかもしれない。
「コードが切れてるとかなんかしらで繋がないと使えないな。とりあえず状態が見たいしプラスドライバー探すか」
「ドライバーなら持ってるぞ。ほら店長」
ドライバーを店長に渡して中の状態を確認させている間に、池上は周りの部屋を見ていく。
大体の扉は鍵が閉められているようで入れなかった為店長の元へ帰っていると、エレベーターから右に進んだところの部屋の1つの扉が勝手に開く。
もしかしたらBOWが出て来るのかもしれない。2人で銃を構えるが誰も出てこない。
「隠れてるのか?」
「それなら扉を開けたりしないだろ。こっちが開けたらその時襲えばいい。多分BOWが近づいてそれで開いたんだろうさ。エレベーターの修理中に襲われるのは避けたいし、先に片付けるか」
「分かった。確実に狙い撃てる店長はここにいてくれ。私が行って囮になる。誰もいなければ内部の確認と情報があれば回収するさ」
開いた部屋に池上が近づいて行くのを店長は後ろから銃を構えて警戒する。
明かりは付いていないため、中は暗く奥の方がどうなっているかまでは分からない。片手サイズの懐中電灯を逆手に持って部屋に明かりを灯す。近くには電源はないようなのでそのまま部屋の奥へと足を進めると、固定型の机に倒れ込む人を見つけた。
「この人が開けたって訳じゃないよな・・・?」
もしかしたら感染しているかもしれない。ゆっくりとそれに近づき人の目の前にナイフを落とす。
ものには反応しないのか、起きる気配がない。それとも何かの作戦か。だがBOWにそこまで知識があるんだろうか?長い間放置されて得たという可能性もなきにしもあらずというやつだが、池上との距離は二歩ほどの間しかない。撃たれても頭部に直撃でない限り十分に襲える距離のはずだ。しかしそれがない。もう息を引き取ったのだろうか。
危険なのは当然だったが、確認はしないといけない。いつ動いてもいいように頭に銃を突きつけながら肩を叩いてみるが、反応はなかった。肌を触ってみても冷たかった。
ゲーム等でゾンビは生ける屍と呼ばれるが動いている以上、身体の細胞は機能していないと動くわけがない。つまりは通常時よりは温度が低かったとしても多少の暖かさはないとおかしいのだ。特に首元はだ。
「こいつじゃないみたいだ。ただ自然に開いただけなのか・・・」
一度店長と合流するため部屋を出ようとすると、死体のそばのPCが勝手に開いてPCの明かりが部屋を灯す。
PCに近づいて中身を見てみると、何かの作業の途中だったようでフォルダーが開かれたままだった。
「何かが起きてデータを集めてる途中で力尽きた感じか・・・」
フォルダの中を見ていくと、バイト応募に使ったのだろうか?池上たちとほぼ同年代の子供たちが出身地などの情報が書かれていた。
「大きくてなおかつ地下にあるようなところでバイト応募なんてここ最近あったか?」
その中の1人の男———
下へめくると採用した後の事だろうか?露心の行動が大まかに書かれていた。
《実験開始1日目》
———特に目立った変化はなくただ普通の行動をしていた。開始前に全員に薬を投与したが、予想された結果は出なかった。他の者にも同じような結果から感染から発症には最低でも一日以上かかると思われる———
《実験開始2日目》
———ここでも目立った変化はなかったが、行動時間が減少した。水以外を口に出来ていていないため、無駄なエネルギーを使わないようにするためだろうと思われる。行動減少はこの露心と
「・・・・・・」
なんてことをここでは行われていたんだ・・・池上は声を出す事が出来なかった。だが、内容が気になりさらに下へとめくる。
《実験開始3日目》
———露心と白銀以外に変化が見られた。些細なことで争いが起きるようになってきた。これは食料を与えていないのも影響しているのだろうが、だとしても友人同士での殺し合いが始まったのだ。聞いた事があるのだが、雪山で遭難した民間航空機内の乗客が、飢えを凌ぐために人肉を食らったというものだ。あれとは異なり、それを第3欲求に任せただけだろう。見ているこちらが嫌になる———
「うっ・・・・・・う“っ”っ“・・・」
もうこれ以上見たくない。胃酸と飲料物をその場にぶちまけてしまった。だがこの後この実験に関わった人間がどうなったのか?この情報はうまく行けば自分たちの身の安全の確保に繋がるかもしれない。
胃液のついた口を腕で拭きながら次に進む。
《ここからは結果となる》
———露心は周りの殺意を感じたのだろう。白銀と共に今までいた場所を脱出して出入り口に向かう。だが、そこで過度なストレスが原因か、他の者と同様に暴走を始めた。白銀は特に変化も見られなかったが、それにより逆に反応が遅れてしまい、右腕を肩先から喪失することとなってしまった。通常であれば狂気の沙汰でしかない光景だが、露心も腕を骨ごと食い切ると、自分の行動に恐怖を覚えこの研究所から逃亡した。埋め込まれたGPSも即座に反応が消えて、まるでそれは別世界に飛ばされたのではと思うほどであった———
他の人間はどうなったか見ていくと、露心は行方不明に白銀は腕は喪失したもののこの中で唯一目立った変化がなく研究所を後にしている。そして残りの20人は・・・・・・・・・・・・
「このリオンって子、少年にそっくりじゃないか?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!!!」
後ろから殺気を感じる。変に大きな声を出したのが原因か?BOWだろうと振り向きながら銃を抜きそして引き金を容赦なく引いた。