☆一般職男子   作:みさお

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<ミサちゃん>、<給料日>

<ミサちゃん>

「そろそろ、天川(あまかわ)君もペア制に入ってもらう」

課長から呼ばれた僕はそんな指示を受けた。

僕の所属する営業5課は、課長、課長代理、主任の総合職3人と、綾乃先輩と僕の一般職の2人の小さい課だ。

課長代理と綾乃先輩のペアと、たっちゃん、いえ、星野主任と僕とでペアを組むことになった。

星野主任の契約管理やデータ入力は、僕が専門に行なうってことらしい。

ようやく、僕も一人前扱いされたってことだろう。

ちょっと誇らしくて嬉しい。

 

「ミサちゃん、これコピー」

「はい、主任」

僕は素直に応じる。

年下の女に、それも元後輩に命令されるのって、屈辱感が無いって言えば嘘になるけど、これから彼女は僕の直接の上司なんだ。

それに、こないだ酔いつぶれて大迷惑をかけたっていう負い目もある。

僕は、必死に自分を納得させる。

 

「ミサちゃん?」

綾乃先輩が、目聡く聞きつけた。

「あっ、御免なさい。天川さん、これコピーお願い」

星野主任はうまく誤魔化した。

あの日以来、彼女はプライベートでは僕をミサちゃんって呼ぶようになった。

うっかり、職場でもその呼び方をしてしまったのだろう。

実は、彼女と僕は時々プライベートでも会うようになった。

まだ、きちんとしたデートはしてないけど、彼女の仕事が終わるのを待って、居酒屋で飲む程度だけど。

 

「ミサちゃん、応接にお茶3つ」

次の日から、課の全員が僕のことをミサちゃんって呼ぶようになった。

もう、恥ずかしくて仕方ない。

彼女だけにそう呼んでもらうから嬉しかったのに・・・

     

【挿絵表示】

 

 

 

<給料日>

「星野君、スグ出られるか」

課長から呼ばれて、彼女は急いで外出する。

僕は今月の給与明細を印刷して共用プリンタに取りに行く。

あれっ?二回印刷しちゃったかな。

見てみると、何だか画面で見た数字よりずっと多い。

名前を見てみると星野龍子(ほしのりゅうこ)って書いてある。

急いで出かけたから、取る暇がなかったんだ。

彼女の机の上にそっと置く。

でも、内容はバッチリ見させてもらった。

僕の3倍近い給料だ。

基本給に裁量企画手当、営業手当、営業日当・・・

もっとも、今の僕は試補期間だから、残業代がつかない。

試補期間が終われば、一般職は残業代がつくから、単純な比較はできないけど。

やっぱり、総合職っていいなあ。

半年後には、総合職への転換試験がある。

今年は、ダメ元で試してみようと思う。そして、傾向と対策を練って、来年には総合職を目指すんだ。

昼休みに給与明細と睨めっこしながら、ATMで現金を少しおろす。

はぁ、家賃で給料の半分近くが消えてしまう。

一般職って、自宅通勤が前提だから、住宅手当が出ないんだよなぁ。

僕は、大学時代から部屋を借りてるから、遣り繰りには慣れてるつもりだけど、社会人になってからって、結構出費があるんだ。

 

「ミサちゃん、夕ご飯食べに行こっ」

彼女からの誘いだ。

嬉しい。

せっかくの給料日だ、今日ぐらい豪勢に行こう。

「ミサちゃん、今日はありがとう」

えっ?なんの事だろう、僕が不思議そうな顔をしてると、給与明細をそっと彼女の机に置いたことらしい。

なんだ、ちゃんと分かってたんだ。

気がついてくれて、ちょっと嬉しい。

酒に酔った勢いもあり、僕は給料の不満をぶちまけた。

彼女の明細を見たお詫びに、僕の給与明細も見せてみた。

「えっ、こんなに少ないの、ミサちゃんかわいそう」

彼女は、やさしく同情してくれた。

「ねえ、家賃がもったいななら、あたしの部屋に住んじゃう?」

彼女が冗談っぽく言った。

「はい、不束者ですが、よろしくお願いします」

僕も冗談で返す。

今日の飲み代はいつもの割り勘と違って、彼女が全部出してくれた。

これってラッキーじゃね。

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