ガンガンガンガンガンガンと壊れてもおかしくない程の力で扉を叩く
「店長?どうしたのその肩」
「贇、みんなを起こしてくれ。脱出先に使えそうなエレベーターを見つけた。その先がどうなってるかまで一応は確認した。少なくともここよりは地上に近いみたいだ」
「それは良いんだけど、池上は?その肩は?」
「エレベーターの修理中に破片が肩に当たっただけだ。問題ない。池上は間に合わなかった。すまない」
肩を押さえて部屋に入り近くの椅子に腰を下ろすと、即座に贇が店長の肩の傷に手を伸ばして消毒をして軽い処置を行う。
「店長が修理に夢中になってる間に敵が来てそれを助けようとして襲われた感じかな」
「そんな所だ。敵はしっかり排除しておいた。池上を犠牲にしてたった1人しか倒せなかったのは痛いが、後悔してもしょうがない。池上の為にもなんとしてでも脱出する」
「当たり前さ。修也!聞こえてたでしょ?みんなを起こして。みんなが起きたらすぐに行くよ」
店長が来る前に目を覚ましていた修也は贇に言われた通り生き残った人たちを起こしていく。
———芹。奈々。桃。真野。リオンの妹———起きている3人を含めて計8人だ。あれだけいた友人たちがこうも簡単にいなくなっていくのは本当に現実だからなのだろうか?
だが、もしこれが現実だったとしても、いなくなった人たちのためにも生き残らないと、合わせる顔がない。
時間をかけてゆっくりと目を覚まさせる。確かに時間はあまりかけて良いわけじゃない。だが、無理して起きた後にすぐに動けと言われて動ける人が訓練もしていない人間に可能だろうか?贇や店長はまだこの中ではこう言う現場に慣れている様子だが、他は違う。それが分かっているからこそ修也の行動には特に意見することもなかった。
全員を起こしてから軽い食事を取る。極限状態と疲労のダブルパンチで入らないだろうが、それでも食べなければ咄嗟の判断など出来るわけがないし、それが原因で感染に発症なんて目も当てられない。
「贇は食べないのか?」
「もう先に食べたから気にしないで。僕さ昔から起きてから30分ぐらいは口に入れれるのが、飲み物だけなんだ。まあ今回はずっと起きてたからお腹空いて先に食べちゃっただけだから気にしないで自分の食べればいいよ」
店長と賭け事をしてそれで負けて亡くなったとかは言えるわけがない。余裕があるようにお茶を飲んで見せているだけだ。店長はそれを見てなんて下手な言い訳だよ・・・。腹鳴ってるから意味ないじゃんとお茶をコップに注ぎながら贇の言動に呆れる。
「芹しっかり食べなきゃダメだ。飲み込むのが辛いなら、お茶飲みながら流せば意外に行けるから。ね?とりあえずこれだけは食べよ」
食べ物を口にしない芹の背中をさすりながら、食べ物を取るのを促すが、側から見ても辛そうで見ている修也たちも辛くなってくる。
今までだったら、発症がどういう原理で起きているかわからないのもあって、芹はこの危険な中追い出されていただろう。事実ピライを含めた何人かはそのような理由で1人になっている。生きているかなど知るよしもない。
人は1人で生きるようには出来ていない。社会という家を作ることで外的要因を防いだり、心身の安定を図るわけだが、子供とは言えそれは免れない。追い出された方は生きていてもまともな精神状態じゃなくなるだろう。
ここまで来て数が少なくなった事や曲がりなりにもこの極限状況に慣れてきたというのもあり、友人を限界までは見捨てない。見捨てたくないという僅かではあるが優しさが現れていた。
芹の食事が終わってからエレベーターへと向かう準備を始める。贇はその部屋のロッカーの中にあった低反動の小機関銃を手に取り、店長と修也は車から持ち出した拳銃の弾倉内の確認と追加を始め、残りはナイフを腰に付ける。
「ここからは休憩はないからなみんな。もう一度聞くが行けるな?行けそうにない人がいたら言ってくれ。もう少しだけ休憩時間を取る」
ここから出れば好きなだけ休めるのだから、今きつくてもいいとの判断したのか、全員が揃っていけると店長に言う。
よし分かったと頷くと出る順番を言っていく。前衛に店長2番目に桃が入り3番目に真野、4番目が奈々でリオンの妹が奈々と贇の間に挟まれ、芹と修也がしんがりを務める形だ。
いくら線を引いているとはいえ、誘導するなら通ったことのある人が前の方がいい。それに贇が中心に近いのは、店長が前な分を補えるからである。
真野は贇たちと比べたらというものにはなるが、不安要素が強い。その為に店長からでも贇からでも守りやすい間に挟まれる形だ。それは桃と奈々も同じだ。
2人がしんがりなのは、可能な限り芹の側にいたいという修也の思いと、修也自身の能力があるからだ。
とはいえ8人の内の半数以上は初体験と初の武器持ちなのもあり不安ある。だがやるしかない。ここまで辿り着けなかった友人たちのためにもだ。