繰り返される堕天   作:猫犬

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18 変化

最初のループから何十回目かの土曜日。私は日記に書いていた今までの事故のことを確認して最大限の注意を払っていた。建設現場には近づかない、熊とかに出くわした際にすぐに火がつけられるようにしておくなどなど。そして、最後の手段に首にペンダントを付けて。

マンションまで着くと、階段で十階まで登って部屋に行く。いままで一度として部屋の中で死んだことは無いから、おそらくは部屋に入れれば死を回避できるはず。それでこのループを終わらせてみせる。

 

「ふぅ、何事も無くたどり着けた。まさか、いきなり床が抜けたりしないわよね?」

 

でも、最後まで気を抜けない訳で、玄関前まで着くとあり得そうなことを呟きながら鍵を取り出す。ドアの前に立っても床が抜けることは無く鍵穴に鍵を刺して鍵を開けると、ドアを開け――

 

ボンッ!

「きゃっ!」

 

中から突然爆発して私は爆風で吹き飛んだ。いきなりのことで私は受け身も取れず柵にぶつかって止まる。その際に背中を打ち付けたこと、爆風の影響で軽いやけどをしたことで全身に激痛が走る。どうしてこんなことが起きたのかわからず困惑していると、ガスの臭いがしていて、それでガス漏れしていてドアを開けた際の静電気で発火したようだった。柵が壊れて地面に落下してたかもしれないから柵が壊れなかったのは良かったけど、これで家にたどり着くのもままならなくなった。というか、家の中が安全だとも思えなくなってきたし……もうどうしたら。

激痛によって動けずじりじりと火の手は迫って来る。人がいれば爆発音で外に出てくるはずだけど、他の部屋は留守のようで誰も出てくる気配がない。だから、誰かの助けも期待できない。

激痛は一向に引く気配はなく、足に関しては打ち所が悪かったようで捻挫か打撲でもしたようでこの場から動くのも厳しそうだった。ドアが開いていることで火はどんどん強くなっており、早く手を打たないと他の部屋にまで火が移って被害が大きくなってしまう。

 

ボンッ!

「ゲホッ、ゲホッ」

 

ガスが出ている場所をどうにかしないと爆発は収まらなさそうで何度も爆発を繰り返している。どうやらリビングの窓は割れているようで向こうから風が入っているのか煙類は全部私の方に流れてくる。そのせいで身体に悪い空気しか吸えず、息は苦しい。身体が痛むせいで移動もできず、このままだと私は一酸化炭素中毒で死ぬ。

痛む身体を無理やり動かして、私は首元のペンダントを握り、

 

「我、願う。故に、我、乞う。みんなとの、日常、を!」

 

みんなと居る日常を願った。

 

 

~☆~

 

 

「戻ってこれた?」

 

気が付くと私は私の部屋のベッドの上に寝ていた。身体を起こすと、若干体が重く感じる。たぶん寝起きだから身体が重いだけだと思いながら辺りを見回す。火事があったのにその跡が一切ないから過去に戻ってこれたみたいね。

助かった安堵と共に、家に入ることもままならないから安全な場所なんてどこにもないのという絶望が込み上げる。

たどり着ければ越えられると思っていたのに、その直前であんなことになるなんて。本当にどうにかなるのかしら?外にいれば事故に遭う。家に帰れば爆発する。もう選択肢なんてどこにもないじゃない。でも……

 

「きっと道はあるはず」

 

諦めたりするもんか。今までだって皆の死は回避できたんだから、私の死の危機だって回避できるに決まってる。もう誰かの死を見たくない。今回こそは皆の死を乗り越えてみせる!

 

「善子ー、そろそろ起きなさい」

「起きてるわー」

 

返答して時計を見れば月曜日を表示していた。つまり、また一週間皆の死を回避しないといけない。はぁー、せめて土曜日の朝なら皆の死を見ないで済むのに。どうして、土曜日だけは今日に飛ぶのやら?やっぱり、私が死に直面するわけで皆とは微妙に状況が違うからかしら?私は死んでるわけじゃないし。

疑問は尽きないけど、その答えを知る術はないわけでどうしたものか。

重い身体で立ち上がると制服に着替えながら考え続ける。

わからないものはいくら考えてもわからないから、今はできることを。今日は誰の身に危険が迫るか。外は雨が降っていないから、土砂崩れとか視界不良による事故は起きないとみていい。でも、それだけでもいくらでも事故は考えられる。現にこのループの半数以上は晴れの日の事故が多いわけだし。

 

『今日の十二位は牡羊座のあなた!』

 

リビングに行くとちょうど占いがやっていた。牡羊座ねー。そう言えば初めて過去に飛んだのも月曜の曜の時だったわね。と言うことは、今日は曜の身に危険が迫るって訳ね。誰の身に危険が迫るかわかっているだけでもまだマシ。

一番避けたいのは誰も該当しない星座が来ること。あれだけはまだ謎が多すぎる。ただ怪我で済むのなら……いや怪我もして欲しくはないけど、ランダムで誰かの可能性もまだ捨てきれない。

 

「おはよう、ママ」

「おはよう、善子……って、具合でも悪いの?」

「え?どうして?」

「いや、なんだか表情が暗いから」

「別に具合は平気よ」

 

キッチンで食べ終えた皿を洗っている状態のママに言われて返答をすると朝ご飯を食べ始める。なんか前にもこんなやり取りをした気もするけど、何度も繰り返してるから似たこともあるわよね。

それにしても寝起きにしてはやっぱり体が重い。もしかして、寝起きは関係ない?病気とかじゃなければいいけど。いや、今まで風邪ひくのは明後日だからたぶん違うわよね。

 

「そう?ならいいけど。っと、私はもう行くから戸締りよろしくね」

「はーい」

 

時計を見てママは鞄を持ってそそくさと出て行った。

朝ごはんを食べ終えると、パパッと皿を洗って荷物を纏めると家を出るとちょうど来たバスに乗る。今日もまた朝練があるから遅刻をする訳にはいかない。できれば朝練とかは今週はお休みになってくれると危険回避も……いや、変わらないか。朝は一度も事故が起きてないし。あれ?

 

「うーん。どの日も放課後に起きてる……」

 

スマホの日記を見て行けば、どの日も放課後に事故が起きていた。朝の時間帯に一度でもあればはっきりとは言えないけど、百回近くある全てが放課後ってことは事故が起こるのは放課後に絞れるじゃない。どうして気づかなかったんだろ?

 

「善子ちゃん、おはヨーソロー」

「……」

「善子ちゃーん?」

「あっ、おはよ」

 

他に何かないかと見ていたことで、曜の挨拶にも気づかなかった。曜が私とスマホの間を手で遮ったから気付いた。

 

「考え事?」

「えーと、ちょっとネットニュースを見ててね」

「なるほどね。善子ちゃん」

「ヨハネ!」

「あはは。次の衣装の良い案無い?」

「堕天使のような漆黒の衣装かしら?」

「堕天使はちょっと……。前みたいにダイヤさんに“破廉恥ですわ!”って言われちゃうよ?」

「じゃっ、布面積を増やせばいいんじゃないの?」

 

曜とのこのやり取りも前にやった気がする。どうしてこんなにデジャヴるんだろ?それとも記憶がごちゃってるだけで前にやったのかしら?流石にどんな会話を誰としたかまでは書いていないからわからない。こんなことなら書いておけばよかったかしら?会話の内容からもしかしたら今までの事故と一致する可能性もあるだろうし。

 

「それなら確かに言われないかもしれないけど、せっかく入学してくる子に聴いてもらうんだし、明るい衣装の方が良くない?」

「そう?まっ、衣装のイメージは曲が完成しないことにはだけど」

「それに関しては私たちにはどうにもできないよね」

 

はっきり言って、作詞作曲を担当している二人が曲をおおかた作らないことにはどうにもならない。マリーたち三年生三人でやってた頃に作曲を担当していたマリーと作詞を担当していた果南、本をたくさん読んでることで語彙が多い花丸も一緒になってやってはいるけど、いかんせん進捗状況は悪い。

イメージを先に決めるという案もあったけど、そのイメージが固まらないのが現状。時間的には今週中には衣装製作に着手しないといけない。最悪、一回目の時と同じ衣装というのも手ではあるけど。

 

「ルビィちゃん、花丸ちゃん。おはヨーソロー」

「おはようございます。曜ちゃん、善子ちゃん」

「おはよう。曜ちゃん、善子ちゃん」

「おはよう。二人とも」

 

部室に着くとそこにはルビィと花丸の二人が着替えていた。話を聞けば千歌を除く四人はダイヤとマリーの仕事を手伝っているだとか。

とりあえず、私たちも着替えていると千歌がやってきた。

で、千歌も着替えて全員着替え終えるとちょうど四人が戻って来た。

 

「皆さん、おはようございます。さて、全員そろったことですし練習を始めましょうか」

「だね」

「承知」

 

 

~☆~

 

 

「1,2,3,4。1,2,3,4」

 

朝練と授業を終えた放課後。私たちは屋上で練習していた。屋上での転落事故は何度も起きているから、本当は屋上で練習したくない。でも、理由を伝えることもできないから止めることもできない。言えばおそらく転落事故が本当に起きてしまう気がする。

そんなわけで今に至る。

誰かが転落しそうになったらすぐに動けるように周囲に注意していた。このステップ練習はもう何十回もやってるから身体に染みついている。だから、多少周囲を見てても問題は無い。

一つ問題があるとすれば、身体が重い。朝練の時は割となんとかなってたけど、時間が経つにつれてひどくなっている気がする。普通に生活する分には問題ないかもだけど、運動するのはきついかも。でも、下手に心配をかけたくない訳で無理をする。私がここを離れたせいで誰かの死を回避できなかったら嫌。だから、回避するまでは離れる訳にはいかない。

 

「あと1セットやったら休憩しよっか」

「うん」

「OKよ」

 

今のところ問題は起きていない。でも、油断はできない。気を抜いた瞬間事故は起きたことが何度もあるから。

 

「うん、皆いい感じ。休憩しよっか」

「やったぁー、休憩だぁ」

「みんな水分補給はしてね」

「うゅ」

「善子ちゃん大丈夫?」

「ん?ええ、問題ないわよ」

 

無言で鞄から水筒を取れば、花丸にそんなことを言われた。もしかして、私の体調が微妙なのばれてる?

 

「そっか。ならいいんだけど、今日の善子ちゃん少し顔色が悪い気がして」

「気のせいでしょ?ちょっと疲れたからそう見えるだけよ」

 

確信してる訳ではなさそうだからそう言えば花丸は納得したような表情をして水を飲み始める。

隣で私も座って飲む。

花丸に気付かれかけたってことは、このままだと皆にもばれかねないわね。流石にばれれば保健室に連れて行かれるだろうし、どうにか練習が終わるまではばれないようにしないと。

 

「では、休憩もほどほどに再開しましょうか」

「はーい」

「はい」

 

十分くらい休憩した後、練習が再開される。できればもう少し休憩したかったところだけど。

 

「え?」

 

水筒を鞄にしまって立ち上がると、視界がくらっとし、身体がふらつく。

 

「善子ちゃん!?」

「よっちゃん!?」

 

そして、皆の声が聞こえながら私は視界が真っ暗になった。

 

 

~☆~

 

 

「ん、んん~」

「あっ、起きた。鞠莉ちゃん、善子ちゃん起きたよー」

 

気が付くと私はベッドに寝ていたらしく、私の声で千歌がのぞき込む。

辺りを見渡せば、白いカーテンで囲われており、保健室にいるみたいだった。

千歌の声でカーテンが開くと、マリーが顔を出す。

 

「気分はどう?」

「うーん。普通」

「そう。見た感じ、何処かを打ち付けた様子もないし問題なさそうね」

「びっくりしたんだよ。いきなり倒れるから」

 

二人から話を聞くと、あの後気を失った私をここに運んでくれたみたいで、皆に心配をかけたみたいだった。やっぱ、あんな状態でやり続けるのは無茶だったか。どうして、こうなったのやら?

 

「悪かったわね。えーと、みんなは?」

「みんなは先に帰したわ。こんな時間まで居てもらうのはまずいしね」

「で、私たちだけ残ったんだよ」

 

時計を見れば七時を過ぎており、外はだいぶ暗くなっていた。というか、終バスが終わってる……。

あっ、というか、今日は曜の身に危険が迫るはずでこんな時間。曜が事故に……。

 

「さて、善子ちゃんも起きたことだし帰ろっか。歩けそう?」

「あっ、うん……って、そんなことより」

「Oh。善子が目を覚ましたって連絡したらみんなすぐに反応してるわ。返事しちゃってちょうだい。その方がみんなも安心だろうし」

「あっ、うん」

 

曜が事故に遭ってないか聞こうと思ったけど、タイミングを逃した。でも、二人がいつも通りってことはまだ事故に遭ってないってことかしら?

マリーに言われた通りチャットを見れば、皆から反応があり、一分前には曜からもあった。

良かった。曜は無事みたいね。

とりあえず、私もチャットをすると、皆からすぐさま返信が来た。みんなすぐに返信できるって……いや、うれしいけど。

 

「さぁ。パパッと準備して」

「わかったわ。てか、どうやって私は帰ればいいの?二人はまだ歩いて帰れなくもない距離だけど、私は厳しいような?」

「もちろん、手は打ってあるわよ。少し歩いてもらうけどね」

「うんうん」

 

私の疑問にはマリーはそう言い、千歌がうなずく。その瞬間嫌な予感がしたんだけど。

 

 

~☆~

 

 

千歌の家まで連れていかれ、すでに連絡していたのか美渡さんに私たちは送ってもらった。最初は悪いと思って断ろうとしたけど、時間も時間だし、体調が不調だったからとご厚意に甘えることになった。

で、なんだかんだで夕食を食べてお風呂に入って、色々しているうちに日をまたいだ。

 

日付が変わるまでに何かあるかもと思ってたけど、何も起こらなかった。正確には駅前の方で車が建物に突っ込んだらしいけど、曜はその場にいなかったらしくて事故に遭わずに済んだらしい。うーん。てっきり今日は曜が事故に遭うと思ってたけど。起こらないのが一番いいから結果的には良かったけど、毎回のように事故が起きてたからなんと言うか違和感。

あったのは私の体調不良だけだし。もしかして、もう事故が起こらないとか?だったらいいんだけど。まっ、楽観視もよくないわね。

 

「今日が偶然だっただけかもだし、明日も頑張らないと」

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