修也の行ったことは本当なのか嘘なのかよく分からない。贇と店長の喧嘩は確かに終わっていたので嘘ではないのだろうけれど、今度はボクの妹と衛宮《えみや》が何やら揉めていた。
「君の妹ちゃんってあんな喧嘩っ早い子だったっけ?」
「衛宮とは同じ学校だから仲が良いだけだと思う。えっとなんだっけかな。喧嘩する程仲が良いってやつじゃないかな?それにあの子さ、自分の事一切話してくれないし、話そうにも少し濁した感じだし」
「それは話したとは言えないのでは———」
途中で会話が止まる。いや消えるが正しいのか。修也がいた右側を見てもどこにもいない。後ろを振り返ってもいない。どこに行ったんだろう?
すると、屋根から砂がパラパラ落ちてきていた。廃校になった学校だからと言って屋根から砂が落ちるのなら、風が吹いていないと無理だろうけれど、落ちてきている。贇たちは校舎近くにはいないし考えられるとしたら・・・誰だろう?
「くふぁ!贇ー!!!!!いきなりテント道具投げつけんなぁぁああ!!!当たったらどうすんねん!てか、おいらに当たってんでしょうが!」
「修也君は受身が取れるだろうから、ノープレムレムだよ!あと一応僕は投げるよって言ったよ。」
「聞こえなかったら言ってないのと一緒だろうがぁぁああ!やろーぶっ飛ばしてやる!そこで待ってろ!贇!」
何も言わずにいきなり投げるのは良くないと思う。そりゃあ怒りもする。なんか今日は修也を怒らせている回数多いなぁ。ボクが言えた事ではないけれど。
「良いよ〜待っておいてあげる〜」
「があぁあああ!!!!!金属製のものを持ったおいらに勝てると思うなよ!贇!」
また始まった。贇は全員に対して喧嘩振っていくなぁ。もう今みたいに煽る事も煽られる事も出来なくなる。贇なりに楽しく遊ぼうとしているんだろうけど、ものを投げるのは頂けないな。
修也に目掛けて投げたテント道具を持ち上げて元の場所に運ぼうとすると、屋根からピライが待て待てと手を振りながら呼びかけた。さっきの砂はピライ君のだったのか。
「俺が運ぶからお前さんは妹のとこに行けよ。いくら面倒見のいい芹さんだってありゃ止められねえだろ」
「それなら君が行くべきだ。ボクが行ったところで待っているのは妹のパイルドライバーだけさ」
「お、お前さん苦労してんだなぁ・・・しみじみ」
一切会話のない家族より、家族に無関心だったりするよりはマシだと思う。まあ、人によってここは違いがあるのでボクの意見でしかない。
屋根からピライが降りてきてテント道具を渡せと手を縦に振るが、ボクはそれを無視して喧嘩を終えてテントを張り始めている店長に持っていく。妹の方を見ると芹さんがなだめているのかなと思ったが、流石そういうのには長けている人だ。喧嘩ではなくただ揉めてただけかもしれないけれど。
「だから俺がやるって!テント張りは俺らに任せろよ」
向こうは喧嘩も何もしていない。贇と修也の後を追うのは無理だ。死ぬもの狂いで走ってやっと同速度になるだけで、その差を縮める事は出来ないと思う。それにそういう事ならピライ君の方が向いてる。
ピライが俺が俺がとせがんで来るしボクが進めば、動物が初めて見たものを親と思い込むように見えるぐらいにあと追って来る。どこまでこのテント張りをやりたいんだ?
あまりにも鬱陶しいとまではいかないけれど、しつこい事はしつこい。もう面倒だピライ君に任せよう。最初からそうしとけば良かったなぁと思うボクなのである。
「はぁ・・・分かったよ。渡すからあとはお願いするよ」
「ウェエエエエエエイ!やったぜ」
そんなにやりたいって思えるのは凄いなぁ。しかし、これでボクのやる事はなくなってしまった。昼食にするにしても、テントを張り終わるまではしないだろうし・・・・・・暇だ。冷暗所に行くか。あそこなら涼しいし、昼食になってもすぐに運べるから仕事もすぐに取りかかれるしと一石二鳥だ。
何もしていないとは思われたくないので、ボクは誰にも見つからないように冷暗所に戻った。