この作戦は生存時間の短い修也が何としてでも芹を安全な場所へ向かわせる作戦だ。
普通なら考えるはずもない。修也もそれは理解していた。しかし自分の命が消え掛かっている関係上、せめて芹が安心した状況になってから消えたかった。
だから無茶をせざるを得なかった。勿論それだけでこんなことをしたら巻き込まれたピライたちが救われない。
「こんなはずじゃなかったさ!元は裏切り者を捜索が主な目的だった筈なんだから!」
「嘘つくな。お前はただ芹を助けるために他の人たちを犠牲にしたんだよ」
「違う!違う!違うっ!絶対に違う!」
「いいや違わない!こんなことしなくてもみんなが安全にいられる方法があるはずだったんだ。お前がそれを———」
銃声が響く。言わせない。言わせたくなかったのだろう。
「それならなんであの時言わなかった!言えないのなら言うな!批判していいのは、その意見の代わりを言える奴だけだ!」
「修也・・・」
「でもいいや。寿命が近いおいらじゃみんなはやっぱ救えない。それなら・・・」
店長に向けていた銃を自分の頭に突き当てる。
「おいバカやめろ!がっ!?」
店長の肩を撃ち抜くと、これで誰にも止められないともう一度頭に銃を当てて引き金を引いた。
「あっああ・・・・・・」
死んだ。そう感じた店長は目をそらした。しかし倒れる音がいつまで経っても聞こえない。どうしてなんだと顔を上げると、修也に銃は当たってはいなかった。ゼロ距離で撃ったが、軸自体をずらされていたのだ。
「い・・・・・・妹君どうして?真野と一緒に行ったんじゃ・・・」
ガンッと鉄を殴ったかのような音を立てながら修也を殴り飛ばす。殴った手は震え、殴り方が良くなかったのかスーッと血が流れていた。
「ふざけんな。あんたの傲慢さがオレの・・・あたしの兄貴を奪ったのかよ!」
「あれは君のお兄さんなんかじゃない。おいらと同じただの生物兵器だ!」
「だとしても兄貴だ。最後の最後まで兄貴はあたしの兄貴だったんだ。それをあんたが奪ったんだ!理由も伝えず、死んでも謝罪もない。なんで・・・・・・、なんでさ」
「・・・・・・」
「黙るなっ!答えろっ!」
倒れた修也の胸ぐらを掴み叫び散らす。
「もういい。修也には時間がなかった。そして俺も責任がある」
リオンの妹の腕を修也の胸から優しく外してその手を掴む。そして彼女を立たせる。
「俺は、俺たちは先に行く。自殺だけはするなよ。待ってるぜ」
答える前に彼女を連れて真野たちを追う。
「・・・・・・あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“!!!!!」
ただ叫ぶ。自分のせいで死んだんだと言われて、死ぬこと許されず———否、死ぬことは落ちた銃を使えば簡単だ。だがそういうことではない。バケモノに向けただけならまだよかった。だが、今回は違う。人に、それも友人に、そして大事な仲間に手を出したのだ。その上で自殺などしたらそれはただの逃亡だ。
ちくしょう・・・・・・そう口から溢れる。ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!
———それならみんなに謝ればいいんじゃないかな?
声が聞こえる。だが後ろにも前にも左右上下にも誰もいない。無線かとも思ったがそれも違う。ならばどこからだ?
———きっとみんな完全にとはいかなくても許してくれるよ。だって目的の中にみんなを助けるって想いが一欠片でも入っていたんだから。
「だとしてもおいらは、俺は!」
———やってからのお楽しみ!一度じゃダメでもいつの日かきっと。
「お前を殺したんだ!」
———頑張って!
その気の抜けた言葉を最後にその場所から声が完全に消えた。
伏せたまま時間が流れる。動く気がもうないのだろうか。このままあいつらを裏切ったままでいいやと時間を潰そうとその体勢を崩さず座る。
だがそうは周りがさせなかった。真野たちの向かった方向から振動が響く。もしかしたら別のBOWが襲いに行ったのかもしれない。もしそれが本当なら、責任ははたさないといけない。
「苗木・・・君の力、もう一度貸してくれ。罪を少しでも償いたいんだ。だから今だけでもいい」
ゆっくりと立ち上がる。それに並行して肌や髪色脂質も緑に変化していく。
「アル、ジャア、ノン。お前たちの力も俺に貸してくれ」
完全に立ち上がると、その場にはもう誰もいなかった。残ったのは冷たい鉄の銃だけだった。