☆一般職男子   作:みさお

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<彼女の部屋>、<オフィスワーク>

<彼女の部屋>

「もう、大変だったのよ」

たっちゃん、いえ、星野主任によると、酔いつぶれた僕を彼女が介抱してくれたらしい。

僕がタクシーの中で眠り込んでしまったため、止む無く彼女の部屋に泊めてくれんだって。

なんて失態だ。

学生時代でも、ここまで悪酔いしたことなんてなかったのに。

僕は、土下座で謝った。

これからしばらく、彼女には頭が上がらないな。

でも、何も無かったとはいえ、ここまでしてくれるなんて、ひょっとして僕に気があるのではないかな。

うん、そうで無ければ、自分の部屋に男なんて入れないよな。

「やだ、土下座なんて、そんなに謝らないで・・・うふふ、でも先輩って、よく似合ってるのね」

改めて自分の格好をみると、僕は寝巻きとして、彼女のネグリジェを着せられていた。

なんだか、恥ずかしい。

 

【挿絵表示】

 

「もう、先輩なんて言わないでくれ。今では、僕は君の部下なんだから。呼びつけにしてくれ」

僕は照れ隠しもあって、咄嗟にそんな言葉が出てきた。

でも、会社の組織から言って当然のことだし、彼女ともっと親密になるには、具合がいい。

「う~ん、そうねぇ、でも、呼びつけなんてできないわ」

その時、彼女の目が怪しく輝いた気がした。

「じゃあ、ミサちゃん」

僕はちょっと驚いた。僕の名前は操夫(みさお)。

子供の頃はよくミサちゃんって言われて、女の子に混ざって遊んでいたことを思い出した。

この名前って、女っぽくて、ちょっと恥ずかしいいんだ。

でも、この状況では断れない。

「ミサちゃん」

「はい、主任」

僕は素直に応えてみた。

うん、そんなに悪くない。

いや、彼女に呼ばれると、子供の頃に戻った気がして、むしろ心地いいかも。

 

 

<オフィスワーク>

現場配属されて、2週目になった。

今週から僕もお茶当番に入ったため、先週よりも30分ほど早く家を出る。

駅につくと、凄まじく混んでる。

この時間帯ってこんなに混んでるんだ。

先週乗ってた時間帯は、あれでも空いてたってことか。

列に並んで列車に入ろうとするが、ダメだ、とても入れない。

止む無く一本見送る。

再度トライ、ダメだ、またしても入れない。

このままでは、会社に間に合わなくなる・・・・そうだ!

僕は一計を案じた。

急いで、先頭車両まで走って、飛び込む。

えへへ、女性専用車両って、空いてて快適!

ふと、隣の一般車両を見る。

スゴイ、窓に顔がへばりついてる・・・なんか憐れだね。

 

給湯室の脇を抜けて更衣室へ向かうと、綾乃先輩から声がかかる。

「もう、遅いじゃない。早く支度して!」

「すみません。電車が遅れてしまって」

僕は咄嗟に嘘をついた。

電車一本の遅れは思っていたより大きかったようだ。

僕は男子トイレの個室で急いで制服に着替える。

「ここはいいから、先に布巾がけして」

綾乃先輩の指示で、ボクは机やカウンターの布巾がけ。その間に先輩がお茶を配っていく。

「今朝はすみませんでした」

一般職の先輩は、上司より怖いっていう。

僕は給湯室に戻った先輩に必死に謝った。

「お茶出しだって、立派な仕事よ、軽くみちゃダメ」

一時期消え去っていた朝や午後三時のお茶出しだが、最近では一般職の業務として復活している企業が多いという。

     

【挿絵表示】

 

僕が気を落としてシュンとしていると、

「ほら、そんなに落ち込まないで。元気を出して、今日も一日頑張りましょう」

いつもの、優しい綾乃先輩の笑顔に戻った。

「はい、先輩」

そうだ、落ち込んでちゃダメだ。プラス思考だ。

 

席について、営業社員が取ってきた契約の補助作業の入力業務。

あーあ、 一般職の仕事ってつまらない。

子供の頃はOLのお姉さんって、綺麗な制服を着て颯爽と仕事をしているイメージだったけど。

いざ、自分が一般職になってみると、電話受付したり、コピーやFAXをしょっちゅう頼まれたり、来客のお茶出しなんかもあって、一般職って細かい仕事が多くて結構忙しい。

営業社員なら外出できるし、電話受付とかコピーやFAXは一般職に任せればいいから、仕事に集中できるし、お給料も多くて羨ましい。

一般職には昇進だって実質ないから、いつまでたっても総合職の下で、補助業務だし。

あっ、いつの間にかお昼。

僕達一般職は早番、遅番で交替でお昼をとる。

今日は、お茶当番で早起きしたせいで、お弁当は作る暇が無かった。

早番の一般職のグループに参加させてもらって、今日はイタリアン。

メニューに迷ったけど、結局、僕も皆に紛れて一緒にレディースセットにする。

小振りな二種類のパスタにパンとサラダ、食後にミニケーキと飲み物がつく。

こういうとき、一般職って嬉しい。

おしゃべりに夢中になっていると、もう一時間。

午後は総合職の社員が出払っていて結構余裕だ。

3時、おやつとティータイム。

一般職だけの気軽さから、おしゃべりしながらまったり仕事ができる。

あっという間に、もう5時。

まだまだ残業を続ける男子社員達を尻目に、僕達一般職は、軽やかな足取りで会社を後にする。

何たって今日は、女子会に僕も呼んでもらったんだもん。

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