地下と地上を繋ぐ扉の前で、贇が外を見ようとすると何かが聞こえたようで扉から素早く離れる。十中八九赤鬼だろう。
「蹴破って一気に走り抜ける。赤鬼なら僕についてくるはずだ。2人は赤鬼が減ったらそのまま学校から逃げて。あれとは可能な限り戦闘するのは避けたほうがいい」
「贇はどうするんだ?追われるってことはお前は逃げれないじゃないか」
「これだけの赤鬼がいるんだ。絶対に指示を出してる赤鬼か人間がいるはずだ。だから僕はそれを無力化する。赤鬼なら潰す」
「だが・・・・・・!」
贇に反論しようとすると、刹那さんが肩を掴み首を横に振る。
「芹さんがいるでしょう?あなたはそちらを優先すべきよ。巻き込まれた側なんだから」
・・・・・・。じゃあなんであなたは芹と一緒にいなかったんだ?朝一緒に出たじゃないか・・・クラスが違うから?俺が残っていたのは掃除していたからなのに、あなたはこの時間まで何をしていたんだ?
「詮索は家に帰ってからでも出来るから、まずは脱出を優先して!いいね?」
「分かった。無茶するなよ?」
こちらに答えることはなく贇は一気に扉を開けて走り抜けていった。
贇の言っていたように赤鬼たちはその後をついて行く。脳がないのか?赤鬼同士で連絡を取っている訳じゃないらしい。指示は出しているのにか?
「これだけ離れていれば問題ないでしょう。行くわよ」
刹那さんに言われた通りに外に出てそのあとを追う。グラウンドの端を走り抜けて正門から出ようと向かっていると、金属音が聞こえた。多分、贇が持っていた刀だろう。他の赤鬼が持っていた金属物とぶつかったのかもしれない。
気にする要素はない。無視しよう。
正門を抜けるところで後ろから赤鬼が追いついてきた。しょうがない。
彫刻刀を抜き取り首に差し込み蹴り飛ばすと、他の赤鬼も仲間がやられたことに腹を立てたのか何体も追いかけてくる。
「クソがっ!」
赤鬼を倒すことに声が出てしまった。すると・・・・・・俺のよく知っている人がそこにいた。
「せ、芹・・・・・・?なんで?お前はこんなことするような奴じゃないだろ?」
「うるさい。知っちゃいけないことを知っちゃった修也は・・・・・・殺さなきゃいけないよね!」
「何を・・・・・・」
赤鬼が俺を目掛けて走ってくる。贇のことなんてもうどうでもいいようだ。
「芹!」
「修也君!とりあえず逃げるわよ!」
腕を掴まれそのまま学校を後にするが、芹は逃すつもりはないらしい。口でそう言ったもんな・・・・・・当然か。だが認めたくはなかった。
「がっ!放せ!」
贇が赤鬼に取り押さえ慣れて殴ったり蹴られたりと暴力に飲まれていた。
「ぐっ!げっ!がっ!」
あのままでは贇は死ぬ。つまりは芹が人を殺すことになる。それをさせるわけには!
「刹那さん・・・!すみません!俺行きます!」
「ダメ!」
無理やり腕を外して走って芹の元に向かう。
「芹!お前に人は殺させねえ!だから!戻って来い!もう一度やり直そう!な?」
後で恥ずかしくて死にそうなセリフだが、それが響いていることを願って走り抜けた。
「そんなこと言っても、修也を殺さない理由にはならないよ!」
赤鬼が肩を掴む。それを即座に彫刻刀で刺し殺して勢いを止めずに芹に近づく。
「君にやらせるわけには・・・!」
贇も俺と同じように赤鬼たちを斬り殺すと芹に向かって走り出す。
赤鬼に足を掴まれ地面に叩きつけられる。だが、それでも止まってはダメだという意思で俺は芹に向かう。
足に熱が入る。なんだと振り返ると左足に俺が赤鬼に突き刺した彫刻刀が刺さっていた。
「があ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“!!!!!」
抑えて痛みを和らげようにもそれさえさせてくれない。
「芹ちゃん!彼はこれには一切関与して・・・」
「関係ないよ。見られたくないものを見たんだもの。だから———」
「悪いが子供とはいえ死んでもらう。あいつのためにな」
ジュッゥという肉が焼ける音がする。その行動に誰もついていくことはできなかった。
芹が力なく倒れて初めてそこで芹がどうなったかを自覚した。
「何してくれてんだ!テメエ!」
痛みが怒りのせいか一瞬で消え去った。赤鬼たちも力を失ったようで抑えていた身体を簡単に動かすことができた。
彫刻刀を抜き取りそれを片手にその芹に手を出した男に彫刻刀を突き立てる。
「君はまだ人を殺すような子ではない。寝ていろ」
腹に拳がめり込む。漫画のように意識が飛べばよかったが、現実はそんなに甘くない。ただ腹から何かが上がってきて地面に吐き散らすだけだった。
彫刻刀を持った手は掴まれたまま離されず、ぶら下がっているような形になってしまった。
「キュウ・・・?どうして?まだ休んでるんじゃ?」
「質問するのはこちらだイン。なぜお前が日本にいる?あっちは窓原任せか?それに今の私は
贇は彼を知っているのか?そして日本にいるのが不思議がられるのはどうしてなんだ?名前からして日本人だろ?実際は違うのか?
「・・・気まぐれはダメかい?」
「ダメとは思っていない。ただ今のお前の行動が理解出来ないだけだ」
「それはこっちのセリフだよ!彼女守るんじゃなかったの?」
「だからだ。あいつはJPPのせいで・・・だから私はJPPの作ったものを破壊するだけだ」
「なら関係ない人間まで巻き込んじゃダメじゃないか!」
「あれを指揮しておいて無関係とは言えないだろう?それに彼女は本丸ではないようだから、少年。彼女は死んじゃいない。その子を連れて今日会ったことは全て忘れろ。そうすれば君は死ぬことはない。
殴っておいて、芹を切っておいて何をほざいているんだこいつは。守るために攻撃するってなんだよ。矛盾してるんじゃないのか。
こちらには興味はないとばかりに男は右手の武器を腰に収めて校舎に向かって行った。
芹に手を出しておいて謝りもしないのか・・・絶対に許せない。
「贇!俺はあれを追う。刹那さんにも頼みたいんですけど、いいですか?いえ、やっといてください!」
返答なんて聞かないとばかりに痛みが走る身体に鞭を打って校舎に入る。
校舎に入ったが赤鬼たちは一人もいない。男が殺し回っているのか?にしては血がないのは変だ。彫刻刀で刺し殺しても身体に血が付くぐらいなのだから床や壁に血が付いていてもおかしくない。
そのまま何かあることもなく屋上への階段まで辿り着く。他は全て探したが、誰もいなかった。赤鬼含めてだ。外にいた赤鬼も消えているようで、もしかしたら、芹が倒れたからかもしれない。
そして男が言ったと思われる屋上への階段を登りきり扉を開けた。