僕らの鎮魂歌   作:キノコ二等兵

30 / 40
さらなる脱出へ5

ガゴンガゴンとロープの軋む音と銃声が沈黙のエレベーターを包み込む。|店長は修也に声をかけようとするも、修也は芹のことで手一杯でそちらに意識を向ける暇はなかった。

 

「芹!芹!」

 

「あ・・・・・・あ」

 

声が漏れるがそれ以上のことは起きない。

 

店長は無理だろうと見ていたが、修也は諦めなかった。大事な人なのだから当然だが。

 

そんな相手に声が掛けられるはずもなく、ただ生き絶えていく様を見るしかなかった。

 

「しゅう・・・や・・・」

 

彼女の手を握りしめてここにいると無我夢中で伝える。

 

「あ・・・よかった」

 

「安全な所を見つけるまで休んでなよ。絶対に、絶対に見つけるから・・・!」

 

「う・・・・・・ん」

 

修也の顔に塩水が流れる。止まらない。止まるわけがない。

芹が一度息を吐き切ると、そこから動くことはなかった。

 

「くっ・・・あっ・・・う・・・」

 

嗚咽が止まらない。誰のためにやったのか。何のためにやったのか。もう訳がわからない。

 

「修也・・・」

 

床に崩れる修也に手を伸ばすが、いらないと断られる。壁に手を付けて何とか立ち上がると、空いた左手で涙を拭き取る。

 

「店長。おいらは大丈夫。半年前からこうなる可能性はあったんだ。ただ今日はその確率が高かっただけで」

 

銃の弾を確認しながら覚悟を店長へ伝える。

 

「芹に手を出した奴は殺す。覚悟はある。おいらは。オレは殺る」

 

「・・・そうだな。こんなことを強いた奴らをやろうぜ」

 

エレベーターを降りて真野たちと合流する。そこは左右に道はなくただ一直線の廊下が続いていた。

 

「先にいるかもしれないから修也を前に・・・と言いたい所だが、下のカニが追いかけて来るかもしれないし、俺が先頭に行く。修也は殿であとは下の時と一緒だ。いいな」

 

全員が即座に頷き、足音をあまり立てずにしかし素早く廊下の先の扉へと向かう。

 

扉を抜けると大きな研究施設の、まるでそれは武器を雨風から凌ぐためのハンガーのような場所だった。あれのような風通しの良いものではなくただ広さがハンガーのような場所なだけだ。

 

中心部に大型のPCとディスプレイが並べられていた。店長は何か情報が手に入るかもしれないと、安全を確保しないままにその機械に走り寄って行く。

 

「店長!危ないよ」

 

「ああ、分かってる!だけどここでのデータを持って帰ればこの研究施設を作った奴らに攻撃出来るだろ?」

 

「なかったことにされるのがオチだろ。大体バイオハザードが起きたところって爆破されるって相場が決まってる」

 

「だからこそ手にしておくんだよ。どんなに爆破されたってどうしても一部は廃墟として残る。そこのデータがあればそいつらが隠すためにやったって証拠になる」

 

機械の側にあった保存端末を差し込み内部のデータを取り入れていく。

 

「・・・これがあればオレは・・・・・・なっ!?え?」

 

「どうしたんだ店長———がふっ!」

 

店長が困惑していたためどうしたのかと尋ねようとした真野を修也がリオンの妹たち諸共押し飛ばした。

 

「何を・・・?」

 

「蹴ったのは悪かった。店長どういうつもりだ。何で裏切った!」

 

「ちょっと待てよ店長が裏切る要素なんてないだろ!」

 

困惑を隠せない真野たちを置き去りに話が進む。

 

「真野の言う通りだ。オレが何で裏切ってるってことになってんだよ?」

 

「じゃあ何で懐の拳銃を取ろうとしてんのさ。物音を立てたからか?それだけなら、突っ込まないでクリアリングしてからやればよかった話だろ!その情報を得るっていう名目で実際は消してるんでしょうが!そういう理由で池上を殺したのは君だろ店長!池上がデータを集めていたから———」

 

「そんな理由で殺すなら、もっと確実性があってオレに責任が行かない方法でやるわ!真野!修也は芹が死んでおかしくなった。先に行け!こいつの目を覚まさせてからオレも行く!」

 

「えっ?えっ?」

 

「巻き込みたくない!ここは任せろ!」

 

状況は飲み込めないまま真野はみんなを連れて奥の扉を抜けて行った。

 

「これでとりあえずは安心だ。巻き込まれる事はない。じゃあ死のうか」

 

「人をあれだけ殺しておいて、よく言うよ」

 

互いに銃を構える。この距離だったら外そうにも外せない。撃てば確実に当たる銃口を完全に互いから離さない限り。

 

「もしオレが本当に池上を殺したとするなら何でこんな自分が死ぬ可能性のある所でやるんだよ?」

 

「だって君はこの作戦に疑問視していたからね。おいらと贇が考えたこの作戦をね!」

 

もしかしたら、店長はこれを聞かせたくなかったのだろう。自分たちが元からこんなことに近いことが起きるという絶対に言えるはずのないことを・・・。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。