13 壊れた日常
「どういうこと?どうして今回は今朝じゃないの?」
私は訳が分からず立ち上がると、スマホを見る。もしかしたら時計の日付が間違っているかもしれないというわずかな可能性を信じて。
「嘘……」
しかし、そんな私の期待も無駄に終わった。スマホもあの日を表示する形で。
どうしてこんなことになったのか分からず、私は考える。
一応助かった訳だし、それはいいとしてどうして?それとも、あの一週間自体が夢落ち……なんてご都合展開は……ないわね。鮮明に覚えている訳だし。でも、一度は切り抜けられた道。それに、もしかしたらもう何も起きない可能性もある訳だし。
私は頬を叩くと、意識を切り替える。いつまでも引きずってたらダメだろうし。
「よし!今日も頑張ろう」
私はパパッと学校の準備を整えると、リビングに行く。ママはすでに学校に行った後のようでそこにはおらず、私は朝ごはんを温めるとテレビを付けて食べ始める。
『今日の十二位は……双子座のあなたです!』
「あれ?」
ニュースを見ているうちに占いコーナーになり、今日から一週間はずっと蟹座が最下位のはずなのに、なんでか最下位では無かった。こんなところで齟齬が起きたことが気になるけど、それを知る術を私は持っていないからどうにもならない。でも、最下位じゃなかった事で良かったと安堵する。流石に最下位よりはそれ以外の方がいいし。
「っと、今回は一応もう持っておこうかしら?」
朝ごはんを食べ終えて準備を済ませると、机の上に置いていたペンダントが目に入り、何度もこれに助けられたから一応お守り代わりに持って行く。流石に首にかけておいたらダイヤに注意されそうだしと鞄のポケットに入れる。そして、朝から憂鬱な気分にはならずに済んだことで、私は軽い足取りで家を出る。
「おはヨーソロー。善子ちゃん」
「おはよ。あと、ヨハネよ!」
曜が乗るバス停に止まると曜はいつもの挨拶をし、私はいつも通り返答をする。曜はいつも通り私の隣に座る。
「そう言えば、善子ちゃん。次の曲の衣装どうしよっか?」
「そうね……って、曲のイメージも固まってないのに衣装決めるの?」
「まぁ、ある程度はね。そうしないと、いざ作れるって時に間に合わなくなりそう」
「なるほどね。私的には堕天使のような漆黒の衣装かしら?」
「うーん。黒かー。確かに今までなかったけど、またあの時みたいなのはダイヤさんが“破廉恥ですわ!”って言うかもよ?」
「言いそうね。でも、あの時と違ってもう少し布面積を増やせば……」
曜のある程度準備することに対しては私も賛成だからそう言う。こんな会話を前にもした訳でデジャヴを感じるも、それは前にもした記憶があるから割り切る。
私は三回目の日。でも、曜は初めての日だから。
それから私たちは次の衣装案を進める。その結果、ピンクのチアみたいな衣装や淡い緑の衣装など何パターンか思い付いたのだった。
~☆~
「おはヨーソロー!」
バスに揺られて浦女に着き、部室に着くとすでに七人そろっていた。前は千歌が後から来たのに今回はいるあたり、前回とは違う部分が多々ありそうね。それとも、もう起こらないのかしら?
「おはよー。曜ちゃん、善子ちゃん」
「おはよ。千歌がもう着いてるなんて珍しいわね。いつもギリギリなのに」
「善子ちゃん。千歌だってやればできるんだよ!」
「あっ、ごめん」
「ちーかーちゃん!私が早めに行って起こしてあげたからでしょ!」
「……」
「わっ、そんな目で見ないでよぉ」
千歌が一人で起きたのかと思えば、リリーが起こしたから起きれたようだった。感心してたのに裏切られたから、私はジト目をする。すると、千歌はそれに反応する。
「いつまでも話してないで、着替えたら練習を始めますわよ」
「そうだね。時間は有限だしね」
「レッツゴー!」
「あっ」
「先、屋上に行ってるね」
ダイヤに言われて私たちは荷物を置くと、皆着替え終わってたから先に屋上に向かう。だからパパッと着替え始める。ここが女子高だから、部室で着替えても問題ないから助かるわね。共学だと更衣室で着替えないとだし。でも、共学だったらそもそも廃校の危機にもなってないか。
「っと、着替え終わったし行こっか」
「ええ。そうね」
パパッと練習着に着替えると、皆を追いかけるように部室を出る。
「1,2,3,4.1,2,3,4」
屋上ではいつも通り、ストレッチをした後にステップ練習をする。あの一週間のうちにも練習はしていたから、私は手慣れた物で、危なげなく練習をする。まぁ、そう言う訳で一つ問題が発生だけど。
「ルビィちゃんと花丸ちゃんは気持ち急いで」
「うん」
「ずら!」
「善子ちゃん、昨日よりも格段によくなってるね?」
「そう?」
普段なら果南に注意を受けるけど、皆よりも前の一週間分練習してたわけだから、だいぶマシになっているせいで果南にそんなことを言われた。
いつもと違うから皆に変に思われる可能性を全く考えてなかった。どうしよ……変に思われたりしたら。
「もしかして、こっそり一人で練習してた?」
「え?……あ、うん」
「うんうん。練習は裏切らないね」
と思ったけど、私がこっそり練習していただけと思われるだけで済んだ。まぁ、普通に考えたらそう思うわよね。
流石に一週間皆よりも過ごしたなんて言えないし。言っても信じてくれないだろうしね。どうせ堕天使うんぬんと思われるオチしか見えないし。
「みんないい感じになって来てるね。じゃっ、ちょっと休憩しよっか」
「わかりましたわ」
「了解であります」
果南の手拍子に合わせてステップを踏んで行く。そうして進んで行くと、休憩に入る。私は疲れたから腰を下ろすと、花丸に水を渡され、お礼を言って受け取る。
「今日は動き良かったね」
「そう?まぁ、迷惑はかけたくないからね」
「あれ?いつもなら堕天使だからとかって言うのに、珍しいね」
「あー、今日はそんな気分なのよ」
「そっか。そんな気分なんだ」
あの一週間はずっと気を張っていたせいで、堕天使はなりを潜めていたからそんな反応をしてしまった。でも、花丸はそこまで追求してくることは無かった。
それから練習は再開され、気づけば陽が傾き始めたのだった。
~☆~
「善子ちゃん、この後暇?よかったら一緒に雑貨屋さんに行かない?」
「暇だけど、今日じゃなきゃダメなの?」
練習着から制服に着替えていると、曜にそう声を掛けられた。前と同じ展開だから、このままだともしかしたらと思うからそう口にする。結局あの時は一人で行こうとしたから避けられないだろうけど。それでも曜の身に危険が少しでもあるのなら回避したい。
「明日は天気が荒れるらしいし、晴れてる日の方が寄り道しやすいからね。それに、千歌ちゃんたちが曲作りができたらすぐに作業に動けるようにできる範囲で準備しておきたいからさ。ダメなら一人で見に行こうかなー?」
「そう。まぁ、私も行くわ」
「あっ、私もついて行っていい?」
曜は一人でも行きそうだから、私もついて行くことにすると、ひょこっとマリーが会話に加わりそう言った。
「あれ?鞠莉ちゃんも来るの?珍しいね」
「あはは。ちょっと駅前までshoppingをね」
「よーし。鞠莉ちゃんも一緒に行こー」
「そうね」
前回と違う点は多々あったから、これもその一つだろう程度に考えていた。もしかしたら、マリーがいれば曜を助けられるかもしれないと思っていたのかもだけど。
皆と別れて私たちはそのままバスに乗り続けて沼津駅前に着く。千歌も一緒に来ようとしたけど、リリーに早く歌詞完成させてと急かされて、リリーと一緒にバスを降りて行ったのでいるのは私たち三人だけ。
「それで、鞠莉ちゃんの買い物ってなんなの?」
「もちろん、曜の衣装案を一緒に考えにね」
「あれ?そうだったの?」
てっきり、マリー自身買うものがある物だと思っていた。曜も同じことを思っていたらしく、意外そうな顔をしていた。
「これでも、ダイヤに何度もスクールアイドルの話やら写真、ライブ映像を見たりしたからね」
「もしかして、合宿で寝てたのも……」
「ええ。何回も聞いてたから聞かなくてもいいかな?って。でも、そこにいないとダイヤに文句は言われそうだったし」
「だから、目にシール付けてたんだ」
「そう言う訳で、スクールアイドルの衣装もけっこう見てきたから力になれるわ!」
そう言って、マリーは雑貨屋さんに入り、私と曜は追いかける。ここももうこの時期は三度目になるから、ここの商品の位置をだいぶ覚えてしまっていた。だから、見ててもあまり衣装の案が浮かぶ気はしない。と言っても、
「私は堕天使の衣装を押すわよ」
私は次に望む衣装は堕天使のような高潔なモノに変わりないんだけど。
「あはは。でも、説明会で黒色はちょっと。せっかくなら明るい色の衣装の方が」
「うんうん。それにまたダイヤに文句言われるよ」
「でも、それくらいしか思いつかないし」
「あはは。まっ、私としてはあの時の衣装可愛いと思ったけど」
「そうよね!」
「あっ、うん」
マリーが堕天使衣装を可愛いと言ってくれたから、私はマリーの手を握って詰め寄る。流石マリーね。マリーがあれを纏えばきっとすごそうよね。
で、マリーの反応を見て私はハッとする。だから、慌てて手を放す。
「善子ちゃんって、本当に堕天使が好きだよね」
「そうね」
そんな私を見てニコニコと笑う二人。なんというか馬鹿にされてる?いや、たぶんそういう訳ではないだろうけど。
「それで、曜の方はどうなの?」
「うーん。何パターンかは思いついてるけど、もう少しいい感じのがなぁって。それに、曲ができないと最終決定ができないし」
「じゃぁ、なんでもう衣装案を固めに入ってる訳?」
「だって、ある程度案は決めておかないと、すぐに作り始められないでしょ?」
「それもそっか。となると、私も果南と一緒にダンスの振付を考えといた方がいいのかしら?」
「さぁ?それこそ曲が完成しないと無理じゃないの?曲調すらもわからないんだし」
二人ともやる気は満々だけど、曲が完成しないことには動くことができない現状なのよね。私も曜の手伝いをするつもりだし、特にすることが無いんだけど。
そうして、雑貨屋の物を見て回る。
うーん。やっぱり新鮮味がないからあれなのよね。二人は新しい商品を見たりしていて、私は私でフラフラとしながら見て行く。
~☆~
「じゃぁねぇ」
「ちょっと、曜!?」
雑貨屋を出ると、曜はスマホを見て曜のお母さんから早く戻ってくるように言われたようで、さっさか帰って行った。今日は曜の身に危険が迫ると思っていたのに、取り付く島もなく去って行ってしまい、ちょうど信号も変わってしまったから、青になってから追いかけても追いつける気もしなかった。一応、今日はあの時よりも早いから多分あの車に轢かれることは無いはずではあるけど。あの時は私をかばったから轢かれただけで、曜一人なら回避できるはずだし。
となると、やっぱりあれは悪い夢だったのかしら?曜が轢かれるあの事態は回避されたみたいだし。そう考えると気が楽ね。もう、皆の死の危険を考えなくてよくなる訳だし。
「さてと、私はバス停に行こうかしら?」
「じゃぁ、途中まではいっしょね。ここからなら私の家の近くのバス停の方が近いわ」
「そうなの?じゃっ、善子とtalkしながら帰ろうかしらね」
私たちは、家の近くの方のバス停を目指して一歩踏み出し、
キキッー!ドンッ!
「えっ!?」
目の前を車が通り、マリーはそれに轢かれて吹っ飛んだ。私はいきなり目の前で起きたことに、呆然とし、ハッとするとマリーのもとに駆けよる。マリーは植え込みに倒れており、額には血が流れていた。
「マリー!?マリー!」
「……」
打ち所が悪かったのか返事はなく、意識も無かった。私はマリーの脈を確認すると……
止まっていた。
「嘘……」
マリーの死。信じたくはないけど、目の前で起きてしまった。曜が無事だったからもう大丈夫と思った矢先にこんなことなんて。
周囲の人々は事故が起きたからと集まり出し、誰かが救急車を呼んだのかサイレンの音が聞こえ始める。
「私は絶対に信じない。絶対に……」
私はもう動かなくなっているマリーを抱きしめて泣く。私が油断しなければこんなことにはならなかった。
迫っている車に気付ければマリーを助けることができた。
私は自分を責め、そして、鞄の中のペンダントを引き抜く。
「あれが夢じゃないなら、聞き届けなさい!」
諦めてたまるもんか。絶対にどうにかしてみせる。過去を繰り返してでも。
マリーを抱きしめ、マリーと私の間にあるペンダントを握り願う。
「我願う。故に我乞う。マリーの居るあの日常を!」
さすがに、同じことを繰り返すとあれなので、そろそろ流れを加速させます。どういう方向でかは、今後の投稿で。
では、良いお年を~ ノシ